お前の冥福を祈ったりしない   作:ホネホネ

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影の中の蛭

 

顰め面の女が歩いていた。

 

銀架城の外廊下をヒールの音を立てながら歩く彼女の眉間には深い皺が刻まれており、その深さはまるでこの世に生まれてから一度も笑ったことがないかのようだった。

それは当たらずとも遠からず、実のところ彼女が穏やかに笑った顔を見たことがある者はこの城の誰一人としていない。

 

美しい女ではある。

豊かだが下品ではない胸、細いが弱々しくはない括れ、決して低くはない背丈に更に10センチほどのヒールを履いて並の男よりも高くなった身長。過も不足もないその身体に真っ黒なドレスを纏っている。

風貌だけで言えば二十代ほどの女だが、積み重ねられた地層のようにどこか老成した雰囲気もあった。

 

癖の一つもなく真っ直ぐに伸びた白銀の髪は腰まで届くほどで、色素の薄い金の瞳はこの世界全てを侮蔑しているかのように冷たい。

すっと通った鼻筋と、張りのある瑞々しい肌。その小さな顔には完璧なパーツが完璧な位置で配置されている。敢えて瑕疵を上げるのならば、前述した深い眉間の皺と冷たい瞳くらいだろうか。

そんな女が一人、歩いていた。

 

見えざる帝国という国は影の中に存在するというその特性ゆえに明るい日差しが降り注ぐということはない。常に月夜のような薄ら明かりの世界。

 

城の外廊下の床には一定間隔で立っている柱の影が地に張り付いていた。ひとつの影を踏み越えて、薄明かりの中を往く。かと思えばすぐに次の影が歩を進める彼女の身体に張り付いては消える。

 

そうやって柱の影と差し込む光のコントラストを渡り歩いていた女はひとつの影を踏みしめた時、不意に深い眉間の皺を更に深めて立ち止まる。

そうして自らの足元に張り付く影を見下ろして、その薄い唇を開いた。

 

「誰の許しを得て私の影に潜り込んでいる?」

 

その風貌に相応しい絶対零度の声色だった。

泣き喚く子供でさえも恐怖に身を硬くして黙り込むかのような冷たい声。

無音の場にその声が響いた後、すぐさま彼女の影が揺らぐ。まるで水面のように彼女の形をした影が揺れたかと思うと、そこからズルリと質量のある人の形が現れた。

 

「護衛らろ」

 

女の影から現れたその人物は彼女の影の形とは異なる男の姿をしていた。

碌に梳かしていなさそうなボサボサの黒髪と、身体のラインの見えない貫頭衣のような白い騎士団制服。焦点の合わない虚ろで暗い瞳。

そしてなによりも目立つ、口からだらりと垂れた二枚舌。

 

見えざる帝国の星十字騎士団の一人であるニャンゾル・ワイゾルの姿がそこにあった。

 

ニャンゾルは女の圧のある声に怯むことなく、普段通りのマイペースのまま舌っ足らずに言葉を紡ぐ。

 

「オイはユディトしゃまの護衛を頼まれらんらろ」

 

ユディトと呼ばれた女はヒールの高さを使って彼を見下ろすと、不愉快を隠さない顔をした。

 

「……誰の許しであるか、と聞いたはずだが?足らぬのは舌か、耳か、それとも頭か?」

「んあ、陛下のご命令らろ。ごめんらさい、オイはまた言葉足らずらった」

「省みる意志があるのならば、まずは直す努力を見せよ。お前の言葉が足りていた覚えが無い」

「あい」

 

ニャンゾルはこの国の滅却師の中でも特に情勢に関心が無く、何処にいても自由人だが、忠誠を誓うユーハバッハや目の前のユディトに対しては比較的従順な姿を見せることが多かった。

素直な返事を耳にしたユディトは彼への視線を切ると、前を向いて再び歩き出す。そんな彼女のあとをニャンゾルはペタペタと裸足のままついていった。

そんな彼へ往ねと吐き捨てることは容易かったが、皇帝に命じられたことに逆らうことなどできるわけがないということも理解していた。

 

廊下に差し込む光が彼女の横に影を作る。

進む彼女の影の中を、影踏みのようについていきながらニャンゾルはぼんやりとした瞳で隣を歩くユディトを見ていた。

元より発育の悪い彼はそこまで背が高くはない。対して女性にしては背の高いユディトは更に高い踵の靴を履いているため、彼からしてみればほとんど見上げるような体勢となる。

 

無遠慮に向けられる視線を無視していたユディトだが、やがてそれにも耐えかねたのか、或いは単に暇を潰すためなのか、不意に彼の名を呼んだ。

 

「ニャンゾル」

「あい」

「あの男がお前に私の護衛をするようにと命じたのか?」

「オイは陛下にユディトしゃまの影ん中にいるようにっれ言われたらけらろ」

「……やはりな。明言しなかったのだろう?ならば護衛ではなく監視が目的に決まっている。相変わらず不愉快この上ない男だ」

 

見えざる帝国の国家元首たるユーハバッハに対して不遜な物言いを繰り返す彼女を、しかしニャンゾルは咎めなかった。それは無関心故にではなく、彼女のその在り方を当然のように受け入れているかのようだった。

 

「ユディトしゃまが心配なんらろ思うけろ」

「……馬鹿げた夢想は止めよ。あの男に他者への情や慈悲の心があるなどと思うな」

「……?陛下はお優しいろ……」

「気色の悪いことを言うな。そんなわけがなかろうよ」

「れも、陛下はオイのこと気持ち悪がらなかったろ。舌が多くても、上手(じょうじゅ)に喋れらくても、嫌な目れ見なかった」

 

歪に生まれ、歪に生きる他なかったニャンゾルにとって、ごく普通の人間を相手にするかのように視線を合わせて話をしてくれたユーハバッハはそれだけで特別な存在だった。

 

当たり前のことが特別だったから嬉しい。

そうしてくれたあの人は優しい。

そう口にするニャンゾルに、ユディトは不愉快げに顔を歪めて言葉を紡ぐ。

 

「馬鹿を言え。お前は地を這う蟻の一匹一匹に個としての区別がつけられるのか?あの男にとって他者とは蟻と変わらん。奴が他者に求めるものは有用な機能のみ。いくらか都合が良い者へそれらしい振る舞いをしているだけだ」

 

苛立ちを滲ませながら、彼女は「ニャンゾル」と彼を呼んだ。それから唾を吐き捨てるように言った。

 

「他者の無関心に喜びを感じるのはやめよ。それがお前を救うことはないのだから」

 

そう断言する彼女の隣をペタペタと裸足のまま歩きながらニャンゾルは頭の中で浮雲のように生まれた思いつきを口にする。

長く陛下の傍にいて、こんなにも陛下のことをよく理解し、言葉にすることができる人がいるなんて。難しいことはよく分からないと思いながらも、ニャンゾルは彼女の姿を目に映してほとんど確信じみた顔をしてみせた。

 

「ユディトしゃまは皇妃で、陛下のことが大好きらから、陛下のこともよくわかってるんられ」

 

その言葉が言い終わるや否や、ユディトは立ち止まる。

瞬間、その空間を押し潰すかのような凄まじい霊圧がその場を支配した。

ただの人間ならば訳も分からずに地に這いつくばるほかないだろうほどの圧。

そうしてユディトはわかりやすく怒気の滲んだ目でニャンゾルを見下ろした。

 

皇妃、つまりは皇帝の妻。

その立場を示す名称で呼ばれた彼女は腹の底から湧き上がるような苛立ちを抑えることなく低い声で唸るように言った。

 

「……好き……?この私が?……あの男を……?」

「あい」

「……ニャンゾル・ワイゾル。二度とそのような世迷い言を口にするなと、その足りぬ脳味噌に刻んでおけ。もしあともう一言要らぬ言葉を付け加えていたら、私はお前を虫ケラのように殺していたぞ」

「れも、二人は結婚してるろ?」

「御伽話しか知らぬのか?すべて結婚に愛や情があると思うなよ」

 

事実、ユディトは確かにユーハバッハの妻である。

約1000年前、ユーハバッハが光の帝国の皇帝だった頃、彼女は紆余曲折あって己の意思に反して皇帝の妻として無理矢理娶られていた。

 

屈辱と無力感、踏みつけにされた矜持。

そっと胸元に触れれば、今も残る胸の痛み。

あの日からユディトは皇帝ユーハバッハを心の底から嫌悪しており、憎悪を超えて絶えることのない殺意を抱き続けている。

 

端から見れば二人は1000年もの長い間連れ添った熟年夫婦であるが、その内実は新婚の時から冷え切っている。

絶対零度の不毛の土地。寝室は当然別。一日の会話はほぼ無し、というか一ヶ月の会話もほぼ無し。最後に視線を合わせたのは年単位で遥か昔。鎹となるはずの実子はいない。

 

死んでほしい。

できることならば早く死んでほしい。

それが無理でも早く死んでほしい。

そう語る彼女の心に曇りはない。

 

今後熱を持つであろうことなど到底期待できない関係であった。

そんな彼女を前にニャンゾルはこう一言言った。

 

「チュンデレ?」

 

ツンデレ。

彼女の冷めきった感情を、怖いものを知らないニャンゾルはそう評した。特に脳を使わずに、ほとんど反射のように口をついて出た言葉だった。常より言葉が足りないと指摘される彼だったが、今この瞬間だけは確実に余計なことを口にしていた。

 

そんなふうに舐めた発言をされたユディト。

当然彼女は嵐のように怒り狂うだろうと思われたが。

 

「……チュン、デ?なんだ、今なんと言った?」

 

彼女がその言葉の意味を理解していなかったことが彼の幸運であった。

ニャンゾルに揶揄うような意図が一切なかったというのも大きかっただろう、もしほんの少しでも言葉の端に揶揄を見せていたのならば、言葉の意味はわからずとも馬鹿にされたことを察した彼女の手によって彼の首は床に転がっていた。

そうはならなかったニャンゾルはユディトの困惑の反応を気にすることなく言葉を続ける。

 

「チュンとデレは光と影。チュンはデレまでの助走らって言うろ」

「……お前が何を言っているのかわからん。老人相手に若者言葉を使うな」

 

いつも通りのマイペースさで言葉を紡ぐニャンゾルに、彼女もそれ以上その話題を続ける気が失せたらしい。

軽く嘆息すると再び前を向いていくらか歩みを進めると、廊下の先にある書庫へ入っていった。

 

 

 

彼女にとって見えざる帝国は己の国ではない。

そこに住まう民は彼女の民ではなく、つまり庇護の対象ではない。彼女にとっては目に映るすべてが路傍の石に過ぎなかった。

この国や滅却師のすべてに無関心であり、それらを助け、救おうなどとは少しも思わない。

 

故に、彼女は皇妃でありながら為政に関わらない。

 

ユーハバッハが死神との再びの全面戦争のために動いていることは知っていた。

その果てに、死神かあるいは滅却師のどちらかが滅び果てようともどうだっていい。

 

逃げようのない立場に身を置いたまま、彼女は僅かな抵抗の手段として何も選択しない事だけを選択する。

何も選ばない。何も望まない。何も尊ばない。

過程を求めずに、ただ結果がこの身に辿り着く日を待ち続けている。

 

 

書庫の中はひどく埃の匂いがした。

天井に届くほどに高い本棚が迷路の壁のように部屋の中に置かれている。ぎゅうぎゅうに詰め込まれた本は埃を被ったまま、もう何年も読まれた形跡がない。

この部屋にある書物は娯楽を求めるには堅苦しく、知識を求めるには古臭かった。故に誰も寄り付かないこの部屋で彼女は日々の大半を過ごしている。

 

書庫の奥の奥、僅かに拓けた空間に硬い二人掛けのソファが置かれている。

窓辺ではあるがその窓もまた高い本棚でほとんどが塞がれており、僅かな隙間から差し込む光だけがこの部屋の光源だった。

 

ユディトはソファに腰掛けると傍にあった重い本を手に取る。そしてその表紙を開こうとして……手を止める。そうして顔を上げた。

 

その視線の先には、これまでずっと影のようについてきていた男の姿がある。

彼はこの部屋にも数多の本にも関心はなさそうに、ただぼおっとした表情で虚空を見つめたまま、彼女の前に立っていた。

 

放っておいてもよかった。

どうせ追い払っても意味はない。ニャンゾルがユーハバッハの命令でここにいる以上、その命に背けるわけもない。なにをしたって変わらない。

 

……こちらの意思などお構いなしだ。

いつだってそうだった。ユーハバッハにとってユディトはそういうものだった。ただ飾って人目に晒すだけの実用性のない綺麗なお人形。皇帝という立場に有用だから手に取っただけの置物。

 

不意にいっそ目の前のニャンゾルを殺してしまおうかと思った。

監視のために送り込んだ部下が殺されるなど、それは僅かながらとはいえ、ユーハバッハの意思とは異なるものとなるだろう。

意図しない結果を返されたあの男がほんの少しでも眉を動かす様を見ることができたのならば、それはどれだけ心地よいことだろうか。

 

殺そう。ならば殺してしまおう。

そう思い、それを実行しようとして……すぐに下らないと自嘲する。

そんなことをしても何も変わらない。あの男が不愉快に思うわけもない。ただ何もかもが無意味なだけ。

元よりあの男が生かすために騎士たちを置いているわけもない。誰も彼もいつか死ぬために集められた者たちだ。何もせずともいずれ死ぬ。生かす理由もないが、こんな癇癪のために殺す理由もない。

ユディトは微かに肩を落とすと、前に立つ男に向かって言った。

その声音に憐憫と、僅かな慈愛を含めて。

 

「蛭子」

 

呼べばすぐに視線が合う。虚ろな瞳と二枚舌。

あの男の無関心が優しさであるはずがない。どうだっていいだけなのだ。私のことも、お前のことも。こちらが感情を震わせるだけ無意味だ。

そんなことを考えるユディトから蛭子と呼ばれたニャンゾルは変わらない表情のまま、こてんと小首を傾げた。

 

「……悪口(わりゅぐち)?」

「ふん、どうとでも好きに捉えよ。……それ、いつまで私の前に立つつもりだ。煩わしくて仕方ない。隣へ座ることを許す。大人しくするのならば邪険にはせん」

 

それだけ告げて、本を開く。仮にニャンゾルが隣に座ろうとも、座らずとも、影の中に入ろうと、もう構わなかった。

どうせ、いずれは死ぬ命。お互い様だ。好きにすればいい。

 

文字に視線を落とした途端、ソファが軋みを上げて僅かに沈んだ。好きにすればいいと思いながら、しかしその沈みに微かな満足感を得ている自分がいた。

 

 

文字を目で追う。ページを捲る。

外の喧騒さえ遠い、無音の密室。

埃にまみれたこの部屋は古びた標本のようで、時の流れは無いも同然だった。

 

本を読み進める間、息継ぎをするように時折ふと隣にいるニャンゾルに意識を向けた。だが、視線は向けない。鼓膜を揺らす一定の呼吸は変わらない。彼が起きていようか寝ていようが、構わなかった。

 

ユディトの瞳は静かに書物の文字を辿り、その物語の中へ引き込まれていた。

 

『──御覧なさい。アッシリア軍の総司令官ホロフェルネスの首です。御覧なさい。彼はこの垂れ絹の中で酔いつぶれていました。主は女の腕をもって彼を討たれたのです。わたしの歩む道を守ってくださった生ける主に誓って申します。わたしの容色は彼を魅了し、滅ぼしましたが、この身が汚され、辱められるようなことは決してありませんでした』

 

物語に集中した真剣な眼差しのまま、彼女が僅かに眉を寄せた、その時だった。

 

大きな爆発音と共に、地が揺れた。

 

その揺れはそう大きくもなく一瞬のものだった。

恐らく騎士たちの訓練か、或いは己の力の加減を間違えた者でもいたか、そのあたりだろうとユディトは内心で見当をつける。少なくとも大事ではない。

 

彼女のその判断は正しかった。

それは若い騎士による能力の暴発であり、戦闘や攻撃によるものではなかった。けれど、それによって生まれた振動はこの書庫までもを確かに揺らしていた。

 

彼女のそばにある高い本棚、その上に乱雑に積み上げられていた複数の本が振動で動き、バランスを崩し、音を立てて落下する。

丁度、彼女のいるソファ目掛けて。

複数の重い革表紙の本が墜落していく。

そしてそれがユディトの体を殴打する、その瞬間。

 

──捻り、曲がる。

 

数多の本が彼女の体の上に落ちることはなかった。

まるで意志を持って避けるかのように本は曲がり、そのすべてがソファの周囲に乱雑に転がる。

 

分厚い本が、まるでパン生地かのように捻じ曲がった状態で地に転がっているのをユディトはつまらなそうに見下ろす。それからその金の瞳で隣に座るニャンゾルを見た。

 

「……お前の力だったか」

 

紆余曲折(ザ・ワインド)

それがニャンゾルに刻まれた聖文字であり、彼の力。彼が害あると本能的に認識したものを捻じ曲げる能力。

それによって、落下する本から彼女を守ったという事実だけが二人の足元に転がっている。

 

その功績をひけらかすわけでもなく、ニャンゾルはユディトからの言葉に頷いた。その反応の鈍さにユディトは僅かに顔を顰めると「……言っておくが」と前置きをした。

 

「お前がおらずとも、私は己の身を守れた。勘違いするなよ」

「あい」

「…………」

「…………」

「…………とはいえ、だ。お前が主命に背くことなく私を守護した功績は事実だ。騎士としてあるべき姿である。……まあ、その、なんだ、感謝と共に、称賛してやってもいい」

「……チュンデレら」

「だからなんだそれは」

 

一瞬眉を吊り上げたユディトだったが、すぐに肩を落として「まあ、それはいい」と話を流す。それから自らの懐から小さな包を取り出し、ニャンゾルへ与えた。

 

「褒美だ。菓子をやろう」

「チョコら!」

「私は甘いものは好かん。お前にくれてやる」

「ありらろう」

「よい。……して、ニャンゾルよ。この本はどうする気だ?」

 

つんと指を差した先には絞られた雑巾のように捻じ曲がった数多の本。万力で捻じ曲げられたかのようなそれを書物として扱うことはほぼ不可能だ。表紙を開くことさえままならない。

 

ぽかんとした顔で見つめてくるニャンゾルに、ユディトは微かに意地悪く口角を緩めると「直せ」と命じた。その言葉に、彼は首を横に振る。

 

「……無理らよ。オイは物を曲げても、物を直したことなんてないろ」

「口答えするな。逆軸に同じだけ曲げれば、理論上は元に戻るはずだろう。やれ」

 

それだけ命じて、彼女は再び本に目を落とす。

隣のニャンゾルがうにゃうにゃと何かを言いながら足元の捻じ曲がった本を手に取るのを流し目に見る。

 

そうして彼女は少しだけ、表情を緩めた。

 

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