ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~ 作:アイスが食べたいマン
「さあ模擬戦だ、優斗!お互いに全力で行こうか!」
「…そうか」
「ちょっ!?いきなり容赦ないね!!?」
時雨優斗と虹崎輝が出会ってから少しが経ったある日、訓練中の模擬戦で、お互いが全力を出してぶつかり戦った。
「…君、強くない?」
「この程度の力で全ての人を救えるって、思ってるのか?」
「力だけじゃない、優しいさが誰かを救うことだってある」
「戦場ではそういう甘い奴から死んでいく、優しいさなんて、なんの意味もない」
優斗は模擬戦で倒れた輝に近づく、模擬戦で勝ったのは優斗だった。
「戦う力だけじゃ救えない命がある、それに力に囚われていたら、いつか必ず限界が来る」
「…何?」
「誰かを救うためには、手を差し伸べる優しいさも必要なんだ」
輝は立ち上がり、優斗を見る。
「君もいつかわかる日が来る」
「………」
優斗はありえないと心で思っていた、だが…輝との生活で優斗は少しずつ、その考えは変わっていった。
「今日から同室だけどよろしく!優斗くん!」
「…マジか」
「人の顔見てマジかは失礼じゃないかい?」
優斗が輝は笑いながら、優斗に告げた。
「なんで同室なんだ」
「僕が頼み込んだ!君と同じ部屋がいいってね!」
「………」
輝の言葉を聞いた優斗は呆れた顔をして隣を通りすぎる。
「同室はいいが生活の邪魔はするな」
「もちろん、邪魔なんてしないさ!」
優斗はこれからの寮生活に不安を抱きながら、輝を通り過ぎてベッドへ向かった。
「もう寝るのかい?」
「…疲れたんだよ」
「じゃあ僕も寝るとしよう」
部屋の電気が消え二人は眠りにつく…はずだった
「優斗、君は気になる子とかいるのかい?」
「…いない」
「好みのタイプは?」
「…知るか」
「鳩サブレは頭から食べる派かい?おしりから───」
「寝かせろよ!お前、邪魔しかしねえじゃねえか!!」
一生話しかけてくる輝に優斗は思わず叫んでしまっていた。
「え?修学旅行でよく話さなかったかい?鳩サブレの話」
「俺は学校に通ったことがない…ってなんで修学旅行で鳩サブレの話をするんだよ」
「…え?学校に通ったことがないってどういう───」
「いいから寝ろ」
二人の生活はこうして始まった。
「さて!優斗!君、今日はお休みだろ?」
「お前は朝から騒がしいな」
「君の代わりに外出届けは出したから、遊びに行こうか!」
「…は?何を言って───」
「時間もないし行くよ!」
輝は着替えた優斗の手を引っ張り、しばらく見てこなかった外の世界へ連れ出した。
「優斗、スポーツできないのかい?意外だね?」
「………」
「あれ?もしかして、落ち込んだかい?」
「…顔がムカつく」
休日に輝は優斗にとって初めての事をたくさん体験させた。
「よし!海に着いたね!じゃあ泳ごうか!!」
「…どうするんだ?」
「あの岩まで競走だ!」
「…そのスイカは?」
「スイカ割りだよ、やったことないかい?」
「ない、てか何も持ってないが何で割るつもりだ?
「拳で!!」
「お前は一回病院に行って、頭見て貰え」
二人は海に行った、最初優斗は乗る気ではなかったが、次第に楽しくなっていた。
「………」
「どうした?あの家族が気になるのか?」
輝に優斗が声をかける。
「いや、懐かしいなってね」
「懐かしい?」
「昔、母さんも時々海に連れてきてくれたんだ」
輝は懐かしい目で海で遊んでいた家族連れを見る。
「母さんは忙しくて、僕はおばあちゃんの家で住んでいてた、でも帰ってきてくれた時は、必ず何処かに連れて行ってくれたよ」
「…忙しかった、仕事で帰って来れなかったのか?」
「僕の母親は自衛隊だったんだ、犯罪者でも関係なく、色んな人に手を伸ばして救う、強くて優しい人で…自慢の母親だった」
優斗は気づいた、輝が言った″自衛隊だった″という言葉に…
「僕が自衛隊に入った年に病気で母さんは亡くなった」
「………」
「優斗に前に言った″誰かを救うためには、手を差し伸べる優しいさも必要″これは母さんがよく言ってた言葉なんだ」
「お前が、自衛隊に入った理由は…」
「僕も母さんみたいになりたかった、誰かを救える人に」
「…そうか、いい母親だったんだな」
輝を見た優斗は羨ましいそうに見てしまった、自分とは違い、愛されていた輝を。
「お前の母親は誇らしいだろうな」
「…え?」
「俺と違ってお前は悪党だろうが関係なく救っている、それに違って俺は…」
優斗は自分の手を見て握りしめる。
「優斗、そろそろ聞かせてくれないかな?」
「…何を」
輝は優斗を見て言う。
「優斗の過去だよ、君は眠っている時、夢で過去にうなされているみたいだからね」
「…聞いてどうなる」
「僕は優斗を助けたい」
優斗は輝の言葉を聞いて驚く。
「…俺を助けたいだと?なんで俺のためにそこまでする」
「決まってるだろ、親友だからだ」
輝は優斗を真っ直ぐ見つめる。
「…お前よくそんな恥ずかしいこと言えるな」
「伝えたいことは伝えておかないと、後悔してからじゃ遅いだろ?」
「………」
「優斗が何を背負っているか、知りたいんだ」
優斗にとって過去は地獄だ、そして優斗の父親は権力者、優斗の過去を知ってしまえば、いつか巻き込まれて、死ぬ可能性もある。
「君が背負っている物を僕にも半分背負わせてもらうよ」
「背負えば、地獄を見ることになる、最悪、死ぬぞ?」
優斗は輝を見つめる″地獄を見る″死ぬぞ″その言葉を聞いても輝の意思は変わらなかった。
「君と地獄まで相乗りする覚悟なら、もうできてる」
輝は優斗の前に立って言う。
「一人より、二人で背負えば優斗と少しは楽になるはずだ、それに僕は簡単に死なないよ」
「………」
「だから、教えて欲しい」
輝は優斗へ手を差し伸べる。
「…俺の過去は…優しいさや友情だけでどうにかなるような───」
「優斗、僕を信じてくれ」
優斗は輝の真っ直ぐな目を見て、黙り込む。
「わかった、お前を信じる」
「ありがとう、優斗」
「俺の親友って言うなら…絶対に死ぬなよ、″輝″」
「優斗、僕の事を初めて名前で呼んでくれたね」
優斗は輝の優しさに救われた、優斗にとって輝は自分を変えてくれて、初めて過去を打ち明けて頼る事ができた、たった一人の相棒で親友だった。
◇
「ルナティーク、惑星ミストアまでどれくらいで到着予定ですか」
[へい主!このままワープドライブを続けりゃ、2時間ちょいってトコだぜ!!]
「すごいねーヤミちゃんの船、人口知能が着いてるんだ!」
「でも何か口悪いな」
ヤミが船の人工知能と話していると、ララさんが興奮気味に話しかける、確かにナナさんの言った通り口が悪い。
[何だァ!?宇宙に放り出すぞ、このペタンコ娘!!]
「だ…誰がペタンコだァ!!」
「まぁ、ナナ落ち着いて」
モモさんは怒ったナナさんを落ち着かせると、持ってきた荷物を確認している俺の方へ近づいてきた。
「セリーヌさんの事……大切なんですね」
「そうだね、でも俺よりもリトや美柑の方が大切に思ってるよ」
リトにとってはララさんに誕生日プレゼントで貰った、大切な宝物、美柑は名付け親、きっと二人の方が俺よりも愛着を持っている。
「…みんなから愛されている、セリーヌを見殺しにしたくなかった」
「優斗さんは優しいですね」
「俺は優しくなんて──」
「セリーヌさんもリトさんの庭で育てられている花も優斗さんの家にある花もみんなが、言っていました、優斗さんは親切で優しい方だと」
そうか、モモさんは植物の言葉がわかるのか。
「それにどのような理由があっても、花達があそこまで優しいって言っている人が、優しくないはずがありません」
────どんな理由であっても、それで誰かを助けてるなら、その人は優しい人だよ
この前、霧崎さんに言われた言葉を思い出す。
「優斗さんはやっぱり素敵な殿方ですね」
「っ!モモさん!?」
モモさんは俺の太ももに手を置いて、俺の方へと寄ってくる。
「私やナナの事も命を賭けて助けてくださいました、それに人にだけじゃない、花達にも優しい…」
「…ちょっ!近い!?」
お互いの顔が近くなっていく。
「優斗さん、私はやっぱりあなたが───」
「あなたは何をしているんですか?」
唇が重なる瞬間、金色の髪が俺を掴みモモさんから引き離す。
「さっきから優斗に近いですよ?プリンセスモモ」
「…もう少しだったのに」
ヤミはモモさんを睨む。
「チャンスはたくさんありますから」
「そんなチャンス、簡単に作れると思って──」
「ヤミさんと違って私は優斗さんの家に住んでいますので、いくらでもありますよ?」
「…は?」
モモさんの言葉を聞いたヤミは俺を引き寄せる、俺を掴んでいた髪の力が次第に強くなっていく。
「優斗、どういう事ですか、説明してください」
「ヤミ!ちゃんと説明するから!苦しい!潰れる!!」
「っ!すみません優斗、つい力が入ってしまいました」
ヤミに開放された俺はモモさんに襲われていたことは覗いて、朝の出来事を説明した。
「わ!ナナとモモ!優斗の家に住むの!!」
これでナナとモモにいつでも会えるね!!と嬉しいそうに笑うララさん。
「でも、二人とも、優斗に迷惑かけたらダメだからね!」
「姉上!あたしは大丈夫だよ!それよりもモモの方が──」
「…ナナ───?」
「っ!?」
モモさんがナナさんを圧で抑え込む。
「優斗、この話は帰ってから美柑としっかり話し合いましょう」
「え?いやでも…」
「わかりましたか?」
「…はい」
ヤミの圧と真紅の瞳に睨まれて俺は負けた、地球に帰った後が怖いな…
「…話していたら見えてきましたね、惑星ミストア」
「これが…惑星ミストア…」
ヤミの言葉を聞いたリトはミストアを見つめる、あの白いのは霧か?植物が育つような惑星には見えないが…
[主!]
「どうしました、ルナティーク」
[進行上のミストアの大気から異常なレベルの磁気のレベルを観測!!たぶん惑星全体をおおっている″霧″の影響だ!!]
ルナティークの声が艦内に響く、やはりあれは霧だったか。
[船体に影響を及ぼす恐れがあるんで、予定軌道を変更して侵入するぜ!!]
「……了解」
ルナティークは軌道を変更してミストアに侵入する。
「優斗、お前その荷物何持ってきたんだよ」
「…別に大したものは入ってない」
地上に降りる前に、ルナティークに乗る前に持ってきた鞄の中身を出しているとリトから声をかけられる。
みんなは先にルナティーク号の出口に行っていたため、周りには俺とリトしかいなかった
「…リト、これ持っておけ」
「ジュースの缶に水鉄砲?何に使うんだこれ」
「…缶は何かあったら線を抜いて投げろ、水鉄砲は敵に向かってトリガーを弾け」
俺はリトにジュースの缶と先端にライター付きの水鉄砲を渡す、本当は春馬さんの時に使う予定だったが仕方ない、それにまだ予備は家にある。
「簡易的な火炎放射器と爆弾だ」
「ば…爆弾!?お前これ───」
「通用するか分からないが、何も無いよりマシだろ?」
水鉄砲の中身は灯油が入っている、トリガーを引くと同時にライターの火が点火するようになっている、発射された灯油で火炎放射になるように。
「…降りるぞ、リト、必ず生き延びろ」
「…優斗」
俺はリトを置いて出口へ向かう、これなら、仮にはぐれたとしても時間は稼げるはず。
「ルナティークはそのまま上空にて待機」
[了解だ、主!]
俺達はルナティークから地上に降りて周りを見る、周りには巨大な樹が生えている、火炎放射器は慎重に使わないとな。
「ここが危険度Sランクって星かー」
「すげーデカい樹がいっぱいだな……」
「………」
周りが霧で見えづらい、それに妙に静かだ。
「ユウト、肩にかけてる水鉄砲は何に使うんだ?それになんでジュースの缶?」
「…護身用だ」
「そんな玩具が護身用?何をするつもりですか?」
「それは───っ!?来るぞ!!」
ナナさんとヤミが聞いてきた瞬間!周りに気配を感じた俺はみんなに叫ぶ。
「何もないぞ?ユウト!」
「いえ、ナナ来るわ!!」
顔を青ざめたモモさんがそう言った瞬間、ララさんの背後にラフレシアの様な花が現れる。
「わっぷ」
[ララ様!!]
「花粉か!?」
ラフレシアの様な花はララさんに花粉を吹きかける、ダメだその場所だとララさんを巻き込む。
「ッ!?リト避けろ!!」
「…え?」
リトの足にツタが迫っていたことに気づいた俺はリトに叫ぶ。
「わ──っ」
「リトさん!?」
「落ちるぞっ!!」
「っ!クソ!!」
リトはツタに投げ飛ばされて下に落ちていく、このままだとあの時と同じように…
───僕を…楽にしてくれ、僕を…この苦痛から…救って欲しい
「絶対に死なせるかよ!!」
「ユウト!私が行く!!」
ツタに投げ飛ばされたリトを助けに行こうと飛び降りようとするとララさんは俺を押しのけて飛び出していく。
「リト!!」
ララさんがリトを掴んでペケから羽が生える。
「うぅ~…」
「お…おい…ララ!?」
様子がおかしい、いつものララさんならそのまま持ち上げて…まさか、さっきの花粉!
「姉上!」
「まさか…さっきの花粉が…」
「っ!トランス───!?」
ヤミがトランスを使って羽を生やそうとしても好き後に消えてしまった。
「霧が…濃くなってきた…!」
「ッ!!」
「ユウト!?ダメだ!お前まで行ったら!!」
俺が飛び降りようとしているのに気づいたナナさんは俺の腕を掴む。
「離してくれ、ナナさん!」
「離さない!絶対にユウトまで行ったら大変なことになるだろ!!」
「だが!」
「姉上を信じるんだろ!!」
───ユウト、私を信じて?
『ユウトー!!大丈夫!リトは絶対に守るから!だからっ!キャ───』
「お姉様───!!」
「リトッ!?」
二人は落ちていった、落ちていった場所を見るが、霧が濃くなって何も見ることができなかった。
「優斗、大丈夫ですか?」
「…リトには簡易的な火炎放射器と爆弾を持たせてある」
「まさか!その水鉄砲とジュースの缶って!」
「不意打ちじゃない限り、大丈夫なはずだ」
「…優斗さん」
信じるしかない、ララさんと自分が作った武器を。
「二人を探しましょう」
「そうですね」
「なら手分けして───」
「ナナさん、それはダメだ、別れずにみんなで探す」
あの時の様にならないように、みんなで…
「…そうしましょう、集団で探した方が、何かあった時に対応がしやすいです」
「ならみんなで下に向かいながら探そう!」
「優斗さん、かなり高いので無理をなさらず…」
「問題ない、これくらい慣れてる」
俺達はリトとララさんを探すため、下に向かって降りていく。
「おーい姉上───」
「お姉様───」
リトとララさんを探し始めてしばらく経つが見つからない。
「だめだ───いない!」
「やはり底まで落ちたのかしら…」
「モモさん、ララさんがかけられた花粉にはどんな効果がある?」
「………」
「話して、モモさん」
モモさんは無言で俺を見る、恐らく俺に気を使っては話さなかった。
「…さっき、お姉様が浴びたのはたぶん″パワダの花″の花粉です」
「パワダの花粉…ね」
「吸い込むと一時的に体力を極度に消耗させる成分を含んでいると聞いたことがあります」
「じゃあ…今の姉上の体力は…」
「たぶん…地球人以下…」
状況は思ったよりもまずいな、リトが一人でどうにか出来る様な場所でもない、それにすぐに助けに行くことも出来なそうだな。
「や…やべーじゃん、早く助けに行かなきゃ!!」
「そう簡単にはいかないようです」
「あぁ、そうだな、みんな構えろ!来るぞ!!」
霧が晴れた場所にはこちらを見て口を開く花らしき何かがこちらを見ていた。
「なっ…なんだコイツら!?」
「私達を食べる気だわ!!」
口を開いた花が一斉にこちらへ向かってくる。
「トランス!!」
ヤミは腕を刃に変えるが一瞬で元に戻ってしまった。
「どうしました、ヤミさん!?」
「トランスがキャンセルされる…どうやらこの霧…私の体内のナノマシンにまで作用するようですね」
まてヤミは今なんて言った?ナノマシンだと?
「危ない!!」
ヤミの背後に口を開いた花が襲いかかるが、裏拳で花を吹き飛ばす。
「トランスが使えないのなら、体術しかないですね」
ヤミは吹き飛んだ花に追い打ちをするように″回し蹴り″をする。
「あの回し蹴り、まさか」
「…見て盗みました」
回し蹴りで吹き飛ばされた花は地面に激突してダウンする、突きやり方は教えたが、いつの間に俺の回し蹴りまで…考え事は後だ。
「くそっ!気持ちワル!!ぞろぞろ来たぜ、モモ!!」
「モモさん、会話はできるか!」
会話ができないなら、戦うしかない。
「やめて、あなた達!!私達には戦っているヒマはないんです!!」
「ギャアー」(金髪ロリっ娘はオレのモンだー!
「ギャハギャハハ」(このツルペタはオレが貰うぜェ!)
モモさんは会話を試みるが、花達は聞く耳を持たなかったようで、俺達に襲いかかる。
「ナナさん!危ない!!」
「…え?ちょっ!?」
ナナさんを掴もうと伸びてきたツタに気づいた俺はナナさんの腕を掴み引き寄せる。
「っ!?ユウト!これ!?」
「今は我慢してくれ!」
ナナさんを抱きしめて後方に下がりながら、水鉄砲のトリガーを引く、発射された灯油に火が付き火炎放射の様に花へと向かった。
「ギャア!ギャア!」(火だ!火だ!)
「ギッギッ!?」(なんで火がデタ!?
花に当たらないように放った火に、花は声を上げて下がっていく。
ヤミさんを捕まえようとしていたニュルニュルしたツタをだしていた花も火を見て下がっていく。
「おい!お前ら!!燃やされたいか、爆撃されたいか、どちらか選べ」
「ギャア!?」(なんだ!この殺気!キモチワリィ!)
俺は周りの植物に殺気を放つ。
「どうした?来いよ!お望み通り来たヤツから炭してやる!!」
「ギィィィィ」(バケモンだ!悪魔だ!)
「ギャァァァァ」(殺される!!殺される!!)
「ガァァァァ」(逃げろ───!!!)
ナナさんを抱きしめながら、空に向かって火を放つと周りにいた花は全員逃げ惑う。
「…逃げたな」
「………」
「…ナナさん、抱きしめてごめん」
「え?なんでユウトが謝んだよ!ユウト助けてくれただけだろ!それにむしろ嬉しかったっていうか…って何言ってんだ!あたしは!」
″うがああああああ″頭を両手で抑えながらナナさんは顔を赤くする。
「優斗、ありがとうございます、ニュルニュルは苦手だったので助かりました」
「それは良かったよ」
あの花のツタはなんでニュルニュルしてたんだ?
「優斗さん、お怪我は───っ!?」
モモさんが話しかけてきた瞬間、下の方で爆発音が聞こえてくる。
「俺が作った爆弾か!」
「っ!行きましょう!!」
話を切り上げ、みんなで下に向かう。
「おい!アレ!!」
「お姉様!!」
爆発した場所へ向かうと、リトが服の下からララさん胸を揉んで抱き合っていた、しかもあの服は、リトの服だよな?
「このケダモノ!姉上とこんな場所でなにしてんだァ!!」
「ち…違う!優斗の爆弾を投げたら思ったより威力があって!」
リトが掴まれた植物に爆弾を投げたら、爆風で飛ばされて、ララさんに受け止めた結果…この状況になったらしい。
爆発した周りを見ると、植物の内側から爆発した様な残骸が残されていた。
「…リト、お前はまさか口に投げ込んだのか?」
「掴まれてたから狙いが定まらなくて…」
なるほど、植物が爆弾を飲み込んで、そのまま爆発したから吹き飛ばされたのか、エグイな。
「ララさんは大丈夫なの?」
「私は大丈夫!あのコがくれたこの実を食べたら急に身体が軽くなったんだ!」
事情を聞くと火炎放射器を捨てて、弱っていた木のような植物をリトがここまで背負ってきたらしい、相変わらず優しいな、お前は。
「そ…それは!!」
リトが助けた植物の実を見たモモさんが声をあげる。
「ラックベリー!!」
「え?じゃあコイツがラックベリーの木!?」
リトが助けたこの植物がラックベリーの木だった。
「キ───!キ───!」
「え!命の恩人だから欲しければいくらでもあげると言っています!」
「「「お───!!」」」
「やった──!」
「ありがとう、ラックベリーさん!」
俺達はラックベリーをわけて貰えることになった。
「お人好しが道を切り開くこともあるんですね…」
「ヤミ…」
「誰かを救うためには、手を差し伸べる優しいさも必要…か」
「優斗、その言葉は?」
俺が一人呟くとヤミとリトがこちらを見てくる。
「フフッ…とあるバカの言葉だよ」
「ッ!?今笑ってっ!」
「!?」
ヤミとリトが驚いたように俺を見る、どうやら輝の言葉を思い出して声に出して笑っていたらしい。
「行こうか、セリーヌが心配だ」
「…わかりました」
セリーヌにラックベリーを渡すために、俺達はルナティーク号に戻った。
「ユウト、助けてありがとな!」
「え?」
「…さっきお礼言えなかったからさ」
ルナティーク号に戻るとナナさんは顔を赤くして俺に言う。
「…かっこよかったぞ」
「…え?」
「なっ!?ナナ、なにを!!」
ナナさんは俺に近づき頬へキスをする、それを見たモモさんはナナさんに近づいてくる。
「モモだって!朝キスしてただろ!」
「あなたは抱きしめてもらってたじゃない!」
ナナさんとモモさんは言い争う、でも俺は二人に好かれるような人間じゃない。
「ナナさん、モモさん、俺はこんな人間だ」
「え?」
「なんだよ、急に?」
「敵になれば花でも動物でも…俺は容赦はしない」
あそこまで殺気を放ち、モモさんが好きな植物を燃やそうとしたんだ、それにナナさんが好きな動物でも敵になれば、俺は同じことをするきっと…
「俺は、優しくない、ナナさんやモモさんに好かれるよな人間じゃない」
…きっと俺を軽蔑する。
「何を言っているんですか、優斗さん?」
「…え?」
「あの時、火が花に当たらないようにわざと外しましたよね?」
″気づいていないと思いましたか?″とモモさんは俺に近づいてくる、まるで全てを見透かしたような目をして。
「それにあんなかっこいい姿を見せられたら、更に好きになっちゃいますよ?」
「何言って───」
「優斗さんを嫌いになるなんてありえませんよ?」
近づいたモモさんは肩をつかみ、背伸びをする。
「チュッ───」
「───っ!?」
キスをされた、朝にされた優しいキスを。
「絶対に嫌いになんてなりませんから…責任取ってくださいね?」
モモさんは小悪魔の様な笑みを浮かべて俺の胸を触る。
「なっ!?モモ!お前!!」
「っ!?優斗!離れてください」
ナナさんとヤミに身体を引き寄せられる。
「なんで、ユウトとキスしてんだよ!私はほっぺだったのに!ズルいぞ!!」
「あなたも充分ずるいですよプリンセスナナ!私は優斗と頬にも唇にもキスをしたことがありません!!」
三人は言い争いを始めた、いやヤミは俺の首にキスマークつけたでしょ?それに風呂にも…
「…リト、助けて」
「無理…」
結局、地球に着くまで、三人は俺を囲んで色々と言い争っていた。
◇
地球に着いて、セリーヌの元へ全力で走っていく。
「セリーヌ!!今戻ったぞ───!!」
「リ…リト、優兄」
「セ…セリーヌ…!?」
「…嘘だろ?」
目の前にあったのはツタは枯れて花弁は黒い球体になったセリーヌだった。
「美柑、何があった」
「優兄、光り始めたと思ったらいきなりこうなったの」
「そんな…遅かったのか…」
リトは地面に膝をつく、俺達は間に合わなかったのか?
ピキ…ピキピキ…
なんだ?この音は───
パリーン!
「まう、まう──────っ!!」
「は?」
黒い球体の中から赤ん坊が出てきて、みんなもポカーンとしている、本当に何がどうなってんだ?これは…
結局その後、モモさんにもセリーヌがどうして赤ん坊になったか分からなかった。
~ナナside~
セリーヌが赤ん坊になってから数時間が経った夜、あたしは今、ユウトの部屋に来ていた。
「ユウト!一緒に寝るぞ!」
「…え?」
ユウトの部屋に入るなりあたしが言うと、パソコンでなにかをしていたユウトが、驚いた顔をしてあたしを見てくる。
「モモが襲ってくるかもだから!あたしが守ってやる!」
ホントはただ一緒に寝たいだけ…なんてことはない!
「…わかった、ちょっと待ってね」
優斗はカタカタとパソコンで何かをしたあとすぐに閉じてしまった、何してたんだろ?
「じゃあ、頼んだよ?ナナさん」
「守ってやるから、任せろ!」
「…色々と後がないんだ」
優斗はブルっと身体を震わせたあと睡眠薬を飲んでベッドに横になる、なんで震えたんだ?セリーヌが赤ん坊になったあと、美柑とヤミから何か言われてたけど、もしかしてそれか?
「じゃあナナさん、おやすみ」
「おやすみ、ユウト」
ユウトは隣で眠りにつく、普段はかっこいいのに、寝顔を見るとなんだか、少しだけ襲いたく───
(何考えてんだ!あたし!それじゃあモモと変わらないだろ!!)
ユウトの隣で寝っ転がった私は寝返りをしながら、悪い思考を振り払う。
(少しだけなら…ガァァァァダメだァ!そんなこと!!)
どうしてもモモみたいにやってみたいって思いが消えない。
(…でも、抱きつくくらいならいいよな?)
今日、助けられて確信した、あたしだってユウトが好きだ!だから腕に抱きついて寝るくらい許されるよな?
「…あったかい」
ユウトの温もりを感じながらあたしは眠りにつく、朝起きた時にモモがすごい目であたしを見ていた。