異世界でカドショ開いたけど、常連客がヤバいヤツばっか   作:イカド

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6 神殿はアットホームな職場です

 プレイスフィール神殿。

 この世界の絶対的な宗教機関にして、カード製造を一手に引き受ける非常に重要な機関。

 あまりに重要すぎて、多分世界の支配を目論んだら一年と経たずに達成されるだろう規模を誇る。

 でもこの世界には彼らが神として崇める創造神プレイスフィールが実際に存在するから、そんなことしたらプレイスフィール様に愛想を尽かされるだけだ。

 というか尽かされた。

 今の形になるまでに三回くらい組織体制が崩壊してるんだっけ?

 カードを製造するようになってからは、あんまりそういう俗な話は無くなったけど、今後も清廉潔白でいられるかは神ですらわからない。

 まあ何にしても、今の神殿は世界的にも超重要で、だからこそ大変な機関だということだ。

 

「失礼します」

「おお、これは“フィールド”の店長殿」

 

 俺はその日、用事があって神殿にやってきていた。

 目的は二つあって、一つは例のユニークカードに関してだ。

 もう一つは細々とした書類の提出。

 んで、そんな目的でやってきた俺を、神殿の司祭さんが迎えてくれた。

 ダンディなヒゲとがっしりとした体格で、世が世なら黒幕とかやってそうな声の御仁だ。

 まあ、見た目で誤解されやすいだけでいい人である。

 俺やレナーシャと同じカードオタクだし。

 周囲にはシスターが数人いる、顔ぶれ的にカード談義でもしてたのかな。

 

「それで、本日はどのようなご用件ですかな?」

「すでに報告は行っていると思うのですが、例のユニークカードに関して」

「……ふむ、でしたら場所を変えましょうか。皆さんは業務に戻ってください」

「はい、司祭様」

 

 シスター達が、それぞれの業務へと戻っていく。

 やっぱりカード談義してましたね?

 と、俺は思うんだけど、なぜか他の人はなんか企んでるんじゃないか、という疑念を司祭さん達に抱いているらしい。

 まあそれは後ほど触れるとして、まずは俺のユニークカード話題だ。

 

「というわけで、神殿から突如送られてきたパックに混じっていたんです」

「ふむ……やはり今回も神殿由来の技術からユニークカードが……」

「ここ最近、そういうことが続いていますね」

「プレイスフィール様の差配なのでしょうか……」

「さぁ……」

 

 ユニークカードと一口に言っても、その出自は様々。

 神殿が色々な事情で開発することもあれば、創造神が何かの差配で生み出すこともある。

 他にも自然発生したり、創造神以外の神が作ったり、カード自身が自分を生み出したり。

 まぁ色々だ。

 カード自身が自分を生み出すのはなんだって? ああ!

 

「しかし、なんですな。 やはり……今回も神殿は疑われてしまうのでしょうか……」

「それはまあ……宿命かと」

「ですよなあ……」

 

 俺の言葉に、司祭さんは頭を抱えて項垂れてしまった。

 

「我々は、決して黒幕でも悪の結社でもないのです……!」

 

 えてして、ゲームの運営は時に悪と断じられることがある。

 カードの調整ミス、露骨な集金、理不尽な制限改定。

 この世界においてもそれは変わらない。

 特にこの世界はカードを創造神が作っているから、なおさらそのお膝元である神殿は悪く見られがちだ。

 だって神を悪くは言えないから。

 その分人が関わっている神殿にヘイトが向くのは致し方ないことだ。

 

「分かってはいるのです、多くの信徒にとって神殿は神に仕える者が集う場所であると。しかしカードを愛する者にとって神殿は……敵! この世の悪意そのもの!」

「自分自身が若干そう感じてるから、バイアスかかってませんか?」

「…………そこに加えて、このような神殿の作為を匂わせるような介入、到底看過できませぬ!」

 

 スルーした。

 まあオタク同士の定型の打ち合いみたいなものなので、別に反応は必要ないんだけど。

 とにかく、一般的には今の神殿は悪ではない。

 というか悪なら創造神様がとっとと洗い流してる。

 だけどそうしないのは、彼らが真面目にやっている何よりの証明。

 それはそれとして、カードゲーマーにとって神殿が目の敵であることに変わりないのは、世界を違っても同じことのようだ。

 某企業の綴りをあえて間違えるように、神殿が神田みたいな感じで呼ばれることもある。

 

「それはそれとして、ユニークカードに関しては持ち主の手に委ねられました。ただ彼がまだデッキを所有していないようだったので、事態が動くのはもう少し先かと」

「ううむ……貧民の子ですか。彼らがデッキを持てないのは、我々の不徳、恥ずかしい限りです」

 

 そして、一部カードオタクの怨嗟と裏腹に、非常に真面目でしっかりした人たちだ。

 この世界の全ての人々が、楽しくカードバトルをしてほしいと本気で思っている。

 司祭さんも本気で貧しい子がカードをプレイできないことを恥じているし、孤児院にはカードの寄付をよくしているそうだ。

 その流れで、レナーシャも色々寄付してるらしいしな。

 

 まぁ……

 

 

「だから! 下着は見せちゃダメなんですよ! 他はどれだけえっちにしてもいいですけど! 下着は! たとえ豆粒程度だろうとダメなんですよ!」

 

 

 あくまで体外的には、なんだけど。

 

「分かります! 気持ちはめちゃくちゃわかります! パンチラいいですよね! でもダメです! 見えそうで見えない感じでお願いします!」

「これまた胸のサイズデカくなってますよ! いや、胸はデカければデカい方がいいんですけど一般的には限度があるっていうか!」

「人形だからバニーはセーフ……じゃないんですよ! 確かに基準としてはセーフなんですけど……!」

 

 神殿を歩いていると、横からそんな喧々諤々なやりとりが聞こえてくる。

 そこは神殿のカードイラスト制作班。

 基本的に、セイント・オーダーにおいてカードの効果と基本的な設定は創造神プレイスフィールが製作している。

 しかしカードイラストは、基本的に人間が製作しているのだ。

 なぜなら……プレイスフィール様が画伯(独創的という意味で)だから……

 人々が描いたものを、神殿が神に見せてOKをもらうことで、カードイラストは製作されている。

 

「いやあ、相変わらず賑やかですね、ここは」

「ははは……」

「なるほどこれはバニーではなくパニエ……ん〜〜〜〜〜分かりました!」

「分かっちゃいましたね」

「ははは……」

 

 そしてここは、神殿において最もディープなカードオタクの巣窟と言われている。

 なにしろカードイラストは、この世界におけるカード制作の花形。

 自分の書いたイラストが神に認められてカードになるとか、栄誉以外の何者でもない。

 カード製作が始まって以来、世界中の画家がカードイラスト制作に挑戦してきた。

 しかしそれと同時に、カードはオタクが好きな娯楽。

 カードイラスト製作にのめり込んだ画家は、一人の例外もなくオタクと化し、立派な変態に育ったのである。

 こうして画家はなんとか女子カードをすけべにしようと画策し、それに神殿が理解を示しつつも待ったをかけるのが恒例になった。

 なお、たまにドラゴンをすけべにしようとする本物も混じっている。

 

「まあでも、俺はこの空気好きなんですよ。レナーシャも将来的にはここで働きたいって言ってますし、カードオタクの憧れですよね」

「そうですなあ、私も昔はここで画家の方と激しいやり取りをしたものです」

 

 なんて話をしながら、他の手続きもまとめて終える。

 カードショップ店長は名誉な立場であるのだが、細々とした手続きが多くて大変だ。

 

「……そうでした、店長殿」

「はい?」

「カード案件に気をつけなされ、ここ最近、有力なプレイヤーを狙うシャドウプレイヤーが増えているそうなのです」

「なるほど……」

「まあ、そうそう襲われることはないでしょうが、お気をつけくだされ」

 

 なんて、司祭さんはいうけれど、それはフラグというものだ。

 帰る前に少しだけ、デッキを調整しておくかなあ。




神殿が神田、は日本語で表記するならそうなるくらいの感じです。
異世界の言語でそういう読み替えの蔑称があるくらいのニュアンス。
作品内では神田で統一します。
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