かぐや姫と元天才プロゲーマー   作:はたやま

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いきなり10000字以上に増やすのは無理でしたすんません!(開幕土下座)
アンケートとったらまさかの結果に驚いてる作者でございます。多少更新ペースは落ちるかもしれませんが1話の文字数は増やしていくつもりなのでお楽しみにしていただければと思います。

それでは本編どうぞ。




立川の午後はパンケーキと共に

「とりあえず、色々と買い込んできました」

 

 両手に下げたビニール袋を机の上に置き、中身を広げる。

 

 あの子──面倒なので一旦おチビとするが、何を食べられるのかが分からなかったので、子供の好きそうなものは抑えてきた。

 

「なにこれ! 食べていいの!」

 

「目眩がする……これ1個で何食分? ていうか2時だぞ2時」

 

「はいそこ、いちいち食費に換算しない。先輩も好きなの選んでどうぞ。おチビはとりあえずこれでいいでしょ」

 

 いくつかの料理を手に取り電子レンジへぶち込むと、数分としないうちに部屋の中に空腹に追い討ちをかける匂いが漂い始めた。

 

 ちなみに各々が選んだものは俺がのり弁、先輩がミートソースパスタ、おチビがオムライスだ。

 

「「いただきます」」

 

「? いただきます?」

 

 食前の挨拶をおチビがぎこちなく真似をする。彼女の様子を見ながらのり弁を口にしていると、やがてオムライスにスプーンを突き刺し口へ運んだ。

 

「〜〜っ! すごい! 何これ!」

 

「オムライスっていうんだ。気に入ったか?」

 

「オムライス! 大好き!」

 

 そこからおチビはものすごい勢いでオムライスを掻き込んでいった。

 

 正体不明の存在ではあるが、子供の食べっぷりというのはやはり見ていて気持ちの良いものがあるなと、なんだか年寄りじみたことを考えてしまった。

 

「……あなた、いったいどこから来たの?」

 

「んー?」

 

 先程まで黙ってパスタを食べていた先輩がおもむろに問いかける。

 

 確かに、なんとなしに普通の人間ではないことはわかったが、そもそもとこからやってきたのかというのは重要な話だろう。

 

 おチビはオムライスを食べる手を止め、ある一点を指さした。まるでそこから来たことが当たり前だと言わんばかりに。

 

「つ、月か?」

 

「うん」

 

 おチビの指は確かに宵の空を照らす満月を指していた。その表情からこちらをからかっている気配は見られない。

 

 いや、最初のゲーミング電柱といい月から来た発言といい、いよいよとち狂ったかぐや姫だなこりゃ。

 

「で? 宇宙人は何しにきたの? 侵略?」

 

「うーん、あんまりよく覚えてないんだけど〜。とにかく毎日超つまんなくて〜。楽しいところに逃げた〜いって思った気がする」

 

 よし、とりあえずとんでもないお転婆娘ってことはわかった。そして目的はなーんにもわかんなかった。

 

「いや逃げんなー」

 

「えー! なんでー!」

 

「逃げるのは簡単だけど、その後の再スタートって大変だよ? 覚悟あんの?」

 

「覚悟〜? やりたくなかったらやんない。やりたかったらやる!」

 

「ははっ! いっそ清々しいな! おチビ、お前将来大物になるかもしれんぞ」

 

「大物ってなんなの輝?」

 

「すごいやつになるってことさ」

 

「話を逸らさ──ちょっと待て! なんで月村君の名前を知ってる!?」

 

 あ、言われてみれば確かに。先輩は普段俺のこと苗字でしか呼ばないし。頭の中でも読めるのか? テレパシー的な? 

 

「ふっふっふ、知りたい〜?」

 

 うわぁ、すっごいドヤ顔。思わず小突きたくなる可愛さだわ。先輩に至っては呆れ返ってるし。

 

「あのさ、ちなみにだけどこれに心当たりは?」

 

「なにこれ?」

 

「これ、竹取物語ですか?」

 

 子供なら一度は聞いたことのある昔話。月からやってきた姫が竹の中から現れ、翁に拾われて美しく成長していき、貴族や帝からの求婚を経て、最後には──

 

「おいしそう……」

 

「あっ、こら! 私のパスタを取るな!」

 

 速攻で飽きてるやんけこのおチビ。オムライス爆速で平らげて先輩のパスタに狙いを定めよった。でもさすがに人から取ろうとするのはあかんな。

 

「こら」

 

「あいたっ!?」

 

「無理やり取ろうとするのはあかんぞおチビ。欲しいなら相手にちゃんと確認しぃや」

 

「いった〜い! 何すんのさ輝!」

 

「お仕置のデコピンや。また悪いことしたらこうやって叱られる。嫌ならちゃんと覚えときや」

 

 まぁ俺ん時はデコピンやなくてじいちゃんのゲンコツやったけどな。酷いと思うやつもおるやろうけど、この方が子供はちゃんと覚えると俺は思う。

 

「うぅ……じゃあ輝、このオムライスちょーだい?」

 

「オムライスやなくてのり弁やけどな。ええよ食べな。ちゃんと言われたこと守れて偉いやんかおチビ」

 

 おずおずと伺いをたてるおチビに食べかけののり弁を差し出す。受け取ってすぐはこちらを気にしていたようだが、一口弁当を食べると、目を輝かせて掻き込み始めた。

 

「こんなの絶対かぐや姫じゃない。ただの大食い宇宙人だ」

 

「見てる分には可愛らしくていいですけどね」

 

「なんか小さい子供の扱いになれてない? 弟か妹さんでもいたの?」

 

「残念ながら一人っ子です。扱いが上手く見えるのはまぁ……」

 

「なに、言いづらい理由でもあるの?」

 

「いやいや、単に似たような子供を知ってるってだけですよ」

 

「ねーねー、このお話はこの後どうなるるの?」

 

 先輩と何気なく話しているとおチビが再びタブレットを指さして聞いてきた。すぐに飽きたと思っていたが、話の続き自体は気になっていたらしい。

 

「あー、かぐや姫にお迎えがきて、翁たちが引き渡すまいと戦うも空しく、姫は羽衣を着せられて地球のことは忘れる。で、帰る」

 

「おー……で、続きは?」

 

「ない。終わり。めでたしめでたし」

 

「え、月に帰って終わり!? 何がめでたいの? 超バッドエンド! かぐや姫絶対不幸じゃん! しかもいい話風になってるのが余計許せないよー!」

 

 日本最古の物語に駄々をこねる宇宙人(仮)。余程のこの結末に納得がいかないらしい。

 

 でも確かに、おとぎ話だからあまり気にしたこともなかったが、かぐや姫って翁側から見れば結構なバッドエンドだな。

 

 いや、かぐや姫本人も作中では運命を受け入れていたようだったが、果たして本心ではどうだったのだろうか。考えても仕方ないことではあると思うが。

 

「これはそういうお話なの」

 

「バッドエンドやぁーだぁー! ハッピーなのがいいー!」

 

「あはは、そりゃ誰だってハッピーな方がいいに決まってるよな」

 

 子供ゆえの純粋さというべきなのだろうか、なおもおチビはバッドエンドな竹取物語に腹を立てている。

 

 まぁ確定した物語と現実は違うんだ。少なくとも未来なら自分で変えられる余地がある。

 

 そんなことを伝えようとしたときだった。

 

「どうしようもないじゃん。暴れたって決まってることが変わるわけじゃないし……受け入れて覚悟するしか、ない」

 

 ──その言葉は駄々をこねるおチビに向けてのものだったはずなのに、俺の胸に深く突き刺さった。

 

 そんなことはないと、未来なら変えられると言おうとしたはずだった。でも言えなかった。

 

 だってそうだろう。バッドエンドを受け入れて、何もかもを諦めた自分が、どうしてそんなことを言える。

 

 部屋に重い沈黙が流れる。もしかしたら言われたおチビだけではなく、先輩にもなにか思うところがあったのかもしれない。

 

 ──いい加減この沈黙に耐えられなくなってきた。軽口でも叩いて空気を変えよう。そう思った時だった。

 

「よし、決めた!」

 

 言葉と同時におチビが立ち上がり、高らかに宣言をする。

 

「自分でハッピーエンドにする! そんでハッピーエンドまで彩葉と輝も連れてく! 一緒に!」

 

 まるでアイドルかなにかのようにビシッとポーズを決めるおチビ。自分のことだけ気にしてりゃいいのに、当たり前のようにこちらを巻き込んできた。

 

 わがままで、自分勝手で、こちらの事情などまるで気にしない──そんな姿が今の自分にはあまりにも眩しくて

 

『なら見てろよ! 苦しいのも悔しいのも、全部楽しんで俺は勝ち続ける! そんでもって、俺を見てる奴ら全員を笑わせてやる!』

 

 いつかの誰かも、そう言って笑っていたなと、何故か今になって思い出したのだった。

 

「ハッピーエンドいらない。フツーのエンドで結構です」

 

「うそうそうそ! んなわけないでしょ〜? 

 」

 

「うわっ、離れて! 不気味! エイリアン!」

 

「ひどーい! ねぇ輝、彩葉がいじわる言ったー!」

 

「ん、ああそうやな、エイリアンは酷いよな」

 

「なによ月村君、そっちに付く気なの!?」

 

「先輩もたまにはええんとちゃいます? 予測不可能な宇宙じ──もといかぐや姫に振り回されてみんのも」

 

「いらないからそんなの! てかもう寝かせてー!」

 

 何かが変わる、何かが始まる。そんなことを感じさせる夜は、先輩の叫びとともに更けていった。

 

 ***

 

「どうだ、生活の方は。なにか困ったことなんかはないか?」

 

「おかげさまで、案外不自由なくやらせてもらってます」

 

 嵐のような三連休が終わった次の日、俺は担任の上田先生に呼び出されていた。

 

 とはいっても何かやらかしたという訳ではない。先生は身寄りもなく一人暮らしをしている俺の様子を確認するため、時折生徒指導室に俺を呼び出しては駄弁る時間を作ってくれているのだ。

 

「まぁお前のことはあんまし心配してないけどな。成績もそこそこ良いし、授業態度も悪くない。手がかからなくて助かるよ、つまらねぇけど」

 

「そのままでいて欲しいのか迷惑かけてほしいのかどっちなんですか。滅多なことはしませんよ、俺だって生活かかってますから」

 

 相変わらず教師とは思えん発言だなおい。

 

 まぁやんちゃ生徒の相手にも慣れたベテラン生徒指導教員からすれば、俺なんかつまらねぇ生徒なんだろうけどよ。

 

「そういやお前、進路とか考えてたりすんのか? 高一の夏に聞く話でもねぇけどよ」

 

「今んとこ就職希望ですね。職種までは考えてないですけど」

 

「将来やりたいこととかねぇのか?」

 

「特には。強いて言うならさっさと自立したいってことぐらいです。いつまでも後見人に負担かけるわけにもいきませんから」

 

「ふーん……」

 

 いやふーんて、自分から聞いてきた割には興味無さげだなおい。つまらねぇ将来設計なのは自覚してるけどさ。

 

「まぁこれ以上はとやかく言わねぇけどよ。高校生活だってまだ時間があるんだ、もう少し他のことにも目を向けてみろ」

 

「善処します。それじゃ俺はこれで」

 

「月村」

 

 会話を切り上げて席を立とうとしたところで上田先生に呼び止められる。振り返った先で上田先生が微笑みながら言葉をかけてくれた。

 

「胸の内に燻ってるものがあるならちゃんと向き合っておけ。あと、お前はもう少し寄り道を楽しめ。俺から言えるのはそんだけだ」

 

「……なんの事だかさっぱりですね」

 

「頭の片隅にでも置いておけ。特にお前みたいなタイプはな」

 

「……失礼します」

 

 気まずさから逃げるように部屋を出る。先生にはプロゲーマー時代のことは何も話していない。ゲームに疎い先生がネットで俺の過去を知ったというのも考えづらい。

 

 だが相手は百戦錬磨の生活指導教員だ。俺みたいなガキの隠し事などある程度は見透かしていたんだろう。そう思うとなんだか小っ恥ずかしい気持ちになった。

 

(燻ってるものがあるならちゃんと向き合っておけ、か)

 

 燻ってるもの、というのが自分にとって何なのかは考えるまでもない。

 

 だがこれに向き合うということは、そのまま過去のトラウマに向き合うことと同じだ。

 

 そんなことが、今の自分にできるのだろうか。

 

 廊下の窓から外を眺める。目に映る生徒たちは迷ってばかりいる自分と違って、それぞれの人生を真っ直ぐ生きているように見えた。

 

 放課後の予定を話し合う生徒、部活に駆け出す運動部、校門近くで猫と戯れるおチビ─────

 

「……いや何してんの???」

 

 一目散に校舎を飛び出して校門へと走る。見間違えではなかった、見間違えであって欲しかったおチビが確かにそこにいた。

 

「あっ、輝だ! やっほー!」

 

「おいおい部屋抜け出して来たのか? それとも先輩のこと迎えに?」

 

「抜け出してきた! あの部屋何も無くてつまんないんだもん」

 

「ちなみに先輩にはなんて言われてたんだ?」

 

「家から出ないでって言われた!」

 

 デスヨネー。だがそんな言葉1つでこのおチビを縛れるはずもなく──というか、またこいつデカくなってるな。もう驚かねぇけど。

 

「ねぇー輝、彩葉どこにいるか知らない?」

 

「今日は朝以外会ってないな。もうとっくに帰ったんじゃねぇか?」

 

「えー、じゃあ輝、どっか面白そうなところ連れてって!」

 

「はぁ?」

 

「……輝、おねがーい」

 

「……」

 

 いやいやそんな潤んだ瞳で言われましても。そもそも先輩に無断でそんなことしたら後で何言われるかわかったもんじゃ──

 

 ────お前はもう少し寄り道を楽しめ

 

「輝、ダメ?」

 

「……暗くなる前には絶対帰るぞ」

 

「ほんとに! やったー!」

 

 アパートに連れ戻そうとしたはずなのに、気づいたらそんなことを口走っていた。

 

 まぁあれだ、下手に部屋に閉じ込めて抑圧しすぎるより、多少遊ばせてやった方が言うことも聞かせやすいだろ。

 

 決して上目遣いにやられたわけでも、ましてや俺がチョロいわけでもない。決して。

 

「どこ連れてってくれるの?」

 

「うーん、とはいえ歩き回るのは暑くてかなわんしな。とりあえずカフェにでも行くか」

 

「カフェって何?」

 

「涼しいところで、甘いものと美味しい飲み物が食べられる場所さ」

 

「なにそれ! 彩葉の部屋と真逆じゃん!」

 

「決まりだな。そんじゃ行くか」

 

 カフェが楽しみでたまらないのか、跳ねるような足取りで歩き始めるおチビ。その後ろ姿を見ていると、たまにはこんなのも悪くないのかもしれない思えるのだった。

 

 ***

 

 なんて思ってた時期が俺にもありました。

 

「よっ、彩葉!」

 

「な、なんでここに!?」

 

「可愛いー、誰この子?」

 

「彩葉の友達? なんで月村君と一緒なの?」

 

 あれから約束通りカフェにやってきた。選んだのは最近オープンした今話題の店。単純にカフェでアルバイトする身としての興味もあってここにしたのだが

 

(なんでこいつがここにいる!?)

 

(海より深い事情があったんですよ!)

 

 まさかの酒寄先輩with先輩の親友である芦花さん、真実さんとエンカウント。バイトで培ってきたアイコンタクトでめちゃくちゃ圧をかけられている。

 

 仕方ないですやん。謎の宇宙人が脱走してんの無視して野に放つわけにいかんでしょうて。

 

「ねぇ紹介してよ彩葉。こんな可愛い友達独り占めはズルいって」

 

「いや、友達っていうかえっと……」

 

「月から来たの!」

 

「築地だよな! 酒寄先輩のイトコで、3連休の間に俺も仲良くなったんですよ! そうですよね、酒寄先輩!」

 

「そ、そそそうなんだよね! 私忙しかったから月村君に遊んでもらっててさ!」

 

 あっぶねぇ、いきなり正体バレるとこだった。とりあえずはごまかせたようで3人は会話に花を咲かせている。

 

 一旦の難局は乗り切ったと判断し、先輩たちの隣のテーブルに座ることにした。

 

「ねぇねぇ輝、あたしも彩葉と同じやつ食べたい」

 

「いいじゃん。じゃあ俺こっちにしよ」

 

「あっ、そっちのやつもいいなぁ……2つ頼んじゃダメ?」

 

「夜飯食えなくなるからダメ。俺のやつちょっと分けてやるからそれで我慢しな」

 

「いいの! やったぁ!」

 

「おお〜手慣れてるねぇ月村君」

 

「ほんと、実の兄妹みたい。ねぇ彩葉、この子お名前はなんていうの?」

 

 ──しまった失念してた。今まではおチビ呼びで俺は通してきたが、そもそもこの子には名前がない。

 

 なにか、なにかいい名前は──

 

「えっと……かぐやっていうの! そうだよねかぐや!」

 

 かぐや──確かにピッタリだ。昨日竹取物語の話をしていたのもあったんだろうが、境遇からしておとぎ話のかぐや姫にそっくりだしな。

 

 あとは本人が気にいるかだが

 

「かぐや……そっかぁ、かぐやかぁ〜!」

 

 思った以上にお気に召したようで、頬を赤らめながら椅子の上でクネクネと体をよじらせている。

 

 名前は人生最初のプレゼントとも言うらしいし、喜んでいるなら良かったんじゃなかろうか。

 

「お待たせしました」

 

「キター! ねぇ輝、食べていい?」

 

「慌てなくてもパンケーキは逃げねぇからゆっくり食いな」

 

「うん! いただきまーす!」

 

 運ばれてきたパンケーキを夢中で頬張るかぐや。うん、カフェに連れてきて良かった。そう素直に思えるくらいに幸せそうな顔をしている。

 

「うんまー! これ本当にパンケーキ? 彩葉の作ったやつと全然違う!」

 

「パンケーキよっぽど好きなんだね。よかったらこれも食べる?」

 

「芦花、あんまり甘やかさないで。あと月村君、ここの支払いは……」

 

「パンケーキ1つでいちいち請求なんてしませんよ。なんなら先輩の分も出しましょうか?」

 

「お〜男前だね月村君。ついでに私たちの分もおねがーい」

 

「真実、後輩に軽々しく集らない! 月村君も簡単にお金出そうとしないで!」

 

「いやー、真実さんの頼みならやぶさかでもないといいますか」

 

「芦花のパンケーキもおいしい!」

 

「あはは、口汚れてるよ。拭いてあげるからじっとしてて」

 

「もうツッコミ入れるのも疲れてきた……」

 

「そりゃ結構。先輩も今は諦めてパンケーキ楽しみましょうよ」

 

「……いいように扱われてるみたいでムカつく」

 

 釈然としないままパンケーキを口に運ぶ酒寄先輩。次の瞬間には口の中から幸せが広がったかのように表情が緩んでいた。

 

 毎回このくらい素直に周囲の人間に甘えてくれればいいのだが、そうなるには先はまだまだ長そうである。

 

 そうして、女性陣の華やかな笑い声に耳を傾け、幸せと映えが詰め込まれたパンケーキに舌鼓を打ちながら、立川の午後は緩やかに過ぎるのだった。

 

 

 




ちなみに月村君は気が緩むと地元の方言が出るタイプです。
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