ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~ 作:アイスが食べたいマン
ヤミと家と泊まり会をしてから、数日が経った月曜日、俺は今リトとララさんと学校へ登校していた。
「昨日、妹たちと通信で話したんだよ」
「へぇ~」
「それは良かったね」
ララさんの顔はとても笑顔で笑っていた、ナナさんとモモさんが帰ってから、まだ2週間しか経っていないが、離れて暮らしている妹達の連絡は、ララさんにとってとても嬉しいものなんだろうな。
「それでねー二人から、ユウトは元気って聞かれたんだ!」
「元気だよって伝えておいて」
「後、地球に行くからユウトに会いに行くって!」
確かに一度戻るって言ってた気がするけど、もう来るのか?
「え?ララの妹たち、来るのか?」
「…いつ来るの?」
「そーいえば、いつ来るんだろ?」
ララさんは首を傾げて、あれぇ?っと言っている、そこが一番重要だよ、ララさん。
リトとララさんと話していたら、後ろから視線を感じる
「あ、古手川さん、おはよう」
「ユイだ!おはよう」
「おはよう、古手川」
「…おはよう」
俺は古手川さんを見ると、少し怒っているように感じた。
「…時雨くん、土曜日のヤミちゃんとのデートは、楽しかったかしら」
「………」
「え?ユウト、ヤミちゃんとデートしたの!?」
「デ…デート!?」
古手川さんは土曜日の事で怒ってたのか。
「どうせ、ハレンチな事でもしてたんでしょ」
「…してないから」
古手川さんが風呂場であった事を知ったら、ハレンチどころじゃ済まないな。
「…どうかしら、ヤミちゃんと手を繋いで歩いて────」
「ねぇもしかして、ユイってユウトのこと好きなの?」
「え?古手川、優斗の事、好きなのか!?」
ララさんが古手川さんの言葉を遮り、爆弾を投下する、ララさん、それは今一番言ったらダメなやつだよ。
「なっ!なんでそうなるのよっ!!」
「えーだってユウトがヤミちゃんとデートした事、怒ってるから、羨ましいかったのかなーって!」
「そ…そんなわけないでしょ!!別に時雨くんのことなんて…」
古手川さんは顔を赤くして否定していたが、急に黙り込んでしまう。
「…古手川さん?」
「ユイ?」
「…もういいわ」
古手川さんは″フンっ″と言って先に学校へ行ってしまった。
「ユイ照れてたね!」
「…俺はララさんのメンタルが羨ましいよ」
「…古手川が優斗の事を…いや、そんなまさかな?」
古手川さんの後を追う様に、俺達も学校へ向かっていく。
◇
~唯side~
「春菜のお姉ちゃん、二人の男に告られたんだァ!!」
「しーっ!声が大きいよ、リサ!」
昼休みになると、西連寺さん達の話が聞こえてくる。
「結局どうなったワケ?」
「それが…どっちもつまんなそうだから、フッちゃった!…って」
「へぇ~余裕~!!」
「秋穂さん、大人の女ってカンジ!!」
西連寺さん達は恋愛話をして盛り上がっていた。
(愛だの恋だの……どうして皆、そういう話が好きなんだか、勉学に励むのが、学生のあるべき姿のはずよ…!)
「いいなぁ~私もいつか優斗の心を掴んで、堕として…」
「…リサ、目が怖いよ?」
「ッ!?」
籾岡さんから、時雨くんの話が聞こえてくると同時に、胸がチクリと痛む、時雨くんの心を掴む…
─────今、優斗とデートをしています。
「…っ」
土曜日に見た、時雨くんとヤミちゃんが手を繋いで歩いているところを思い出す、もしかして時雨くんは、ヤミちゃんと付き合ってるの?
(な…何なのよ、この気持ち…)
胸が張り裂けそうになるくらい痛い、想像してしまった、今隣の席にいない時雨くんが、知らない誰かと笑って、ハレンチな事をしてしまっている所を…
「…嫌だ」
気づいたら私は、席を立って教室を離れて歩いていた。
なんで…なんで嫌なのよ、時雨くんが誰と仲良くしてようが、時雨くんの勝手じゃない…なのにどうして…どうして、こんなに胸が痛いの?
「…古手川唯」
「ヤミちゃん!?」
いつの間にか渡り廊下に来ていた私は、壁の塀に座って本を読んでいたヤミちゃんに声をかけられた。
─────私達のデートの邪魔をしないでください、古手川唯
「…ヤミちゃん、聞いてもいいかしら」
「なんですか?」
土曜日に言われた言葉を思い出した私は、ヤミちゃんに話しかけてしまった。
「…あなたは時雨くんと付き合ってるの?」
私はなんでこんなことを聞いちゃったの?聞いちゃったら、後悔するかもしれないのに…
「…まだ、付き合ってませんよ」
「…え?」
ヤミちゃんの言葉を聞いた瞬間、私は何故かホッとしてしまった。
「…ですが、優斗とはそういう関係になりたいと思っています」
「っ!?」
…嫌だ、私だって…時雨くんと…
「古手川唯、あなたは優斗の事が好きですか?」
─────ねぇもしかして、ユイってユウトのこと好きなの?
私は、時雨くんの事が…
「……好き」
きっと、初めてノートを拾って、助けてもらった時から、彼のことが気になっていた。
旧校舎で宇宙人に襲われそうになって、私を助ける為に、お姫様抱っこをされた時はドキドキした。
─────手を繋いで一緒に入れば怖くないよ、浮き輪もあるし、仮に溺れそうになったら、俺が絶対助ける
オキナワで、海に入るのが怖くて入れずにいた時に繋いだ手の感触、助けると言われたあの言葉、そして、ララさんの発明品のイルカの機械に乗った時に事故で抱き合ったあの感触。
─────時雨くんが死ぬなんて、ありえないわよ、何かの間違いだわ…だってさっきまで一緒に…
ゲームの世界で彼が死んでしまった時、死んでしまった私は現実を受け入れられなかった。
─────誰かを助けたいって気持ちや自分の正しさを貫こうとする気持ちがどんどんエスカレートして行くところを、あれは俺の過去の事なんだ
彼の過去を聞いて、私は心が痛かった、ずっと一人で苦しみを背負っていた彼を今度は、私が助けたいって思ってしまった、だから…
「…大好きよ、時雨くんを誰にも取られたくない…」
「………」
だから…
─────私の優斗くんを取らないで…
心の中で叫んでしまう、彼への想い。
時雨くんのことが好きな人は多い、それでもこの思いを私は諦めたくない。
「…古手川唯」
ヤミちゃんは本を閉じて私を見てくる。
「優斗が好きなら、優斗から目を離さないでください」
「…え?」
ヤミちゃんの真紅の瞳が私を捉える。
「私は今の優斗が、目を離せば何処かへ消えてしまう、そんな気がしてなりません」
「…どうして?」
「…あなたは優斗の前世を聞いて、疑問に思いませんでしたか?」
…疑問?時雨くんの前世はとても重かった、何かに疑問に感じている余裕なんてなかった。
「…優斗は自分の″死因″に関して何も言いませんでした」
「…え?」
「実の父親が雇った殺し屋に、大切な人は目の前で殺され、優斗の過去を調査して、悲惨な死を遂げた後輩を見た優斗が、何もせずに終わったと思いますか?」
─────俺を守ろうとした優華さんは、目の前で殺された、優華さんは俺のせいで死んだんだ
─────俺の過去を調査したせいで、権力によって両親は殺され、あいつも爆弾で自爆した
時雨くんの過去、大切な人が目の前で殺されて…大切な後輩の悲惨な死…
「…まさか」
「優斗はまだ何か大切な事を隠しています」
「…どうして私にそんな話を?」
「隣の席のあなたには、優斗が一人で無茶なことをしないように目を離さずに見ていて欲しいです」
″私は学校では、ずっと傍に入れませんから″
ヤミちゃんはそういうと一度俯いてしまう。
「…古手川唯、あなたに優斗を渡すつもりはありません」
俯いていたヤミちゃんは私の方へ向き直す。
「ですが、優斗がいなくなってしまったら、私は一生後悔します、だから、あなたを頼ることにしました」
「それなら、籾岡さんでも…」
「…籾岡里紗とドクターミカドは色々と危険なので」
確かに、籾岡さんはクラスの中でも、時雨くんに距離が近い気がするけど、御門先生はどうして───
「学校では頼みましたよ、古手川唯」
ヤミちゃんはそういうと翼を広げて飛んでいってしまった。
その後の授業で、私はずっと時雨君が気になって見てしまい、授業に集中する事ができなかった。
(目を離さず、見ていて欲しい…か…)
授業が終わって放課後になる、昼休みにヤミちゃんに言われた言葉が頭に過ぎる。
「…え、時雨くん?」
下駄箱へ向かって廊下を歩いていると、手さげのカバンを持った時雨くんが理科準備室から出てきた。
(放課後になってすぐに教室を出たと思ったけど、なんで理科準備室から出てくるのよ)
「…古手川さん、どうしてここに?」
「あなたこそ、なんで理科準備室から出てくるのよ!」
「あぁ、荷物を運ぶのを手伝って欲しいって先生に頼まれたんだ」
同じクラスになってから、ずっと見てきた、いつも時雨くんは誰かを助けている、自分のことよりも他の誰かに手を伸ばし続けている、例えそれで命を落とすことになったとしても…
「…自分自身の事ももっと大切にしなさいよ」
「ごめん、聞こえなかった、なんて言ったの?」
「…なんでもないわ」
私の小さな独り言は彼には聞こえなかったらしい。
「時雨くんは今から帰るの?」
「そうだよ、途中まで一緒に帰る?」
時雨くんから、一緒に帰らないか誘われた、時雨くんはいつも結城くんと帰っているから、こんなチャンスは滅多にない。
「し…仕方ないから、一緒に帰ってあげるわよ」
私はなんで、こんな言い方しかできないのよ!!
「ありがとう、古手川さん、じゃあ帰ろうか」
こんな言い方をした私にも、彼は優しい笑顔を向けてくれた、その笑顔をずっと私だけに向けて欲しい。
時雨くんと一緒に帰っていると、小さく降ってくる一粒の水滴、時雨くんと私が空を見上げると一粒、また一粒と水滴が落ち始めて、次第に強くなっていく。
「もう!何なのいきなり…」
「このままだとまた風邪をひくな、古手川さん手を貸して!何処かで雨宿りしよう!!」
「え…うん!」
時雨くんは私の手を掴み走り出す、近くにあったときめき公園へ行き、雨宿りをする為に二人でドーム型の遊具に入る。
「夕立か、これならすぐに止むかな」
「そ…そうね」
私は時雨くんに掴まれた手を見る、その手は握られた感触がまだ残っていて…
(また…手を握っちゃった…)
オキナワの時みたいに…暖かくて…落ち着く…そんな優しい彼の手…
「古手川さん」
「な…何よ!」
そんな事を考えていたら、時雨くんに話しかけられる、びっくりして大きな声が出ちゃった…
「そのままだと風邪ひくから、俺のハンカチを使って?」
時雨くんは私にハンカチを渡してくる。
「ありがと」
時雨くんは自分だって濡れてるはずのに、私にハンカチを貸してくれた。
(優しい…私……やっぱりこの人が…好き)
「ッ!?」
私はハンカチで体を拭きながら、彼を見てしまった、濡れたワイシャツから透けて見える彼の身体、細いのにしっかり鍛え上げられて筋肉がついている、濡れた髪、外を見るその表情が全てが合わさって色気が出ていて…
「古手川さん?」
「………」
気づいたら、私は時雨くんに胸に飛びついていた。
「…あなたが悪いわ」
「土曜日の事、まだ怒ってる?」
そんな無防備で色気を出している、時雨くんが悪い、時雨くんは私の表情が見えなくて怒ってるって思っている。
「ヤミとは約束して───」
時雨くんが話し始める、ヤミちゃんのことをいつから呼び捨てになったんだろう、でもそれより今は…
「…時雨くん、今は他の女の子の名前を出さないで?」
「…まさか古手川さんも俺の事───っ」
時雨くんが何かを言いかけようとした時に私は彼の唇を塞ぐ、時雨くんにとって完全に不意打ちだった、きっといつもなら抵抗されていたと思う。
「んっ……んぅ」
「───っ!?」
時雨くんとキスをしてしまった、彼の唇からはほんのりとした優しい温もりが伝わってくる。
抑えられなかった時雨くんへの想い、濡れた時雨くんを見て、私のタガが外れてしまった。
「…時雨くん、ごめんなさい」
「…古手川さん」
好きな人とするキスは幸せだった、でも、このキスは彼の意志を無視した自分勝手なキス、だから次は…
「私諦めないわ、優斗くんを必ず、振り向かせてみせるから」
私は時雨くんにそういって、遊具の外へ出て走り出す、雨は止んで、空には青空が広がっていた。
次は時雨くんと両思いになった時にキスをしよう、ライバルは多いけど、負けたくない。
(絶対に時雨くんを心を掴んで振り向かせる)
一度この想いに気づいてしまったら、もう…止められない。
◇
その夜、銀河のとある宮殿では。
[ナナ様とモモ様が!!?]
「ああ…今、地球にいるはずだ、見つけて連れ戻せ」
ギドは映像に映し出されたザスティンと通信をしていた。
「ちっと手を焼くかも知れねェが」
[何をおっしゃるデビルーク王、ララ様と比べれば、お二人などまだまだ可愛いもの…この親衛隊ザスティンにお任せを!!]
ギドに指示にザスティンは自信満々に答える。
「それともう一つ命令だ、時雨優斗と戦い、何者か調べろ」
[なっ!?]
ギドの言葉にザスティンは驚く、ザスティンにとって優斗は、自身の主に楯突き、攻撃した無礼者。
[デビルーク王、なぜ、あの愚かな無礼者を調べるのですか!]
「あのガキに興味が湧いた」
[興味ですか?]
「…時雨優斗、貧弱な地球人が、このオレに二発も叩き込みやがった、ナナとモモも随分とあのガキを気に入ってるらしいからなァ」
頬杖をつきながら、ギドは不敵な笑みを浮かべる。
「あのガキは戦いを…地獄を知ってる、ゲイズを捕まえたのも恐らく、あのガキだ、それにあの戦い方、下手すればザス、お前より強いかもなァ?」
ギドはザスに煽るように言う。
[そんな事、有り得ません、私は今までデビルーク王室の親衛隊長として第6次銀河大戦を戦い抜いてきました、そんな私があの様な愚か者になど、負けるはずが…!]
「だが、一度はお前を退けた、違うかァ?」
ザスティンを焚きつけるようにギドは更に煽る。
[あの時はリト殿に気を取られて───]
「ザス、手段は問わねェ、最悪殺してでも、時雨優斗の正体を暴け、わかったな?」
ザスティンの言葉を遮りギドは一方的に通信を切る。
「これでザスも時雨優斗と戦うだろうなァ」
ギドの目的はナナとモモを連れ戻す以外にもう一つあった、それはザスティンと優斗をぶつけること。
「…仮に時雨優斗が死ねばそれまでだったってこったァ」
その戦いで優斗が死んでも、ギドにとってはどうでもいい、ララ達には、以前ギドに楯突き攻撃した為、危険だと判断したから殺したというだけ…
「時雨優斗、てめェが何者か知らねェが、もしザスより強いなら…」
ギドはニヤリと笑う。
「…ナナかモモの婚約者にしても悪くねェ」
もし優斗がザスティンより強ければ、ナナとモモのどちらかと婚約させ、王位を譲る最大のチャンスとなる。
「期待してるぜェ?時雨優斗」
◇
その頃、結城家では。
「リトーおフロにお湯ためといてー」
「おーう!」
リトが美柑に言われて風呂にお湯を溜めるため、動き出す。
(今日は美柑は優斗の家に行ってないんだな)
美柑は合鍵を持つようになってから、優斗が泊まりに来ない日は、優斗の家に泊まったり、朝食や夜ご飯を作りに行ったりとあまり結城家にいることがなかった。
(まあ、美柑が優斗の家に泊まりに行かないおかげで、ララが作る料理を食べずに済むのはありがたいけど…)
美柑が優斗の家に泊まりに行く場合、結城家で夜ご飯を作るのはララになる為、リトはいつも死にかけながら食べることになる。
「ん?誰か入ってる?」
脱衣所に着いたリトは、風呂場から聞こえてきた音を聞いて疑問に感じる。
「…なわけねーよな…」
呟きながら、風呂場の扉を開けると中には二人の女の子が浴槽に入っていた。
「あ…あれ?」
「のぞき魔だ───ッ!!」
リトに向かって投げられた風呂おけは、リトの顔面にあたる。
その後、騒ぎを聞きつけた美柑が風呂場に来て、二人───ナナとモモに事情を聞く為、風呂から出て着替えた、ナナとモモをリビングへ案内する
「ナナ!!モモ!!急にどうしたの!?」
「やっほー姉上!」
リビングでテレビを見ていたララは二人を立ち上がる。
「もぉ〜来るなら来るって、言ってくれたらよかったのにィ」
「いや~慌てて出てきたもんだからさ」
[慌てて出てきた?]
ナナがそういった瞬間、モモがナナを睨む。
「あ…いや、なんでもない!」
「そ…それより、お姉様!その後、リトさんと結婚に向けての動きはありましたか?」
モモは話を変えるようにララに問いかける。
「例えば…キスとか、もっと色々な……キャッ!」
「ななな…何言ってんだ─────!!」
モモの問いかけにリトは顔を赤くし叫ぶ。
「その様子じゃ、まだみたいですね…」
「キキキ…キス~!?結婚の前にそんなことするわけ───」
「あら、でも私たちは付き合ってもいないのに、優斗さんにキスをしましたよ?」
「あ…あれは…」
モモの言葉にナナは顔を赤くし押し黙る。
「ところでお姉様、優斗さんはどちらにいますか?」
「え?ここにはいないよ?優斗の家にいるんじゃないかな~?」
「それが優斗さんの家の中にもいなくて…」
「…ちょっと待って?モモさん、優兄の家に入ったの?」
モモの言葉に美柑は驚いた様子でモモに言う。
「はい!最初は優斗さんの家に───」
「ナナ様!モモ様ァ!!」
「ザスティン!?」
「ちゃんと玄関から入れ!!」
ザスティンは窓から結城家に潜入し、ナナとモモに近づいて行く。
「先程、デビルーク王より直々の通信がありました、お二人が勉強がイヤで逃げ出したと!!」
「「へっ」」
ザスティンの言葉にリトと美柑は驚きの声をあげる。
「そうだったの?」
「だって…」
「面倒なんだもん、教育係に張りつかれて、宇宙の歴史とか、王族のたしなみとか…」
「あー確かに!」
「それに優斗さんに伝えないといけないことがありましたし…」
ナナとモモの言葉にララが肯定するも、二人には他にも別の目的があった。
「そうなんだ、姉上!ユウトに言わなきゃ行けないことが───」
「ナナ様とモモ様にあの様な無礼者に合わせるわけには行きません!あの男は!リト殿を守る為とはいえ、デビルーク王に楯突いた所か!攻撃をするという愚か者でっ!!…ってあれ?」
ザスティンは先程までナナとモモがいた場所を見るが、いつの間にかいなくなっていた。
「二人とも逃げていったよ?」
「しまった!追うぞ!!」
「はっ!」
ザスティンはブワッツとマウルに指示を出して、結城家を飛び出していく。
「困った二人だねー家出なんて」
「お前が言うか…」
リトが内心、ララもお見合いが嫌で家出しただろっと思っていると美柑に話しかけられる。
「…ねぇリト」
「どうした、美柑?」
「この時間に優兄が家にいないことなんて…今まであった?」
「…え?」
美柑の言葉を聞いたリトは固まってしまう。
「優兄、もしかして、お義父さんの所に…」
「…大丈夫だよ、美柑、何も言わずに優斗が行くわけねぇよ」
「リト、美柑、ユウトがどうしたの?」
「それが───」
───もし、ララさん達がタイムレインズカンパニーに押し入ってみろ、地球全体に広がって大混乱が起きるぞ?
「ッ!」
「リト?」
「なんでもねぇよ、ララ」
リトは優斗の言葉を思い出してしまい、何も言えなかった。
(優斗、まだ日本にいるんだよな?)
家にいないらしい親友を心配しリトはメールを送る。
「リト、ナナとモモが心配だから、私行ってくるね!」
「おい、ララ一人で行くなって!!」
ララがナナとモモを追いかけに外へ出ていってしまう。
「…リト、私達も行こ」
「…そうだな」
ララを追いかけて二人は走り出す。
「くっそ~地球にはザスティンもいる事、忘れてた!」
「はぁ…ナナが優斗さんに会いに行く為に家出しよう、なんて言うからこんな事に…」
「な…何言ってんだ、モモだってユウトに会いたいって言って賛成してただろ!」
「私は優斗さんに伝えたい事があるだけで別にそんな…」
河川敷の橋の下に逃げ隠れたナナとモモは、この状況になったことで喧嘩が始まった。
「フン!いい子ぶってるけど、ユウトの部屋に行った時に、ユウト制服を抱きしめて、匂いを嗅いでたこと知ってんだからな!」
「なっ!見てたの!?」
「ユウトにその事を話したら、ユウトはなんて───」
「…は?」
ナナが優斗に話すと言った瞬間、モモは低い声を出して、ナナの尻尾を掴む。
「いいたいことはそれだけ?ねぇ、それだけ?」
「ふぁッあン!」
「…ナナ、あなたがもしその事を話したら、どうなるか、わかるわよね?」
モモは掴んだ尻尾を口に咥える。
「シ…尻尾は反則…っ」
「…優斗さんの前で恥かしい目に合うわよ?」
「なっ!?」
モモの言葉を聞いた瞬間、ナナもモモの尻尾を掴む。
「そんな事させるかァ!!」
「ひぁっ!!」
ナナもモモに負けじと尻尾を擦って抵抗する。
「ユウトは渡さないぞ!」
「それはこっちのセリフよ!」
「…俺がどうかした?」
二人がもみくちゃになって喧嘩していると、買い物帰りに、たまたまその場を通りかかった優斗が二人を見つけて話しかける。
「ユウト!?」
「優斗さん!?」
優斗を見た二人はすぐにお互いの尻尾を離して、優斗に向き直る。
「な…なんでここにユウトがいるんだ」
「優斗さん、いつからここに…」
「買い物の帰りにこの道を通ったら、ナナさんとモモさんが俺の事を話してたから、声をかけただけだよ」
ナナとモモが優斗を見ると左手には、買い物袋と赤い箱を持っていて、右手には傘が握られていた。
「ララさんが言ってた会いに行くって、今日の事だったの?」
「そ…そうだよ、その話さないといけないことがあってさ」
「はい、優斗さんにお伝えしたいことがありまして…」
「話したいこと…何かあったの?」
ナナとモモはお互いの顔を見た後に、話し始める。
「とらぶるクエストのことなんだ!」
「…なにかわかったの?」
「プログラムは全て消されていましたが、デビルーク星に帰って調べてみたら、王室に侵入者がいました」
二人は一度デビルーク星に戻って調べていた、とらぶるクエストに戦国冬華がいた理由を。
「そいつはブワッツに変装して、モモの部屋に侵入してた!」
「それに王室に侵入したのは2回目だったみたいです」
「…変装していた、それに2回目だと?」
ナナとモモの言葉に優斗が考えていると、ナナからとんでないことを聞かされる。
「1回目は、ゾルケムって組織にいたケイズって奴を殺すために来てたみたいなんだ!」
「…は?ケイズを殺す為?いやまて、それってまさか───」
「見つけましたぞ、お二人ともっ!!」
優斗の言葉はその場に現れたザスティンによって掻き消されてしまう。
「さ…迎えの船も用意しました、こちらへ」
「ううっ」
「…迎えって事は、二人ともララさんみたいに逃げ出してきたのか」
優斗はそういうとザスティンの方へ向く。
「時雨優斗、貴様もいたか!」
ザスティンはイマジンソードを優斗に向かって構え、ブワッツとマウルもそれを見て戦闘体勢に入る。
「ナナ様!モモ様!!今すぐその男からお下がりください!この男は危険です!!」
「なっ!ザスティンお前!何してんだ!」
「ザスティンさん!今すぐ武器を下ろしてください!」
ザスティンが優斗に向かってイマジンソードを構え、殺気を放つのを見た二人はザスティンを止めようと静止する。
「貴様!ナナ様とモモ様に何をした!!」
「何もしてませんよ、ザスティンさん」
「王に楯突き、攻撃した人間の言葉を信じると思うか!」
「…俺も随分嫌われましたね?」
優斗はため息を吐きながら、買い物袋と赤い箱を下ろして前に出る。
「なぜ俺に剣を向けるんですか?」
「王からの命令だ!貴様の正体を明かせとな!!」
「…あの暴君か」
優斗はギドの顔を思い出し、嫌そうな顔をする。
「…デビルーク王に何を言われたか知りませんが、俺があなたと戦う理由はありません」
「貴様になくても私にはある!三人係は騎士道に反する、ブワッツ、マウル、お前達は手を出すな!」
「はっ!」
ザスティンが優斗に向かってイマジンソードを振り下ろすが、優斗に避けられてしまう。
「あの時のように避けてばかりのつもりか!時雨優斗!!」
「話し合いをするつもりは無いみたいですね…あぁそうだった、ザスティンさんや俺の様な人間は言葉より力でしたね」
優斗は仕方ないと言ったように左手で持っていた傘を構える。
「やる気になったか!時雨優斗!!」
「さっきからうるさいですよ?何時だと思ってるんですか?」
優斗に向かって再びザスティンはイマジンソードを振り下ろしてくるが、優斗はそれを躱して傘の持ち手をザスティンの鎧の間にある、腹部に目掛けてカウンターを入れる。
「ぐっ!?」
「騎士道精神っていうなら、鎧脱いでくれませんか?」
優斗はザスティンさんに文句を言ってから、回し蹴りを顔面に叩き込む。
「まだ、終わってないぞ!」
「わかってますよ?」
「なっ!?」
ザスティンはすぐにイマジンソード構えようとするが、それよりも先に優斗が、ザスティンの足を傘の持ち手で引っ掛けて全体重を乗せて引っ張り、ザスティンを地面へ倒す。
「もう諦めてくれませんか?」
「…貴様、本当に何者だ」
優斗は倒れたザスティンに向けて、傘の先を突きつける。
「隊長!地球人!貴様よくもっ!!」
ザスティンがやられたのを見た、ブワッツとマウル優斗を後ろから攻撃する。
「…攻撃してくるなら叫ぶなよ……」
優斗は声がした方へ振り返り、殴りかかってきたブワッツの手を片手で掴み、勢いのまま、足を引っ掛けて地面へ倒す。
「………!!」
「あんたも、気配ダダ漏れだよ」
「───っ!!?」
優斗はマウルの腹部に蹴りを叩き込み、声にならない声を上げている、がら空きになったマウル顔面を殴る。
「ブワッツ!マウル!」
ザスティンは優斗から距離を取り、イマジンソードを構え直す。
(一瞬でブワッツとマウルを倒しただと!?この男、私と前に戦った時は、一切本気を出していなかったな!!)
ザスティンは前に戦った時に本気を出していなかった優斗に腹を立てるが、前に戦った時はリトがいた事と武器もなしで時間を稼ぐことなど、優斗にとって状況がかなり違う。
「貴様はやはり危険だ、時雨優斗!!正体を暴くよりも前に貴様をここで殺す!!」
ザスティンに中で優斗が完全に脅威の対象になった、そしてザスティンは認めてしまった、自分よりも強者であり、自身の主を殺せる力が、優斗にはあるかもしれないということに。
「あのザスティン達を相手に、優斗一発も食らってないぞ」
「…身体能力で地球人はデビルーク人に勝つことはできない、でも戦いはそれだけじゃ分からないわ」
少し離れた場所で優斗とザスティンの戦いを見ながら、ナナとモモは話している、最初は優斗を助けようとデダイヤルを構えていたが、それだと優斗を巻き込んでしまうと使うことができなかった。
「前世の戦闘経験もある優斗さんは、技術と経験では、ザスティンより勝っている」
「けど、モモ!ザスティンが本気を出しちゃったぞ!デビルークの身体能力にあの鎧とイマジンソードを含めたら、このままじゃユウトが死んじゃう!!」
ナナは優斗の胸に万能ツールが突き刺さり、腹部を弾丸で撃ち抜かれた時のことを思い出し、顔を青ざめる。
「また私達のせいで、ユウトが死ぬところなんてもう見たくない…」
「…ナナ、私だって見たくないわ」
二人はお互いに顔を見合せ、優斗を助けに行く為、動き出そうとした時、声が聞こえてくる。
「あっ!あんな所にいた!って…なんで優斗がザスティンと戦ってんだ!」
「優兄!?」
ナナとモモを探していた、リト達が二人を見つけて駆け寄ってくる。
「ナナ!モモ!なんでユウトとザスティンは戦ってるの?」
「姉上!」
「お姉様、実は…」
モモはララ達に話す、ギドから、ナナとモモを連れ戻す以外の命令で、優斗の正体を暴くように言われたザスティンが、優斗に襲いかかったこと、そしてザスティンが優斗を殺す為に、本気を出したこと。
「そっか!ユウトは前にパパと戦ったから、ザスティンの中では敵になっちゃったんだ!!」
「それってかなりやばいだろ!!」
「ザスティンさんを止めないと優兄が!!」
だが、皆が動き出そうとした時には既に遅かった。
「うぉぉぉおぉぉぉぉ──────っ!!」
ザスティンはエネルギーを蓄えて光り輝くイマジンソードを優斗に向かって構えていた。
「……オールインするなら今だな…」
(なっ!?突っ込んできただと!?それに早い!!だが、そのスピードとこの距離ではギリギリ私には届かない!その選択は自殺行為だ!時雨優斗!!)
優斗はザスティンに向かってそのまま走り出す、自殺行為にしか見えないその状況見たザスティンは一瞬驚くが、そのまま優斗に向かってイマジンソードを振り下ろす。
「ッ!!傘を開いて!!?」
振り下ろされる直前に優斗は傘を展開して自身を隠す。
「なに!?居ないだと!!」
振り下ろされたイマジンソードは傘を真っ二つ握り、そのまま地面を抉るが、展開された傘の後ろに優斗はいなかった。
「後ろだよ」
傘は身を隠し後ろへ回る為の囮、イマジンソードのエネルギーの光りと、傘で視界が塞ぎ、気配を消して夜闇に紛れてた優斗は、ザスティンに気付かれることなく後ろに回り込んだ。
「チェックメイトだッ!」
「いつの間に後ろに──────ぐッ!!?」
隙ができてガラ空きになった顔面に優斗は思いっきり拳を叩き込み、ザスティンは倒れる。
「もう、動けないな…私の負けだ、時雨優斗…」
「俺はあんたとの力比べを避けて戦った、もしあんたがそれに気づいていたら、状況は変わっていたかもな?」
そう、ザスティンは最後まで気づいていなかった、優斗は真正面からの力比べを避けて戦っていたことに。
「覚えておいた方がいい、どれだけ強力な力を持っていようが、当たらなければ意味がない」
その言葉は戦国冬華がナナとモモに言った言葉。
「それに技術と経験は俺が上だったな」
「…本当に何者なんだ、貴様は…」
ザスティンは今の優斗が自身と同じぐらいの歳の戦士に見えてしまった。
「…もうただの高校生ですよ」
そういうと優斗は少し悲しい目をしながら空を見る。
「俺が勝ったのでナナさんとモモさんは自由にさせてあげてください」
「なっ!それは!!」
「俺を殺そうとしたんだから、それくらいしてもいいでしょ?」
優斗はザスティンを見て言う、その真っ直ぐな目を見た、ザスティンは優斗が自身の主の面影と重なってしまった。
「…いいだろう、デビルーク王には私から伝えておく」
「ありがとうございます、それともう1つ聞きたいことが──────」
優斗はお礼を言いとあることを聞いてから、リト達の元へ戻っていく。
「優斗!大丈夫か!?」
「優兄!怪我はないの!?」
「…なんでいるの?」
「ナナとモモを追いかけて来たらユウトとザスティンが戦って───」
優斗はナナとモモが地球に来た理由など、全ての事情を聞いた。
「なるほどね、とりあえず、ナナさんとモモさんの件はもう大丈夫だよ」
「え?それはどういう意味ですか?優斗さん」
「俺がザスティンさんに勝ったから、ナナさんとモモさんは自由にしてって頼んだら、デビルーク王にはザスティンさんから伝えるってさ」
ナナとモモは顔を見合せ喜ぶ。
「ホントか!ユウト!!」
「嘘ついてどうするのさ」
「これで、私達しばらく地球に滞在できるんですね!!」
「…でも勉強はしなよ?」
「「うっ」」
優斗はそういうと近くに置いていた買い物袋と赤い箱を持ち上げる。
「ザスティンさんとかあと任せてもいいかな、ララさん」
「え?いいけど…」
「え?帰っちゃうのか?」
「もう少しお話しても…」
「優斗、せっかくなら家に泊まって行かないか?」
帰ろうとする優斗をみんなが引き止める。
「…いや、やることもあるから今日は辞めておくよ」
優斗はその誘いを断り、歩き出す。
「優斗さん!今度優斗さんの家に行ってもよろしいですか?」
「私も行きたい!!」
「何もないけど、それで良ければいいよ」
振り返って優斗はそういうとそのまま歩いて帰っていく。
「せっかくなら泊まっていけばよかったのに…」
「…リト」
「どうした、美柑?」
美柑は気づいてしまった。
「…もうすぐ夏だよね?」
「そうだな、なんでそんなこと───」
「…優兄はなんで灯油買ったの?」
「え?」
優斗が時期外れの灯油タンクを持っていたこと。
「水鉄砲は分からなくもないけど、優兄ジュースなんてほぼ飲まないのに、缶ジュース買ってたみたいだし」
そして優斗が普段買わない様な物をこんな夜遅くに買っていたことに疑問を抱く。
「………」
「優斗、何をするつもりなんだ?」
◇
数時間後、銀河のとある宮殿で。
[デビルーク王!ザスティン様より通信が入っております]
「つなげ」
ザスティンからの通信をギドは繋ぐ。
[…すみませんデビルーク王、正体を暴く為、戦いましたが、時雨優斗に負けました]
「フッ…そうか」
ギドはニヤリと笑う。
[時雨優斗の正体も掴むことが───]
「ザス、お前はあの男と戦ってどう思った?」
[どうとは?]
「あれがただの貧弱な地球人に見えた?」
[………]
ギドの質問にザスティンはどう答えるか悩む
[僭越ながら申し上げますと、あの男はデビルーク王を殺す力はあるかもしれません]
「ほうォ?それはどーゆー意味だ?」
[普通に戦えばデビルーク王が勝つことは間違いありません、ですが、デビルーク王が時雨優斗の土俵で戦えば、1パーセントでも、時雨優斗に勝ち目はあると思いました]
ザスティンは答える、自身の本音を。
[そしてあの男はその1パーセントを引き寄せる、そんな気がしてなりません]
「ハハハっ!そうか!」
全てをかける一撃、全てオールインするその覚悟、自身との戦い、ギドとの戦い見てたザスティンは、そう感じてしまったのだ。
それを聞いたギドは笑い出す、愉快にそして何より嬉しそうに…
[それともう1つご報告が]
「なんだ?」
[ナナ様とモモ様をデビルーク星に連れ戻すことができなくなりました、申し訳──]
「いや、むしろ好都合だ、よくやったザス」
[え?それはどういう───]
「通信を切れ」
ギドはまた強引に通信を切る。
「期待以上じゃねえか、時雨優斗」
「あなたも随分楽しそうね?」
「…は?」
ギドの後ろでベールを被った女性が話しかける。
「また変な事を企んでるみたいね、あなた?」
ギドの企みに気付いているかのように女性は話す。
「いやこれはちげェ!オレは!!」
「娘達を無理やり婚約させて、王位を継がせようとしていることの何が違うと?」
女性は全て気づいていたようだ。
「少し…話しましょうか?」
女性はギドを連れて、どこかへ向かう。
その後、ギドの目的は女性によってあっさり潰されてしまった。