この狩猟生活に祝福を!   作:how-kyou

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そろそろカズアクタグ付けてもええ説無い?
無いかぁ…₍ ˃ᯅ˂)


第四話・中盤『このすばらしき…正体はっ!?』

 

 

ファンゴ五頭をどうにか片づけて村へ戻る頃には、空はもう夕方の色になっていた。

 

 雪を踏む足が重い。

 腕だって重い。

 ついでに、精神的にもだいぶ重い。

 

「……もう猪はしばらく見たくないわね」

 

 隣でアクアが半分死んだような声を出す。

 

「同感だ。いやほんと、心の底から同感する」

 

「何なのよあいつら。ぶつかられるの、すっごく嫌だったんだけど」

 

「分かる。痛いっていうか、うざいんだよな」

 

「そう!それよ!! あの種族全体に天罰下そうかしら…?」

 

 なんか神みたいな暴論言ってるな。

 そういや神だったか…コイツ。

 

とはいえ、言いたいことは俺も同じだった。

ギアノスみたいに小賢しく連携してくるわけでもない。

ブランゴみたいに跳ね回るわけでもない。

駆け引きらしい駆け引きもなく、ただ真正面から暴力的に突っ込んでくるだけ。

 

 だけ、なのに。

 

 謎の連携で、あの「今だ」と思った瞬間を全部吹き飛ばしてくる感じが、とにかく腹立たしい。

 

しかも、こっちが疲れてくるとその単純さが逆に効く。

体力的にも精神的にも。

考えなくても突っ込んでくる相手ってのは、

たとえ動きが読めたって嫌なものは嫌なのだ。

避けるの体力使うし。

 

「……でもまあ」

 

アクアがふらふら歩きながら、ちらっとこっちを見た。

 

「今日もちゃんと帰ってきたわね、私たち」

 

「それはそうだな」

 

「ちゃんと五頭倒したし」

 

「それもそうだな」

 

「つまり今日は、結構えらい日じゃない?」

 

「自分で言うな」

 

「でもでも…と、いうことは?」

 

「はいはい…帰ったらお金もらってしっかり飲もうな」

 

「さっすがー!話が分かるじゃない♪」

 

アクアが、ふふんと鼻を鳴らした。

 

村の灯りが近づいてくる。

いつもの雪景色。いつもの煙。いつもの静かな寒さ。

その光景に安心感すら覚えるようになった。

…だが今日は、それとは別に頭の隅へ引っかかっているものがあった。

 

あの、大きな足跡だ。

 

ファンゴのものにしては明らかに大きい。深さも違った。

ただの見間違いで済ませるには、妙に嫌な存在感があった。

 

村へ入ったところで、村長はいつものように湯呑みを片手にしていた。

俺たちの顔を見るなり、少しだけ目を細める。

 

「おや。ちゃんと帰ってきたね」

 

「帰ってきましたよ……どうにか」

 

「どうにか、じゃないわよ。ちゃんときっちり五頭倒してきたんだから!!」

 

「そうかいそうかい。それは上出来だ」

 

村長は“ほっほっほっ”と穏やかに頷いたが、俺は報酬を受け取る前に口を開いた。

 

「……それで、一つ気になることがあって」

 

「ほう?」

 

「帰り際に、妙に大きい足跡を見ました。ファンゴのものっぽかったですけど、今日倒した連中より明らかにでかい」

 

 村長の手が、一瞬ぴたりと止まった。

 

「…ふむ…そうか」

 

 それだけだった。

 

「何よその反応。絶対何か知ってる顔じゃない」

 

 俺とアクアが揃って顔を見合わせる。

だが村長は、すぐにはそれ以上を言わない。

ただ湯呑みの縁を指でなぞってから、静かに息をついた。

 

「確認に時間を要すのは事実だ…今日はもう遅い。腹も減ってるだろうし、まずは休むといい…しっかりと英気を養ってくれ」

 

「いや、気になるんですけど!?」

 

「気になるわよねぇ!?」

 

「いいから、今日はもう遅い…明日、話そう」

 

 それで会話を切られた。

 

 何だその、意味深だけ置いていくやつは。

 

「……あの村長ってば、絶対分かってるわよね」

 

ひとまず報酬だけは受け取り、俺たちは釈然としないまま…村長の元を去った。

そんな中、アクアがじっとりした声で言う。

 

「分かってるだろうな」

 

「何で今言わないのよ」

 

「本当に分かんないのか…いや、今言ったら、たぶん飯の味がしなくなるやつなんじゃないか?」

 

「……ぅ、それはちょっとありそうで嫌ね」

 

 食事処へ行くと、今日はいつも以上に飯がありがたかった。

 

 温かいスープ。焼いた肉。

 朝焼いた物なのか、ちょっぴり硬くなったパン。

 疲れた体に入っていく熱が、それだけでだいぶ救いになる。

 

「……生き返るわ〜」

 

「お前、何回目生き返りだ」

 

「ご飯による復活は制限ないのよねぇ〜〜シュワシュワおかわり!」

 

「意味分かんねえけど、わかるぅー…あ、オレご飯追加もらえる?」

 

だが、食べているうちにさっきまでの殺伐とした空気も少しだけやわらぐ。

村長の意味深な反応は気になる。大きな足跡だって非常に気になる。

 

でも今は、腹一杯食べて…しっかり眠りたい。

人間、疲れてる時に不穏イベントについて考えても、ろくな結論は出ないのだから。

 

 

     ◇

 

 

小屋へ戻ると、暖炉の火が頼もしく見えた。

 

「……うう、今更だけど…地味に痛いわね」

 

先に寝台へ腰を下ろしたアクアが、脇腹のあたりを押さえて眉をしかめる。

今日、ファンゴにぶつかられた場所だろう。

 

「けっこう痛むのか?」

 

「そりゃそうよ。あれだけ突っ込まれたら痛いに決まってるじゃない」

 

「じゃあヒール使えばいいだろ」

 

「使うわよ。使うけど、こういうのは…ちゃんと落ち着いてやらなきゃ」

 

アクアはそう言うと、防具の留め具を外し、ぶつかられたあたりを確かめるように服を少しずらした。

 

白い肌の横腹に、うっすら赤い痕が残っている。

 

「……」

 

「……あのー」

 

「ん?どうした?」

 

「……そんなに見られると、ひじょーにやり辛いんですけど??」

 

 しまった。

 

「お、おう……悪い……」

 

思わず上擦ってしまい、変な声が出た。

いや別に、やましい意味で見ていたわけではない。

…たぶん。

…だが状況的に、完全にそうとも言い切れないのが最悪なのだが。

 

とにかく、俺は慌てて視線を逸らした。

 

「傷を気にしてくれたんでしょ?別に大した傷じゃないし大丈夫よ。…でも、こういうの放っとくと寝る時にずっと気になるのよねー」

 

アクアは少しだけ頬を膨らませながら、自分の脇腹へ手をかざした。

 

「……therapévo」

 

淡い青白い光が集まる。

昼間に俺へ使った時と同じ、柔らかな光だった。

 

視線は逸らしたままだが、神聖な気配は分かる。

部屋の空気が少しだけあたたかくなるような、不思議な感じだ。

 

「……よし」

 

「もう治ったのか?」

 

「かなり楽になったわ。これなら寝返り打っても大丈夫そう」

 

「…便利だな、その力」

 

「でしょ? もっと敬っていいのよ」

 

「そこはすぐ調子に乗るんだな」

 

「女神だもの、古事記にだってそう書いてあるわ!」

 

「はいはい」

 

だが、少しだけほっとした。

 

無限じゃないにしても、こういう“寝る前にちゃんと回復しておける”のはかなり大きい。

 

「ねえ」

 

「何だ」

 

「…今度から見る時は、もうちょっと隠れてから見なさいよ?」

 

「何の指導だよ!?」

 

「見てたのは認めるのね?」

 

「いやそれは……その……傷の確認の一環というか……」

 

「へえ?」

 

「すみませんでした!」

 

アクアが満足そうに鼻を鳴らす。

 

「……よし。それじゃあその謝罪は、明日のシュワシュワで受け取ってあげるわ♪」

 

くそぅ。

疲れてる時に変な隙を見せると、こういう女神はやたら強い。

 

「……もう寝るぞ」

 

「あ、逃げたわね」

 

「寝るんだよ。…村長から明日また何か言われるの見えてるし」

 

「それは私もそう思う」

 

パチパチと火のはぜる音だけが、小屋の中に残る。

 

 目を閉じる前に、俺は少しだけ考えた。

 大きな足跡。

 村長の「そうか」。

 そして、明日へ持ち越された話。

 

嫌な予感は、消えない。

消えないが――今は、疲れからの眠気の方が勝っていた。

 

     ◇

 

 翌朝。

 

「ニャーっ! にゃっ、にゃっ!」

 

「……うるさ」

 

 戸を叩く音と、やたら元気な鳴き声で目が覚めた。

 

「朝から何よもう……」

 

アクアが毛布の中でもぞもぞしながら文句を言う。

俺が重い体を起こして戸を開けると、そこには小さなアイルーが立っていた。

 

「村長が呼んでるニャ! 急ぎで頼むニャ!」

 

「……ああ、やっぱり」

 

「にゃ?」

 

「いや、何でもない」

 

 昨日の意味深な反応を思い出す。

 あれで何もないわけがなかった。

 

支度を整え、まだ少し眠そうなアクアを連れて村長の元へ向かう。

村長はすでにしっかりと起きていて、今日は珍しく最初から神妙な顔をしていた。

 

「…来たね」

 

「何ですか、朝っぱらから」

 

「昨日の足跡のことだよ」

 

やっぱりか。

俺とアクアは顔を見合わせる。

 

「で、何だったのよあれ」

 

アクアが単刀直入に聞くと、村長は湯呑みを机に置いた。

 

「まず一つ、言っておくよ。……ドスファンゴが今この近辺にいるとは、私は考えていない」

 

「……は?え?」

 

待て待て待て待て。

なんて言った?

 

俺が思わず聞き返す。

 

「いや、でもファンゴよりも、ずっと大きい足跡だったんですよ?」

 

「そうだ……それは間違いない。だから、厄介なんだよ」

 

村長は静かに頷いた。

 

「昨日お前たちが見た足跡とは別に、今朝方、雪見台の観測隊から報告が来た。村の北側の斜面に、ドスファンゴやティガレックス……いや、それ以上の大きな踏み跡が残っていたそうだ」

 

「…それ以上って……?」

 

アクアの声が少し裏返る。

 

「四足歩行の大型モンスターというのはほぼ確定している。……そして、ソイツが、山の上から近くまで降りてきている可能性が高い」

 

その言葉に、俺の背中がわずかに冷えた。

 

 四足歩行。

 大型。

 しかも、ドスファンゴ以上の足跡。

 

「……いや待って。ファンゴの親玉じゃないなら、何なんですか」

 

「それが、まだ断定できないんだ」

 

村長はあくまで落ち着いた口調で言う。

 

「本来なら、この辺りでは見ない類の大きさだ。少なくとも、いつもの雪山の顔ぶれじゃない」

 

「ちょっと待って。いつもの顔ぶれじゃないって何よ、それ。嫌な予感しかしないんだけど」

 

「…私もそう思うよ」

 

「村長がそこで同意するの!?」

 

アクアが机に身を乗り出す。

村長は気にした様子もなく続けた。

 

「観測隊が見たのは足跡と、遠目の影だけだ。はっきりした姿までは確認できていない。だから、まずは近づきすぎない範囲で様子を見てきてほしい」

 

「……確認に行けってことですか」

 

「そうだ…頼む」

 

俺は腕を組み、思考を巡らせる。

 

昨日、あの足跡を見た時、俺はてっきりドスファンゴだと思っていた。

嫌な相手ではあるが、まだ“知っている危険”の範囲だった。

だが今は違う。村長の話では、それ以上の何かかもしれないのだ。

 

だが、こうして村の近くまで…知識の及ばない、何か得体の知れない大物が下りてきているとなると…不安で不安で仕方がない。

 

…だが、俺たちに助けてくれた村長を、完全に無視するわけにもいかない。

 

「…二人で、ですか?」

 

なんとか乾いた口で、言葉を繋いだ。

思ったことをそのまま口にすると、アクアもすぐ続いた。

 

「そ、そうよ! 普通に厳しくない!? だって今の話、“ドスファンゴかと思ったらそれ以上でした”ってことでしょ!?」

 

「…確かに。厳しいかもしれないね」

 

 村長は妙にあっさり言った。

 

「……なら、どうしたら?」

 

俺が聞き返すと、村長は当たり前みたいに言う。

 

「…そうだな。不安なら、集会所で仲間を探してみるといい。ここはポッケ村だ。村に腰を据えているのはお前さんたちくらいだが、他のハンターが集会所を使うことは珍しくない。今なら何人か滞在しているかもしれん」

 

その言葉に、俺は少しだけ黙った。

なんとかなるかもしれない…と、希望が芽生えた。

 

 仲間。

 つまり、俺とアクア以外の誰かと組む、ということだ。

 

もちろん頭では分かっていた。

ハンターが自分たち二人きりなわけがない。

 

でも今までの流れが流れだったせいで、何となく、どこかで“俺たち二人で何とかするもの”みたいな気分になっていた。

 

「……ああ、そうか」

 

「どうしたのよ、その反応」

 

「いや、普通に盲点だったなぁ…って」

 

「盲点って何よ、パーティ組むの当たり前でしょ!?」

 

「お前と二人で遭難スタートしたせいで感覚狂ってるんだよ!」

 

「それはちょっと分かっちゃうけど失礼ね!?」

 

村長が、からからと笑う。

 

「調子を取り戻してきたじゃないか…。ハッキリと言おうか。昨日の足跡を見て、ちゃんとまずいと判断したのは悪くない。無茶して突っ込まず、戻って報告したのもね」

 

「……ありがとうございます」

 

「だから次は、その判断を活かしな。戦力が足りないと思うなら補う。一人前のハンターってのは、そういうものさ」

 

 正論だった。

 

 アクアはまだ不満そうに唇を尖らせていたが、やがて小さく息をつく。

 

「……つまり、仲間探しってことね」

 

「そういうことだ」

 

「…変なの来ないといいんだけど」

 

「お前がそれ言うのかよ」

 

「何よそのイヤな言い方!」

 

だが俺も、少しだけ同じことを思っていた。

 

 どんな相手が来るのか。

 ちゃんと戦えるやつなのか。

 

というか、俺たちみたいな新米と組んでくれる物好きがいるのか。

 

「とにかく、集会所を当たってみてくれ」

 

 村長はそう言って、湯呑みを持ち直した。

 

「運が良ければ、ちょうどいい相手が見つかるかもしれないよ」

 

 その言い方も、何だか少し意味深に聞こえた。

 だが昨日みたいに問い詰める気力は、今日はまだない。

 

 俺はアクアと顔を見合わせる。

 

「……行くか」

 

「そうね。二人で未確認物体の確認に行くのがまずいなら、ちゃんとした人を捕まえましょう」

 

「その言い方、俺たちが獲物みたいでちょっと嫌だな」

 

「でも気分的にはそんな感じよ」

 

「分からなくもない」

 

 ともあれ、方針は決まった。

 

 ドスファンゴではない…であろう、別の大型四足歩行モンスター。

 二人だけで確かめに行くには、少し分が悪い相手。

 

 なら、足りない分は補えばいい。

 

 そういうわけで俺たちは、少しだけ緊張しながら集会所の方へ視線を向けた。

 

 次に必要なのは、武器でも防具でもない。

 新しい仲間だった。

 




そう!そこの貴方っ!
よければ感想と評価をしていただきたく…!
特典としましては来世でからあげ弁当を3食…!
あ、いらない?(´・ω・`)
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