異世界でカドショ開いたけど、常連客がヤバいヤツばっか 作:イカド
異世界にカードゲームがあったので、カドショ店長になった。
この世界のカードゲームはこの世界の創造神プレイスフィールが作ったものだという。
お陰で誰もがカードゲームを嗜んでいる。
そんな異世界には魔物がいて、冒険者がいて、ダンジョンがあって、魔族やらドラゴンやらエルフやらがいる。
剣と魔法の王道ファンタジーってやつだ。
そんなファンタジー世界で切った張ったするのも、楽しそうではある。
でも、命をかけて殺し合いをするっていうのは現代人には中々つらい。
普通に怖いのだ。
仮にやばいチートを持っていたって、それを的確に使えるかは別の話。
だから俺は、カードショップを開いて満足するしかねぇ!
……と思ったわけ。
この世界では冒険者も普通にカードをしばく。
だったら自分が冒険するより、冒険者の
カードも楽しい、冒険も楽しい。
一挙両得だ。
そんな理由で、俺はカドショ店長になったわけだが――
残念ながら、そんな俺のささやかな願いは叶わなかった。
いや、別にまったく客が来なくて店が閉店したとか、そういうことじゃないんですよ。
むしろ逆、店は非常に繁盛しております。
ただね……ちょっと問題があってね……具体的には……客層。
□
「それじゃあ、今日の大会を始めるぞ。いつも通りスイスドローダブルエリミネーションで、二回負けたら敗退だ」
「よろしくお願いします」
俺の言葉を合図に、店にやってきていた客が一斉にバトルを始める。
テーブルに向かい合い、礼儀正しく互いに一礼。
前世の頃から変わらない、ショップ大会の姿である。
違いがあるとすれば――
「セット・オーダー」
バトルの開始時に、アニメの掛け声よろしくそう口にすることか。
デュエッ!
この世界の掛け声は、カードバトルという儀式を始めるための詠唱である。
プレイヤーがそう口にすることで、テーブルに施された魔法陣が光を帯び、フィールドが展開されるのだ。
このフィールドの上にカードを置くと、ソリッドヴィジョンのごとく映像が投影される。
異世界のカードゲームらしい光景と言えるだろう。
カードゲーム”セイント・オーダー”。
この世界の創造神が作り出したカードゲームで、世界中にそれは浸透している。
神が作っているもんだから、中にはカードそのものに信仰が生まれたり、世界の命運がカードで決まったり。
まぁなんとも、ホビアニっぽい世界である。
そこにラノベみたいな冒険者とギルドとダンジョンがあるんだから、色々ごった煮としかいいようがない。
まぁごった煮と言えば――うちの店もそれはもうごった煮もいいところな客層をしてるんだけど。
「よーし行け、<蒼星の大英雄 サファイア・ウォリアー>」
「あー、待った待った待ったドラ! ちょっと待ったドラー!」
「勝負に待ったは無しだぞ! ハッハッハ!」
賑やかに、四十代半ばの筋骨隆々なおっさんと、背中に赤い翼を生やしたドラゴン幼女が戦っている。
見ての通り、客の中に人外がいるのだ。
これがエルフやドワーフや動物系亜人ならそうめずらしくはない。
でも、ドラゴンなんて早々見かけないぞ。
そして語尾が安易すぎる。
安易な語尾とか今どき流行らないザウルス!
「くううう……稽古じゃ勝てないから、カードゲームくらいはアタシが勝ちたいドラ……」
「はっはっは、まだまだ剣もカードも子供には負けんぞ」
――で、こっちの筋肉モリモリマッチョマンのおっさんも、只者ではない。
ドラゴンってのはまぁ、当然ながら滅茶苦茶強い、子どもとは言え侮ってはいけないのだ。
でも、そんな子供ドラゴン相手に、おっさんはむしろ余裕で勝ってしまうだろう。
なぜなら彼は、この国最強の冒険者だから。
かつて幾度となく困難極まりない大冒険を成功させ、時には世界すら救ったことのある大英雄である。
使用デッキも【大英雄】、大英雄と名のつくモンスターを主軸にした王道ビートダウンデッキだ。
現在は一児の父として、休日は息子とともに俺の店でショップ大会に参加していたりする。
ちなみにドラゴン幼女と大英雄のおっさんとおっさんの息子だと、おっさんの息子が一番カードで強い。
――そう、俺の店は客層がヤバい。
Sランクの冒険者が複数人押し寄せてくるのは当り前。
一国の王女、竜の王――ちなみにドラゴン幼女はこの竜王の娘だ――、魔神などなど。
ヤバそうな連中が、何故かうちの常連になっていた。
いやほんと、どうしてここまで変な連中ばかりがうちにやってくるのか。
最初は普通のカードショップだったのだ。
街の子どもたちがやってきて、大人たちも品揃えの良さから利用するようになり、店は賑やかになっていった。
時には冒険者もやってくるようになり、俺の目論見通りカードをしばきながら冒険譚を聞く店は確かにそこにあったのである。
――が、気づけば冒険者の中にSランク冒険者が交じるようになった。
なんで……? と思っているうちに、Sランク冒険者は仲間を呼んだ。
竜王とか魔神とか、冒険の中で仲良くなった人外の偉い人にここを紹介したのである。
客が増えるのは大歓迎だが、いくらなんでもやばすぎる人しかいない。
最終的に、開店当初から常連だった少女が、実は自分は王女だとカミングアウトしてくる始末。
……まぁそれは薄々察してはいたんだけど。
何にしても、俺の店はちょっととんでもない店になってしまったのである。
いやホント、どうしてこんなことに……
とはいえ、客層がやばくてもこの店がカードショップであることに変わりはない。
「それじゃあ、決勝戦を始めるぞ。アルト、ソプラ、始めてくれ」
「わ、わかりましたっ!」
「よろしくお願いします」
決勝に残ったのは、うちの常連プレイヤーであるアルトとソプラ。
アルトは気弱だけれど芯の強い少年で、ソプラは無口で感情表現に乏しい子だ。
二人とも、特にカードゲームに関係ないヤバいバックボーンを持っていない普通の子どもたちである。
ただし、カードで世界を救ったことはある。
そしてソプラの性別は不明、未だに少年なのか少女なのか解っていない。
「ソプラー! 今日は絶対勝つドラよー!」
「わかってる」
後ろで応援しているのは、二落ちして敗退したドラ幼女。
ソプラと彼女は仲が良く、いつも二人でフリーをしていることが多い。
他にも、大英雄のおっさんが脇でご老人とフリーをしていたりする。
客層は厳つくとも、店そのものは普通のカードショップなのだ。
たまに国家機密を話ながらフリーしてるやつとかいるけど、基本的には普通のカードショップのはずである。
これで俺が普通のカドショ店長でしかないことを解ってもらえれば、言うことはないんだけど。
「――店長さん、店長さん」
「ん、どうした?」
そんな時、不意に声をかけられる。
声をかけてきたのは、うちで働いてくれている店員だ。
視線を向ければ、そこには小柄ながらも美しい少女が立っている。
流れるような白髪は前髪が長く片目が少し隠れていて、どこかミステリアスな雰囲気だ。
衣服は――一言で言うと天使が纏っている白い衣。
の、上に俺の店のエプロンを身に着けている。
なんだかアンバランスだ。
「ストレージの整理、終わりました。次はどう致しますか?」
「ああ、それじゃあオリパでも作っててくれるか? カウンターからなら、決勝の様子も見れるだろうし」
「もう、そんな風に気を使ってくださらなくてもいいですのに。でも、ありがとうございます店長さん。お言葉に甘えさせていただきますね」
いいながら、優雅に挨拶をする少女。
そうして俺に背を向ける少女に、俺は何気なく呼びかける。
「――
「どうしたのですか? 店長さん」
「ああいや、なんだか楽しそうだと思ってな」
プレイ、というのがこの少女の名前だ。
俺がそう言うと、プレイはくすくすと笑って答える。
「ふふ、そうですね。だって、店長さんも皆さんも楽しそうですし……やっぱり、カードは楽しいものだな……と思いまして」
「……そうだな」
そうやって、俺達は決勝の様子を眺めながら笑みを浮かべる。
一体全体、どうして俺の店がこんなヤバい店になってしまったのかはさっぱり解らないが、今日も店には多くの客が訪れているのだ。
思っていた形とは違うものになったけれど――俺はこの日常が、決して嫌いではないのである。
店長は名前が出ないタイプの主人公です、よろしくお願いします。