かぐや姫と元天才プロゲーマー   作:はたやま

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なんだか気づいたらお気に入りが100超えてて評価が赤く染っててビビってます……のんびりお付き合いいただければと思います

一応気になったのであとがきでアンケート実施してます。
それでは本編どうぞ。


スピードが早いにも限度がある

「いやベビー用品って思った以上に高いな……」

 

 次の日の朝、俺は1人買い物かごを手に棚の前で戦慄していた。

 

 訪れたのは『子育ての味方』のキャッチコピーでおなじみの西竹屋。なんでもこの店1つでベビー用品の全てが揃うのだとか。

 

 ただ悲しいかなそこはあちらも商売だ。子育ての味方を得るためには代金が必要である。

 

 会計の際にレジに映った13243円という数字が、未成年の俺に将来訪れるかもしれない現実を突きつけていた。

 

 ちなみに、酒寄先輩は部屋であの子の面倒を見てくれている。さすがにあの子を独りにするわけにはいかんしな。

 

 ん? なぜ買い物を手伝ってもらわなかったのかだって? 

 

 明らかに未成年の男女が赤ん坊抱いてベビー用品買いに来てる絵面を想像してみろ、どう考えてもワケありすぎるだろ。

 

 そして何かの拍子にそれが学校のやつに知られてみろ、その時は先輩のファンに滅多刺しされた挙句東京湾が俺の墓になるだろうよ。

 

「はぁー……いい天気だな」

 

 雲一つない快晴の下、本格的な夏の暑さに包まれながら独り言ちる。

 

 でも、不思議と悪い気はしなかった。子供のためなら親どこまでも頑張れる、みたいなことをよく耳にするが、これもそういう感情なのだろうか。

 

「うし、帰るか」

 

 ついでにアイスでも買っていこう。そんなことを考えながら2人の待つアパートへと歩き出すのだった。

 

 

 

 

 

 ────いや、爽やかな感じに考えをまとめたけどクソ重いしクソ暑ぃわこれ。

 

 ……筋トレでも始めようかな? 

 

 ***

 

「戻りましたー」

 

「おかえり月村君。はいこれ麦茶、外暑かったでしょ」

 

「ありがとうございます……ぷはぁっ! 生き返る〜」

 

 重たい荷物を抱えてアパートに帰ると、酒寄先輩が麦茶と共に出迎えてくれた。喉乾いてる時の麦茶ってなんでこんなに美味いんだろうね。

 

 そしてお茶を飲みながらちらりと目を向けて見ればあの子はスヤスヤと寝息を立てていた。だが──

 

「やっぱり何度見てもデカくなってますよね」

 

「うん。赤ちゃんの成長は早いって聞くけど、これはさすがにおかしいよね」

 

 そう、この赤ん坊朝起きた時点で身体が一回り成長していたのだ。

 

 先輩の話では昨日は片腕でも抱えられる程度だったらしいのだが、今では両腕でもそれなりに重さを感じるほどになっている。

 

 電柱から産まれて? きた時点で色々おかしいと思っていたが、どうやら本格的にただの人間というわけではないようだ。

 

「寝顔は可愛らしい赤ん坊そのものなんですけどね。あぁほっぺたモチモチで癖になるなこれ」

 

「大人しく寝てるんだから起こさないでよ。あ、そうだ月村君、お金いくらだった?」

 

「お金って?」

 

「ベビー用品のお金。ふじゅ〜Payで返すからID教えて」

 

 ふむ、とりあえずとぼけてみたがついにこの時が来てしまったか。当たり前だが今買ってきたオムツやらのベビー用品は俺が代金を立て替えた。

 

 そして財布に余裕などあるはずもないのに先輩が代金を返そうとするのも読めていた。

 

 であれば問題はただ1つ。どうやってこの人を宥めすかしてこの場を流すかだ。

 

「いやー俺そもそも現金派なんですよね。だからふじゅ〜Pay使ってなくて……」

 

「じゃあレシート見せて。現金でかえすから」

 

「ポケットから無くなっててぇ……」

 

「レシートに足でも生えたのかなぁ? 不思議なことがあるんだねぇ?」

 

「そーですねぇ、電柱から赤ん坊が生まれてくる時代ですからねぇ」

 

「「あはははは!」」

 

 よし、いい感じに話を逸らせたな! あとはこのまま適当に──

 

「それはそうとふじゅ〜Payは使ってるよね? 私バイト帰りに月村君が自販機で使ってるの見た事あるんだけどなぁ?」

 

 ちくしょう普段から関わりが多いばっかりに! しゃーねぇこうなりゃ理詰めの時間だ! 

 

「でも先輩あんまり財布に余裕ないですよね?」

 

「とうとうふじゅ〜Payについては否定しなくなったな? それとこれとは話が別! お金のやり取りはしっかりしておかないと、後で揉め事の火種にしかならないのよ!」

 

「じゃあ正直に答えてください。今回支払った13243円、これを返して先輩の生活は大丈夫なんですか?」

 

「数字までしっかり覚えてるじゃないの。ふっ、私を舐めないでよね。そのぐらいのお金、少し節約すれば余裕よ!」

 

「……ちなみにその場合の食生活については?」

 

「パスタが食べられなくなってしばらく主食が水と粉のパンケーキになるだけよ」

 

「限界メシは節約とは言わねぇんですよ! なんですかその水と粉のパンケーキって! 絶対ろくな食べ物じゃないでしょ!」

 

 絶対育ち盛りが摂取し続けちゃいけないもんだろそれ! 苦学生なのは知ってたけど想像を遥かに超えてきて震えるわ! 

 

 ダメだこりゃ、もうなりふり構ってられねぇ! 使いたくはなかったけど最後の手段だ! 

 

「先輩、これを見てください」

 

「ネット銀行の画面? 預金額が映ってるけどそれがどうし──」

 

 先輩の言葉はしりすぼみになって消えていった。それはそうだろうこうして黙らせるためにこの切り札を見せたのだから。

 

 俺のふじゅ〜Payのホーム画面に映された預金額は約1000万程度。しかもこれは自由に使える口座に預金している分であって全財産ではない。ほとんどの金は後見人の弁護士に預けた上でのこの額だ。

 

「こ、ここここれっ、どういうこと!? なんでバイトもしてる月村君がこんなお金!?」

 

「今はもう辞めましたけど、1年間だけプロゲーマーやってました。そん時に稼いだあぶく銭ですよ」

 

「プロゲーマー!? しかもこの額を1年で稼いだって、トップ層の選手だったってこと!?」

 

「細かいことはどうでもいいでしょう。この際はっきり言いますが、俺は金には困ってないんです。なんで、少なくともこの連休中にかかった金は俺が持ちます」

 

「いやでもそれは……」

 

「うるさい。貸し作るのが嫌なら苦学生卒業してから返しに来てください。はい! この話終わり! 腹減ったからウーバー頼みましょう!」

 

 これ以上問答を続ける気はないので話を打ち切って背を向ける。こうでもしないとこの人は死ぬまで自分の身を削りかねん。

 

 金持ってるのを知られて集られるのが嫌で誰にも話したことはなかったが、先輩ならなんの心配もないだろう。

 

「……ごめん、月村君」

 

「そこはありがとうでいいんですよ」

 

 本当に、なんでここまで他人を頼ることを拒絶するんだ。苦しいなら少しくらい助けを求めればいいだろうに。

 

 ────本当に、この人のこういう所だけが心底気に食わない。

 

 ***

 

 そこからは怒涛の3連休だった。

 

 先輩と時間で交代しながら赤ん坊にミルクをやり、オムツを取り替え、時折赤ん坊特有の行動力に翻弄されつつ時間が過ぎていった。

 

 世の親というものはこんな負担に耐え続けて子供を育てているということがわかったのはある意味良い勉強だったのかもしれない。

 

 そんなこんなで3連休最終日の夜。さすがにこれ以上面倒を見るのは限界があると判断し、警察を頼ることを話し合って決めた。

 

 色々と疑われるリスクはあるが、まともに面倒を見てやれない以上然るべき公共機関にこの子を預けるしかない。

 

 そうして話し合いを終えた後、俺はベッドの上で力尽きていた。

 

 いつものバイトとは別種の疲労感のせいか、眠っているはずなのにどこか意識が残っている。

 

 そんな夢と現の狭間に意識を漂わせていると、どこからか声が聞こえてきた。

 

てか、何ですぐデカくなってんの!? 怖っ! 

 

んー。まぁ、今どきは何もかものスピードが早いんですわ

 

 先輩誰かと喋ってんなー。壁薄いからでかい声出すと聞こえるんだよな。

 

得体の知れないものはお断り! 

 

やだー! 

 

ちょっと、動いてよ! 

 

いーやーだー! 

 

 酒寄先輩、いくらなんでも力づくってのはよくないのでは? 何事もまずは話し合いから───

 

 ────今の声誰だ!? 

 

 寝ぼけた頭が覚醒すると同時に飛び起きる。確実に先輩以外の誰かの声がした。

 

 最悪強盗に入られたなんて可能性もある。そう思い至った時には既に先輩の部屋のドアをノックしていた。

 

「先輩! 大丈夫ですか!」

 

月村君!? 

 

うわっ、ああああ! 

 

 ゴスッ! 

 

 先輩の声ともう1つの謎の声が聞こえたかと思うと、なにか重いものが壁にぶつかったような音が響いた。

 

 聞いた限りでは幼い女の子の声のようだが──まさか! 

 

ああっごめん! えっと、月村君はとりあえず入ってきて! 

 

 ドア越しにそう促されると、続いて鍵の開く音が聞こえた。どうやら慌ててはいるようだが、差し迫った危険があるというわけではないらしい。

 

 多少の混乱と、なんともいえない予感を抱いたまま俺はドアを開いた。

 

「頭痛い〜! 手も痛い〜! 誰か助けて〜!」

 

 泣き喚いてのたうち回っていたのは先輩のものと思しき服を着た女の子。謎の声の正体はどうやらこの子だったらしい。

 

 見たたところ10歳に差し掛かるかどうかと言った年齢だが──似ている、というかとことなく面影がある。

 

「先輩、この子はもしや……」

 

「私が電柱から拾ったあの子だよ」

 

 何となく予感はしていたが本当にあの赤ん坊たったとは。いや、確かに一晩でやたら大きくなってたけどさ。いよいよもってただの人間じゃないなこの子。

 

 ぐぅ〜

 

「ん?」

 

 どこからか可愛らしい音が耳に響く。音の出処に目を向けてみると、あの女の子がお腹を抑えてこちらを見つめている。

 

 ぐぅ〜

 

「んん?」

 

 同じ音が再び。今度は自分の隣からだ。そちらに目を向けると酒寄先輩がバツの悪そうな表情を浮かべている。

 

 しばし気まずい沈黙が流れ、

 

「助けて〜〜?」

 

 女の子が小首を傾げて甘えるような声で訴えかけてきた。

 

 俺はもう一度酒寄先輩に目を向け、少し考え込んでから

 

「……とりあえず、ご飯食べましょうか」

 

 深夜のコンビニダッシュを敢行することを決めたのだった。

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