貞操逆転世界の中堅冒険者   作:だいたいおおそよだいたい

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前回のあらすじ

俺の家が…燃えとる…

→捕まった!小道具没収された!拷問受けた!

→何とか建物爆破で一命取り留め。

→倒壊した木材で下半身潰れたわ。死ぬね、これ。

→天使さんが覚醒。助かった〜〜〜

→だけど俺の家全焼。
しばらくS級2人が住む御屋敷で居候かな。


S級変態白猫女 VS 中年差し掛かり冒険者

…………。

 

暇だ。それはもう暇だ。

 

あれから俺はアルティとシースが暮らす屋敷でしばらく過ごすこととなった。

 

が。

 

いかんせん暇なのだ。

いや、暇…と言うより無気力の方が正しいか。

緊張の糸が切れたどころではない。この屋敷に居候を始めて早3日。

 

いい加減図書室の本を読み漁る毎日も飽きてきた。

 

シースやアルティは頻繁にクエストへ行くし、シロとクロもアルティとシースの修行でくたくた。

基本的には疲れ果てて寝ているか、図書室で学んでいるか。

それかシースとアルティによる修行。

俺の介入の余地なしである。

 

 

「いかん…脳が腐る……。」

 

ベンチの木材部分の年輪を数えるのも飽きてきた。

こうも緊張感が無いと、おかしくなっちまう。

 

だからと言って、外にもあまり出たくない。

あんな人通りが多い所、残党の暗殺者共に腹を刺されて死にかねん。

 

本来ならそんな事起こることはないだろうが、最近の俺はすこぶる運が悪い。

 

「探索…でもするかぁ。」

 

この屋敷は広い。

尚且つ使用人も一流のメイドや執事が複数名のみ。

 

なので基本的に日中は不気味なほど静かだ。

と言うか、庭が広すぎて街のざわめきや生活音が全く入ってこない。

 

聞こえるのは川のせせらぎと風で木の葉が揺れる音。

後は鳥のさえずり。

今では余り気にならなくなったが、来たばっかりのときは感動したものだ。

 

まずい。うとうとしてきた。日光が心地よいのだ。

このような生活は老後でいい。

 

俺は屋敷のなかに入り、早速使ってないであろう部屋の探索を始める。

 

 

 

 

 

まずは一部屋目。

何もなし。空っぽだ。しかし掃除は行き届いており、それが却って不気味だ。

 

続いて2部屋目。何もなし。

そりゃそうだ。この屋敷、本当の本当に馬鹿広いもの。

 

と言うかここ一帯空室か。流石にもっと違う場所に移動しよう。俺は2階のアルティの部屋周辺の部屋を探索する。

 

「お、ここは…倉庫?」

 

今までの空室よりも何倍も広く、体育館位の広さのある部屋に出る。そこにはずらっと献上されたであろう魔道具が積まれている。

 

恐らく安全な物がここに移動させられているのだろう。

じゃなきゃこんな乱雑に積まない。

 

俺は興味津々にその魔道具の山を漁る。

 

ドラゴンの目。 グリフォンのくちばし。プラチナスライムの破片。………。これ、魔道具じゃなくてあの2人が討伐した魔物の戦利品のようだ。

 

…と言うかこれ1つ売るだけで7代先まで遊んで暮らせるような素材が山積み。

まぁ恐らく、市場に流すと相場がぶち壊れるため、売るに売れないのだろう。

そもそも、加工したら素人が振るうだけで大岩が消し飛ぶ武器が作れる素材だ。そんな物危険すぎてどこも引き取ってくれないだろう。

 

俺はその部屋を後にし、アルティの研究室へと足を運ぶ。

 

アルティは魔道具の研究も趣味程度にやっており、何度か試作品を使わせてもらったこともある。

しかもアルティの作る魔道具は戦闘用ではなく殆どが日用品。少し触った程度で爆発するような危険物はない…はず。

 

俺は研究室に入る。薬品のツンとした匂いが染み付いている。理科室の匂いを濃縮したような感じだ。

 

俺は適当にテーブルの上に置いてある魔道具に目をつける。

それはモフモフとした腕輪。そのモフモフは純白かつ、肌触りも良さそうだ。

 

まるでアルティの体毛そのもの。

……。俺はいつも、はしたない男にならない為、思われない為にアルティをモフりたいという気持ちを心の奥底に閉じ込めている。

 

俺はその腕輪を半衝動的に手に取る。

本当なら眺めるだけにするつもりだったが、少しだけなら問題ない。

…やはり、モフモフ。モフモフは俺の今までの衝動に見合う触り心地。生まれてきてよかった。

 

そうやって腕輪をいじっていると、腕にすっぽりと入ってしまった。

その瞬間、俺の目の前を煙が包み込み何も見えなくなる。

 

これ、装着しただけで発動するタイプの魔道具だった様だ。

目線が低い。恐らく姿形を変えるタイプの魔道具。

 

あー。勝手に触るなってアルティに怒られる〜。

と言うか、煙が消えたのに俺の視界は真っ黒。と言うか…これは布?

 

俺は全力でもぞもぞすることで、何とか布から脱出する。

 

…これ、服だ。さっきまで俺が着ていた。

 

俺は咄嗟に体に視線を向ける。

そこには白い体と肉球。そしてガラスに反射していたのは白猫の姿。

 

これはどうやら猫になる魔道具。

つまり、俺の風呂や着替えによく現れていた白猫はあの馬鹿2人のどちらかという事…だが今はそんな事どうでもいい。

 

俺の手は肉球となっており、器用さが地の底まで落ちてしまっている。つまり、腕輪が取れない。

 

まぁ、アルティかシースに出会えば取ってくれるだろうし、あまり深刻に考える必要はないか。

それより俺は今、姿が変わったことのワクワクの方が大きい。時刻は恐らく9〜10時。

アルティとシースが帰ってくるまでしばらく時間もある。

 

「これは…街を探検…だな。」

 

って喋れるのか。

てっきり、にゃーとかふしゃーとしか発声出来ないと思っていたが、目茶苦茶流暢に喋れる。

なんだ、ならこの腕輪を外してくれと言えばいいだけじゃないか。

 

安心した俺は屋敷から街へと出る。

 

 

 

 

 

 

しかし、本当に不思議な気分だ。

無事に街へと出れた俺だが、皆の視線をほとんど感じない。

何時もは女性達の視線が痛いほどあるのだが。

 

転生したばかりの頃は、周りに特別に見られている、という事を実感できてなんなら少し嬉しいまであったのだが、よくよく考えてみると周りにそのような目で見られていた際の年齢は確か8歳。

 

あかんやろ。

 

そう思った俺は、基本的に山で生活するようになった…のだが、アルティやシースと出会ったことで街に降りて暮らすようになった。

弱い仙人である。

 

まぁ、そういう事で周りの視線無く自由気ままに辺りを散歩出来るのは、俺にとって幸運だ。

暇だ暇だと嘆いていたのが帳消し、いや、むしろ最高の1日になりそうだ。

 

そうやって意気揚々とレンガの塀の上を歩いていると、路地裏の方から最近聞いたことがある声が聞こえた。

 

…?シロやクロと出会ったときのように、厄介事の気もするが、不思議とあの時のような嫌な予感はしない。

 

まぁ俺今猫だし。

一つの傍観者としての気分も味わおう。

 

路地裏の方をひょいひょいっと身軽に移動していくと、そこには見知った……というか予想外の女性がいた。

 

装備をしていないので一瞬別人かと思ったが、やはりあの糸目暗殺者だ。俺にガニ股全裸磔にされた。

 

横目に見ただけでは浮浪者と忖度ない彼女は、死んだ目でブツブツとうわ言を言っている。

本来なら危険…というか普通に命の危機なので直ぐに逃げ出す所だが、吾輩は今猫。

 

何となくその糸目暗殺者にすり寄ってみる。

 

「にゃーん」(精一杯の猫の真似)(キツイ)

 

「あ?猫…か。猫にしては随分低い声だな。まぁ、猫になら…愚痴をしてもいいか…。」

 

「にゃん?」

 

「私、クビになっちゃったんだ…依頼に失敗して…しかも辱めもうけて…」

 

そう零れるように呟いた彼女は次に憤怒に満ちた表情でこうも語り出す。

 

「私の人生を壊したあの男だけは絶対に許さん…!今度会ったら絶対私と同じ目に合わせてやる…!」

 

やはり街に出なくてよかった。本当に。

 

「そういえば猫って美味いのか…?」

 

「にゃ?」

 

 え?

 

俺は持てる力全てをもって走る。

やばいやばい。そういえばこの世界、割と普通に犬とか猫も死にそうなら割と躊躇なく食うんだった。

 

 

 

何とか逃げ切れたようだ。

というか猫しか通れないような狭い路地に逃げ込んでもしばらく追っかけてきたのは正直トラウマだ。

 

俺はくたくたになりながらも屋敷に戻る。

この腕輪は…シロにでも取ってもらおう。

 

門を下からくぐり、屋敷へと戻る。

最後は疲れたが、人目を気にせずに街を散歩できたのは最高だったな。

間違いなく走馬灯が頭の中に流れる際、今日の出来事は見ることとなるだろう。

 

後はシロに腕輪を取ってもらって、ミッションコンプリートって奴だ。

何となく横を見る。

 

アルティがいる。

 

もう一度横を見る。

 

アルティが顔を青くして俺を見ている。

いや、俺と言うより俺の腕に着けている物を見ている。

 

「に、にゃー。」

 

「その声…フィルね。」

 

わあ、咄嗟の猫のモノマネは悪手中の悪手だった。

 

「はぁ…。実験室開けっ放しにしたのは悪かったから、さっさとこの腕輪取らせてもらうわ。」

 

「誰が素直に腕輪を外させるか。」

 

「やっぱりその声、フィルで間違いなさそうね。」

 

なんか、今日は最悪な選択を毎度毎度選んでる気がするな。

 

「追いついたら大人しく返してやるよ!」

 

俺は今全裸。

アルティはその事を理解してるだろうし、多分それが理由で無理矢理にでも腕輪を取ろうとしている。

 

俺は全力で屋敷の中へ逃げる。

この体は小回りが利くし、体幹も良い。

 

俺は使われてない一室に逃げ込もうと……ってドア開けられねぇ!?そうだ。なんて初歩も初歩なミスを。

 

庭の雑木林に逃げ込むのが正解だったな。

 

俺は何とか半開きになっているドアを探し出し、その部屋に逃げ込む。

 

俺の身体は今、大体の隙間なら潜り込める。

奴の転移魔法は正確な座標が分かっていない限り発動できない。

 

俺はタンスの下に逃げ込む。

ここでやり過ごす。隙を見てシロに頼んで…と言うかこの腕輪を何処かに引っ掛ければ元の姿に戻れるな。

 

なんというか、今日の俺、アホすぎないか?

ここ数日ボーッとしていただけなのに、脳みそ腐りすぎだろ。

 

俺は外の様子を確認する為、頭を出す。

 

「捕まえた♡」

 

突然、全身が激しく引っ張られる。

俺を抱えているのは、アルティ。

 

だが瞳孔開きまくってるわ息も荒いわでとても正気とは思えない。まだ発情期に引っ張られているのか。

 

そんな事より!

 

「分かった!俺が悪かったから話してくれ…」

 

「それは行為が終わってからでもいいかしら♡」

 

駄目だ。今は何を言っても興奮材料となってしまう。

何時もは仲介人としてシースが何とかしてくれるのだが……

 

そんな都合よくいるわけない。

 

「畜生!そんなにヤりたいのならヤらせてやるよ!」

 

「へ?」

 

俺は腕輪を口で挟んで全力で引っ剥がす。

意外と簡単に抜けた。

 

その瞬間、またもや身体が煙に包まれた、一糸纏わぬ人間の俺に戻る。

 

「はっ♡はっ♡」

 

…………。何というか、興奮しすぎだろ。

 

俺は更に更に勢に任せ、全力で全裸のままアルティを抱擁する。モフモフで暖かい。あた…あ…熱っ!!!!

 

 

「おっ♡」

 

 

すると、アルティは一度大きく痙攣してから、動かなくなった。死んだか…。

 

「………………♡」

 

完全に意識を失っている。

俺の勝ちだ。

 

気絶したアルティをソファの上に寝かせ、俺は服を探す為にタンスを開ける。

 

「あばばばばばばばばばばばばばばばば」

 

ん?鳴き声とも奇声とも似つかない声が聞こえる。

しかも部屋の入り口から。

 

「シ、シース…いつから見てた…?」

 

「アルティとフィルが、交尾しようとしている!」

 

「違うて」

 

「アルティとフィルが熱々イチャラブ抱擁をしている!!」

 

「違うて」

 

「わ、わわ私は何も見てないぞ!今日の夕飯楽しみだな〜〜〜〜!!」

 

「わ…」(余りの絶望的状況に脳がキャパオーバーを迎える)

 

 

今日の出来事は走馬灯に確実に入ってくるだろう。

 

悪い意味で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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