ToLOVEる ~ 生まれ変わった意味を探して~ 作:アイスが食べたいマン
わたしはマスターの代わりに銀河から来るお客さんを迎える為、彩南町の裏山にいた。
(マスターが言ってた、わたし達と同じ闇の住人…どんな人が来るのかな?)
そんな事を考えていると、一機の宇宙船が地球に着陸して中から人影が現れる
「地球へようこそぉ~♫」
わたしは腕を後ろで組んで銀河から来たお客さんを元気よく歓迎する。
「…あんたがネメシスかい」
「違うよーわたしはマスターの代理のメア。マスターは、あんまり人前に出たがらないの」
「代理?」
私の言葉を聞くとお客さんは″やれやれ…″と言いながら、暗闇から姿を表した。
「金色の闇を求めて、こんな辺境の星まで来てみれば、出迎えがこんな小娘とはねェ」
「ムッ」
「アタシをヤツにぶつけてどうする気だい?」
「知らないよ!わたしはマスターに言われた通り、あなたに伝えただけ!」
わたし、小娘じゃないし!
わたしはムッとした顔をして、お客さんに向かって怒ったように言う。
「フ…まぁいいさ、おかげで長年追い続けた金色の闇の尻尾をつかめたんだ、ヤツさえぶち殺せりゃアタシはそれでいい…」
お客さんはわたしの横を通り過ぎて暗闇の中へ向かって歩いていく。
この人はヤミお姉ちゃんの足元にも及ばないのに、ホントに殺せるって思ってるのかな?
「″期待してろ″ってネメシスってヤツに伝えなよ、小娘…くくっ」
わたしに告げるとお客さんは不敵に笑いながら、暗闇の中へと姿を消した。
「何よアイツ、かんじわるっ!!」
『好きにさせておけ、メア…』
「マスター」
暗闇に消えた、お客さんに向かって文句を言うとマスターの声が聞こえてくる。
マスター声と同時にわたしの目の前に人の様な形をした黒い影が現れた。
『″暴虐″のアゼンダ、かつてタルハ銀河で名を馳せた殺し屋……しかし…大戦終結後、組織同士の抗争に置いて金色の闇と戦い敗北……闇の世界でのアゼンダの名は地に堕ちた』
へぇー、あんな弱そうなのに、昔は銀河で名を馳せた殺し屋だったんだ。
『その復讐心…金色の闇の闘争本能を呼び戻すのに丁度良い……失われた闘争本能を取り戻す事が結城リト抹殺へと繋がる………』
「リトせんぱいの…抹殺…」
───黒咲さん、ナナは黒咲さんと友達になって、すごく喜んでいたんだ…だから仲良くしてあげてね
頭によぎったのは時雨優斗せんぱいの言葉、ナナちゃんはヤミお姉ちゃんが結城リトせんぱいを抹殺したら、悲しむのかな?
『…どうした?メア』
わたしが考え事をしているとマスターが話しかけてくる。
「あ…いえ、ヤミお姉ちゃんが結城リトせんぱいを抹殺したら、ナナちゃんはなんて言うのかなぁ…って」
『メア…!余計な事は考えるな、お前も金色の闇も戦うために生まれてきた兵器、生きるべき世界は、闇の中にしか無いのだから』
「はい、わかってますよ、マスター」
そう…わたし達は兵器、闇の中でしか生きられない…
───目を逸らさずに自分の意思で決めるんだ
───誰かの命令を受けてじゃない、自分が本当にやりたい事は何なのか
時雨優斗せんぱいの声をまた思い出す、まるでわたしに考えろと言っているように…
◇
~ヤミside~
電柱の上に立って、早朝の彩南町を眺めながら、考える。
この星に来てどのくらい経っただろう。
私は───いつまで彩南町に居られるだろう……
黒咲芽亜のマスターは私にこう言った″君の本質は闇…地球人と仲良くできるはずがない″
…そうなのかな…そうかも…知れないな……
───黙って聞いておけば、殺戮以外に生きる価値などないとか、好き勝手言ってくれたな?
「っ!?」
思い出すのは黒咲芽亜のマスターが言った言葉を否定する私の大好きな人の声。
───ヤミは兵器じゃない、人間で普通の女の子だ
───それに今のヤミの居場所は此処だ、誰がなんと言ってもそれだけは譲らない
黒咲芽亜のマスターに何を言われても、優斗は私の手を握り否定してくれた。
───金色の闇は殺し屋だ、人を殺す力を持っている
───人を傷つける力は使い方次第で、人を救う力になる、実際に俺も″後輩″もヤミの力で救われた
優斗は人を殺す以外で使い道のないこの呪われた力に救われたと言ってくれた。
───クククッ…心底面白い男だな?だが、忘れるな?金色の闇は殺し屋、ターゲットである結城リトを必ず殺す
───ヤミはもう誰も殺さない、いや…絶対に殺させない
もし私が結城リトを殺そうとすれば…きっと優斗は私と結城リトを救う為に命をかけて私を止める。
こんな私にどうしてそこまでしてくれるのか…私にはわからない…
───ヤミは此処に居ていいんだ
───…だから傍で笑っていてくれ、ヤミには暗い顔をして欲しくない…
「…どうして、そんな恥ずかしい言葉を私なんかに言ってくれてるんですか、優斗」
空に向かって告げる、届くはずがない、ここにはいない、私の大好きな人に向かって…
───…いつも言ってるだろ?後悔したくないからだよ、ヤミ
私の言葉を返すように頭の中で優斗の言葉が響き渡った。
「フフ…」
「うっひょーっヤミちゃん発見っ!!」
私は耳障りな声を聞いて一気に現実へ戻ってくる。
人がせっかくいい気分になっていたのに…この変態は…
「わしと一緒に早朝ジョギングで───ぐへぇっ」
私は変態の言葉を最後まで聞かずにトランスで変えた私の拳が変態の身体に叩きこんだ。
「…学校に行く準備をしないとですね」
私はルナティークへ戻るため、トランスで作り出した羽を広げて、空へと飛び立つ。
(今日は優斗とどんな話をしようかな?)
そんなことを考えながら、私は制服に着替えて、学校に行く準備を始めた。
「おっはよ~ヤミヤミ♡」
「あいさつがわりに胸を触るのやめてくれませんか」
「いいじゃん、減るモンじゃないしィー」
学校に来て廊下を歩いていると後ろから籾岡里紗に胸を触られる。
あなたは優斗だけじゃなく、何故女子生徒の胸を揉むのか理解できない。
「おっノーブラ?」
「ジャマですから」
「確かに優斗を襲う時にブラはジャマか~
「はい、脱いでる間に逃げられますから」
元から動く時にジャマだからつけていなかったが、最近は優斗を襲う時にジャマになると思ってつけていない。
「…ガチ過ぎない?」
「…あなたもそうでは?」
「私はこのブラとパンツで落とすつもりだから」
籾岡里紗は黒い下着を私に見せてくる、なんですかその紐を引っ張れば簡単に脱げてしまう、えっちぃ下着じゃないは…
「ま!このブラとパンツ、私が前に似たやつを優斗の家に置いていったから、優斗の家にもあるんだけどねー」
「…は?」
まさか、籾岡里紗が優斗を襲ったあの日に下着を置いて行った?
…ですが、優斗からそんな話は聞いていない。
「アイツ、私のブラで妄想してえっちぃことしてたりして~」
「…優斗はそんな事しませんよ」
「…確かに、優斗は絶対にしなそうだわ」
優斗がそんな事するなら、私達が襲った時点でとっくに一線を超えているはず。
それをしないということは、私達に興味が無いか、もしきは″そういう行為を前世でもした事がない″から分からないのか。
「優斗さん♡」
「…モモ、学校で抱きつくのはどうなのさ」
「これでも、我慢しているんですよ?だってホントは優斗さんを籾岡さんみたいに───」
優斗の腕に抱きつき、背伸びをして何かを囁くプリンセスモモの姿が見えた。
きっと″籾岡里紗みたいに襲いたいのを我慢している″とでも言っているのだろう。
「ちょっとモモちゃん!!校内でハレンチ行為は禁止ですっ」
「古手川さん…お話したい事があったからちょうど良かったです」
プリンセスモモは古手川唯に優斗に抱きついているのを注意されるが、古手川唯を見てニヤリと笑った。
「お話?一体何を」
「昨日の事や優斗さんの事など色々ですよ?」
「ッ!?」
「…ここではあれなので屋上で話しませんか?」
プリンセスモモは逃がさないと言わんばかりに顔を赤くした古手川唯の手を取り歩き出す。
「そういう事なので優斗さん、またあとで───」
「モモ、待って唯になんの話をするつもり?」
「………」
「あの話なら、俺は───」
「行きましょう、古手川さん!」
「え、ちょっ!!モモちゃん!?」
優斗からの追求を逃れる為、プリンセスモモは古手川唯の手を引いて走り出した。
プリンセスモモ、まさかあなたは、古手川唯にも話すつもりですか、優斗のハーレムを…
もし、優斗のハーレムが成功すれば、私は優斗の隣でずっと笑えるのかな…笑ってもいいのかな…そんな資格私にあるのかな…
「お!優斗1人じゃん」
「………」
「ねぇ、ヤミヤミ、たまには三人で話してみないって言うのはどうよ?優斗の好みのタイプとか聞いちゃったりしてさー」
「いえ、今日はそんな気分じゃないので…」
その言葉を聞いた籾岡里紗は断られるとは思っていなかったのか″マジ?″と驚いた顔で私を見ていた。
私はそんな籾岡里紗を私は気にせずに背を向けて歩き出した。
◇
学校も終わり、放課後になる。
籾岡里紗の誘いを断ってしまった…それを言ったら、少し前に言われたプリンセスモモが提案した内容も…成功すれば、優斗の隣にいられるのに……
なんで拒んでしまうんだろう、拒む理由なんてないのに………
私は考えながら、地球で二番目に出来た大切な友達───美柑が通っている彩南第一小学校の前で美柑を待っていた。
「あれ?ヤミさん!」
正門から出てきた美柑は、私を見つけて名前を呼びながら駆け寄ってくる。
「どうしたの?こんな所で、てゆーか彩南の制服姿初めて見たよ、カッコい───!!」
私の制服を見ながら興奮気味に言う美柑。
「…美柑」
「え?」
「たいやきでも…食べに行きませんか」
「うん!」
私は美柑と共にたいやき屋に向かって歩き出す。
さみしくなると優斗や美柑に会いたくなる、いつからかそうなっていた。
「…でね、昨日、古手川さんが優兄を手錠で拘束して襲ってたんだけど…多分その状況を作ったのはモモさんなんだと思う…」
「プリンセスモモが?」
昨日、古手川唯が優斗を襲う状況を作っていた…
───昨日の事や優斗さんの事など色々ですよ?
美柑の言葉を聞いて、プリンセスモモが学校で言っていた言葉を思い出す。
…やはり、古手川唯を屋上に連れていったのは…優斗のハーレム計画の為ですか、おそらく優斗の周りを囲んで、逃げられない状態でも作るつもりでなのでしょうね。
「まあ、そのお陰で───ができたんだけどね」
「ッ!!舐めたんですか!?」
「舐めたのもそうだけど、咥えたの方が正解かな?」
前に美柑とみた時の優斗のアソコは、とんでもく大きかった、おそらく男性の平均以上はあるはず。
そんな大きいモノを咥えた…美柑、流石ですね…
「…どうでしたか?」
「優兄の───慣れれば美味しいよ?何より優兄が顔を真っ赤にして顔がすっごいカワイかったよ」
美味しい…あんな大きいケダモノのようなモノでも美味しいのですね…私も…いつか…
「でも、なんでモモさんは、私とヤミさんに優兄を襲わないかって誘ってきたりとか古手川さんに優兄を襲わせたんだろ?」
美柑は″モモさんになんのメリットが…″と言って悩んでいる。
…美柑に話すべきなんでしょうか…優斗の事…私の悩みを…
「最近どーもあの人、何考えてるかよく分からないんだよね───」
「………」
「あ…ゴメンね、愚痴聞いてもらっちゃって」
「いえ…」
「………」
私はどうすればいいんだろう…どうしたいんだろう…わからない
「ヤミさん…何か元気ない?」
「え…そ…そんな事ないですよ」
「そうかなぁ…」
私を見て何か感じたのか、美柑が心配そうな顔をして声をかけてくる。
元気がないって、何故優斗や美柑にはわかるんだろう…
「あ…そうだ!すっかり忘れてた…」
「?」
何かを思い出した様に美柑はランドセルを開けて中から何かを取り出した。
「はいっコレ!たいやきとアイスのキーホルダー」
美柑が渡してきたが渡してきたキーホルダーを手に取り眺める。
キーホルダーには、たいやきとアイスの二つが付いていて細かい所までしっかり再現されている。
「けっこうデキがいいでしょ、お店で見つけてさ、ヤミさんと優兄にピッタリだと思ってつい買っちゃった」
美柑は嬉しそうにそう言うともう1つ何かを取り出し、私の前に何かを見せるように前に出す。
「私のもね、優兄と三人でおそろいだよ」
美柑の手には私に渡したキーホルダーと同じ物を持っていた。
…美柑と優斗と三人でおそろい…
「ありがとう…美柑…」
私は美柑と優斗から沢山の思い出をもらった…そして今度は大切な宝物が出来た…
「じゃあね、ヤミさん」
「はい、また今度…」
空も暗くなり、美柑と別れを告げて歩き出す。
おそろい……か……やっぱり、美柑と会うとやすらぐ、これが″友達″というもの……
───ヤミさん頼みがある、俺と友達になって欲しい
───あなたはなぜ、私とともだちになりたいのですか?
───ヤミさんの過去がどんなものか分からない、でも何となく俺と似てる気がした
───…似ているからともだちになりたいと?
───それともう一つ、俺はヤミさんが変わって幸せになるきっかけを与えたいんだ、だから覚悟しといてね?
「…あなたには貰ってばっかりですね、優斗」
「何が貰ってばっかりなの?」
「!?」
美柑から貰ったキーホルダーを眺めて、優斗の事を思い出していると後ろから声をかけられる。
後ろを向くと水が入ったペットボトルを持った優斗がいた。
「優斗…どうしてこんな所に?あなたの家は──」
「…ちょっと用事があったんだよ、ヤミは?」
優斗は一瞬、私から目を逸らして答えた、最近、美柑と一緒に気づいたが、優斗が一瞬、目を逸らしてから何かを話す時は何か隠し事がある時。
…今の優斗は何かを隠している。
「私は…美柑と会っていました」
「楽しかった?」
「…はい、いろいろおしゃべりしたりして…楽しかったです」
「そうか、なら美柑も楽しかっただろうね」
優斗は私を見て、まるで何かを懐かしむ様な顔で嬉しそうに微笑む。
「優斗、なんでそんなに嬉しそうなんですか?」
「ヤミと美柑が親友みたいに見えるからかな」
親友…優斗と結城リトの様な関係…そして前世の優斗と虹崎輝の様な関係。
私と美柑が…親友…
「きっと美柑もそう思ってるよ」
「何故、そんな事言いきれるのですか?」
「美柑はしっかりしているから、周りから頼られてるけど、実は昔から寂しがり屋で怖い話や雷が苦手で俺にしか甘えてこない…そんな美柑がヤミといる時は素が出てて本当に楽しそう笑ってるから」
優斗は懐かしむように美柑の話をする。
…美柑と昔からずっと一緒にいる優斗がそう言うのなら、そうなのかもしれませんね
「私も…美柑に会うと温かい気持ちになります、学校のみんなとも………でも…心のどこかでそれではダメだと拒んでいる私もいる」
「………」
地球に来るまで私は闇の世界で孤独に生きてきた、この手は…拭っても落ちない汚れた手。
「私は…幸せになってはいけない、そんなのは私には似合わない…そう思えて…」
優斗に重りとしてまた背負わせてしまうかもしれないのに…何故、話してしまったんだろう。
「少し前の俺もそう思ってたよ」
「え?」
「それに今だってモモにとある提案をされた時″散々殺した俺にその資格はない″って思ったしね」
「…ハーレムの事は仕方がないと思いますよ」
「…知ってたんだ」
″モモから聞いたんだね″と言いながら、優斗は片手で頭を抑える。
「過去を変えることはできないし、犯した罪は消えない」
「………」
犯した罪は消えない…私が殺した者の罪は…消えることがない…
「でも未来は変えれる」
「…え?」
「罪償うために殺した人よりもたくさんの人を救って、たくさんの人に笑顔を守る…そうすればいつか幸せになっていいって、ここに居ていいって心から思える日が来るかもしれないよ」
たくさんの人を救う…たくさんの人に笑顔を守る…私にそんな事できるのかな…
「ヤミは手を伸ばしてくれた、助けてくれただろ?駿と俺の事をだから、きっとできるよ」
優斗はまるで私の心を読んだかの様に、私の頭を撫でながら言う。
なんでわかるんですか、私の考えた事を…
「それにね、願われてたんだ、幸せになって欲しいって、笑って生きていて欲しいって、ヤミにも居たんじゃない、俺以外にヤミに幸せになって欲しいって思ってくれた人が…」
「………」
優斗以外で私に幸せになって欲しいって思ってくれた人…そんな人…
───ねーティア!わたしにもいつかおトモダチできるかなァ?
───もちろんできるわよ、そしたらぜひ私に紹介してね
私も…ティアに願われていたのかもしれないな…幸せになって欲しいって…
「少しずつでいい、一緒に頑張ってみよ…幸せになっていいって思えるようにさ」
「…優斗」
優斗は私に微笑んで手を差し伸べる、優斗の手が私にとって光にしか見えなかった。
「…はい」
この地球に居てもいいと思える様に…美柑とあなたの隣に居てもいいと思えるように…私も優斗の様に少しずつ未来に向かって歩いて行こう。
「ありがとう、優斗」
「…っ」
きっと今、私は今までにないくらい、とびっきりな笑顔を優斗に向けているんだと思う。
…だってあの優斗が私の顔を見て照れたから。
「少し歩こうか」
「そうですね」
私の手を繋ぎ優斗の隣で歩く、短い時間かもしれない、今だけは私の時間に…
「「ッ!」」
こちらに向かってものすごいスピードで飛んでくる、自転車や花瓶に気づいた私と優斗は咄嗟に後ろへ後退する。
今の攻撃、完全に私に向けての物だった…
「くくく、腑抜けてもこの程度の攻撃は喰らわないか、金色の闇」
不敵に笑いながら、屋根の上から姿を表したのは、以前私が倒した殺し屋。
「…あなたは″暴虐のアゼンダ″」
「ほう…嬉しいねよく覚えててくれた、これで心おきなく報復できるってもんだ」
アゼンダは屋根に鞭を打ちつけ、舌を舐めずり私を見下ろす、…何故、彼女がここに…
「…ヤミ、あいつは?」
「以前、倒した殺し屋です、高速の鞭と念能力の使い手……」
「念能力…ね、村雨さんと似たような?」
「はい、しかし村雨静ほど強力じゃない…あくまで鞭での攻撃が彼女の戦法でした、トランス能力の相手ではありません」
以前と同じ様にトランス能力を使えば、倒す事のできる相手、優斗を頼らなくても平気だ。
「くくく、そう思うかい?威力はなくても、精度が高いのが自慢でねェ…意識の無い地球人なら、マリオネットにするのはカンタンだ……」
アゼンダが何かを呼ぶように手を振りあげると暗闇の中から誰かが屋根の上に飛来する。
「手伝ってもらおうじゃないか、大事な″おトモダチ″に…金色の闇の陵辱タイムをねェ」
不敵に笑いながら、アゼンダは美柑に指示を出し、私に攻撃させる。
…この時、この場にいた誰も気づかなかった。
「………」
この場にいる誰よりも優斗が禍々しい殺気を放っていた事に…
アゼンダに操られた美柑がヤミに向かって攻撃をする
「…美柑、ダメだ」
「今の美柑に何を言ってもムダです!優斗!!」
優斗の声は操られている美柑には届かない。
美柑は私に向かって殴り掛かり、私はそれを躱す、躱された美柑はそのまま回し蹴りでヤミへと蹴りかかる。
「あははは!防戦一方だねェ、金色の闇!!」
心底楽しそうに私を見て笑う、アゼンダ。
美柑の意識を失い、アゼンダのサイコキネシスで操られている、それなら───
私は美柑から距離を取り、アゼンダに向かってトランスで変えた拳で攻撃しようとフェンスを蹴って距離を縮める。
「そう来るだろうねェ!だが!!」
「!!」
殴ろうとした直前で美柑がアゼンダを庇うように前に出た。
「…っ」
「ははァ、何手ェ止めてんだ───よッ」
美柑の目の前で拳が止まる、それを見たアゼンダは笑いながら私を鞭で攻撃する。
…美柑を盾にされては攻撃ができないっ!!
「あ…」
制服が破れると同時に美柑から貰ったキーホルダーが地面に落ちる。
───たいやきとアイスのキーホルダー
───優兄と三人でおそろいだよ
美柑の言葉を思い出した私は咄嗟に身体が落ちたキーホルダーを取りに動いていた。
「そんなに大事かい?″おトモダチ″って奴が」
「ッ!?」
アゼンダは私の隙を見て後ろに回り鞭で攻撃してくる。
ろくにガードもできなかった私はまともに攻撃を受けてしまった。
「くく…さっきは見せてもらったよ、随分あの娘と仲良くやってるみたいじゃないか、驚いたねェ、昔戦った時のアンタはまるで感情の無い機械のようだった」
ニヤニヤと笑みを浮かべながら、アゼンダは美柑に指示をだして私の元へと近づいてくる。
「それが今じゃ、おトモダチごっこでニコニコしちゃってさァ………ま…おかげでたっぷりとあの時やられたお返しができるってワケだ、あんたのおかげで殺し屋としてのあたしの信用はガタ落ち…ただぶっ殺すだけじゃ、気が済まないからねェ…」
ゴメンなさい…美柑…あなたを巻き込んで…でも、あなただけは助ける、私の命を賭けても…
考えろ、どうすればいいか、アゼンダに攻撃しようにも、美柑が盾になれば攻撃ができない…どうすれば…
「安心しなよ、しばらく楽しんだら最後のトドメは二人一緒に刺してやるから」
「!」
「二人でイケりゃあ本望だろ?天国にさ…」
私だけじゃなくて、美柑も殺す?
「昔あたしは、あんたのために殺し屋の地位を失い…闇の世界で迫害され身も心もズタボロになった、そして今度はあんたのせいでその娘が死ぬ!!酷い話だよねェ、あんたと関わるヤツは皆不幸になっちゃうんだ───グハッ!?」
「黙れクズが…話が長いんだよ」
いつの間にかアゼンダの後ろにいた優斗がアゼンダの顔面を殴り飛ばす。
私は優斗の顔を見て驚いた…普段はあんなに優しい顔をした優斗がクラウン戦でも見せなかったような、感情のない顔でアゼンダを殴ったから…
「ッ!クソ…この地球人のガキ!よくもあたしの顔を───」
「…お前みたいなクズが、美柑が不幸とか勝手にほざくな」
「ッ!?なんだい、その殺気…あんた一体…」
「…黙れって言ったのが、聞こえなかったか?三流」
優斗はいつの間か左手に持っていた水鉄砲を構えてアゼンダに近づく。
「ッ!あんたも見てなかったのかい!バカの一つ覚えみたいに殴ってもあたしにはね!あんたらのおトモダチがいるんだよォ」
アゼンダの前に美柑が守るように両手を広げて立ち塞がったが、優斗は迷わずにアゼンダの元へ突き進む。
何をするつもりですか、優斗…
「っ───」
「…っ───」
優斗は右手で美柑を抱きしめて引き寄せる、そしてそのままキスをした。
「…は?あんた何して───ッ!!?」
水鉄砲を持った左手をアゼンダに向けて、優斗はトリガーを弾く、中から飛び出ると灯油と先端に着いたライターが火炎放射となってアゼンダに向かって射出された。
「クッソ、随分とエグいことするじゃないか!」
「…──────」
「ん───ぅ…んっ───」
火炎放射を間一髪で避けたアゼンダは美柑とキスしている優斗に向けて言う。
だが、優斗はアゼンダを気にすること無く、美柑をさらに強く抱き締めてキスをする。
遠くから見てもわかるほどのディープキス、なぜ今そんなことをしているのですか、優斗。
「は!でも当たらなくて残念だったねェ、それにその娘にそんな事をしても意味は───」
「───っは…優…んぅ兄───っ」
「…なんだと?」
一瞬、キスから開放された美柑が優斗の名前を呼んだが、優斗は離すことなく、再び強引にキスをする。
「操れない?ありえない!まさかそんなキスで目を覚ましたのかい!?」
「……これで人質はもういない、残念だったな?」
優斗は美柑とキスを終えると、二人の口の間に一本の銀の糸が伝う、キスから開放された美柑は気を失ったように力なく倒れてしまった。
「…ヤミ、美柑を頼む」
「…はい」
気絶した美柑を私に託し、優斗はアゼンダの元へゆっくりと歩いていく、…凄く幸せそうな顔をして眠っていますね、美柑。
「人質がいなくても!地球人のガキくらいあたしの敵じゃない!!」
アゼンダは迷わず鞭で攻撃するが、鞭を優斗に掴まれて奪われる。
「は?」
「どうした?ここは戦場だぞ?」
「まって─── ゴハッ…」
アゼンダが何かを言う前に優斗の拳がアゼンダの腹部へと叩き込まれる。
「…待ても何もないだろ?戦場なんだからな?
「痛───っ」
「なんだ?人質がいなかったらこんなものか?」
「ぐっぶ…ゴハッ…がァ…っ」
腹部を殴られて地面に倒れても、優斗に長い髪を引っ張り無理やり立たされて、顔面や腹部向かって優斗は両拳で殴り続ける。
「ゴハ…ガァ…おぇぇ…」
「…なぁアゼンダ、火刑って言って本来は放火犯に適用された刑があるんだが、知ってるか?」
倒れて胃液を戻すアゼンダに向けて優斗は言う、横から見るその顔は、今まで見てきた中で一番怖い顔をしていた。
「身体を火で燃やされる刑なんだが、炙られた皮膚は激痛を引き起こして、熱で縮んだ筋肉は骨折する程、身体を屈曲させるんだ」
「…は?あんた何を言って───っぶは…」
顔を上げたアゼンダに向けて、優斗は何かをかける。
…っ!?まさか!殺すつもりですか!優斗!!
「最終的には、炎から発する煙で窒息、もしくは中毒で死ぬ」
「ダメです!優斗!!」
優斗は水鉄砲から剥がしたライターに火をつける。
あなたはそっちの道に堕ちては行けない…あなたが堕ちれば、みんな悲しむ。
「あ…あぁ!ま…まって!助けて!!い…命だけは………」
「…お前は今までそうやって命乞いしてきた人を生かしたのか?」
「っ!?」
「殺す奴はな、殺される覚悟をするべきだ、それができないなら、殺し屋になんてなるんじゃなかったなぁ?」
恐怖のあまり震えながら失禁するアゼンダに優斗は火のついたライターを見せる。
私は優斗を止めようと走り出すが、この距離じゃ間に合わない。
このままではホントに優斗がアゼンダを殺してしまう!
「…ダメですよ、優斗さん」
「離せ、モモ」
「離しません、優斗さんをもう一度闇に落としたくないですから…」
優斗のライターを持つ手をプリンセスモモが掴んで止めた。
プリンセスモモが来てくれなければ…優斗を止められなかった。
「…モモ」
「アゼンダはもう気絶しています、それにそんな人を殺しても、なんの意味もない、優斗さんだってわかっているはずですよ?」
「…わかってるよ、そんな事は…」
「なら、今すぐライターを私に渡してください」
優斗とプリンセスモモが見つめ合う、プリンセスモモ目から優斗に誰かを殺させないと伝わってくる…
「そんな事しなくても大丈夫、アゼンダにかけたの水だから…」
「…え?」
「…は?」
優斗から告げられた言葉に私とプリンセスモモは目を丸くする、…水?灯油ではなく?
「灯油をかけるフリをして、持っていた水をかけあんだ、だから、このままライターを落としてもアゼンダは死なないよ」
「…びっくりさせないでください、優斗」
「そうですよ!優斗さん!!」
「ごめん、そんなに騙されるとは思わなかった」
普通、あんな殺気を放てば誰でも騙されますよ。
「ん…」
「っ!美柑!!」
気を失っていた美柑が目を覚ます、私は急いで美柑の元へ駆け寄った。
「あ…あれ?さっきまで優兄とキスしてた気が……え?ヤミさん、ど…どうしたの!?ボロボロじゃん!大丈───…」
「いいんです…美柑が無事なら」
美柑が死なずに生きていて良かった…本当に良かった。
「美柑、痛むところはない?」
「え?特にないけど……ちょっと口が…ねえ、もしかして優兄からキスしてくれた?」
「…夢じゃないか?」
優斗、嘘は良くないですよ、それにあんなに激しいキスをして夢は無理があります。
「…さて、あのクズはどうするかな」
「優斗さん?誤魔化すのは良くないですよ」
「…今はどうでもいいでしょ、それよりもあれはどうする」
優斗は気絶したアゼンダに指を指す。
「例によってザスティンさんに連絡して銀河警察に引渡しますから、ご心配なく…それよりもキスしたんですか?優斗さん」
「…モモ、お願いだから話を戻さないで?」
プリンセスモモが話を戻そうとすると、優斗は困った顔をしてしまう。
「私は…何でも一人でやろうとし過ぎていたのかも知れませんね、プリンセスモモ」
「え?」
「困っている時や誰さんが無茶をしないように止めるには、頼りになるのは自分ではなく、友達という事…よくわかりました」
「…その誰かさんって俺の事かな?」
「自覚があるならやめてください、優斗」
優斗は″はい…自重します″とは言ったがホントにわかっているのですか?
「優兄、帰ろっか?」
「そうだね、ヤミ、せっかくなら泊まっていかない?」
「…そうですね、せっかくならお邪魔します」
今日一日で少しだけ私の気持ちは晴れた気がした。
◇
彩南町のビルの屋上、とある人物が望遠鏡でヤミ達を覗いていた。
「…あれが金色の闇」
近くのビルから望遠鏡でヤミ達を除く人物がいた。
「…ダークネスを発動する前に殺さないと」
謎の人物はヤミ達を見ながら、呟く。
「…それにしても似ている」
謎の人物は次に望遠鏡でヤミではなく、別の人物を捉えていた。
「雨宮優斗は死んだはず…まさか、月城が?」
その望遠鏡には時雨優斗の姿が写し出されていた。
「…なわけないか」
謎の人物は望遠鏡を閉まってペンダントを眺めた。
「すぐに終わらせるからまっててね?⬛︎」
そう呟いて謎の人物はそのビルから姿を消した。