ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~ 作:アイスが食べたいマン
私は昔の夢を見ている、それも前の世界の夢を…
「おや~珍しいねぇ~夏樹くん、キミから連絡してくるなんてさ~」
あの時、桐生夏樹くんが私を頼る事は少ない、だからこそ私は彼に近づき仮を作る為、成功させたかった。
「女とその子供を殺せ…ね~わかった、すぐに終わらせるよ〜ちなみに殺し方はどうしたいかな~?好きなやり方ね、りょうかーい!それでぇもし成功したらお願いが───さっすが夏樹くーん!わかってるねぇ~」
この時、夏樹くんから受けた依頼は優斗くんとその母親を殺せというものだった。
本来なら簡単な仕事のはずだった…それにもし愚弟がここで優斗くんを殺していれば、計画の邪魔をしてくる人間も戦国冬華だけだったのになぁ。
「さて~キミの出番だよ、弟よ」
「了解しましたー兄貴」
もう名前すら覚えていない弟、頭が悪くて私の言うこと全てが正しいと思う、私にとって都合のいい駒だった。
「殺し方は問わないって〜それならできるだろ?」
「ぐっちゃぐちゃにしていいんですかー?」
「構わないさ」
この時の私は自分が出る幕もなく、弟で簡単にできる仕事で夏樹くんに近づけるなんて、最高に運がいいと思っていた、けど…あの無能な弟は女を一度殺し損ねた挙句、まだ5歳だった優斗くんに母親を殺され逃げられた。
「ごめん子供に逃げられた」
「…子供すら殺せないなんてね〜マジで何してんのお前?」
「ごめん…兄貴」
「…チッ、使えないにも程がある」
愚弟から報告を受けた私は使えない愚弟にイラついてた、これなら愚弟に行かせずに自分で行けばよかった、そうすれば優斗くんも殺せたはずだったのに…
「もういいよ、お前には二度と頼まないから」
「っ!兄貴!?」
「殺し屋の人生からも足を洗え、お前は居るだけ邪魔」
私は使えない愚弟に背を向けて、夏樹くんに連絡する。
「すまないね~夏樹くん、母親は死んだが子供の方はがしてしまったよ~」
[…ガキの居場所は?]
「それがねぇ~分からないんだ~」
「チッ…ガキ一人殺すことができないとは、使えないな」
元はお前が不倫した結果が招いた事態だろうが…その後始末を押し付けておいて、使えないと言われたくないが仕方がない。
「すぐに見つけるよ~すまないね」
[殺させなければ、約束していた例の計画に貴様を入れることは無い、貴様の代わりは山ほどいる、それを忘れるなよ?月城]
「…わかってるよ~すぐに見つけるね~って電話切られちゃったかー」
夏樹くんから一方的に電話を切られた挙句、このままだと、成功報酬に約束していた武器人間の計画に私は参加することができない、私は苛立ちが止まらなかった。
「クソッ!クソッ!クソが!あの愚弟がしくじらなければ!!」
そこから優斗くんを探すのに三年も掛かった、最初はもう死んだんじゃないかと疑い、死体を偽装しようと思ったくらいだ…でも何とか見つけることができた、見つけられた理由はとても簡単な事だった。
「おや~戦国教官!お出かけですか〜?」
「…月城、貴様に構ってる暇は無い失せろ」
ある日の休日、戦国冬華が外出届けを使ってどこかへ行こうとしているのを見て私は話しかけた。
相変わらず口が悪く、思い出しただけでもイラつく、立場は私の方が上なのに…
「戦国教官は口が悪いなぁ~一応、私の方が立場は上だよーもう少し言葉を…」
「立場が上だと?」
「そうさ!君は教官、私は司令官、私は君に指示を出す立場の人間だよ?」
「随分と面白いことを言うな、月城?」
戦国冬華のつまらないものを見ている様な視線が私を貫く、この女はこういう所もムカつく…
「お前のような、部下を駒としか思っていない様な人間の言うことを私や私の部下が聞くと思うか?それにお前はただの司令官だ、特殊部隊を動かす権利はない」
「……」
当時の私は司令官ではあったが、総司令官ではなかった、そんな私に特殊部隊を動かす権力はない。
これ以上の立場と圧倒的な力を手に入れる為には、夏樹くんや他の上層部の人間に気に入られる必要があった。
「何も言い返さないのか?負けるのを恐れて、私と戦う勇気すらない腰抜けめ」
「……」
「分かったら失せろ、目障りだ」
私を通り過ぎて行く戦国冬華に後ろから、睨みつけることしかできない、私が戦国冬華に戦いを挑んでも勝つことすらできないのだから…
「あの女は何故、半年に一回だけ外出届けを使っている?もしかして~重大な秘密か何かあるのかな~?」
戦国冬華が消えて少しして、もしかしたらあの女の弱みを握れるかもしれないと思った私は得意の変装をして後をつけることにした。
「…何故…教会?」
あのバケモンが教官に入った所を見た時は驚いた、自分の目がおかしくなったんじゃないかとすら思った。
(聖歌か~いやなんで~?戦国冬華見たいなバケモノには似合わな…なるほどね?彼女を見に来ていたわけか~)
戦国冬華の視線の先には、戦国冬華と同じ髪の色をした少女がいた。
あとから調べてわかった事だが、戦国冬華が見ていた人物は自身の娘であった雨宮優華、もし彼女が死ぬことなければ、戦国冬華にとって最高の弱点になっていたはずだった。
(まあ~彼女の事を調べて───っ!?あれは!まさか!!)
私は見つけたんだ、笑顔で歌っている雨宮優華の隣で手をつなぎながら歌っている雨宮優斗を…
(ハハハッ…私は…私は運がいい!!これで…これで夏樹くん例のプロジェクトに参加できる!!)
私は内心ガッツポーズをして喜んだよ、三年前に逃げられた子供をやっと見つけることができたんだからね。
教会を出て人気のない場所に行った私はすぐに夏樹くんに連絡した。
「お待たせ~夏樹くーん、やっとあの子供を見つけたよ~」
[随分手間取ったな?もう貴様以外の代役を立てようかと思っていたぞ?]
「…まだ間に合うかな?」
[明後日までに死体を持ってこい、間に合わなければ、あの話なしだ]
「必ず成功させると約束するよ~」
再び巡ってきた最大のチャンスに心を踊らせた、あのバカの声を聞くまでは…
「兄貴!今子供が見つかったって言いましたよね!」
「…なんでいるのかな~愚弟?」
物陰から出てきた愚弟が、私に声をかけてくる。
三年前に使えないと切り捨てたが、こんな場所で出会うなんて思ってもいなかった。
「兄貴!チャンスをください!」
「…邪魔だ」
これ以上、足を引っ張られる訳には行かない、私はそう思って愚弟の横を通り過ぎようとするが、足を捕まれる。
「お願いしますー兄貴ー」
「お前は使えないから必要ない、邪魔するなら、殺すよ?」
足を掴んでいた愚弟を引き剥がし歩き出す、優斗くんを殺す計画を立てる為に近くのホテルで泊まる。
そしてこの時、私はミスをした、この愚弟をここで殺しておけばよかった。
「…なにこれ~?」
殺しに向かった私が見たのは、教会の神父の惨殺したいと、死んだ後も十字架の置物で殴り続けられたであろう愚弟の死体があった。
「最悪だなぁ~邪魔しかしないなぁーほんとによ!!」
愚弟の死体に向かって私は何度も発砲する、周りを見て全てを理解した、名誉挽回しようとした愚弟が暴れて、返り討ちに会った事、そしてあとから知ったが、よりにもよって雨宮冬華を殺した事。
「使えねぇ!どこまでも使えねぇなぁ!!」
弾が切れても怒りが収まらなかった私は、愚弟の顔を何度も何度も潰れても踏み続けた。
「はぁ…はぁ…はぁ…もう、時間がないね~代わりを見つけるしか───」
「お兄さん、こんな所でなにしてんの?」
声をかけられて振り返る、そこには優斗くんくらいの幼い男の子がいた。
「お祈りしに来たのに誰もいないんだ…え?神父様?」
「…丁度いいか、ねえ~キミは何歳?」
「え?五歳だけど…そんなことより神父様が……ねぇ、お兄さんなんでそんな血まみれなの?」
「そんなに怯えないでよ~この二人を私は殺していないよ~」
ズボンに着いた愚弟の返り血を見て怯える子供に私は近づく。
五歳なら丁度いい、身体の肉付きも彼に似ていた顔は鈍器でぐちゃぐちゃに殴れば分からない。
「嘘だ!来るな!」
「本当だよ、クソガキ」
「嫌だ!嫌だァァァ」
「…死ね」
リロードした銃で男の子の眉間に向かって発砲する。
私は絶望した顔をして死亡した男の子の顔を十字架の置物でぐちゃぐちゃになるまで殴り続けた。
「随分と派手にやったな?」
「…でも、これで満足だろ?夏樹くん」
「いいだろう、貴様を例の計画に参加するのを認める」
「ありがとう~夏樹くーん」
別の死体を用意する事で私は夏樹くんの計画に参加することができて、自衛隊でも総司令という役職に着くことができた。
「…随分とまた懐かしい夢を見たね~」
第二仮眠室で目を覚ました、クロくんと戦った時に無傷だったとはいえ、まだ″慣れていない力″を使った事もあって私は疲れて眠ってしまったみたいだね~さっき見た夢、最悪だったなぁ~
「…使えない駒は早めに始末して切り捨てる、愚弟から習ったことだけど~もしあそこで優斗くんを殺せていればなぁ~」
あの無能さえいなければ、優斗くんに研究データと遺伝子情報を破壊される事もこの世界で邪魔されることなく、今頃私の計画は上手くいっていたはずだった。
「眠っていたのか、クラウン?」
聞き覚えのある声が第二仮眠室の入口から聞こえてきた、出来れば今は、他の下等生物とは話したくない。
「…春馬くんかぁ~悪いねー今少し機嫌が悪いんだ~」
「そうか、なら話は後にしよう」
「…助かるよー」
私の言葉を聞いた春馬くんは第二仮眠室から出ていく、キミの兄が産んだ人間が優斗くんじゃなければなぁ~
私はそう思いながら、仮眠室の机に置いてあった資料を見る、資料には時雨桜、この世界の優斗くんの過去の情報が書かれていた。
「あれ?優斗くんって″右利き″だっけ?うーん、まぁいっか~意外と疲れるんだね───ってもう一度寝ようかなぁ~」
資料を置いてあった場所に戻して再び眠りにつく、次はいい夢を見るといいけどね~
◇
~優斗side~
タイムレインズカンパニーに連れてこられた次の日の朝、天野穂風との顔合わせの為、俺は着替えて支度をする。
「…寂しいな」
家では起きると隣に美柑がいた、悪夢を見る俺を支えてくれるナナとモモがいた。
そんな日常が当たり前になってしまった俺は、この静寂が酷く寂しく感じてしまう。
「精神年齢はいい歳しているはずなのに、ここまで寂しく感じるのか…」
俺は寝ることができなかった、この会社には月城もいるかもしれない、だがそれ以上に…悪夢を見る俺を支えてくれる人が此処にはいない。
「…俺はこんなに弱かったか?」
「優斗にとって美柑ちゃん達が大きい存在になっている証拠だよ」
声をかけられた方を見るとそこには、笑って俺を見ている輝がいた。
輝の言った通りかもしれない、みんなが俺の中でとても大きい存在になっている、 ″早くみんなの元に帰りたい″と心の中で叫び無くなってしまうくらいには…そしてそうなっている事に自分でもかなり驚いている。
「輝…俺はこんなに弱かったか?」
「…いや、君は強い」
「なら、なんでこんなに…」
「優斗、それが″普通″なんだ、好きな人達と過ごす幸せな日常が急に無くなると人は酷く虚しく感じてしまうものなのさ」
輝は″僕が死んだ時も感じただろ?″と言いながら俺の胸を拳で軽く叩く。
「前世で悪意ばかり向けられてきた君に、やっと巡ってきた幸せなんだ…」
「………」
「だから…最後まで諦めないでくれ…今度こそ君は───」
「時雨優斗!準備はできたか!!」
南雲の部下は輝の言葉を遮るように扉をノックする。
「…そんな顔しなくても大丈夫だよ、きっと上手くいく」
「………」
俺は今どんな顔をしている?そんなと言われたって事は、酷い顔をしていたんだろうな。
輝に背を向けて歩き出す…いつもなら消えていたはずの幻覚が何故か最後まで俺を見送り続けた。
南雲の部下に案内された部屋に入ると、椅子に座ってこちらを見るゴスロリの姿をした大学生くらいの女性がいた。
「…貴方が時雨優斗?」
「はい、あなたは…」
「口の利き方には気をつけて、私の方が立場は上よ?」
「すみません」
「″申し訳ありません″でしょ?はぁ教育はなってないのね?まあいいわ、これからしっかり躾けるから」
何だろう、こいつ…すごいムカつく。
椅子に座りながら足を組み、俺の顔や身体を舐める様な視線で見る、初対面の人間にそんな目で見られるのは、正直気持ちが悪いからやめて欲しい。
「へぇー大当たりじゃない、ホストより顔もスタイルも良いなんて最高ね」
「………」
「私は天野穂風…貴方、経験人数は?」
「はい?」
こいつ、何言ってんだ?自己紹介と一緒に経験人数聞いてくるヤツなんて初めて見たぞ?
「童貞か聞いてんのよ、早く答えなさい!」
「…0人です」
「…嘘…最高はじゃない、合格」
″式の後が楽しみ″とニヤニヤとして言いながら、舌をなめずる。
思ったより、こいつは何を基準に合格って言ったんだ?
天野穂風は持っていたカバンから、首輪と薬を取り出した。
「明日の式が終わったら、これを飲んで私の部屋に来て」
「…これは?」
「誰でも気持ちよくなれるお薬、しっかり調教して最高の夜にしてあげる」
立ち上がって近づいた天野穂風は、俺の手を掴んで強引に渡してくる。
薬を飲まされて調教されるとか、最悪な夜の間違いだろ。
「優斗は私のコレクションにふさわしい」
「コレクション…ですか?」
「そうよ、コレクション、前の婚約者も今は私の───いや、それは式が終わった後にたっぷり教えるわ」
天野穂風は手で俺の頬を撫でながら、不敵な笑みを浮かべて満足そうに俺を見る。
コレクション、恐らく前の婚約者の不自然死と関係があるんだろうな。
「ホントは…少し味見したいけど、まあいいわ」
「……」
「優斗、私達の式場を見せてあげる、まあ内装とか全ては私の独断で決めさせてもらったけど」
″行くわよ″と命令されて俺は彼女の後に着いていく。
正直かなりムカつくがここで暴れたら、みんなが考えた作戦も意味が無くなってしまう、今は従うしかない。
「あ、それとこれから私を呼ぶ時はご主人様って呼びなさい、わかった?」
「…わかりました、ご主人様」
「聞き分けがいい子ねーこれからが楽しみだわ」
…やっぱり、こいつなんかすっごくムカつく。
◇
~南雲瑠偉side~
「もどったわ~春馬ちゃん」
「…ご苦労だった、瑠偉」
タイムレインズに戻り、社長室に入って春馬ちゃんに声をかける。
顔色が悪いわね、やっぱりまだ眠れないのね、春馬ちゃん。
「天条院劉我や九条戒を殺さなかったようだな、なぜ殺さなかった?」
「殺す必要ないでしょ?彼の結婚式が終われば、後はこっちのものよ、それに天条院劉我にもう抵抗する意思もないわ」
天条院家はあたし達を詮索していて邪魔だっただけ、春馬ちゃんの目的とは関係ない、それに時雨優斗の結婚式が終われば、後は…
「…春馬ちゃん、彼を捕まえた時に才培ちゃんの息子ちゃんにあったわ…」
「それがどうした」
「どうして…才培ちゃんには、真相を教えなかったの?」
「…アイツに教えた所で止められるだけだ、それにアイツには…」
春馬ちゃんはあたしに背を向けて言い淀む、顔は見えないけど、きっと悲しい顔をしているんでしょうね。
「アイツには…何なのかしら?」
「理由なんて何だっていいだろ、瑠偉」
「…そうよね、ごめんなさい」
春馬ちゃんはきっと才培ちゃんを──────なかった、だってあたし達は…
「…瑠偉、やっと終わる」
「そうね」
「…楓」
春馬ちゃんは窓の外を見ながら呟いた。
これが終われば、きっと昔のようにまた″三人で″笑い合える、その為にあたしはここまで頑張った、あの頃の春馬ちゃんを取り戻して笑い合う為に…
けど、あたしには一つ懸念点があった、それはあの男。
「…春馬ちゃん、あのクラウンって男は一体何者なの?」
「……」
あたしも知らない、クラウンという男。
春馬ちゃんとクラウンが一体どんな関係なのか分からないけど、一回見ただけでわかった、あの男は危険だと…
「…楓が死んだ後に出会って力を借りた、ただそれだけの関係だ」
それ以上は何も語る事は無いと言わんばかりに春馬ちゃんはあたしを見てくる。
力を借りたってどうゆうことよ、あの男は、春馬ちゃんの父親殺しの時に何か手を貸したの?
当時、父親殺しをした春馬ちゃんは時雨の権力を使える様な立場にはいなかった、天条院家相手に事件を揉み消すことなんてできるはずがない。
「あの男は危険よ、春馬ちゃん」
「……」
「あたし達に何かを隠してる、″得体の知れない何か″を…」
人目見た時に感じた、得体の知れない力の様なもの、まるで人間じゃないみたいな…そう思わせる何かをあのクラウンという男は持っていたわ。
「あの男をこれ以上頼らない方が────」
「瑠偉、そんなことよりも、お前は自分の仕事に集中しろ」
「でも!」
「聞こえなかったか?」
「…わかったわ、余計なことを言ってごめんなさい、春馬ちゃん」
今のあたしの言葉は春馬ちゃんに届かない、もしこれが才培ちゃんの言葉なら、春馬ちゃんに届いていたのかしら?
「…明日来る入場者リスト、貰っていくわね?」
「怪しい人間は追い出せ」
「言われなくてもわかってるわよ」
あたしは明日来る入場者リストを見ながら、部屋を退室しようとしてある名前が目に留まる。
「霧崎恭子にルン?ねえ、春馬ちゃん、この子は何?」
「…そのガキ共は中に入れろ、あの我儘な女が結婚式でアイドルのライブを見たいらしい」
「……」
アイドル…だからかしら?見た事があるのは…でもどこかであった気がするわね。
─── 優斗くんを離し───
───ダメだ、霧崎さん、この人には勝てない
─── 優斗っ!!
───このガキ!大人しくしろっ!!
───リトくん!!ちょっと!リトくんに何して…ってなにするの!離してよ!?
───ルン!!
思い出したわ!この二人!時雨優斗と才培ちゃんの息子ちゃんと一緒にいた子供たち!!
「才培ちゃん、この二人、時雨優斗と一緒にいた子よ?」
「…何?」
「それでも式に入れるの?」
あたしの言葉を聞いた、春馬ちゃんは黙り込んで少し考えた後、少ししてあたしに指示を出してくる。
「中に入れろ」
「危険よ?もし邪魔されたら…」
「相手はただのガキだ、何もできなやしない」
「…わかったわ、でもスタッフ関係に怪しい人間がいたら追い出すわよ?」
「好きにしろ」
この子達は、きっとあたし達の障害になる…スタッフ関係やマネージャーは徹底的に調べあげる。
「仕事に戻るわ、他に何かやって欲しいことはあるかしら?」
「今はない、ただクラウンが居る、第三会議室には近寄るな、今は機嫌が悪いらしい」
「…機嫌が悪い?」
「どうやら、私と同じで過去の夢を見たようだ」
過去の夢?あんな得体の知れない男でも、悪夢を見るというの?
「…わかったわ、また何かあったら───」
「瑠偉…」
春馬ちゃんはあたしの言葉を遮る。
「何かしら?」
「…いや、やはり何でもない」
そう言った春馬ちゃんはあたしに背を向け、椅子に座った。
春馬ちゃんが言うのを辞めるなんて、めずらしいわね?何を言いかけたのかしら?いや、それよりも今は明日来るアイドルや関係者を調べる事が優先ね。
もし邪魔になるなら、あたしが止める…
なんとしてでもこの───は成功させなきゃ行けないのよ。
春馬ちゃんの部屋を出たあたしは部下に指示を出して動き始めた。
◇
「…そうゆう事だったのね、だから政治家になる必要があった」
涼子は自身の診療所で南雲楓の事件を調べていると、彼女の事件の捜査がなぜ打ち切られたのか、誰が揉み消したのか全ての真相を知ってしまった。
「…もしこれが本当なら、優斗くんは息子だったからという理由だけで巻き込まれた」
隠蔽した人物と事件の犯人の名前を見ながら、涼子は呟く。
「時雨春馬の目的は政界に行くことじゃない、本当の目的は″復讐″それも自身が持つ全てを捨てる覚悟で…」
涼子の言葉は誰もいない診療所に響き渡った。