ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~   作:アイスが食べたいマン

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大変お待たせ致しました。とても長いのでゆっくり読んでください。長くてごめんなさい。


~VSクラウン~

「…クラウン」

「月城っ!!」

 

祭壇の前に現れた月城は才培さんと倒れた春馬さんに近づいていく。

 

「まさか共倒れを狙っていたとはね~約束と違うじゃないか~春馬くーん?」

「テメェ!!誰だ!?」

「春馬くんの協力者だよ…まあ、裏切られちゃったけどね〜?」

「協力だァ?」

 

姿を表した月城はヘラヘラとした態度で春馬さんを見ながら、才培さんの質問に答える。

何故、今このタイミングで月城は出てきた?俺達が出てきたタイミングで姿を表すと思っていたが…

 

「テメェー!なんで春馬に協力した!!」

「ちゃんと聞こえてるから、そんな叫ばないでよ~結城才培くん~」

「なんでオレの名前をっ!!」

「春馬くんの身の回りの人は調べ尽くしたからね~春馬くんの人間関係なら才培くんより詳しいと思うよ~?」

 

月城は″春馬くんの事、才培くんは親友なのに、何も知らないもんね~″と煽るように笑みを浮かべながら、笑いを堪えていた。

何がおかしい?月城は何故笑いを堪えている?

 

「春馬くんと約束したんだよ~総理大臣になってもらうってね?この結婚式も総理大臣になる為、天野家をつかって政治家になるって言ったから手伝ったのにな~」

「…クラウン、悪いな…私はお前を復讐の為に利用した…約束は果たせない…」

「…フフフッ…ハハハハハハハハハハハッ!!」

 

春馬さんの言葉を聞いて、笑いを堪えられなくなった月城は盛大に笑い出す。

 

「あー久々に笑ったなぁ~」

「…何がおかしいクラウン、お前の計画は潰れたんだぞ?」

「春馬くーん、私と初めて出会った時の事を覚えてるかな~?」

「…あぁ、覚えている、楓が殺されて絶望した俺の前にお前が現れた…それがどうした?」

 

まさか、月城が関わっていたのは今回の件だけじゃなく、春馬さんの父親殺しにも関わっていたのか!!

 

「その後は?」

「…当時学生だった私にお前が変装してアリバイ工作をした…」

「そうだね~南雲楓さんが殺されて絶望していた春馬くんの為に私が春馬くんに変装して、アリバイ工作と天野風磨を使って事件を隠蔽してあげたんだ~」

「待て、天野風磨を使って事件を隠蔽しただと?そんや聞いていないぞ、クラウン!」

「聞かれてないからね~」

 

春馬さんの言葉に笑いながら、″まぁ、聞かれても答えないけど~″と答える。

天野風磨を使って春馬さんの父親殺しの事件を隠蔽しただと?なんでこいつにそんな事ができる?

 

「お…お前!クラウンか!?クラウンなのか!!助けてくれ!南雲楓の時みたいにまた私を助けてくれ!!」

「…は?」

「…天野、貴様は今なんて言った?」

 

天野風磨は月城の足にしがみついて泣きつき、それを聞いた月城は笑っていた。

何故、楓さんの話が出てくる、月城が隠蔽したって言ったのは、時雨前社長の事件と…こいつ、まさか?

 

「月城、まさかお前は楓さんの事件にも関わってるのか?」

「正解、よくわかったね~優斗くん」

「…貴様は何を言っている?」

 

俺が想像した最悪な予想が当たっていれば…春馬さんが月城を利用したんじゃない、月城が二人を使って、春馬さんが復讐鬼になるように利用したんだ。

 

「どうゆう事だ!クラウンっ!!」

「どうゆう事って簡単だよ~私が時雨桜くんと天野風磨くんに楓さんを襲うように仕向けたんだ~」

 

俺が考えた最悪な予想が当たってしまう、でも何故、春馬さんを狙った?権力目当てなら天野家の方がいいはず…

 

「…なんでそんな事…」

「春馬くんが私を利用したように…私も春馬くんを総理大臣にして裏から操り人形にする為に利用したかったんだ~」

「月城、何故春馬さんを選んだ?天野家は政治家だ、春馬さんを総理大臣にするよりも天野風磨の方が何倍も…」

「天野風磨にはね~叩けば叩くほど埃が出てきちゃうんだ~そんな人間はいつか致命的なミスを犯して全てを失う、夏樹くんみたいにね?」

 

月城は俺を見る、桐生夏樹の致命的なミス…それは、恐らく───

 

「下手らしたら、優斗くんみたいな危険因子が産まれちゃうでしょ~」

「……」

「風磨くんと違って春馬くんには、上に立つカリスマ性もリスクやリターンを考える力もあった、ただ問題なのは当時の春馬くんにタイムレインズカンパニーを継ぐ意識が全くないこと…」

「…そう言うことか、春馬さんに会社を継がせる為、邪魔になる時雨桜を消すと同時に春馬さんに社長となる目的を作る…だからお前は南雲楓さんを狙った」

「正解!優斗くんのそーゆー頭の良いところすっごい好きだよ~」

 

月城は″まあ、失敗に終わっちゃったけどね~″と言ってヘラヘラしながら、懐から銃を取り出す。

 

「クラウン!助けてくれ!何でもする!だから!」

「…今の話を聞いてもまだ分からないのかな~君はもう必要ないんだよ?」

「な…何をするつもりだ!?やめてくれ!!私は死にたくない!!私はまだ!!」

「南雲楓は殺される時でもそんなふうには泣かなかったよ?風磨くん」

「父様!」

「天野穂風、君も邪魔だよ」

 

天野風磨の頭に銃を向けると、そのままトリガーを弾いて天野風磨を撃ち殺し、父親が殺されて叫んだ、天野穂風に向けて銃を構えてトリガーを弾く。

 

「ッ!」

「優兄!?」

「優斗くん!!」

 

俺は走り出して天野穂風に近づき前に立つ、月城から放たれた弾丸は俺の腹部に当たる。

 

「悪人でも庇っちゃうところは、優斗くんの悪いところだよ?」

「……」

 

天野穂風を見るが怪我は無さそうだ、腹部を抑えて確認する、弾丸は貫通せず残っているが致命傷ではない、まだ動ける、けど…天野風磨は守れなかった。

それに月城は天野風磨を撃つ時、気になることを言っていた、楓さんは殺される時でも泣かなかった?まさか、楓さんを惨殺したのは…

 

「殺される時に楓が泣かなかっただと?クラウン、貴様まさか!!」

「南雲楓を殺したのは~私だよ、春馬くん」

 

月城の言葉を聞いた春馬さんと才培さんの顔が怒りに歪む。

こいつは一体何処までクズなんだ?人の命をなんだと思っている?

 

「ッ!?テメェーが!楓を!!」

「犯されても、殺されそうになっても、あの子は″春馬が助けてくれることを信じてる″って涙目になりながら言ってたなぁ~」

「月城っ!お前!!」

「そんな彼女がだんだん絶望していくのは見ていて気分が良かったよ」

 

″今でも鮮明な思い出すよ!″と月城は言う、周りで聞いていたリト達も″イカれてる″と言いながら月城を見ていた。

あの時、俺が月城を殺せていれば…こんな事にはならなかった。

過去の自分の失態を後悔しながら、俺はデダイヤルを操作して銃を取り出し走り出す。

 

「まぁ最後は~痛めつけながら殺したから、悲鳴を上げながら死んで行ったけどね~」

「貴様ァァァァァァァッ!!!」

「そんな叫ばなくても、南雲楓の元にすぐ送ってあげるよ、春馬くん」

「ッ!?行くなっ!!春馬ァ!!!」

 

春馬さんは立ち上がりって月城を殴る為に走り出す、月城は来るのがわかっていたかのように春馬さんに向かって銃を向けてトリガーを弾いた。

俺は春馬さんを突き飛ばし、月城に向かって銃のトリガーを弾く、月城は俺の反撃を予想していなかったのか、お互いが撃った弾丸はお互いの右胸を貫いた。

 

「…相変わらず判断が早いね、優斗くん」

「…グフッ」

「けど…さすがに二発食らった君の方が、ダメージはデカイみたいだねぇ~」

 

月城は吐血した俺を見て笑う。

心臓は避けたが右肺に血が入ったか…腹部に弾丸が残ってることも考えると、今の状況での長期戦はかなりキツイ…まずは春馬さんと才培さんを逃がす事を考えよう。

 

「ユウト!!」

「優斗さん!!」

 

撃たれた俺を見てたナナとモモが叫び、月城に向かってビームを放つ。

 

「残念~当たらないんだなぁ~?」

「クラウン、後ろがガラ空きですよ」

「おや~イヴちゃ───」

 

ナナとモモから放たれたビームを月城は余裕そうに避けるが、月城の背後に回ったヤミさんが髪をトランスで拳に変えて殴り飛ばす。

殴り飛ばされた月城は壁を壊して隣の部屋まで飛ばされた。

二人を逃がすなら今しかない、そう判断した俺は後ろに振り向く。

 

「才培さん、春馬さんを連れて下がってくださいっ!」

「優斗!オメーも!!」

「俺は大丈夫ですから、早く逃げてください!」

 

俺が叫ぶと才培さんは倒れた春馬さんに近づき肩を支えるが、俺の事も連れて行こうと手を伸ばす。

 

「優斗!オメーも!!」

「…俺は大丈夫です」

「っ!まさかその怪我で戦うつもりか!!優斗!!」

「はい、俺がやらないといけない事ですから…」

 

これは俺があの時、月城を殺せなかったから起きた事、今度こそ俺が月城を止める、これ以上被害者を増やさない為にも…

俺が月城に向かって走り出そうとすると、後ろから声がかけられる。

 

「待て…優斗」

「…なんですか?春馬さん」

「何故、私を助けた?お前の人生をめちゃくちゃにしようとしたんだぞ?」

「春馬さんを悪人に変えてしまったのは俺のせいだから…これは俺の罪滅ぼしです」

 

月城を殺しているば楓さんが殺される事も春馬さんが堕ちる事もなかった。

 

「お前のせいだと?お前は───」

「もう一つあります、春馬さんは俺を学校に通わせてくれた、そのお陰でみんなに出会えたんです、それだけあれば助ける理由は十分でしょ?」

「…なら、天野穂風を助けたのは何故だ?あの女はただのクズだぞ?」

 

昔の俺なら、天野穂風は悪党だと言って見捨てていたし、殺していた、でも人はきっかけがあれば変わる事が出来ることを俺は知っている、それに輝と約束した。

 

「きっかけ一つで人は変わります、善人から悪人へ、悪人から善人へ、俺は親友に約束しました、俺達で悪人を善人に変わるきっかけを与えるって」

「……」

「だから俺は天野穂風を助けただけです」

 

最後に″美柑達とこの部屋から逃げてください″と言って俺は月城に向かって走り出す、隣の部屋まで殴り飛ばされた月城が余裕そうにしながら姿を表した。

 

「今のは意外と痛かったなぁ~っと?危ないな~優斗くん~」

 

ヤミを見て余裕そうな月城に向かって、銃のトリガーを弾くが躱される、月城は向かってくる俺を見ると銃を俺に向けてトリガーを弾いた。

 

「避けるんだー流石だね~でもいつもより遅いねぇ~」

「チッ…」

 

月城がトリガーを弾いたタイミングから、弾速と着弾位置を予想し、躱してナイフで攻撃するが銃のスライドで防がれる。

こいつ、前世よりも反応速度が格段に上がってる。

 

「もしかしてさっきの被弾した肺に血が入って、呼吸ができないのかな~?」

「…それはお前もだろ、月城!!」

「叫ぶと辛いよ、優斗くん」

 

被弾したのは月城も同じ右肺のはず…なんでこいつは、こんなに余裕そうなんだ?それにヤミの攻撃も食らっているはずなのに、傷一つ無いのはなぜだ?

 

「っ!?相変わらず、君は足癖も悪いなぁ~」

「…これもダメか」

 

月城が持っていた銃を回し蹴りで蹴り飛ばして、ナイフで再び攻撃をするが躱される。

 

「グッ…」

 

ナイフで連撃しようとするが、被弾した場所から血が流れて膝を着く。

 

「撃たれた場所、辛そうだね~動く度に血がドバドバ出てるよ~」

「…黙れ」

「楽にしてあげようか?」

「トランスっ!」

「おや?」

 

後ろからヤミが刃に変えた腕で攻撃するが月城は身体を右へ逸らして攻撃を躱す。

今のも躱すか、ヤミの攻撃が来る直前まで気付いてなかったのに、月城はなんで躱す事が…

 

「なっ!?避けられた!!」

「甘いねぇ~イヴちゃん?」

「ッ!?」

「今の君には興味がないんだ~早く″あれを″使いこなせるようになってね?」

 

攻撃を躱した月城はカウンターをヤミの腹部に叩き込む。

 

「ヤミ!!」

「人の心配をしてる場合かな~優斗くん?」

「ッ!?早い!!」

 

目の前でヤミにカウンターを叩き込んだはずの月城はいつの間にか俺の後ろに立っていた。

俺は後ろを振り返りナイフで攻撃しようとするが、何かによってナイフを弾かれ、腹部に拳を叩き込まれる。

 

「…っ」

「なるほど~天野穂風に撃った弾丸が貫通してなかったんだね~肺に血が入って腹に弾丸が残ってれば、そりゃ動きも鈍るよ」

「まだだっ!!」

 

月城の後ろを見るとララさんがこちらへ近づいているのに気づいた。

俺は立ち上がり、両拳を連打をするが月城は、上手く躱しながら俺を見て笑う。

 

「フフハハ、滑稽だなぁ~そんな身体で攻撃して君の怪我が悪化するだけだよ?」

「っ!」

「もう一発、腹に叩き込んであげるよ!優斗く──っ!」

「捕まえた」

 

連打の隙を見てカウンターをしてきた月城の拳が俺の腹部を叩き込まれた瞬間その腕を掴む、月城は″一体何を″と言ったがもう遅い。

ララさんも俺の意図に気付いた様で、一瞬俺を見て辛そうな顔をした。

 

「はぁぁぁぁぁあっ!」

「っ!?なるほどね!ララ・サタリン・デビルークかっ!!」

 

ララさんは俺に構わず、背後から月城に拳を叩き込んむ、拳圧で壁を壊すほどの威力だ、ただの地球人がまともに食らえば致命傷だ。

 

「…やっぱりすごいね~優斗くん」

「っ!?」

「ウソっ!?」

 

ララさんの攻撃をまともに食らったはずの月城は、何も無かった様に俺の手を振りほどきララさんと俺を蹴り飛ばした。

蹴り飛ばされた俺とララさんは壁に叩きつけられる。

沙姫さんの別荘時も思ったが、月城は前世と違って人間離れした身体能力と反応速度を持っている、本当に人間かと思ってしまうほど…

 

「…クソっ」

 

吐血しながら立ち上がる、今の蹴りと叩きつけられた時に骨が数本折れている、このまま戦えば俺は間違いなく…死ぬ。

 

「イヴちゃんの覚醒の為、本当は優斗くんを殺すつもりはなかったんだけど~代わりはまだいるみたいだしーいいよね~?」

「いつの間に───っ!?」

 

いつの間にか目の前に立っていた月城に片手で首を掴まれ持ち上げられる。

首を絞められた俺は持っていた銃を月城に向ける。

 

「その銃、ケイズくん達に渡した物だよね、弾倉は9発、天条院の別荘の戦いで既に4発使ってる」

「……」

「さっき私に向けて撃った2発で合計6発、優斗くんの弾数は残り3発だね~それまでに仕留めきれるかな~?」

 

月城の言った通り俺が持っている銃の弾数は残り3発、これを使い切れば俺はちゃんとした飛び道具を持っていない為、状況はさらに不利になる、だが、この状況なら確実に当たる。

 

「させると思う?」

「…グッ」

 

月城は首を絞める力を強める、トリガーを弾こうとした指に力が入らない、息もできず、視界もぼやけてきた。

 

「クラウン!アタシらがいるのを忘れるな!」

「優斗さんを離しなさいっ!!」

 

ナナとモモがデダイヤルを操作してイノシシと複数の紫色の花が出てくる。

 

「あれはキャノンフラワーとギガ・イノシシか~やばそうだね~」

 

月城の注意がナナとモモに向いた瞬間、デダイヤルを操作してモモから貰った種を取り出した。

 

「うん?それは───」

 

取り出した種を床に落とすと、種が落ちた場所から勢いよく伸びた蔦は月城に絡みつき、動きを封じる。

拘束から開放された俺は、むせ込みながら月城からも距離を取る。

 

「なるほどね~これは少し厄介だな~」

 

向かってくるギガ・イノシシと砲弾の様に種を発射するキャノンフラワーを見ても、身動き一つ取れない月城は一瞬ニヤリと笑うと″とある言葉″を呟く。

 

「″トランス″」

 

その瞬間、月城の髪は刃に変わり種と蔦を切り裂きく、向かってきたイノシシに向かって拳をガントレットに替えて殴り飛ばした。

 

「あれはヤミさんのっ!!」

「ギーちゃん!!」

 

モモは驚きのあまり動けず、ナナは殴り飛ばされたギガ・イノシシに近づく。

こいつ、自分の身体もトランス兵器にしてたのか!!

 

「…まさか、人間やめてたとはな」

「何かを得るためには何かを捨てなきゃね~私は力を手に入れる為なら人間を捨てるよ~」

「トランスっ!」

「…イヴちゃん、今の君と戦うつもりはないよ?」

 

ヤミは髪で複数の刃を作り月城に攻撃するが、月城の同じように複数の刃を作り対抗する。

最初は両者互角の攻防だったが、徐々に月城がヤミを押して行った。

 

「私が押されているっ!」

「開発者を舐めないで欲しいなぁ~」

 

ヤミは次第に防戦一方になって行き、月城はニヤニヤしながら、ヤミに攻撃していく。

このままだとヤミは間違いなく押し負ける負ける。

 

「真剣勝負の邪魔をするのは良くないよ、優斗くん?」

「っ!優斗!!」

 

俺が物を取り出そうとデダイヤルを操作した瞬間、それに気づいた月城は髪で手を作り俺を掴み引き寄せる。

 

「…月城、俺に構ってていいのか?」

「大丈夫さ~周りの有象無象に私を止められない」

「ユウトっ!」

「優斗さん!!」

 

近づこうとしたナナとモモは刃に阻まれ、ララも避けることしかできていない。

唯一の救いは才培さん達が俺達が戦っている隙にこの部屋から逃げてくれたこと…

 

「死んでもらうよ、優斗くん」

「ただで死ぬと思うか?」

「…?何その水鉄砲はただの玩具───っ!!」

 

デダイヤルから取り出した水鉄砲を月城の髪に向けてトリガーを弾く、その瞬間、月城の髪は燃えて俺を掴んでいたトランスは解除された。

 

「アアァァァァァァァ!?」

「…終わりだ」

 

俺は銃を月城に向けてトリガーを弾く、火だるまになって苦しんでいる月城を貫き、戦いは終わる───わけがなかった。

 

「なーんちゃって~」

「やっぱり、ダメか」

 

月城は弾丸を切り裂き、火を振う、火だるまになったはずの月城には火傷の跡すらなく、ダメージを負っているようにも見えなかった。

 

「さぁ、地獄を作ろうか?」

 

今は心底思う、この場にリトや美柑が居なくてよかったと…美柑がいたら俺を見て悲鳴をあげていた。

 

~恭子side~

 

戦いが始まって直ぐに私達は御門さんの誘導で部屋から脱出していた、フレイム星人の力を使って戦うつもりだったけど、御門さんに″足手まといになるだけよ、今は優斗くん達を信じましょう″と止められてしまった。

 

「お父さん!優兄を助けに行かないと!!」

「オヤジ!!」

「ダメに決まってんだろ!!おめーらが行ったところで何もできやしねー」

 

部屋を脱出してエレベーターと非常階段で別れて建物の外に出ようとする中、リトくんと美柑ちゃんは才培さんが掴んだ腕を振りほどいて、優斗くんの元へ行こうとする。

 

「…でも!」

「あのクズを殴れないのは悔しいが、お前が言っても足手まといだ、才培の娘」

「…優兄を利用した人の話を聞くと思いますか?」

「…確かにそうだな、だが、俺は知っている、大切な人を失った時の辛さが…もしお前が死ねば優斗は一生後悔する、今の俺のように…」

「っ!」

 

″信じて待つしかない、帰ってくるのをな″と春馬さんは美柑ちゃんに言うと春馬さんに肩を担がれていた変態───瑠偉さんが目を覚ました。

 

「なにかしら、この状況、なんであたしこんな場所にいるの?」

「…起きたなら自分で走れ、瑠偉」

「そうだぜ?ゴリラ、おめーは重いんだよ」

「ダァレがクソカマゴリラですってぇ!!」

「「そこまで言ってねー(ない)」」

 

春馬さんと才培さんは瑠偉さんを見ながら呆れたようにため息を着く。

息ぴったり、この人達、ホントに仲良かったんだ、なんかすっごい意外。

 

「え?何?なんで二人仲良いのよォ!あたしが寝てる間に何が───」

「うるさいぞ、瑠偉」

 

″喋ってないで足を動かせ″と担いでいた春馬さんは雑に瑠偉さんを投げ出す、瑠偉さんは″いきなり何すんのよォ″と言っていたが、春馬さんと才培さんは無視をして話し始めた。

 

「リト、美柑、オレたちに出来るのは無事に脱出することだァ」

「わかったなら逃げるぞ」

 

そう言って非常階段から逃げていると上の階から爆発音が聞こえてくる。

 

「なんだよ!今の音!」

「息子ちゃん落ち着きなさい?ただの爆発音よ、爆誰かが爆弾を投げただけよ、安心なさい」

「今の何処に安心できる要素があったのか、教えてくれ、瑠偉」

「つーか!なんで爆弾なんで分かんだよ!ゴリラ!」

「一応あたし軍人だからね!舐めんじゃないわよ!!」

 

才培さんと春馬さんと瑠偉さんの三人はこんな状況なのに何故か笑っていた、まるで昔を懐かしむ様に…

それを見た美柑ちゃんは″お父さん、状況理解して?″と言うと才培さんは″すみませんでした″と謝っていた、今逃げてるんだよね、何してるのこの三人。

 

[──────さん]

「…え?」

「キョーコ?どうしたの?」

「いや、今声が…」

[霧崎───さん、───貸してほしい]

「…何も聞こえないよ?」

「え?でも今間違いなく…」

 

間違いなく聞こえた誰かが私を呼ぶ声が…

私はそう思って後ろを振り返ると緑の迷彩服をきた男の人が上の階に向かって歩いていった。

 

[優斗の為に力を貸して欲しい]

 

その言葉を聞いた瞬間、私の中の何かが警告を始める、行かないと後悔すると…

 

「…ルン、先に行って」

「え?ちょっとキョーコ!!」

「必ず戻るから!」

 

迷彩服の男性を追いかけて上の階の廊下へ行くとモデルにもなれそうな美形の男性が私の方を見ていた。

 

「あなたは誰?優斗くんの為に力を貸すってどうゆうこと?」

[僕は…───、すまないけど、多くを語る時間がないんだ、刀を優斗に届けて欲しい]

 

名前の部分がノイズの様な音で聞き取れない、男性は時間がないと行って″着いてきてと言って走り出す。

 

「待って!?刀って何!!」

[霧崎恭子さん、君はあの刀を今日ここで見たはずだ]

「…今日?」

 

───この刀はね?11年前に山奥で見つかった物なの、オークションで勝ち取ったのだけど、この刀…すごいのよ?

 

───見つかった当日、刀には血が着いていてDNA鑑定してもその血は、この世界に存在しない人間の血らしいの、それにかなり使い込まれているのに切れ味も美しいさも変わらない!素晴らしい刀でしょ?

 

確かに見た彼女が持っていた不思議な刀、でもなんであれが必要なの?

私が疑問に思って男性に着いていくと、前を走っていた男性の身体が徐々に薄くなっていく、男性もそれに気付いたみたいで″…もう時間なのか″と悔しそうに呟いた。

 

[…刀は彼女の部屋に残ってる]

「…え?」

[自分勝手なのはわかってる、けど、君にしか頼めないんだ、お願いだ優斗に刀を届けて欲しい]

「ちょっと待って!!」

[…僕の親友を助けて欲しい]

 

男性は私を見て何かを後悔しているような、悲しいそうな顔をして消えていった、一体なんだったの?

 

「…行かないと」

 

私は走り出した、初めて会った人だけど、悪い人じゃなさそうだし、それに優斗くんの事を親友だと言っていた。

 

「着いた!!」

 

天野穂風さんの部屋に着いた私は、中に入り周りを見渡すと、細長い木の箱を見つけた。

中には彼女が持っていた、黒い鞘の刀が入っていた。

 

「これを…優斗くんに」

 

木箱から、刀を取り出すと美しい鞘から刀身を見ると私の顔が反射する、刀に何も詳しくない私が見ただけでわかるほど、綺麗で美しい。

 

「っ!見惚れてる場合じゃない!急がないと!!」

 

最上階の優斗くん達が戦っている結婚式場に行く為、刀を持って非常階段を駆け上がる、上の階に上がるにつれて爆発の音や何かがぶつかり合う音がどんどん大きくなっていく、息が切れて走れなくなりそうになっても私は自分の身体にムチを打って走り続けた。

 

「はぁ…はぁ…優斗くん…」

 

お願い…間に合って、そう思いながら、最上階に着いた私は、結婚式会場の扉を開く。

 

「…っ!ウソ…」

 

中に入るとさっきまで綺麗な結婚式会場だった場所はボロボロで、窓は割れていて、壁には切り刻まれた跡や叩きつけらたような跡があった。

その中心ではクラウンと呼ばれていた男が高笑している。

 

「アハハハハっ!!どうだい!!これが今の私だよ!優斗くん!!」

 

ナナさんとモモさんの二人はボロボロの姿で倒れて気絶していて、ララさんとヤミさんは肩や腕を抑えながら、辛うじて立っていた。

 

「っ!優斗くん!!」

 

優斗くんの身体は、他の4人よりも傷だらけでボロボロなのになんとか立ち上がって、クラウンって人を睨んでいた。

 

「…月城っ!」

「まだ立てるんだぁ~さすがだねー!」

「…お前は、ここで終わらせる」

「今の君は輝くんを殺そうとした時と同じ目をしてるよ」

「…なに?」

「あれ?もしかして輝くん、死ぬ前に優斗くんに教えなかったの?」

 

 

「輝くんに致命傷を与えたのは私だよ?」

「月城ォォォォォォォォっ───グフッ」

 

その言葉を聞いた優斗くんは叫び出して、クラウンに殴ろうとした瞬間、吐血して膝を着く。

きっと立ち上がるのがやっとだった、そんな状態で無理に動いたから…

 

「残念、届かなかったね?」

「……っ」

「試してみたいこともあったし、せっかくなら冥土の土産に見せてあげるよ、第3世紀のトランス能力の真骨頂を…」

「優斗くん!!」

 

私が刀を届けようにもここからじゃ距離があって間に合わない。

クラウンって人は手を前に出して″あれ、なんだっけ?確か特撮の番組の~″とか言っていると、私の手元にあった刀が光り始めた。

 

「思い出した~燃やして解決!」

 

そういった瞬間、優斗くんに向かって手から炎を出した。

あれってフレイム星人の能力!なんであの人がっ!

 

「刀がっ!!」

 

光った刀は私の手元から離れて優斗くんの元へ向かっていく。

 

「?あの刀、何処かで…」

「優斗くん!その刀受け取って!!」

 

業火が優斗くんを包み込む前に、刀が優斗くんの前に突き刺さった。

 

 

~優斗side~

 

月城が放った業火が俺を包む前に、恭子さんの声と共に目の前に刀が突き刺さる。

 

「っ!?この刀!!」

 

この世界に存在するはずが無い刀を見て驚いていると業火が俺を包み込む…はずだった。

 

「…は?」

 

向かってきた業火を切り裂き、見知った女性の幻影が俺の目の前に立っていた。

なんで幻覚のあなたがここにいるんだ?

 

[私が与えた力で誰かを救う所を見せるんじゃなかったのか、優斗?]

「なんで…ここに…」

[私から受け継いだ意志を…私を倒したお前の力を…あの偽りでできた道化師に見せつけろ]

 

俺の周りは業火で燃え広がっていたが、俺の場所はだけは、無事だった。

業火を切り裂いた″冬華教官″は俺を見て笑顔を浮かべて消えていった。

 

「…何故だ?何故、戦国冬華が現れた?」

 

月城にも冬華教官が見えている?まさか、俺の幻覚じゃないのか?いや、そんなことは今はどうでもいい。

俺は刀を取って鞘から抜き放ち、月城へ向けて告げる。

 

「道化師、俺達の不滅の意思を見せてやるよ」

 

月城は″ありえない、その姿は…″と言って俺を見て顔が歪む。

何故かは分からないが身体が軽く、痛みもない、これなら…行ける。

俺は月城に向かって走り出す、月城もトランスで変えた複数の刃で攻撃してくるが全てを受け流して突破する。

 

「馬鹿な!こんな事ありえない!」

「余裕がなくなってきたな?大丈夫か、月城?」

「黙れぇ!!」

 

月城が刃に変えた腕と俺の刀がぶつかり合う、何故、月城が俺の姿を見て焦っていたのか、刀身に反射した俺の姿を見て気づいた…

そこに写っていたのは、黒い迷彩服に身を包み、成長した俺の…前世の姿に戻っている俺が写し出されていた。

なるほどな、だから月城はありえないことだと言って焦っていたのか。

 

「…落ちつけ、私!!真っ向な力比べで優斗くんは私には勝てない!!」

「それはどうかな?」

 

互角だった鍔迫り合いは、徐々に俺が優勢になっていく。

 

「なんでっ!」

「偽りの力でしか戦えないお前に負けるほど、俺達は弱くない!!」

 

刃を弾き、月城の身体を上から斬りつける、斬られた月城は吐血しながら、俺から距離を取り、髪を刃に変えて攻撃してくる。

 

「刃に変えるなら、髪先だけじゃなくて髪の根元まで変えておけ」

「っ!?」

 

刃に帰られていない場所を掴み、そのまま思いっきり引っ張って月城を壁に叩きつける。

 

「今の言葉は!」

「優斗のお母さんの言葉だ!!」

 

ヤミとララさんは俺の言葉を聞いて冬華教官を思い出したらしい。

 

「ヤミ、ララさん、二人を連れて外に出ろ」

「え!ユウト一人じゃ危ないよ!!」

「私もまだ戦えます」

「…ここまでやってくれただけで十分だよ」

 

会場は月城が放ったの炎が燃え広がって長くは持たない、今のうちに逃げ出さないと、間に合わなくなる。

 

「霧崎さん、刀を持ってきてくれて、ありがとう」

「…え?」

「みんなを…頼んだ」

 

霧崎さんに四人を任せて、月城を見る。月城は″クソ、なんで勝てない″と頭を掻きむしりながら出てきた。

 

「考え事か?ここは戦場だぞ?」

「っ!早い!」

 

月城に近づき、刀を振り下ろす、月城も腕を刃に変えるがもう遅い。

 

「アァァァァァァァっ!腕がァァァァア!!」

 

俺の刀は月城の右腕を斬り、斬られた右腕は宙を舞う。

「まずいっ!このままだと!!私はぁ」

「さっきまで随分楽しそうに笑っていたのに、今はこのザマか、月城」

 

腕を斬られた月城は、俺から逃げるように距離を取ろうとするが、俺は右手に持っていた銃を向けトリガーを弾く。

 

「ァァァァアっ!」

「やっと当たったな?」

 

弾丸に足を貫かれた月城は、膝を着いて動けなくなる。

それを見た俺は月城に向かって左手で刀を構えて突きの姿勢に構える。

 

「っ!!その体勢は!!」

「この一撃に全てベッドする!」

「…クソがァァァァァァァァ!!」

 

俺は全力で踏み込んで突きをする、その瞬間、身体が悲鳴をあげた。

 

「ッ!」

 

恐らく元の身体に戻ってしまった、肺に入った血で息が苦しくなり、腹部の出血は止まらない、それでも俺は突き進む。

 

「姿が元に戻ったか!今なら!!」

 

月城はチャンスと言わんばかりに髪をトランスで刃に変えて大振りに刃を振るう。

 

「死ねぇ!!雨宮優斗ォォォォォォォォ!!」

 

俺の刃は月城の腹部を貫き、 月城の刃は俺には届かず、天井や床を切り裂いた。

 

「どこを狙ってる、月城?」

「グッフ…君の突きを…止めれるとは…思ってないよ…?」

 

月城がそう言った瞬間、俺達の上にあった天井が降ってくる、俺は刀を引き抜き後ろへ後退する、俺達がいた場所には瓦礫が突き刺さっていた、天井と床が音を立てて崩壊していく。

…なるほどな、そうゆうことか、月城は勝てないと判断したから、あえて天井と床を斬ったのか。

 

「…まだ、私は助かる…建物の崩壊と同時に飛び立てば…でも…優斗くん…君は崩落に巻き込まれれれば…間違いなく…助からない…」

「……」

「入口も…炎に包まれているから…ね…」

「相変わらず…よく喋るな、月城」

 

月城は″トランス″と言って背中に翼を生やして飛び立とうとする。

 

「銃を構えても…無駄だよ…当たるようなヘマはもうしない」

「……」

「…さようならだ…優斗くん」

 

俺は刀をしまい、デダイヤルを操作する、月城が飛び立った瞬間にデダイヤルから取り出した物を月城に向かって投げた。

 

「空き缶?気でも狂ったかい?それにそんな物…当たらないって…言っただろ?」

「当てる気はない」

 

俺は投げたあき缶に向かって銃を向ける。

 

「…は?」

「こうするんだよ、月城」

 

俺は銃のトリガーを弾いた。

 

「まさか!その缶───っ!?」

 

月城が避けた弾丸が貫かれた空き缶は大爆発を起こして、月城の片羽は使い物にならなくなり床へと落ちる。

 

「″ステイルメイト″」

 

俺の言葉と共に床が崩れ、俺と月城はビルの崩落に巻き込まれて落ちていく。

…悪いな、みんな、どうやら戻れそうにない。

 

 

 

~美柑side~

 

タイムレインズカンパニーから、気絶したナナさんとモモさんを担いだヤミさん達が出てくる、でもそこには優兄の姿がなかった。

 

「っ!酷い怪我だわ、すぐに治療するわよ!」

 

キョーコさん以外の四人はボロボロで、御門先生はすぐに治療を始めた。

 

「ヤミさん!優兄は!!」

「…優斗は中にいます」

「まだ…クラウンと戦ってる…私達は逃げろって言われちゃった」

「それってかなりやべーだろ!!」

 

リトはタイムレインズカンパニーを見て叫ぶ、結婚式会場は燃えていて、戦いが終わった後、優兄が脱出してこれるかどうか…

 

「優斗を助けに行きますわ!」

「ですが、沙姫様一体どうやって───っ!?」

 

九条さんが話している途中にタイムレインズカンパニーが爆発して、結婚式会場から数階下まで崩れて崩壊する。

 

「…ウソでしょ?」

「優兄っ!?」

「待てっ!美柑っ!一人は危険だ!」

「ペケ…美柑に着いて行ってっ!」

[ララ様ですが!]

「早く!!」

 

私はリトの静止を無視して走り出す、中に入ってもエレベーターのボタンを押すが反応しない。

 

「非常階段から行くしかないっ!」

 

果てしないのはわかってる、でも非常階段から最上階まで登ろうとすると後ろから着いてきたペケに声をかけられた。

 

[美柑さん!空から上に行きましょう!]

「ペケ!でもどうやって…?」

[私がいるじゃありませんか!]

 

ペケが私の頭にくっつくとララさんがいつも着ているドレスフォームになって空を飛ぶ。

いつもなら凄く恥ずかしいけど、今はそんなことはどうでもよかった。

 

「優兄っ!!」

 

優兄がいた最上階だった場所は崩れていて瓦礫の山だった。

嫌な想像が頭を過ぎる、この中に優兄がいたら、もうきっと───

 

[もし、この崩落に優斗殿が巻き込まれていれば、おそらく命は…]

「まだ、わからない!」

 

嫌な想像とペケの言葉を振り払い、私は瓦礫の上から優兄を探し始めた。

 

 

~優斗side~

目が目を覚まして、周りを見渡すと、辺りには瓦礫と炎に包まれていた。

 

「…まだ、生きてたのか…」

 

自身の生命力に自分でもびっくりする、右肺や腹部に弾丸を受けて…月城のトランスによってボロボロになって…崩落に巻き込まれて…普通の人間なら、間違いなく死んでる。

 

[…優斗]

 

俺の目の前に緑色の迷彩服を着た輝が現れて近づいてくる、俺が負傷した箇所も場所も輝を殺した時と酷似していた…ただ、一つだけ違う点があった。

 

「あの時とは…状況が真逆だな…輝」

[…そうだね]

 

俺の質問に普通に返してくる輝、最初は幻覚だと思っていたが…まさかこいつ…

 

「お前、幻覚じゃないな?」

[…そうだよ、僕は君が見ている幻覚じゃない…]

「今まで見てきた幻覚も違うんだな?」

[……]

 

今まで出てきた幻覚はずっと俺を導くような、アドバイスをするような事ばかり言っていた、まるで俺に二度と後悔させないように…

 

「…てことはお前だな?霧崎さんに…刀を届けさせたの?」

[…よくわかったね?]

「そんなことするのは…お前しかいないだろ…」

 

霧崎さんが前世の俺の武器を知るはずがない、それにもし今まで見てきた幻覚が、本人その物の魂か何かだったなら、最近出てきた幻覚は輝しかいなかった、刀を届けさせたのは輝しかいない。

 

「霧崎さんに…何かあったら…どうするつもりだった?」

[霧崎恭子さんに何かあっても、きっと優斗が守るって信じたんだ]

「…お前なぁ」

 

こいつ、月城が霧崎さんを狙って守り抜けなかったら、どうするつもりだったんだ?でも…輝のおかげでみんな、助かった。

 

「…ありがとな、輝」

[え?]

「お前のおかげで…みんなを守れた」

[うん、どういたしまして」

 

俺は輝に感謝すると同時に一つ文句を言いたいことができていた。

 

「…お前…月城に致命傷を負わされた事…黙ってたろ?」

[…ごめん、優斗]

「なんで…言わなかった?」

[話せばきっと呪いになって背負わせる事になる、優斗にこれ以上背負わせたくなかった]

 

確かにあの時の俺が輝からその事を聞いていれば、きっと春馬さんの様に背負い込んで堕ちていたかもしれない。

 

「…あの世で一発殴らせろ…それでチャラだ」

[わかったよ]

 

これでいい、地獄に行く前に輝に聞いておきたかった事は全部聞けた、あとは俺の物語を終わらせるだけだ。

 

「…輝…最後に…頼みがある…」

[頼み?一体何を…]

「俺を…楽にしてくれ…輝」

 

俺は最後の1発が入った銃のトリガーを輝に向ける。

 

「そんなのダメだ!優斗は───」

「…見たらわかるだろ?もう…俺は助からない…」

 

輝は苦虫を噛んだような顔をしながら、銃を受け取る。

親友に最期を看取ってもらえるなら、悪くない最期なのかもしれないな。

 

[優斗、僕はずっと後悔していたことがあるんだ]

「…急に…なんだよ」

[″君が背負っている物を僕にも半分背負わせてもらうよ″なんて言ったのに…僕は優斗の隣に最後まで立つことができなかった]

「……」

[親友の優斗の隣に最後まで立っていたかった…僕はもっと優斗と駿と笑いたかった…]

「…輝」

 

輝は涙を流しながら俺に言う、特殊部隊でずっと一緒にいたはずなのに、輝が泣いている所なんて初めて見た。

 

「…俺も一人は寂しかったよ」

[っ!!]

「この世界で…リトが───親友は出来たけど…俺を変えて…導いてくれた親友は…虹崎輝だけだった」

 

この世界で親友ができても、俺にとって輝は今でも大切な親友だ、だから───

 

「あの世で会えたら…また三人で笑い合おう…だから…それまではお別れだ…」

 

俺の身体が苦痛に苛まれる、それでも伝えないといけない、あの世で輝に会えるか分からないから…

 

「さよなら…親友」

[あぁ…さようならだね、親友]

 

輝は俺から受け取った銃を俺に向けてトリガーを弾く、弾丸は俺の眉間を貫くはずだった。

 

[まだ、こっちには来るなよ、優斗]

 

輝は上に向けて銃を発砲する、弾丸は瓦礫の隙間を通り空へと向かって放たれた。

なんでそんな場所を撃つ、そんなことをしてもなんの意味もないのに…

 

「優兄っ!!」

 

瓦礫の外から美柑の声が聞こえてくる、今の銃声と弾丸でこの場所に気づいたようだ。

なるほどな、最後の1発で美柑に居場所を伝える為に上に撃ったのか。

「っ!?優兄!!」

[美柑さん!万能ツールを!!]

 

瓦礫の微かな隙間から、俺を見つけた美柑はペケから万能ツールを受け取って瓦礫を破壊し始める。

輝がいた場所を見ると底には誰もおらず、俺が渡した銃が地面に落ちているだけだった。

 

[よくご無事でしたね、優斗殿!]

「怪我が酷い、急いで御門先生の所に!」

[私に任せてください!!]

 

ペケが俺と美柑にくっつき衣装を変えて、空へと飛び立つ。

 

「…美柑」

「喋らないで!今話したら、優兄がホントに死んじゃう!!」

「…心配かけてごめん」

 

俺がそういうと美柑は俯いて涙を流す、きっとたくさん心配させた。

 

「…ホントだよ、私がどれだけ心配したか、優兄にわかる!」

「ごめん」

 

美柑と脱出した俺は謝ることしか出来なかった。




長くなりすぎましたのでここで切ります。誤字など見つけましたら、報告して頂けるととてもありがたいです。
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