この狩猟生活に祝福を!   作:how-kyou

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アクア様ってこういうところあると…思うんですよねぇ(名推理


第二話・中盤『このすばらしき農場で…ラブコメを!?』

 

 

ギアノス五頭を片づけ、昨日より少しだけ“狩人っぽい疲れ”を覚えながらポッケ村へ戻った俺たちは、集会所で依頼完了の報告を済ませた。

 

 村長は相変わらず湯呑みを片手に、「ふむ」と一つ頷くだけだったが、その「ふむ」に昨日よりほんの少しだけ重みがある気がした。

 

「昨日は採集、今日は討伐。順調な滑り出しじゃないか」

 

「まあ、何回か噛まれてますけどね」

 

「最初はそんなもんさ。…いずれ、どんなに強力な防具でも防ぎきれない時が来る。その時にもらわなければいいだけさ」

 

「……分かりました!」

 

 

俺が村長の言葉で胸を張ると、隣からアクアがぽんと叩いてきた。

 

「そうよそうよ、今日はしっかりと討伐できたじゃない!!自信を持ちましょ!」

 

「…お前も結構組みつかれたりしてたよな?」

 

「細かいことはいいのよ。パーティっていうのは受けと攻め、役割分担が大事なんだから!」

 

「…どしたん?急にそれっぽいこと言い出すなんて、熱でも出た?」

 

「まー失礼しちゃうわ!」

 

そんな俺たちのやり取りを、やれやれと言わんばかりの表情で見てきた村長が言ってきた。

 

「とりあえずこれが討伐の報奨金だ。用があったら呼ぶから、しばらく休憩しておいてくれ」

 

厄介払いされたような気がする

 

そんなことを思いながら、俺たちは先日のようにアイルーの食事処へ向かった。

クエスト終わりの飯。

これがまた格別にうまいのだろう。

冷えた体がほぐれるし、妙に気持ちまで前向きになる。

 

「うふふふ!今日は何にしようかしらねー。昨日のお肉もおいしかったし、魚もよさそうだし……」

 

にへらぁ、とした顔でアイルーからもらったお品書きを見るアクア。

 

「お前、狩りの内容より飯の方が楽しそうだな」

 

「そりゃ楽しみよ! 命がけのあとにおいしいご飯が待ってるんだから!」

 

「それは分かるけどな」

 

俺は比較的さっぱりした、魚料理と野菜を注文した。

 

それほど待つことはなく、アイルーが手際よく料理を並べていく。

立ち上がる湯気。

鼻腔をくすぐる匂い。

色鮮やかな見た目。

全部がうまそうだ。

 

いただきますと伝え、早速食べだす。

うん、美味しい。

俺もすっかりこの“ネコ飯前提の狩猟生活”に慣れつつあった。

 

次は汁物に手を伸ばす

だが、その時だった。

 

ふと視界の端に、会計用らしい木札が見えたのだ。

 

そこには、小さな文字でしっかりと金額が書いてあった。

 

「……ん?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、これ……」

 

俺は木札を引き寄せた。

 

二人分の食事代にしては…。

いや、アクアの頼んだものが高い。

なんかシュワシュワする液体も頼んでたし。

 

「……おい」

 

「何よ」

 

「これ」

 

「…あ、あらあらあら」

 

アクアがちょっと引き攣った顔をした。

 

「……で、でも美味しいわよ?」

 

「いやいやいやいや待て待て待て」

 

「え、だってシュワシュワよ? お金かかるに決まってるじゃない」

 

「開き直…え!?ネコ飯にそういうもんあるの!?」

 

「あったのよ!…ほんとーに美味しいから一口飲んでみなさい!」

 

グイッと口に押し付けられた

 

「んぐ!?……美味いな、おい!」

 

「でしょ!?だからこれは必要経費よ!!」

 

本音だ。

間違いなく俺の料理とも合うし、今後も頼みたい、なんなら今すぐに頼みたい。

だが現実は残酷である。

うまいが、当然タダではない。

 

俺は依頼報酬が入った小袋を取り出した。

そして中を覗く。

昨日の採集クエと今日の討伐クエで得た金。

そこから食費、生活雑費、砥石や薬草などの消耗品を差し引くと――

 

「……」

 

「何よ、その嫌な沈黙」

 

「俺たち…今かなり貧乏だぞ」

 

「えっ…クエスト行っていたわよね?」

 

「思ったより食事代が嵩んでる。…ちょっと狩りの合間に気を抜くと、明後日くらいには飯代で詰む」

 

「うそ!?そんなに!!?」

 

「本当だよ!!」

 

アクアはシュワシュワから手を離し、慌てて俺の肩越しに袋を覗き込む。

 

「ちょっと、討伐ってもっとこう、どーんと稼げるものじゃないの!?」

 

「…初心者の雑魚狩りでどーんと稼げるなら、世の中苦労しねえな」

 

「じゃあどうするのよ! 私、もうネコ飯のない生活には戻れないわよ!?」

 

「順応早すぎるだろ、この女神」

 

騒ぐ俺たちに、料理を運んできたアイルーが不思議そうに首を傾げた。

 

うるさくてすまん。

君たちの飯に罪はない。

むしろ最高だ。

 

結局、その場ではとりあえず今回の分はしっかり払った。

が、財布の中身はさらに心もとないことになった。

食い終わったあと、俺はしばらく無言で袋を見つめていた。

 

「……カズマ」

 

「何だ」

 

「その、あれよ」

 

「どれだよ」

 

「最悪、私は女神だから、少しくらいなら食べなくても……」

 

「お前…」

 

「ところでダイエットに興味はないっ!?」

 

「付き合わせる気満々じゃねーか!…今俺たちに必要なのは収入源だ」

 

「収入源……」

 

 アクアが神妙な顔になる。

 そして一拍置いてから、ぱっと顔を上げた。

 

「つまり、もっと稼げるクエストを受ければいいのね!」

 

「で、いきなりティガレックスに轢かれて終わるんだろ」

 

「…何でそんな嫌な予想だけは的確なのよ!」

 

このままではまずい。

かといって、今の俺たちで急に危険な依頼へ手を出すのもまずい。

つまり、狩り以外の小銭稼ぎが必要だった。

 

そう考えながら再び村長の元へ赴いた。

 

「何だい、そんなに難しい顔をして。轟竜でも見てきたような顔だね」

 

「金がないんです」

 

「…直球だねえ」

 

「飯代が思ったより重いです」

 

「そりゃあれだけ食えば減るだろうさ」

 

見られていたようだ。

村長はまったく慌てた様子もなく湯呑みを傾けた。

まるで、こうなることが分かっていたみたいに。

 

「……もしかして、最初から知ってました?」

 

「知ってたよ。新米ハンターは大体、最初のうちは『報酬があるなら余裕だろ』と思って、飯代や道具代で泣くもんさ」

 

「ですよね!」

 

思わず叫ぶ。

 

「何かないんですか、こう、初心者でもできる副収入みたいなもの!」

 

「あるよ」

 

「「…あるの!?」」

 

俺たちは即食いついた。

 

村長は俺たちを順番に見て、ゆっくり頷く。

 

「ポッケ農場だよ」

 

「農場?」

 

「村の外れにある、採集と採掘と釣りをまとめてやれる場所さ。本来は村のみんなで使ってるんだが、最近ちょっと手が足りなくてね。管理というほど大げさじゃないが、あんたらが少し面倒を見てくれるなら、その代わり採れたものの売却は自由にしていい」

 

「助かります…ありがとうございます!」

 

俺が言うと、アクアも勢いよく頷いた。

村長は『これが鍵だ』と言って、俺たちへ渡してきた。

 

「使い方は行けば分かるだろうさ。虫取り網も釣り具も、採掘用の道具を置いてある。壊したら自分で買って置いといてくれ」

 

「そこは厳しいな」

 

「世の中そんなもんで、持ちつ持たれつさ」

 

そして村長は、いつものように少しだけ意地の悪い笑みを浮かべた。

 

「まあ、二人で仲良くやるんだね」

 

「何でそこで妙に含みのある言い方をするんですかね?」

 

「?」

 

アクアはなんのことか分かってなさそうだった。

 

     ◇

 

ポッケ農場は、村の外れ、

斜面を少し下った先にあった。

 

想像していた“畑だけの場所”ではない。

面した川から流れ込む小さな池があり、木々があり、虫取りができそうな草むらがあり、岩場には採掘できそうな鉱脈まである。

 言ってしまえば、モンハンの便利要素を雑に詰め込んだような空間だ。

 

「…これは、すごいな」

 

思ってたより何でもあるな。

何から手を出そうか悩んでいると。

 

「畑っていうか、半分遊び場じゃない?」

 

アクアが早速釣竿に手を伸ばしていた。

 

「その認識でいると絶対あとで痛い目見るからな?」

 

とはいえ、雰囲気は悪くない。

 

雪山の命がけの空気とは違い、ここにはちゃんと“暮らしの延長”みたいな穏やかさがある。

 

 アクアが池を覗き込み、きらきらした目で振り返った。

 

「見て、けっこー魚いるわよ!」

 

「ほんとだな」

 

「私、じゃんじゃん釣るわ!!」

 

「おう、じゃあ俺は採掘見てくる」

 

「…えっ、別行動なの?」

 

「何だよ、嫌なのか」

 

「……別に嫌ってわけじゃないけど」

 

「けど?」

 

「せっかく二人で来たんだから、最初くらい一緒に見てもいいんじゃないの?」

 

短い付き合いだが、分かった。

アクアはこういう時、妙に素直だ。

いや、素直というか、取り繕わないだけかもしれない。

つまり、ど直球に自分の思いをぶつけて来るのだ!

 

「……じゃあ、先に魚から見るか」

 

「ほんと!? よし!」

 

…何だその嬉しそうな顔。

反応に困るじゃないか。

 

俺も池のそばへ移動し、置いてあった釣り竿を手に取った。

アクアは、にまっと笑う。

 

「これ、才能あると思うのよね私」

 

「何の根拠があるんだ」

 

「水の女神よ? 水辺と相性いいに決まってるじゃないの!」

 

「理屈としては分かるけど、今までの実績から信用できねえ」

 

「失礼ね〜」

 

そう言いながら、アクアは餌をつけて糸を垂らした。

すると本当に、しばらくもしないうちに竿先がぴくりと動く。

 

「あっ、来た! 来たわよ!」

 

「おい、落ち着いて――」

 

「えいっ!」

 

勢いよく引き上げる。

小ぶりだが、ちゃんと金色の魚が釣れていた。

 

「やったぁ!」

 

「……ほんとにすぐ釣ったな…って、お!俺もヒットしたぞ!?」

 

釣れたのはアクアが釣ったものと同種のようだった。

 

「ほら見なさい! これが女神の加護よ!」

 

「…ハンターからアングラーに転職するか?」

 

「それは夢がないわねぇ」

 

けらけらと笑いあう。

とはいえ、これはありがたい。

食材になるし、売れば金にもなる。

なんなら、村長から聞いた話では鱗などが武器や防具の素材にもなるらしい。

 

アクアは完全に気を良くしたらしく、二匹目、三匹目と順調に釣り上げていく。

やっぱり妙なところで才能があるな、こいつ。

 

〜〜〜

 

肩を並べて20分くらい。

やれ、あの鹿の角は痛かっただの、ギアノスの爪は痛かっただの……痛い自慢しかしてねーな、俺たち。

ともあれ、俺は三匹目を釣りあげ、そろそろ他も見るべきだと思い至った。

 

「俺はそろそろ他の所を見に行こうと思うけど…どうする?」

 

控えめに見ても入れ食い状態のアクアに声をかける。

 

「うーん、あんまり釣り過ぎるのも良くないわね…そろそろ次へ行きましょうか!」

 

アクアは七匹目に釣り上げた魚をバケツに入れ、片付け始めた。

…やっぱすげーなコイツ。

 

その間に俺は虫取り網を持ってきて、

草むらの方へ向かった。

 

「じゃ、こっちはこっちでやっとくから 魚まとめといてくれー」

 

「えー!ちゃんと見てなさいよ! 私の華麗な釣果を!」

 

「はいはい、すごいすごい」

 

 草むらにそっと網を差し入れる。

 ばさっ、と振る。

 小さな甲虫が二、三匹入った。

 

「お、虫も結構いるのな」

 

「…何か釣りよりも地味じゃない?」

 

「…地味でも売れるなら正義だ」

 

「ほんっと現実的ね、カズマさんってば」

 

しばらくすると、アクアも片付け終わったのかこちらへ寄ってきた。

 

「私もやるわ!」

 

 俺が網を渡すと、アクアは思ったより真面目な顔で草むらを見つめた。

 そして、そーっと近づいて――勢いよく網を振る。

 

 ばさっ。

 

「どう!?」

 

「……葉っぱしか入ってないぞ」

 

「何でよ!!?」

 

「音と動きがでかすぎるんだよ。虫が逃げる」

 

「むむむ……」

 

アクアは悔しそうに唇を尖らせる。

その顔が妙に子供っぽくて、少しだけ笑ってしまった。

 

「…何笑ってんのよ」

 

「いや、お前にも苦手なもんあるんだなって」

 

「失礼ね。私は大体何でもできるわよ。今日はたまたま虫の居所が悪かっただけで」

 

「虫の居所をそうやって使うやつ初めて見たわ」

 

その後、虫取りは結局俺の方が上手かった。

アクアは網を振るたびに草に引っかかるか、見当違いの場所を叩くかで、成果は今ひとつだった。

 

早々に飽きたアクアに合わせて、採掘に赴く。

 

岩場の鉱脈へ向かい、そこに置いてあったつるはしを振るう。

かん、かん、という小気味いい音がして、鉄や青い鉱石が転がり出てくる。

 

「おおっ、鉱石も案外出てくるものなんだな」

 

「…これ、ちょっと楽しいわね」

 

「な」

 

「無心で叩ける感じがいいわ。こう、嫌なこととか全部忘れられそう」

 

「ソレ女神が言う台詞じゃねえな……」

 

「ん、あ、あれ?……抜けないわね」

 

アクアが、深く刺さったツルハシを思いっきり引き抜こうとした。

 

そして…。

 

「きゃっ――」

 

その拍子にバランスを崩した。

 

「おっと」

 

 俺は反射的に腕を掴む。

 

 一瞬、距離が近くなる。

 

 かなり近い。

 息がかかるくらい近い。

 

アクアの青い髪が揺れたのが目に映った。

 

そういえば…朝村に帰ってきた後、集会所でお湯を浴びて汚れを落としたんだった。

 

だからか、少しだけ石鹸みたいな匂いがした。

 

 顔を上げた拍子に目が合う。

 いつもならうるさいくらい騒いでいる相手なのに、こうして黙ると妙に整った顔をしているのが腹立たしい。

 

「……」

 

「…な、何よ」

 

 先に口を開いたのはアクアだった。

 なぜか少しだけ頬が赤い。

 

「いや、危なかったなって」

 

「そうね。ありがとう」

 

「おう」

 

「あの…手」

 

「ん?」

 

「まだ掴んでるんだけど」

 

「あ」

 

 俺は慌てて手を離した。

 

「悪い」

 

「べ、別にいいけど……もう」

 

何だこの空気。

 

何だこの、気まずいのに少しだけ変な感じ。

 

だが、その一瞬後にはアクアがいつもの顔に戻っていた。

 

「次からはちゃんと気をつけるわ!」

 

結局、半日ほど農場で動き回っただけで、魚、虫、鉱石、ついでにいくつかの薬草まで集まった。

 

地味だが、かなりの収穫だ。

それゆえに、俺たちは袋いっぱいの素材を抱えることとなった。

 

…もし高く売れるものがあったら、元気ドリンコ買おうかな?

そんなことを考えながら、集会所前に店を出している行商人のところへ向かった。

 

今日の行商人は、朗らかな顔をしたお婆さんだった。

俺たちの荷を見てにこにこと目を細める。

 

「ほうほう、新顔さんにしてはなかなかの量じゃのう」

 

「まあ、頑張りましたから」

 

「頑張ったのは主に私の釣りだけどね!」

 

「はいはい…」

 

「ふむ…ふむふむ」

 

お婆さんは慣れた手つきで、鉱石、虫、魚をひとつずつ確かめていった。

 その途中で、アクアが釣った魚の一匹をつまみ上げ、ほう、と感心したように息を漏らす。

 

「おや、これは小金魚じゃな」

 

「こきんぎょ?」

 

アクアが首を傾げる。

 

「何それ。食べたら美味しい系??」

 

「まーたお前は…」

 

「ほっほっほっ…食べられんこともないが、どちらかといえば売り物じゃよ。小さいが、意外と値がつくんじゃ…そうじゃな小金魚が二匹おるから…1000エリスくらいか」

 

「「えっ」」

 

俺とアクアの声が綺麗に重なった。

この魚二匹でクエスト1.5回分くらいの収入になるからだ。

 

「…この小さい魚が、そんなに??」

 

「なるとも。数は少なくても、普通の魚よりよほどいい…二匹とも買取でいいのかい?」

 

「えっと…」

 

アクアの方を見る。

コイツが主に釣ったわけだし。

 

「ぜひ!!」

 

めーーちゃくちゃ目がキラキラしていた。

もう¥マークになってた。

 

お婆さんがにこやかに“はいはい”と言うと、アクアが俺の方をばっと振り向いた。

 

「ちょっと! 聞いた!?」

 

「聞こえてました…マジかよ…」

 

「ほれ」

 

お婆さんが差し出してきた金額を見て、俺は思わず二度見した。

 

「……思ったより多いな」

 

「そうでしょそうでしょ!」

 

アクアが、ここぞとばかりに胸を張る。

 

「だーかーら言ったじゃない!水辺の才能があるって!」

 

「そこは認めるけどさ…」

 

お婆さんはそんなやり取りを、実に楽しそうに眺めていた。

 

「採れた魚も虫も上々じゃ。若いのに、ずいぶん手堅い稼ぎ方をするんじゃなあ」

 

「手堅いっていうか、死なない程度に暮らしたいだけです」

 

「立派な心がけじゃよ…一つアドバイスじゃが、鉱石は持って置いた方がいいぞい、何かと役立つ時がくるじゃろう」

 

「分かりました!ありがとうございます!!」

 

お婆さんはうんうんと頷きながら、さらに袋の中を確かめる。

 

「しかし、ようやっとるのう。こんなにきっちり集めてくるとは…あんたたち、ひょっとして農業者向きなのではないかえ?」

 

ほっほっほっと朗らかに笑いながら言われる。

 

「……農業者?」

 

 俺は思わず聞き返した。

 

「うむ」

 

「俺たち、一応ハンターなんですけど……」

 

「ほっほっほ、分かっとるよ。だが、狩りができて、なおかつ暮らしの算段も立てられるなら、それはそれで立派な才能じゃ」

 

「…何か慰められてる気がするんですけど」

 

「まあまあまあ、いいじゃない」

 

アクアが妙に偉そうに腕を組む。

 

「実際、私の釣りは才能あったわけだし」

 

「お前、そこだけ都合よく受け取るな」

 

「だって事実でしょ?」

 

それはその通りなので言い返しづらい。

 

全品の査定が終わり、受け取った金を見て、俺は小さく息を吐いた。

 

正直な感想だが…大儲けとまではいかない。

だが、食費や日用品の足しとしては十分すぎる。

少なくとも、「明日から断食」みたいな最悪の未来は避けられそうだ。

 

「……よし」

 

「どう?」

 

「これでしばらくは何とかなるな」

 

「でしょー?」

 

アクアが、なぜかやたら誇らしげに胸を張る。

いや、実際かなり助かっているから、文句も言えないのだが。

 

「それにしても…小金魚、侮れないな」

 

「うまくやれば、私たち、本当にハンターより農場仕事の方で食っていけるかもしれないわね…まあそうなったら、本末転倒なんだけど」

 

「…そっちの方に才能があるの、素直に喜んでいいのか微妙なんですが」

 

「何言ってるのよ。食べていけるなら立派な才能でしょ?」

 

「お前、順応力だけは無駄に高いな」

 

「失礼ね!」

 

それでも、財布の中身は少し増えた。

食費の不安はひとまず遠のいた。

農場という副収入源もできた。

……ついでに、俺たちにはどうやらハンター以外の方向でも妙な適性があるらしいことまで分かった。

 

「……よし」

 

「何よ、急に」

 

「いや、何とかやっていけそうだなって思って」

 

「今さら?」

 

「今さらだよ。つい先日まで遭難者だったしな」

 

「それはそうね」

 

アクアがくすっと笑う。

 

「でも、今日はちょっとだけ“この村で暮らしてる”感じがしたわ」

 

「……ああ」

 

 分かる。

 

 狩りをして、農場で稼いで、売って、飯代を気にする。

 英雄譚とは程遠いが、こういう地に足のついた感じは嫌いじゃない。

 

 それに――

 

「次は、もうちょっと稼げるといいな」

 

「賛成よ。ネコ飯をもっと豪華にするためにも」

 

「結局そこかよ」

 

「そこは大事でしょ!」

 

笑いあいながら、

俺たちは残った荷を抱え直し、

夕暮れのポッケ村を歩き出した。

 

 白い息が空に溶ける。

 遠くの雪山は、今日も静かだった。

 ティガレックスが居るとは思えない。

 

 だが、その静けさの向こうには、轟竜だけでなく…まだ俺たちの知らない牙が潜んでいる。

 

 それを知るのは、もう少し先のことになる。




あ、よければセカジーあるあるみたいなの書いてもらえたら助かったり…!
感想と評価もお待ちしております!
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