ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~   作:アイスが食べたいマン

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~溢れる想いと記憶~

 

物心ついた時から、優兄は私とリトのそばに居た。

向かいの家で一人で住んでいてリトと同い年の子、それなのに誰よりも落ち着いていて、周りをよく見ている人、子供なのに大人みたいな不思議な人、それが最初の私の印象だった。

 

私が小さい頃はお母さんとお父さんは家にいることが多くて、家事もお母さんがしていた。

お父さんはよく優兄を家に呼びに夜ご飯を誘っていたけど、その頃の優兄は遠慮して断っていたのをお父さんが無理やり連れてきていた。

 

なぜそこまでお父さんがするのか聞くと優兄のお父さんとは昔から親友らしい。

 

「あいつがいない間は俺がしっかり見てやらねえと、それに一人は寂しいだろ?」

「優兄のお母さんは?」

「……優斗をすぐに産んで亡くなったらしい」

「え?」

「病気だったそうだ」

 

お父さんはそういっていた、でもお父さんも全く帰ってこない優兄のお父さんに少し思うところはあるみたい。

 

「あいつまだ子供の優斗を置いて海外に行きやがった、せめて連絡したり、誕生日くらいは祝いに来いよ」

 

優兄のお父さんは誕生日でも連絡一つしてないらしい、お母さんも亡くなっていて、優兄はずっと一人で家にいる、優兄が必要になった物をメールで送らない限りメールも送ってこない、授業参観にも来ない、三者面談の時も優兄のお父さんは帰ってこようともせず、お父さんが代わりに参加した。

会ったことは無いけど、優兄を一人にしてずっと帰ってこない優兄のお父さんが私は嫌いだ。

 

お母さんやお父さんが仕事で帰って来れない時は、いつも優兄が家事や植物の水やりとか、お母さんがやっていたことを一人で全てやっていた。

それなのに私は優兄が作ってくれた料理を。

 

「お母さんの料理じゃなきゃ食べない!」

 

そうわがままをいって優兄が作ってくれた料理を食べようとしなかった。

それでも優兄は怒るどころか、頭を撫でてくれて

 

「一口食べてみて?多分林檎さんの料理と味変わらないと思うよ?」

「うそだよ、そういって食べさせようとしてるんでしょ!」

「信じなくてもいい、ただ一口だけ食べてほしいんだ」

 

その時の私は半信半疑で優兄のご飯を食べた。

 

「え?お母さんの味だ、なんで?」

「リトくんや美柑ちゃんが食べたいかなって思ってこの前、林檎さんに作り方を教えてもらった、この料理なら林檎さんが作った物に近い味のものが作れるよ」

 

優兄は優しい、いつも私やリトの事を考えてくれていた。

 

「わがままいってごめんなさい、優兄…」

「謝らなくていいよ、美柑ちゃんは我慢しないでもっと甘えて、我儘を言っていいんだ」

「え?でも…」

「欲しい物があるなら欲しい、嫌なものは嫌だ、寂しい時は寂しいって言っていいんだよ」

「ホントに?」

「約束する、美柑ちゃんが甘えてきたり、我儘を言った時は俺にできることなら何でもするよ、だからたくさん甘えて、我儘を言ってね」

 

優しすぎだよ、優しすぎるよ優兄…

それから私は優兄にずっと甘えていた、

 

優兄!今日の夜ご飯オムライスがいい!

 

雷が怖くて寝れないから隣で寝てもいい?

 

リトより優兄と一緒にお風呂に入りたい!

 

どんなわがままでも優兄は「わかったよ」って言ってそれに答えようとしてくれた。

お母さんやお父さんやリトにできなかった。甘えたりわがままを言うこと、でも優兄といる時だけ私は言うことができた。

 

 

 

 

優兄とリトが5年生になって林間学校に行くことになった時、私は体調が悪かった、でも言えなかった。

リトは楽しみにしてるし、優兄もきっと楽しみにしてると思って、お母さんは海外でお父さんは今日だけはどうしてもお仕事を抜けれないみたいだから、心配させないようにいつも通りにしようって。

 

「じゃあ美柑!オレたち行ってくるな!お土産楽しみにしてろよ!」

「うん…」

「…」

「どうした?優斗行こうぜ?」

「あぁわかった」

 

優兄とリトは林間学校に行ってしまった。

熱を測ると38℃を超えていた。あの時、私は我慢せず、すぐにお父さんに電話すれば良かったのに。

 

(どうしよ、頭痛い、熱もある、お父さんに電話しようかな、でも、)

 

そんな考えをしていたら、目眩が酷くなって床に倒れそうになって。

 

「美柑ちゃん!!」

 

私を呼ぶ声が聞こえてきて、床に倒れそうだった私を優兄は抱えてくれた。

 

「熱が酷い、とりあえず、病院に…」

「優兄?なんでいるの…林間学校は…」

「体調悪そうだったから、学校途中で抜け出してきた」

「どうして…」

「そんなことより病院いくよ」

 

その後、優兄は病院に連れて行ってくれて、私が元気になるまでずっと看病してくれた。

私が寝るまでずっとそばにいてくれた。

 

「優兄、林間学校行かなくて良かったの?」

「大人になってからまた行けばいいよ、それより美柑ちゃんの方が大切、なんで黙ってたの?」

「優兄とリトに心配しないで行って欲しかったから」

「…気持ちは嬉しいよ、でもそれで、美柑ちゃんに何かあったら俺は林間学校に行ったことを死ぬほど後悔する、だから次は我慢しないで体調が悪くなったら絶対に言ってね?」

 

嬉しかった、体調が悪い私のために帰ってきてくれて、辛かったけど、私はこの時、少しだけ熱が出てよかったって思った。

 

そして私は気づかなかった、優兄が酷く後悔して辛そうな顔をしていたことに。

 

 

私が小学1年生になって、優兄とリトは小学6年生になった。

私はずっと優兄と一緒にいることができるってこの時の私はずっと思ってた。

 

そんな時に私は見てしまった。

 

(あ、優兄だ!あの子、優兄のクラスの女の子かな?一緒になにしてるんだろ?)

 

「時雨くん!好きです!!私と付き合ってください!」

 

優兄が女の子に告白されている所を見てしまった。

 

優兄が告白した女の子と一緒に遊んでいる所を、優兄が告白した女の子と手を繋いで歩いてる所を、テレビドラマみたいにキスしてる所を想像してしまった。

 

胸が張り裂けそうで辛くて、私から離れてしまう優兄を想像してしまい涙が止まらない。

 

その時、初めて気づいた。

 

(私は優兄ことが好きなんだ)

 

異性として優兄が好きなことに、恋をしていたことに。

 

きっとずっと前から、私とリトの事を考えてくれてる事がわかった時から、優兄のことが好きだった。

 

優兄が返事をしたらしく、女の子は泣きながら走っていく。

優兄は告白を断った、まだ間に合う。

学校で優兄はモテる、誰にでも優しいし、困っている子がいたら助ける、それに顔だってかっこいい。

 

(負けたくない、優兄を取られたくない)

 

これからは優兄に甘えてばっかじゃなくて自分を磨いて優兄に見てもらう、優兄が私を好きになるようにアプローチしよう。

 

「私も優兄と一緒に料理を作りたい!」

「急だね、なんかあった?」

「優兄と料理がしたいからできるようになりたい」

「それと優兄、これからはちゃん付けやめて」

「え?でも」

「これからは呼び捨てにしないと無視するから」

 

私は帰ってからすぐ優兄に料理を教えて欲しいと頼んだ、でもこれだけじゃ足りないから家事全般出来るようになる為に頑張った。

 

「優兄!これどうかな?」

「似合ってると思う」

 

優兄の好きそうな服を探したり、

 

「優兄はアイス以外だと、なんの食べ物が好き?」

「うーん、シチューとかかな」

 

優兄が好きな料理を聞いたり、

 

「優兄、この髪型どうかな?」

「髪結んだんだ、似合ってるよ」

 

優兄がどんな髪型が好きか色々試してみた。

 

そして時間が過ぎて優兄とリトは中学3年生、私は小学4年生の時に見てしまった。

 

(優兄、寝たかな?)

 

その日は優兄が泊まりに来てた、私は優兄が寝たのを見計らってから、こっそり隣に潜り込んだ。

 

(優兄、寝顔もかっこいいのずるいよ)

 

「…はぁ…はぁ、やめ…ろ」

 

(うなされてる?嫌な夢でも見てる?)

 

優兄が少し苦しそうにしていて、時間が経つにつれてそれがどんどん酷くなって。

 

「うぁ、ぁぁ、ああ」

 

気づけば汗も酷いことになっていた。

 

「優兄?優兄!起きて!優兄!!」

「……!?み…かん?なんで、ここに」

「優兄!?大丈夫!?」

 

目を覚ました優兄は顔色も悪く汗も酷かった。

あんなに苦しんでいる優兄を見て、もしかしたらこのまま目を覚まさないかと思うほどだった、気づいたら、私は泣いてしまった。

 

「…ごめん心配かけたね」

 

その後、優兄どんな夢を見たのか聞いても「覚えてないかな」って言って教えてくれなかった。

その日から少しずつ優兄が泊まることが減って行った。

 

きっと優兄はなにか隠してる。

優兄が何を隠してるか分からないけど、いつか教えてくれるように頼ってくれるようになって欲しい。

 

 

 

 

そして私のことを好きになって欲しい。

 

 

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