ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~   作:アイスが食べたいマン

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~作戦会議と南雲の脅威~

「え?ユウトが連れて行かれちゃった?」

[ユウト殿の結婚式にはまだ時間があったはずでは?]

「それが──────」

 

ユウトが連れて行かれてから数時間後、みんなでオレの家に向かい、家にいたララに優斗が連れていかれたことを説明した。

なんで結婚式の予定が早まったんだよ!?

 

「結婚式予定が早まった───っ!?どうして!?」

「ここに来る途中でお父様に確認しましたわ、そうしましたら、天条院家が探っているのがバレたみたいですの」

「ッ!?だから優斗の親父さんは予定を早めたのか!」

 

天条院先輩の親父さんが探っていたのがバレたらしい、けど…なんでバレたんだ?

 

「…普通なら天条院家が探っていることは、バレなかったはずだ」

「…バレてしまった理由には、クラウンが関わっているかも知れません」

「クラウンは天条院さんの別荘に居ましたから、可能性はあります」

 

ありえないと言った表情をした九条先輩の言葉にヤミとモモが答える。

クラウンが天条院先輩の親父さんと優斗が繋がっている可能性を考えて根回ししたのか?

 

「…クラウン?」

「キョーコには話してなかったよね、後でしっかり話すから…」

「…わかった」

 

キョーコちゃんへの説明は後だ、今は連れていかれた優斗をどうやって助けるか。

 

「元の作戦だと、結婚式の前に乗り込んで、優兄のお義父さんを止めるはずだったけど…」

「…明後日が結婚式となると厳しいわね」

 

みんなで優斗の親父さんの本当の目的を知ってから、結婚式を止めに行くはずだったのにこれじゃあ…

 

「力技しかありませんね、今からでも優斗を───」

「ちょっ!?ヤミ落ち着けって!!」

「…優斗が取られるくらいならそれしかないっしょ?」

 

ヤミと籾岡がすっげー怖い、ヤミに関しては今にも殺しに行きそうな雰囲気出してるし…このままだと全員で強行突破になっちまう。

 

「みんな落ち着いて!まだ優斗パパのこと、何も分かってないんだよ?この写真の女の人のことだって…そんな状況で優斗パパの所に行っても意味がないよ!!」

「お姉様、そんな事を言ってる時間はないんですよ!!このままだと優斗さんが…」

「それに…その写真の人だって姉上や先輩が調べても、名前すらわかってないんだろ?」

 

ララの静止にモモとナナは言い返す、確かに時間はないけど、こんな状態で助けに行っても…きっと失敗する。

 

「ただいまー!仕事が早く終わったぜ…ってなんだ?今日はやけに人がいるなァ?」

「オヤジ!?」

「なんか女性が多いいけど、リト…おめぇやるな?」

 

みんながピリピリとした空気の中、帰ってきたオヤジが何か勘違いしながら、リビングに入ってくる。

どちらかというとオレじゃない、多分ここにいるほとんどは、優斗の事が好きなんだ。

 

「ちげーよっ!オヤジ!てかそんなこと言ってる場合じゃねえんだよ!」

「なんだよ、そんな大声で叫ばなくても───」

「優斗が連れていかれたんだよ!」

「…は?連れていかれたってまさか、春馬か!?」

 

オレの言葉を聞いた瞬間、オヤジは驚いた顔をして″あいつ!こんな早くに決行したのか!″と呟いた。

オヤジ、もしかして優斗の婚約の話を知ってるのか?

 

「お父さん、もしかして知ってたの?」

「…前に春馬を問い詰めて聞き出した」

「なら…なんでもっと早く教えてくれなかったの!!」

「優斗に言うなって言われてたんだよ、リトや美柑を巻き込みたくねーからってな」

 

オヤジは優斗から聞く前から知っていたらしい、優斗に婚約者がいた事を…その為に引き取ったことも…

オヤジもきっと優斗を助けようとしたけど、きっと優斗は一人でやろうとしてオヤジの助けを拒んだんだ。

 

「…時雨桜の息子という話も知ってのかよ、親父」

「まて…何の話だ、そんな話知らねーぞ?」

「え?」

「あのイカれた兄貴の息子が優斗だと、本気で言ってんのか?

 

イカれた兄貴ってどーゆー意味だ?時雨桜ってそんなにヤバい奴なのか?

オレがオヤジに時雨桜について聞こうとした時、オヤジは近くにいたララが持っていた一枚の写真に気づ聞いて声を上げた。

 

「ッ!?その写真っ!なんでお前らが持ってんだっ!?」

「…お父さん、この人の事を知ってるの?」

「…知ってるも何も…こいつは春馬の彼女だ」

「じゃあ、この隣で笑ってる男の人は?」

「これが春馬だ」

 

オヤジの言葉を聞いたオレは驚いて思わず″は?″と言ってしまった、ララ以外の周りにいたみんなも驚いている。

写真に写ってる女性が彼女で優しそうな笑顔をしてるのが優斗の親父さん!?…こんな優しい顔するのか、優斗の親父さん。

 

「リトパパ!この人が優斗パパを止められるかもしれないの!だから───」

「…そりゃ無理だ、楓は18年前に死んじまったからな」

「…は?」

 

この場にいた全員がオヤジの言った言葉に驚いた。

優斗の親父さんの彼女は18年前に死んだ?

 

「南雲楓(なぐもかえで)、オレ達の二個下だったんだ、楓の兄貴が同級生でな?オレと春馬とそいつの三人でよく遊んでた」

 

南雲って確か、優斗を連れて行ったヤツも苗字だったよな、確かオヤジのことも知っていた。

オヤジの話を聞いて優斗を連れていったオカマを思い出す。

 

「オヤジその同級生って、もしかして南雲瑠偉ってヤツじゃねーか?」

「リト、おめーなんで知ってんだ?」

「そいつが優斗を連れていったんだ」

「…瑠偉の野郎、帰ってきてたのか」

 

オヤジは南雲瑠偉と同級生だったのか、でもだったらなんで…友達だったオヤジやオレを潰すなんて言ったんだ?

 

「…寄りによって瑠偉が春馬に側についたか、厄介な事になりやがったな」

「そんなに厄介なのか?」

「瑠偉は…軍人だ、武力だけならあのオカマは、今の春馬にとちゃあ最強の矛になっちまう…」

「…軍人」

 

なんであの時、優斗がキョーコちゃんを止めたのか分からなかった、優斗は気づいたんだ、少し話しただけでコイツは危険だと。

 

「春馬は昔はあんなんじゃなかった、困ってる人がいれば、手を伸ばして助けるような奴だった…なのに楓が死んじまってからは人が変わっちまった」

「…楓さんが死んでしまった理由はわかるのですか?」

「…殺されたんだ」

「え?」

 

そう言ったオヤジの顔は曇ってしまった、まるで何かを後悔しているように…

 

「18年前、5日間行方不明になっていた、山で楓の惨殺死体が発見された」

「犯人は捕まったのか?」

「いや…捕まってねぇ、それどころか警察の捜査はすぐに打ち切られたんだ」

「え、なんで!?」

 

5日間行方不明だった人が死体で発見されて、すぐに警察が操作を打ち切るなんて有り得るのか?普通、殺人事件だったらちゃんと捜査されるはずだろ。

周りのみんなもオレと同じことを考えていたのか、オヤジの言葉を聞いたみんなは驚愕していた。

 

「理由は分からねぇ、でも当時の春馬は何かに気づいてやがった、聞いても教えちゃくれなかったが…」

「…調べて見ますわ」

「天条院先輩、もう時間が…」

「これだけ手がかりがありますもの、お父様に連絡して、天条院家の力を使えばすぐに調べられますわ」

「…まだ一日猶予はある、私も調べてみるわ」

 

残された時間は少ないが天条院先輩と御門先生は、南雲楓さんが死んでしまった18年前の事件を調べる事になった。

御門先生と天条院家の力なら、事件の事が分かるかもしれない。

 

「お父さん、優兄の結婚相手の事を教えて?」

「待て、おめーらまさか行くつもりか!?危険だ!ここはオレが…」

「止めても行くよ…それに優兄を説得することすらできなかったお父さんに何ができるの?」

「うぐっ…優斗の事になると言葉強くねーか?美柑」

 

…オヤジの言った通り、美柑は優斗の事になると少し怖い。

美柑の言葉がオヤジに刺さったらしく、片膝を着いてダメージを追う。すぐに立ち上がりオレと美柑を見て真剣な顔になった。

 

「…でもダメだ、絶対に行かせねェ…」

「なんでだよ!オヤジ!!」

「今の春馬は危険すぎる!それに瑠偉まで戻ってきやがった、下手に動けば死ぬ…もしくは権力で潰されてオレら全員が路頭に迷うかだ…親としてそんな危険な場所に子供は行かせらんねェ」

「…オヤジ」

「…お父さん」

 

オヤジの目はいつになく真剣だった今まで〆切に追い詰められたオヤジでもこんな顔をしたことがない。

 

「…それにな、オレにとって春馬は親友なんだ…オレがおかしくなっちまった春馬を止めねーといけねェ」

「なら!リトパパも一緒に行けばいいよ!!」

 

話を聞いていたララがオヤジに提案するとオヤジは口を閉じて少し悩んだ後、再び口を開いた。

 

「でもなァ!もし失敗って権力でリトと美柑に何かあった時、オレは林檎に顔向けが───」

「…それなら大丈夫ですわ、結城家は天条院家が責任をもって守ると優斗と約束しましたから」

「…は?」

 

優斗と約束したってどうゆう事だ?アイツ、いつの間に天条院先輩とそんな約束をしてたんだよ。

 

「彼が天条院家に泊まりに来た時、頭を下げて頼まれたんだ」

「頼まれた?一体何を…」

「″俺の身近にいる人を…特に結城家は全員で乗り込んでくるかもしれない、そうなれば春馬さんは結城家を権力で潰しに行くと思います、そうなった時に天条院家の力で守って欲しい″と」

 

優斗は自分がいなくなった時、オレらが乗り込んでくるかもしれない事も考えてお願いしたらしい。

きっと…その時の優斗は一人で解決するつもりだったんだ、だからきっと天条院先輩にそんな頼みをした。

 

「…仕方ねェ、代わりにオレも絶対に行くぞ?それでいいなら春馬の会社に乗り込む事を認めてやる」

「お父さん、リト、私も行くから、勝手に置いて行ったら二度とご飯作ってあげないから」

「…わかったよ、オヤジ、美柑」

 

渋々と言った感じにオヤジはオレと美柑が行くのを承諾した。

正直、オレもオヤジや美柑に何かがあったら嫌だから、二人は置いていくつもりだった。

二人とも置いていっても着いてきそうだし、美柑に関しては、マジで二度とご飯を作ってくれないと思う。

 

「優斗の結婚相手の事だが…名前は天野穂風(あまのほのか)、″政治家″天野風磨(あまのふうま)の娘だ」

「ッ!天野穂風!?キョーコ!!」

「うん!明後日、私達がやる結婚式ライブのワガママお嬢様!!」

 

…ルンとキョーコちゃんがやる結婚式ライブって確か。

 

───そういえばキョーコ!明後日の結婚式のライブマネージャーなにか言ってた?

 

───うーん、それが何も言われてないんだよね…結婚式を開くお嬢様のワガママでライブするみたいだけど…詳細がまだなんだよね…

 

ルンとキョーコちゃんが話していたことを思い出す。

 

「喫茶店で話していたライブのことか!!」

「うん、多分同じ人だと思う」

「マネージャーも政治家の娘さんのワガママでライブをして欲しいって言われたって言ってたし…」

「…そのライブ利用できないかしら?」

 

二人の話を聞いて何かを思いついた古手川がみんなに提案し始めた。

 

「どうするつもりですか?古手川唯」

「私たちがルンさん達スタッフとして紛れるのよ、そうすれば楽に潜入できるわ」

「…確かにそれなら無駄な戦闘を避けられますね」

「結婚式の会場にいても怪しまれないわ」

 

確かに古手川の作戦なら、タイムレインズカンパニー内に楽に入ることができるけど…

 

「でも、スタッフとして紛れるってルン達の会社的にダメなんじゃ…」

「…私が会社に掛け合ってくる」

「キョーコ?」

「優斗くんが連れて行かれちゃったのは、私のせいだから…それに前に助けてもらったお礼をちゃんとしたい!」

 

キョーコちゃんは″今度は私が優斗くんを助ける番!″と笑顔で言う。

 

「けど、飛行機って明日だよ?今から会社に掛け合っても…」

「私とドクターミカドの宇宙船ですぐに着きます、問題ありません」

 

ヤミと御門先生の宇宙船があれば、この人数でも、すぐにタイムレインズカンパニーにたどり着く。

 

「結婚式当日はライブのスタッフとして侵入する、それまでに南雲楓さんのことを調べましょう」

「その事、優斗くんにも伝えないと!」

「そうじゃん!作戦を優斗に伝えないとまた一人で無茶するでしょ!!」

 

確かに新井と籾岡の言う通りだ、優斗はまた一人で無茶をするかもしれない。

 

「ッ!?早く連絡しねーと!!」

 

オレは携帯を取り出して、優斗に連絡しようとすると隣にいた美柑に止められる。

 

「リト!優兄が今どんな状況か分からないんだよ!!そんな状況で電話して、もし優兄のお義父さん達に作戦バレたらどーするのさ!!」

「…確かに」

 

今、優斗はあのオカマといる、そんな状況で電話すればこっちの作戦がバレる、もしくは携帯電話等を取り上げられるかもしれない。

 

「大丈夫だよ、リト!今のユウトならきっと私達を信じて待っててくれるよ!」

「…ララ」

「それまでは私達ができることをやろ?」

「そうだな」

 

ララの言う通り、優斗がオレ達を頼ってくれるって待っているのを信じるしかない。

 

「でも…姉上、アタシ達がいない間、ユウトに何かあったらやばいんじゃないか?」

「いくら優斗さんが強くても数で責められたら…」

「それなら大丈夫!優斗は″デダイヤル″を持ってるから!何かあった時は″デダイヤル″に入ってるものでどうにかなるよ!」

 

ララはナナとモモに親指を立てて″グー″とやりながら、笑顔で答える。

なんで優斗がデダイヤルを持ってんだよ?

 

「ララさん、いつの間にそんな物を優斗くんに渡していたのよ」

「サキの別荘から帰ってきた時に優斗に頼まれたんだ!優斗の携帯電話そっくりのデダイヤルを作って欲しいって」

 

驚いた表情の古手川の言葉にララが答えた。

この前、珍しく優斗がララの部屋に来ていたと思ったら、そういう事だったのか。

 

「ララさん、優兄が持ってる物を全て没収されてたら、意味がないんじゃない?」

「…あ」

「外部と連絡が取れそうな取れる物は全て回収されるでしょうね」

 

美柑とヤミこの言葉を聞くと、ララは″あはは、たしかにー″と頭を掻きながら″テヘッ″と言って誤魔化した。

…おいララ、嘘だろ?

 

「ユ…ユウトなら大丈夫だよ!」

[…ユウト殿を信じるしかないですね]

 

もう、これに関しては優斗が何とかすると信じるしかない。

 

「とりあえず、今は各自できることをやりましょう」

「そうですね」

 

御門先生の言葉を聞いて各自できることをやり始めた。

 

 

~凛side~

 

数時間が経ち、私と沙姫様は結城家から天条院家の屋敷に戻って中に入ると、とんでもない光景が広がっていた。

 

「ッ!?」

「これは…一体なにがあったの!?」

 

屋敷にいた使用人はボロボロになって床に倒れていた、倒れた使用人に近づき、確認すると気絶しているだけで息はあるが、数箇所骨が折れている者や吐血している者も居る。

 

「誰がこんな酷いことを…まさかっ!お父様まで!!」

「沙姫様っ!一人で行くのは危険です!」

 

この状況で一人で行くなんて危険すぎる、まだ中にこの状況を作り出した者達が潜んでいるかもしれない…

沙姫様は劉我様の部屋に向かって走り出す、私もそれについて行く、劉我様のお部屋に近くなっていくにつれてボロボロになって倒れている使用人が増えていく。

 

「お父様っ!!」

「ッ!?父上!!劉我様!!」

 

劉我様の部屋に入るとボロボロになって倒れている父上と劉我様の姿があった、特に父上の怪我は遠くから見ただけでも酷く、劉我様を守る為に戦った事が目に見てわかる。

「…凛、お嬢様を連れて逃げろ」

「父上!一体なにが…」

「あの男は…バケモノだ…」

「あら?乙女をバケモノ呼ばわりは良くないよぉ?

九条戒君」

 

声をした方を向くと、部屋の扉に背を預け、何かの資料を持っている男がいた、男は私と沙姫様を見るとニヤリと笑みを浮かべる。

この男、いつからそこに居た…さっきまで気配すらなかったはずだ。

 

「おかえりなさぁい、天条院のお嬢様と召使いさん」

「なんですの!あなたは!!」

「沙姫様!私の後ろに!!」

 

私は沙姫様を守る様に前に立つ、男は私を見て″あらあらいい忠誠心だわぁ″と言いながら、近づいてくる。

他に仲間はいないようだが、まさかこの男一人で、天条院家乗り込んだのか!?

 

「…貴様一人でやったのか?」

「そうよ、弱すぎる貴方達に人員を割きたくないわ」

 

軍人とはいえ、この男一人に天条院家にいた使用人と父上がやられたのか?

「自己紹介が遅れたわね、あたしは南雲瑠偉よ」

「…お前が南雲瑠偉!!」

 

結城リトが言っていた優斗を連れて行った男と同じ名前!!

 

「あら?あたしの事を知ってるの?」

「…優斗を返せ」

「そうですわ!わたくしの優斗を返して貰うますわ!!」

「…へぇ?天条院のお嬢様があんなクズの息子を好いているなんてねぇ?」

 

あんなクズの息子?確か結城リトの父上もイカれた兄貴とか言っていたが、どうゆうことだ?

 

「あんな顔だけ良いクズの何がいいわけ?男の趣味悪いわねぇ、カエルの子はカエルって言うようにあの男も父親と同じようなクズよ?」

「…クズだと?」

 

壮絶な過去を持っていても絶望せず、たくさんの人を救ってきた、それだけじゃない、沙姫様や私を何度も救われた…そんな優斗がクズだと?

 

「そんな男を選ぶぐらいならその辺にいる適当な男の方が───」

「黙れっ!!」

 

優斗へ悪く言う南雲瑠偉に耐えられなかった私は奴の言葉を遮り、腹部に向かって右腕で殴りかかる。

 

「人の話は最後まで聞きましょうって習わなかったかしら?」

 

私の拳は南雲瑠偉に腕を掴んで受け止められてしまった。

 

「…もしかして貴方も時雨優斗が好きなのかしら?」

「ッ!?」

「図星見たいねぇ?もしかして初恋かしら?」

 

私の反応を見て楽しみ男に掴まれてない方の左腕で殴り掛かる。

 

「その反応、やっぱり初恋なのね?」

 

私の攻撃は南雲瑠偉には当たらず、左腕も掴まれてしまう。

 

「…残念ねぇ、時雨優斗は明後日の式を終えたらそのままあの女にパクリって喰べられちゃうわよ?」

「…は?」

「あの女は面食いみたいだから、時雨優斗を薬漬けにしてたっぷり犯すって言っていたわよ」

「なんですって!?」

 

なぜこの男はここまで嬉しいそうにしている!

南雲瑠偉の言葉を聞いて顔を顰める私達を見て、南雲瑠偉は心底嬉しそうな表情を浮かべる。

 

「うふふ…薬も相当強いものを使うみたいだし、次に貴方たちが彼にあった時は、快楽以外何も感じない廃人になってるかもねぇ?」

「優斗を薬漬けに犯すだと?ふざけるな、私は優斗をそんなクズに渡すつもりはない」

 

私は沙姫様の為に優斗の事を諦めようとしていたのに…そんな女に優斗を渡したくない。

南雲瑠偉の言葉を聞いて、沙姫様の為に何度も諦めようとして感情が私の中から溢れ出てしまった。

 

「沙姫様!逃げて下さい!」

「ダメですわ!凛!!」

 

南雲瑠偉に掴まれた腕を振りほどき、沙姫様似向かって叫ぶ。

この男は軍人だ、勝てないのはわかってる、だが沙姫様を逃がす為、優斗をクズ呼ばわりしたこの男を一発でも殴る為に再び殴り掛かった。

 

「甘いわね?」

 

殴り掛かっていたはずの私は、気づいたら床に倒れていた。

私はなんで床に倒れている…今の一瞬でいったい何が起きたんだ?

 

「今のでわかったかしら、今の貴方じゃああたしに勝てないって事」

「…っ」

「あたしは子供に手を挙げる趣味はないわ、だからこの辺にしてあげる」

「凛!!」

 

沙姫様は床に倒れた私に近寄る、南雲瑠偉はそんな私達を見つめて告げる。

 

「これは天条院家に向けて最終警告よ?これ以上、時雨春馬に関係する物を調べるなら、今度こそ貴方達を殺すわ」

 

私達に興味を失った南雲瑠偉は部屋から出て行った。

南雲瑠偉が去った後、私達は救急車を呼び、父上と劉我様と屋敷の使用人は病院へ運ばれた、骨が折れていた者が多かったが生命に別はない、だがしばらくの間は入院をしないといけないらしい。

 

「お父様…」

「サキ!大丈夫!!」

「…ララ」

病院室で気絶した、劉我様を見つめる沙姫様に病室へ入ってきたララ達が声をかける。

 

「天条院家が襲われたって!!ホント!?」

「…えぇ、それもたった一人にやられてしまいましたわ」

 

沙姫様の言葉を聞いた、ララ達は驚いた表情を浮かべる。

 

「死者はいないが、この通りしばらく天条院家は動けそうにない」

「…それって」

「天条院家の力で南雲楓について調べられそうにない、すまない」

 

劉我様や使用人が回復するまで、南雲楓について調べるのは今天条院家での捜査は難しい。

 

「大丈夫!私と御門先生で調べるから!それよりも沙姫達は───」

「…ララ、わたくしは優斗を助けに行きますわよ?」

「え?でも…」

「ここまでされて、わたくしが黙っていると思いますの?」

 

俯いた沙姫様は拳を握りしめながら、ララに向かって言う。

 

「天条院家としてではありませんわ、わたくしは沙姫として優斗を助けに行きます」

「…私も行く、優斗はクズ女に渡すつもりはない」

 

それに約束した、″優斗に何かあったら、今度は私が優斗を助ける番だ″と。

 

「優斗さんはお二人が悲しむ姿を見たくないと思います、ご無理だけはなさらないでください」

「わかっていますわ」

「大丈夫だ」

 

(父上、好きな人を助けに行く為に無茶をします、お許しください)

 

優斗を助けても沙姫様が優斗を好きな為、私の恋が叶うとは思わない…

 

(沙姫様に幸せになって欲しいと思う気持ちと同じぐらい、優斗には幸せになって欲しい)

 

…だから優斗、君の事は必ず救い出す。

 

 

 

~優斗side~

 

(何故、南雲は同じ飛行機に乗らなかった?俺を連れてくる目的なら、果たしたはずだ)

 

南雲の車に乗せられてから数時間後、南雲の部下にタイムレインズカンパニーに連れて行かれて、社長室へ向かっている。

俺は南雲の部下の後について行きながら、脳内で思考をフル回転させる。

 

(まさか南雲は他にも目的があったのか?)

 

───貴方達は彼を連れて春馬ちゃんの元へ向かいなさい?

 

───わかりました、隊長!他に誰か連れて行きますか?

 

───そんなの必要ないわよ、すぐ終わるもの…

 

飛行機に乗る前に起きた出来事を思い出す、あの時南雲は直ぐに終わると言っていた。何をするつもりだ?

 

(結婚式が早まった理由は恐らくクラウンが俺と天条院家が何かしらコンタクトを取ってると言ったと考えれば──────ッ!?まさか!!)

 

脳裏に過ぎった、最悪な事態…いやもし俺の考えが正しければ、既にもう…

 

(…まさか天条院家を潰す為に南雲が一人で攻め込んだのか?)

 

南雲の部下が部屋の扉の前で立ち止まる、近くにあった、部屋の名前を示すプレートを見るとそこには″社長室″と書かれていた。

 

「春馬様」

「…さすがだな、時間通りだ」

 

南雲の部下が扉を開け、社長室に入ると社長席の椅子に座っていた春馬さんがこちら顔を向ける。

 

「お久しぶりです、春馬さん」

「…才培が大怪我を負ったと聞いていたが、元気そうだな?」

「はい、この通り今は何ともありません」

「…つまらん」

 

俺は約十年ぶりに春馬さんと顔を合わせ、言葉を交わした。

…何だ?最後に会った時よりも何だが、顔色が悪い様な気がする。

 

「優斗、お前の結婚式は明後日だ、明日は結婚相手の女と顔を合わせてもらう…わかっていると思うが、抵抗すれば結城家とお前の身近な人間、全てを潰す」

「そんな事、言われなくてもわかっていますよ」

「わかっているなら何故、天条院家の娘の別荘にいた?」

 

…やはり、バレていたか、クラウンが俺が天条院家の別荘にいたのを報告していたんだろうな、劉我さんとの関係に関してはバレていないと思うが…

 

「ただの友人ですよ、みんなで天条院先輩の別荘でお泊まり会をしていました」

「…そうか、だが天条院はもう…すまない電話だ」

 

春馬さんが話している途中で電話が鳴った、春馬さんは会話を打ち切り、机に置いてあった携帯電話を手に取った。

 

「私だ……そうか、終わったか…すぐに戻ってこい、瑠偉」

 

電話の相手は南雲か、一体何の話をしていた?

春馬さんは電話を切って端末を操作しながら、俺に話しかけてくる。

 

「…優斗、良いものを見せてやる、私に牙を向けた者がどんな末路を送ったか」

「ッ!?」

 

最悪な嘘だろ?まさか、これを南雲が一人でやったのか!?

先程、俺の脳裏に過ぎった最悪な事態は当たってしまった。

春馬さんの携帯電話に写し出されたのは、床に倒れたボロボロな劉我さんと戒さんの姿があった。

 

「これで天条院家は終わりだ」

「…まさか、この二人を殺したのか?」

「さあな?そこは瑠偉次第だ、私は二度と牙を向けないように痛めつけろと命令しただけだ」

 

ボロボロの劉我さんと戒さんが写し出された写真を見る限り、この時点では二人はまだ生きているはずだ…

 

「…天条院先輩と九条先輩はどうしましたか」

「安心しろ、あの二人はお前にとって身近な存在だ、そう簡単には殺さない」

「……」

「もし変な動きを少しでも見せてみろ?まずはお前の大切な才培の娘から殺す」

 

何も写していない真っ黒な瞳が俺を射抜く、この人は何でここまで堕ちた?何が春馬さんを突き動かす?

 

「…わかりました」

「結婚相手…天野穂風の命令は絶対に聞け、例えそれが、性的な願いでもだ」

 

″もう用はない失せろ″と言われた俺は再び、南雲の部下に別の部屋へ連れて行かれる。

 

「時雨優斗!部屋に入る前に携帯電話を出せ!!」

「…これでいいですか?」

 

俺は携帯電話を南雲の部下に渡す、南雲の部下は俺を睨み、″他に持ち物がないか、確認させてもらう!!″と言って身体を触り、念入りに調べるが何も出てこない。

 

「…良いだろう、部屋に入れ、中には簡易ベッドがある、明日の顔合わせに向けて早く眠ろ!」

「……」

「わかっていると思うが、勝手に部屋を出たり、不審な行動をしたりすれば、春馬様に報告する」

「わかってます」

 

中に入ると部屋には、簡易ベッドと個室のトイレがあったが、それ以外には何も無い。

部屋の中にカメラや盗聴器等ないことを確認した俺は、隠し持っていた″デダイヤル″を取り出した。

 

「…持ち物検査の確認が甘いんだよ、三流」

 

デダイヤルでララさんにメッセージを送る、劉我さんと戒さんの安否確認と沙姫さんと九条先輩に怪我がないと良いが…

デダイヤルでメッセージを送るとララさんからすぐに返信が帰ってくる。

 

【サキと凛は大丈夫、サキパパ達はしばらく安静にしてないとダメみたい】

 

沙姫さんと九条先輩は無事なのか、でも俺のせいで劉我さん達が…

その後、写真の人物が誰なのかと南雲瑠偉の正体が軍人だったという情報がララさんから送られてくる

 

【優斗、みんなで考えた作戦があるの!作戦はね─────────】

 

続けて、ララさんから送られてきたメッセージを読む、スタッフとして潜入する…か、結婚式までに南雲は必ず帰ってくる、そして南雲には一部の人間は顔が割れている、変装しないと危険だ。

俺はその事をララさんにメッセージで伝えると絵文字と共に、″大丈夫だから信じて″と送られてきた。

 

「…もう、失うのはゴメンなんだ」

 

きっと春馬さんと南雲に作戦がバレれば、南雲がみんなを殺しに行くはずだ。

 

「そんな事は絶対にさせない」

 

俺の言葉は誰もいない部屋に静かに消えていった。

 

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