ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~   作:アイスが食べたいマン

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~告げる真相とぶつかる想いと掴んだ手~

「何してんだァァァァァ!!」

 

少し離れた場所から、ナナさんの叫び声が聞こえてくる。

 

「んぅっ…………んっ」

「──────っ!?」

 

ヤミはそんな事は関係ないというかのように、俺の顔を掴んで、みんなに見せつけるようなキスをしていた。

 

「いい加減にしろォ!!」

「ヤミさん!離れてください!!」

「…ぷはぁ」

 

ナナさんとモモさんが怒りながら、ものすごいスピードで俺達に近づき、俺とヤミを引き離す、目で追えないくらい早かったな。

 

「こんな時になにしてるんですか!?」

「そうだぞ!!クラウンってやつが───」

「クラウンは逃げられたらしいです、それに…こちらも先程決着が着きました」

 

ヤミ達が話している言葉を聞きながら、俺は駿が居た所を見る。

 

「ヤミ、ありがとう、駿を救ってくれて…」

「いえ、これ以上、あなたに背負わせるわけには行きませんから」

「なんでキスを──…優斗?」

「…優斗さん、大丈夫ですか?」

 

本当は俺がやらないといけないはずだった、それを俺はヤミに任せてしまった。

 

「優斗!あんた、今キスして───ってそれより大丈夫なの!?」

「ユウト!ヤミちゃん!ケガは無い!!」

「っ!ヤミさん!頬が!」

 

一部はキスについて言及したそうだったが、戦いで怪我がないか心配したみんなが、俺達に近づいて声をかけてくる。

 

「里紗、ララさん、俺は大丈夫だよ」

「かすり傷なので大丈夫ですよ、美柑」

「美柑こそ、怪我は無いな?」

「私は大丈夫だけど…」

 

俺は美柑を確認する、無理をしている訳でもなく、本当に怪我はないようだった。

 

「優斗、教えてくれ、あいつはなんなんだ?それにさっきのフードの奴は…」

「…話すよ」

 

リトは俺に詰め寄るように話しかける。

 

「月城秋良、特殊部隊の総司令官で俺と冬華教官から″全て″を奪ったクズ野郎だ」

「…え?″全て″?」

「あぁ、″全て″だ」

 

驚いた表情をした紗弥香の言葉に俺は答える、ここから話す内容はかなり重くなる。

 

「月城秋良は、俺が教会に逃げ込んだことを殺し屋に流した」

「…それって」

「…優華さんが俺を守り死ぬ原因を作ったのは、あの男だ」

 

俺が教会に逃げ込んだ事を月城は殺し屋にリークした、だからあの殺し屋は俺を見つけ殺しに来た。

 

「…それだけじゃない」

「え?」

「俺の過去を知らなかった、後輩──晴野駿に俺に関する事を全て教えて、俺の過去を調査するように仕向けた」

 

あいつは、駿に全てを話した、俺に関する事、全てを…

 

「なぜ、月城という男は、君の後輩に調査するよう仕向けたんだ?」

「駿が調査して、家族諸共消されたところを見れば、俺達の戦意喪失すると思って調査させたんです、まあ、結果は俺達の逆鱗に触れただけでしたが…」

 

九条先輩は言葉に俺が答える、月城は駿と駿家族が死ねば、俺達が諦めると踏んだが…駿が命懸けで手に入れた情報を無駄にしないために俺達は諦めなかった。

 

「カレンちゃんの村と、俺と輝がとある救出任務で、最悪な状況なのに応援部隊が来なかったのも、全部月城が仕組んだことだった…」

「「「なっ!?」」」

「あの人は、総司令官なのよね?なんで助けを出さなかったの!?」

古手川さんが俺を見て声をあげる、総司令官と聞けば、普通は任務成功のため、的確な指示を出して多くの人を救う判断をする。

 

だが奴は違う、奴の狙いは…

 

「カレンちゃんの村は助ける利益がないと別の任務で捕まった権力者の息子を救うほうを優先して切り捨てた」

 

カレンちゃんの村に別部隊が来なかったのは自身の功績のため、そして俺と輝に応援部隊を出さなかった理由は…

 

「…計画に気づきかけていた、俺と輝は邪魔だったんだ、だから…殺すために応援部隊を送らなかった」

「…そんな」

「なんで、そんな奴が総司令官なんてやってんだよ!!」

 

怒りに震えながらリトが、拳を握りしめて叫ぶ。

 

「国の上層部が──桐生夏樹が月城を必要としていたからだ」

「桐生夏樹…さっきクラウンが言っていた夏樹くんって人の事かしら?」

「そうです、そして桐生夏樹は俺の実の父親です」

「…!だから桐生夏海が腹違いの妹って…」

 

御門先生の質問に答えると、御門先生の表情が変わった、唇を噛み締め悲しそうな顔だ。

 

「どうして腹違いの妹さんに殺されたの?」

「駿の恋人が桐生夏海だったんです、駿が死んだのは俺のせい、桐生夏樹と月城に騙された彼女は俺を憎んだ」

「そう…だから………なんで…貴方ばかりこんな目に」

 

御門先生は俺に好意を抱いてくれている、だから、そんなに悲しそうな顔をするんだろうな。

 

「…武器人間を作る研究ってなんなんだよ、なんで死体を使った実験が許されるんだよ!!」

 

リトの言うことはごもっともだ、何故そんなことができたのか、それは…

 

「桐生夏樹は次の総理大臣になると言われていたほど、権力も功績もあった、ほかの議員や国を巻き込んで国家機密として扱って国民には、バレないように研究を進めることができたんだ」

「死体はどうやって集めるの?そんなことすれば警察が気づくはず」

 

俺の言葉を聞いて、紗弥香は聞いてくる、死体に関してはとても簡単に集められる、それこそ月城を利用すれば…

 

「月城を使えば、幾らでも手に入る」

「え?」

「月城は特殊部隊の総司令、部下を無理な任務で死亡させて、死体は適当な理由をつけて回収不可能として遺族に伝える、そうすれば幾らでも手に入る」

「そんなことしたらいつかバレるだろ!!」

 

ありえない、そんな顔をしてナナさんが俺に言う、いや基本はバレない。

 

「バレないよ」

「なんで!!」

「そのための特殊部隊の総司令だ、特殊部隊に所属していて、危険な任務に行った、と告げれば疑われない」

「ッ!!?」

 

普通の部隊とは違う特殊部隊だからこそ、それが出来る。

 

「それに…仮に警察にバレても、権力で揉み消せばいい」

「………」

 

俺の話を聞いたみんなは唖然としている。

 

「あいつらは、実験を繰り返して死体で上手くいかなかった事に気づいて、ついに生きた人間に手を出した」

「…ウソでしょ?」

「最初は孤児の子供を使ったらしい、身寄りがなければ、誤魔化すことは簡単だ」

 

真っ青な顔をした里紗が、なんとか言葉を口にする、その表情はありえないといった顔をしてる。

 

死体を使って実験するってことすら普通はありえないことだ、それなのに生きた人間まであいつらは道具として使った。

 

「…子供の身体には不可能だと感じて次は丈夫で鍛えた身体を持った人間、生きている自衛官を狙ったらしい」

「…またクラウンの出番というわけですか」

 

ヤミは気づいたらしい、月城の役割に…

 

「ここからは推測だが、自衛官も死体回収に使った理由のように、遺族に説明すれば疑われない、それに任務に行って戦死したといえば仲間も疑わない」

 

───自衛隊やスポーツ選手の様な肉体を鍛えた人間でも実験したが、今の人間にはナノマシンに適合することができなかった

 

桐生夏樹の言葉からの推測だが、生きていた自衛官に関しては、さっき俺が言ったように月城が全て関わったんだと思う。

だから桐生夏樹にとって月城は計画に必要不可欠な存在だった。

 

「クズすぎるだろ!!」

「国を守る部隊を実験台として利用していたなんて、有り得ませんわ!」

「特殊部隊、その奴に支配していたのかよ!!」

「いや、支配まではできてなかった、特殊部隊には、月城にも扱えきれない奴らが居たからな」

 

あの月城でもどうにかできない人間がいたからな。

 

「月城が扱えなかったのは、冬華教官の支配下だった部隊と俺と輝だ」

「冬華教官って!とらぶるクエストにいた強い人だ!!」

「そうだよ、ララさん」

「優斗、扱いきれなかったって、どーゆーことだよ」

 

冬華教官はどう足掻いても月城じゃ無理だ。

 

「冬華教官は強すぎた、どんな任務に送っても五体満足で帰ってきてた挙句、国家反逆で月城以外の上層部は壊滅し、国家機密だった武器人間の研究データまで盗み出した」

「…へ?」

「しかも単独でな」

 

今思えば、あの人やっぱおかしいと思う、上層部っていっても元は戦場で戦っていた自衛官。それを無傷で皆殺した、挙句の果てには…

 

───私を作った奴にあの娘を渡したら、危険だと判断した、それだけだ

 

───自分を作った奴にって、刃向かうって本当にプログラムなんだよな?

 

───奴は私を再現しすぎたのさ、今の私は生前の戦国冬華とほぼ変わりないだろうな

 

プログラムになった冬華教官は月城の目的に気づいてヤミを殺そうとしていたのだから、普通にヤバい。

 

「優兄と輝さんは?」

「…自分で言うのもなんだが、俺や輝も特殊部隊では、冬華教官を除けば一、二位争うくらい強かったからな」

「優兄ってそんな強かったんだ、でも…なんか納得」

 

月城にとっては計画も気づきかけてた挙句、中々処理する事ができない、厄介な奴って認定されてたかもな。

 

だからこそ納得出来なかったのは、あの任務で別行動になった輝が致命傷を負ったことだ、幾ら応援部隊が来なかったとはいえ、俺と同じぐらい強かった輝が、簡単に致命傷を負うとは考えられなかった。

 

(いや、今こんなことを考えても仕方がないか)

 

「一から作ることにしたっていうのは?」

「…遺伝子情報と戦闘データで一から人間を作ったんだと思うが…それに関しては分からない」

 

月城は完成させてしまった、一から人間を作り上げて、ナノマシンも適合したのがおそらく″ヤミ″だ。

 

「…優斗、まだ隠してることがあんだろ」

「………」

「時雨桜って誰だよ」

 

拳を握りしめたリトは、俺に詰め寄ってくる。

月城が余計な事を言ってくれたおかげで、話さないといけなくなったな、正直リト達には話したくなかったが…

 

「…時雨桜は、春馬さんの実の兄だ」

「えっと?春馬っていうのは誰?」

 

俺の家庭の事情を知らない、里紗は俺に聞いてくる、これに関しては、知らない人の方が多いから説明する必要がある。

 

「時雨春馬は俺の義理の父親だ、俺は5歳の時に春馬さんに引き取られた」

「ユウトのお父さんか…多分、優しい人じゃないんだよね?」

「ララ、優斗の親父は優斗を政略結婚て利用するために引き取ったんだ!」

「…え?」

 

みんながリトの言葉を聞いた途端、事情を知らないララさん達の視線が俺に向いた。

 

「優斗の親父は、優斗の事なんて一切考えてねぇ!海外に行ったきり一度だって優斗に会いに来たことがないんだよ!!」

「…そんな」

「前に優兄が大怪我を負って時、″生きているなら、どうでもいい、そんな事で電話をかけてくるな″って言ってお父さんは電話を切られてた」

 

デビルーク王と戦って怪我を負った時、栽培さんが春馬さんに電話をした時の事、美柑は未だに覚えていたのか…

 

「リトが言った通り、春馬さんが俺を引き取った理由は…政略結婚のためだ、結婚相手は有名な政治家のお嬢様…俺とそのお嬢様を婚約させる事で政治家になる、それが春馬さんの表の目的だ…」

 

俺はリトや美柑に話したように春馬さんについて話すと、事情を知らなかったララ達は唖然としていた。

 

「…そして時雨桜は俺の本当の父親だ、11年前に死んでるけどな」

「死んでるってなんで…」

「11年前にとある事件があった…」

「御門先生?」

 

御門先生はこの事件を知っている、どうやって知ってたかは知らないが…

 

「死亡したのはホストクラブで働いていた男性、犯人の女性は男性を殺した後、自分の子供も殺そうとした所を警察が突入して、現行犯逮捕に至った、殺されそうになった子供は無事に保護されて、孤児院に預けられた」

 

周りは無言で御門先生の話を聞く、沙姫さんと九条先輩はこの話を知っている事もあって、下を向いてる。

 

「殺された男性の名前は時雨桜、そして、孤児院に預けられた子供が優斗くんよ」

「…事件の後、春馬さんは俺が兄の息子だと知って引き取った、政略結婚に利用するためにな」

 

全てを話が終わる…隠していた全てが…

 

「…優斗、なぜ、黙っていたのですか?」

「…話せないでしょ、前世の話だって俺にとっては普通でも…君たちにとっては重い話だったし、これ以上…みんなに背負わせたくない」

 

辛そうな顔をしたヤミの真紅の瞳を、見て俺が答える。

それに話せば、みんなは俺を助けようと動くはずだから…

 

「月城も春馬さんの件に関わってた、だからこの件は俺が何とかする、だからみんなは心配しないで──────」

「…待ってろって?」

 

拳を握りしめ、リトは俺を睨みつける。

 

「あぁ、そうだ、待って──」

「ふざけんなっ!」

 

鬼の形相をしたリトが俺の胸ぐらを掴んで叫ぶ。

こうなるから話したくなかった…前に春馬さんの事を話した時だって、リトはあまり納得していなかった。

 

「オレもついて行く!オレはもう優斗が戦ってんのに指をくわえて見てるだけなんてごめんだ!!」

「ダメだ、危険すぎる」

 

リトは何も分かってない、権力の恐ろしさを、友情や優しさだけでどうにかなる問題じゃない。

 

「リト、お前は何も分かってない、権力の恐ろしさも、仲間が目の前で死ぬ辛さも、友情だけでどうにかなるような───」

「何も分かってないのはお前だ!優斗!!」

 

胸ぐらを掴んでいたリトが再び叫ぶ。

 

「オレ達が一人で戦う優斗を見て、どんな思いをしてるのか!!お前はわかってんのかよ!!!」

「………」

「オレ達をもっと頼れよ!一人で背負って戦うなよ!!」

 

これは時雨の───俺の問題だ、それに俺はもう十分みんなを頼っている。

 

「頼ってる、リト達にはたくさん頼って───」

「頼ってねぇ!オレ達は優斗に守られてるだけだ!」

「巻き込んだのは俺だ、守るのは当然の事なんだよ」

 

俺はリトの手を掴み、胸ぐらから手を離させる。

守ることは当然の事だ、今回もとらぶるクエストも俺が巻き込んだ事なんだから。

 

「ララの婚約者になった時、オレが優斗を巻き込んだのに、優斗はオレを何度も助けてくれただろ」

「………」

「ザスティンが斬りかかってきた時も!ヤミが地球に初めて来た時も優斗はいつもオレを守って逃がしてくれただろ!!」

 

あれは…お前が死ぬ所を見たくなかった、リトには、笑っていて欲しかったから助けたんだ。

 

「ララの親父が来た時だって!オレを助けようと優斗はララの親父を死ぬ気で止めて大怪我したんだ!!」

「それは───」

「だから!今度はオレの番だ!オレが優斗を助ける!!」

 

───僕は優斗を助けたい

 

「…やめろ……なんで…そこまで…」

「決まってんだろ!親友だからだ!!」

 

───決まってるだろ、親友だからだ

 

「だから!お前が背負ってる物!!オレにも半分背負わせろ!!!」

 

───君が背負っている物を僕にも半分背負わせてもらうよ

 

リトの姿が輝に重なった。

違うと頭でわかっているのに、目の前にいるリトがまるで輝に見えてしまった

 

「それでも分からねぇなら!優斗を殴ってでも分からせる!!」

「やれるものならやってみろ、俺の考えを変えれるものなら変えてみろ!!リト!!!」

 

リトの言葉を聞いた瞬間、輝に言うように無意識に俺は叫んでしまう。

そして叫んだ瞬間、リトは俺に向かって殴りかかってくる。

 

「ッ!?」

「そんなものか、リト!この程度の力で俺を助けたいだと!?半分背負わせろだと!!本気でできると思ってるのか!!」

 

リトの拳を受け止めて、海へと投げ飛ばす、リトは水しぶきを上げながら、海へダイブする。

 

「…誰かを救うためには、手を差し伸べる優しさも必要って虹崎輝が言ったんだろ!」

「…ッ!?」

 

───戦う力だけじゃ救えない命がある、それに力に囚われていたら、いつか必ず限界が来る

 

…やめろ

 

───誰かを救うためには、手を差し伸べる優しいさも必要なんだ

 

リトの言葉を聞く度に思い出す、輝が俺に言った言葉を…俺が半分背負わせてしまったから、あいつは致命傷を負った、俺が殺してしまった。

 

「それに、ララ達だっている!みんなでやれば背負えば、少しは楽になる!!」

 

───1人より、二人で背負えば少しは楽になるはずだ、それに僕は簡単に死なないよ

 

「やめろ!!」

 

海から走ってきたリトが掴み掛ってくる、俺を掴んだリトの目は真っ直ぐで…その目を見て思わず抵抗してしまい、俺も一緒に海へと倒れ込む。

 

「あきらめねぇ!オレは優斗を諦めない!!」

 

リトは立ち上がり、再び殴りかかってくる。

 

「お前を助けるまで!背負わせるまで!絶対にあきらめねぇ!!」

 

リトの目を見た時、俺は思い出してしまった。

 

「アァァァァァァァっ!!」

 

───僕を…楽にしてくれ、僕を…この苦痛から…救って欲しい

 

また俺のせいでリトが致命傷を負ってしまったら?

 

───君と…出会えて…良かった、君と過ごした…日々は…最高の思い出だよ…

 

あの時、輝は続けた、苦痛に苛まれてもその言葉を伝えようと笑顔で…最後の言葉を伝えるために…

もしリトがそうなったら?

 

───ありがとう

 

「やめろォォォォっ!!」

「がっ!?」

 

殴りかかってきたリトの拳を躱して、殴ってしまった。

 

「結城くん!!」

「リトっ!!」

 

少し離れた所から殴られたリトを見た、西蓮寺さんとララさんの声が聞こえた。

 

「リト、お前にわかるか!大切な人が目の前で辛さが!後悔が!!絶望が!!!」

 

倒れたリトの胸ぐらを掴む、殴られたリトは唇を切ったようで血が出ていた。

 

「わかるか!姉の様な大切な人が、俺を庇って死んだ時の俺の気持ちが!!」

 

───優…斗、たく…さんの人を、すくってあ…げて?そして、その人よりしあわせに…なっ…て…ね…

 

「俺に憧れてくれた後輩が、俺のせいで死んだ時の後悔が!!」

 

───この1年間…楽しかったっす…先輩達と…一緒に生活出来て…最後くらい…カッコつけさせてくださいよ…

 

「俺に戦いの全てを教えてくれた師を、この手で殺さないといけなかった辛さが!!」

 

───お前は自分の信じた道を行け…その道が間違いだったとしても、私と優華はお前を愛してる

 

「致命傷を負った親友を殺さないと行けなかった時の絶望が!!」

 

───君と…出会えて…良かった、君と過ごした…日々は…最高の思い出だよ…

 

「リト、お前には、一生分からない!!家族が、大切な人が笑って生きているお前には!」

「確かにわからねーよ!でもな、優斗だって分かってねーよ!!オレの気持ちを!!」

 

胸ぐらを掴んでいた俺の手を振りほどき、リトは立ち上がる。

 

「一番の親友が過去に潰されて、心の底から笑ってくれない、痛みを!!」

「っ!!」

 

叫びながらリトが右拳で殴ってくるが、俺はその拳を躱す。

 

「親友がオレを守るために命懸けで戦ってるのを、指をくわえて見ることしか出来なかった時の辛さを!!」

 

躱されても諦めず、リトは左拳で殴りかかってくるが、俺はその拳を躱した。

 

「一度、目の前で死んじまった、親友を救えなかった時の後悔を!!」

 

リトは俺に向かって叫ぶ、躱されると届かないとわかっている拳を何度も振りかざしながら。

 

「だから!親友にずっと笑ってて欲しいんだ!!」

「っ!!」

 

───ずっと…笑って…生きてください…

 

───私は優斗に生きて欲しかった、笑っていて欲しかった…本当はそれだけで良かった…

 

リトの拳を受け止めた瞬間、頭に声が響き渡る、生きて欲しいと、笑って欲しいと願ってくれた人の声が…

 

『このままリトくんを殴るのかい、優斗?』

 

リトを殴ろうとした瞬間、俺の後ろから声が聞こえた。

 

『優斗がリトくんに勝ってしまえば、君はまた一人になってしまうよ?』

 

顔を殴る直前で拳を止めて、足を引っ掛けてリトを海へと倒す。

 

「いつかお前も現れると思ってたよ、輝」

 

後ろを振り向くと、そこには幻覚の虹崎輝が立っていた。

 

 

~美柑side~

 

 

優兄が叫びながらリトを殴った、殴られたリトを見た、西蓮寺さんとララさんは思わずリトの名前を叫んだ。

 

「リト!ユウト!ケンカはダメだよ!!」

「見守ろう、ララさん」

「でも…」

 

私の言葉を聞いたララさんは、今にも泣きそうな顔をしていた。

私も優兄とリトが喧嘩をしている所なんて見たくない…でも優兄の本音を聞くチャンスは今しかない。

 

「心配なのはわかるよ、でもぶつからなきゃ伝わらないこともあるって優兄が前に言ってた」

「…美柑ちゃん」

「それにね、優兄とリトが喧嘩してる所なんて今までなかったんだ…」

 

優兄とリトがお互いの気持ちを叫びながら、殴り合う、っといってもリトの拳は優兄はまったく届いていない。

優兄とリトは喧嘩をしたことがなかった、そもそも、優兄が怒ることがなかった。

 

「ッ!結城くん!避けて!!」

 

リトの拳を受け止めた優兄がそのまま殴りかかる、このままだとリトは絶対に避けられない。

 

「え?」

「…殴るのをやめた?」

 

優兄の拳がリトを殴る寸前で止まった、優兄は少し固まったあと、リトを海へ倒して後ろを向く。

 

「いつかお前も現れると思ったよ、輝」

 

誰もいないところに向けて優兄は話し始める。

 

「え?ユウトは何言ってんだ?そこには誰もいないぞ?」

「…お前も?」

 

ナナさんとモモさんが優兄を見て言った、そこには誰もいないはずなのに…誰に話しかけてるの、優兄?

 

「…幻覚まで見えていたのね、時雨くん」

「…え?」

 

幻覚ってどうゆう事?優兄が見てるのは悪夢だけじゃ…

 

「PTSD、心的外傷後ストレス障害、トラウマを経験をすることによって発症するわ、元傭兵だった、時雨くんにはその疑いがあったわ」

「…それって」

「当時の記憶が突然フラッシュバックしたり、悪夢を見たり、原因となったトラウマ体験に関する状況や物事を避けようとする」

「そんな状態なのに、優斗さんは一人で戦っていたのですね」

 

御門先生の言葉を聞いたモモさんが悲し顔をして言った。

優兄はたくさんの人を助けるために、ずっと一人で戦ってきたんだ、それなのに…

 

───優斗くん…君は腹違いの妹──桐生夏海に殺されたじゃないかぁ~

 

───駿の恋人が桐生夏海だったんです、駿が死んだのは俺のせい、桐生夏樹と月城に騙された彼女は俺を憎んだ

 

優兄は幸せになることすらなく、殺されたんだ。

 

「…酷すぎるよ、そんなの…」

 

私の小さな呟きは波の音と、優兄とリトの喧嘩によってかき消された。

 

 

~優斗side~

 

 

「なんで今なんだよ…なんで今出てくる」

『このままだと、優斗が後悔するから…かな?』

 

幻覚の輝へ問いかけると、前世の輝みたいに笑って答えた。

…昔の様にまるで幻覚なのが嘘みたいに…

 

『リトくん達を信じて、半分背負ってもらわないかい?』

「…忘れたのか?お前はそれで致命傷を負った!今でもおまえを撃った感触が手に残ってるんだよ!!!」

 

俺が輝へ叫ぶ、俺のせいで死んでしまった輝を…目を閉じれば、あの時の光景が蘇る。

 

『…ごめん、優斗』

「なんでお前が謝る!」

『君を一人にしてしまって、余計に背負わせてしまって…』

 

輝の謝罪を聞いて俺は固まってしまった、なんでお前が謝るんだよ、輝…

戦闘中だったはずなのに固まってしまったのがいけなかった。

 

「優斗っ!!」

「ッ!?」

 

名前を呼ばれた方を見ると、立ち上がっていたリトが俺に向かって殴りかかってくる。

幻覚の輝に気を取られて気づかなかった、いや…まさかこれが狙いだったのか、輝。

 

「間に合わな───ッ!?」

「うおォォォォォォっ!!」

 

リトは雄叫びを上げ、振りかざした一撃は俺の頬へとあたり、リトは俺を力任せに殴り飛ばす、殴り飛ばされた俺は海に倒れ込んだ。

 

「………っ」

『…差し伸べられた手を掴むんだ、優斗』

「うるさい!」

 

俺は立ち上がってリトを見る、その隣には幻覚の輝がいて…俺を惑わせてくる。

 

「優斗ォォォォォォッ!!」

「あぁぁあぁぁぁぁっ!!」

 

輝の言葉を無視して、畳み掛けるように攻撃してきたリトにカウンターを食らわせる。

まともにカウンターを食らった、これでリトはもう立てない、終わったんだ…

 

「この世界は優しい奴から先に死んでいく、誰かを助けようとして…優しさなんて、なんの意味もないだから───っ!?」

 

諦めろと言う前にありえない光景が目に映る、リトが立ち上がった…まともにカウンターを食らったはずなのに…気絶してもおかしくない一撃だったのに

 

「まだ…終わってねーぞ!!優斗ッ!!!」

「なんで…立ち上がれる…」

 

リトはフラついた動きで俺に少しずつ近づいてくる。

 

「もうやめろ、それ以上は…お前が!!」

「オレは諦めねぇ、絶対に諦めねぇぞ!!優斗!!」

 

歩みを止めず、リトは叫ぶ。

限界なはずなのに…立ち上がるのも辛いはずなのに…なんで…

 

「生きて欲しいんだ!!俺は死んで欲しくないんだよ!!リト達に!だから引き離してんのに…」

 

ゆっくりと俺に近づいてくるリトに叫ぶ。

 

「なんでみんな、助けようって近づいてくる!!死ぬかもしれないのになんで!!」

「決まってんだろ!みんな、優斗が大切なんだよ!!優斗が好きなんだよっ!!」

 

俺とリトは粒濡れになりながら叫び合う。

叫び終わったリトは俺に向かって、走り出す。

 

「優斗ォォォ──────ッ!!!」

 

俺に向かってくる拳、胴体はがら空きで隙しかない、カウンターを入れてくださいと言っているような一撃だった。

 

『優斗だってわかっているだろ?リトくんは諦めない』

「…ッ!」

『優斗が幸せになるまで、みんな諦めない』

 

カウンターをするために構えると輝の声が聞こえた。

そんなこと、お前に言われなくてもわかってる。

 

『君が笑うために…優斗が救われるために…リトくんたちの手を繋めッ!!』

「…しつこい奴だな、お前も…」

 

声を聞いて構えるのをやめた、リトを見るとリトの拳は俺の顔の寸前まで迫っている。

 

(この世界にも居たのを忘れてた、バカ正直に誰かを救おうとするお人好しが)

 

「──────っ」

 

リトの渾身の一撃は、俺の頬へとあたり殴り飛ばされる、俺は水しぶきを上げ海へ倒れた。

 

「オレは───」

「…降参だ」

「え?」

「俺の負けだ、リト」

 

晴れきった夜空の星を見てリトに言う。

 

「ハハッ…ハハハハッ」

 

負けたのに俺は笑ってしまった、こんな清々しい気持ちはいつぶりだ?

 

「勝ち負けとかそうゆう問題じゃ───」

「二週間後、タイムレインズカンパニーで結婚式が行われる…」

「……は?」

「その日、タイムレインズカンパニーは休業日だ、いるのは時雨の関係者と結婚相手だけ」

 

月城も関わっているから、話すつもりはなかった、でも…

 

「俺が中で爆弾と火炎放射器を使い、警報を鳴らす、非難騒動に紛れて、沙姫さんのお父さん──天条院劉我さんがヘリコプターで屋上へ侵入して、春馬さんがいる社長室へ向かう、そういうプランだった」

 

プラン内容を話す、みんなはきっと驚いた顔をしているんだろうな。

 

「か…火炎放射器と爆弾ですって!?」

「…あの火炎放射器と爆弾はそういうことでしたか」

 

古手川さんとヤミの声が聞こえる、古手川さんにはあとでどう作ったのかとか、色々と聞かれそうだな。

 

「普通にタイムレインズに行っても、劉我さんは入れないからな、やるならこうするしかない」

「天条院先輩のお父さんを優斗の親父に会わせてどうするつもりだよ」

「…今調べている事が分かれば、春馬さんを止められるかもしれない、まあ調べている事が、間に合えばだけどな」

 

リトの質問に答える、春馬さんを止めるには、これしかない。

 

「…もし間に合わなかったら、どうするつもりなの、優斗くん」

「………」

 

痛いところを紗弥香につかれてしまった、もし間に合わなければ、俺が春馬さんを力でねじ伏せるしかなかった。

 

「沙姫様ならいいが、わけのわからない女に君を渡すつもりはないぞ?」

「…凛?あなたもしかして…」

 

倒れている俺からは表情は見えないが、九条先輩の怒った声が聞こえる。

 

「…あんたが知らない女に全て捧げようものなら、今すぐ襲うけど?」

「里紗、冗談きついよ?」

「冗談だと思うわけ?」

 

冗談じゃないな、この声は本気だ。

 

「ユウト!私達も手伝うから!無茶は───」

「助けてくれ…」

「…え?」

 

俺はララさんの言葉を遮る。

 

「俺はみんなと居たい、この日常を手放したくない…だから、俺を助けて欲しいんだ」

「最初からそう言えよ、優斗」

 

リトは倒れた俺に手を差し伸べてくる。

 

「フフッ…そうだな、最初からこう言えば良かったのかもな」

 

俺は差し伸べられた手を掴み立ち上がった。

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