貞操逆転世界の中堅冒険者   作:だいたいおおそよだいたい

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前回のあらすじ

薬草を取りに行くぜ!

→取り終わったぜ!ん?こんな洞窟あったっけ?

→謎の巨腕が洞窟から生えてきて、中に引きずり込まれたぜ!




いやーな予兆!

俺の腰は今、砕けるか砕けないかの境地にいる。

砕けると言っても腰砕けの様な例えではなく、本当に骨盤が粉々になるか、だ。

 

…しかし、俺を洞窟の中に引きずり込んだ奴は追撃の様子を見せない。

もし人狼なら、俺はこのままいたぶられた後に、ゆっくりと食われるだろう。(性的じゃなく普通に)

 

人狼ではなく、普通の狼の獣人である可能性も捨てきれないが…そんな希望に縋ったところで現状が変わるわけではない。

 

今、俺にとって最悪の展開を想像しろ。

俺が今、できる限りのベストは?

 

小道具があるにはあるが…腕も固定されており、下半身は禄に動かせない。

尚且つこの暗闇。まともに道具を取り出せるかも怪しい。

 

この状況でできることは抵抗という名のイモムシごっこか対話のみ。

俺は一か八か奴に対話を試みる。

 

「おい…俺はお前の敵ではない。だから俺の腰から退いてくれることは可能か?」

 

「あ、敵じゃないのか。すまないな。」

 

喋れるんかい。 

 

「いやはや先程のゴブリンの仲間かと思ったぞ。危うく人族を殺す所だったわ。人狼の野郎にはなりたくねぇからな。」

 

人狼やないんかい。

 

「クン…この匂い。まさか男か!?男にしては筋肉質だな!」

 

「そうだ。と言うかいい加減退いてくれ。俺の腰が粉砕されるのも時間の問題だ。」

 

「そうだった!すまないすまない!」

 

腰が軽くなる。いや、解放されるの方が正しいか。

しかし視界は相変わらず真っ暗闇。

 

「暗くてよく見えん…すまんが外まで案内してもらえるか?」

 

「え?あぁ!アタシは暗闇の方が好きで連れの魔法で暗くしてもらってたんだ!今解くから少し待ってくれ!」

 

暗闇にする魔法…アルティが使ってるのは見たことがない魔法だな…

てか今連れと言ったか?

1人ではないのか。つまり旅の商人か何かか?

 

突如、洞窟内が光に包まれる。

目が!目がぁぁぁぁぁ!!!!!

んな急に明るくなるなんて聞いてないぞ!普通はぼんやりと段階を踏んで明るくなってくもんだろうが!

 

「あ、すまん。急に明るくなると言うべきだったな。」

 

「お前なぁ…まだ目がチカチカする…」

 

目が慣れてきた。

どうやらかなり狭い空間だったようで、洞窟と言うより空洞の方が正しい。

 

「お前、何かデカくないか…?色々と」

 

俺の目の前にいたのは身長が2.4メートルはあろう獣人。

しかも身長だけでなく胸もでかい。

正直このサイズは生まれて初めて見た。

 

「胸、でかいだろ!胸でかいと体の下に潜り込まれた時首を狙われなくて便利なんだ!」

 

「まあ、便利ではあるかもな。」

 

嘘である。

絶対日常生活で邪魔になるに決まってる。

と言うか潜り込まれたらそのまま脇腹刺されて終わりだろ。

 

「ところで、お前は何者なんだ?この辺りにこの様な獣人がいるとは聞いたことがないのだが…」

 

「ああ!そうだな!なんせアタシは隣の街からわざわざやって来た、誇り高きA級冒険者のウォルスだからな!」

 

あー。

ギルドの職員が近いうちに異動してくると言っていたA級1人とS級1人か。

 

「つまりお前の連れは…」

 

「あ〜…そうだな!S級のロズってエルフなんだが…あいつは面倒くさいし人族を見下す癖があるからさっさと街に帰った方がいいぞ。」

 

「そうか。まあエルフ族や天使族は人族を下に見がちだからな。ご忠告感謝する。」

 

「おやおや…本人がいる前で悪口を言うのは無礼…と見なしても良いのじゃぞ。ウォルス。」

 

「「げっ。」」

 

「あー!ロズさん!気付いてなかったんだよ!ごめんごめん!」

 

「別に犬っころなんぞに幾ら悪口陰口言われたところで何とも思わん。それより、この男は誰じゃ?」

 

こう言う時は初対面に全てがかかってる。

S級は共に任務を共にすることが多い。特に転移魔法役のアルティ。

そして俺はS級の阿呆二人と過ごす時間が多い。

つまりこのロズと言うエルフと共に過ごす機会も増えるだろう。

これからの生活がかかってると言ってもいい。

意を決して後ろに振り向く。

 

……?誰もいない。

 

「お前…さっきから目を合わせるどころか顔も合わせていないが…馬鹿にしてるのか?」

 

「あっ。すいません。予想よりその…何というか…とても可愛らしい背丈だったもので…」

 

あっ。終わったー。

咄嗟に出た言葉がチビだから気づかなかったわwごめーんwだったのだ。

遺言を残す時間位あるかな。

 

「お前…中々生意気な餓鬼じゃな。それに男の癖してこの格好…冒険者じゃろ。…面白い。」

 

お?もしや生き延びれるか?

 

「はえー。ロズさんに気に入られるなんて珍しい男だな。」

 

俺は顔を下に向ける。

そこにいたのは金髪ロングの餓鬼…とても麗しい子供だった。

エルフは実年齢が分かりにくいとは聞くがこれでも数百年は生きているのだろうか。

意外とエルフのなかでもババアなのかもしれないしな。

 

「何か今凄い失礼な事を考えてなかったか?男。」

 

「いやいや…まさか!S級冒険者ともあろう御方に案外ババアかもしれないなんて考えてませんよ!」

 

 

 

 

 

 

俺は頭に出来た1つのコブを擦りながらウォルスとロズと共に街へ帰還する。

今、俺たちがいるのは検問所。

ここで俺達は壁にぶち当たっている。

 

「あの…この街に入るには何か身分を証明できる物が必要となるのですが…」

 

「…ロズさん、ウォルスさん、何か身分が証明できる物…つまり冒険者証あります?」

 

「えっ。あれってもういらないんじゃないのか!」

 

「ウォルスに同意じゃ。てっきりもう使わんかと思ったぞ。」

 

「じゃ…じゃあ冒険者証って…」

 

「なくしたぞ!」

 

「売ったのじゃ。」

 

「あああああああああああ!」

 

「な…なんだよ急にヒステリックになりやがって…」

 

「気でも狂ったか…。可哀想に。きっと辛い事を思い出したのであろう。ウォルスよ、そっとしておくのが吉じゃぞ。」

 

「お前ら上位冒険者はどうしてそんなに適当なんだ!」

 

俺は怒りと言うか呆れに包まれる。

何故ならアルティもシースも同じ事を何度か繰り返しているからだ。

この2人にキレるのは違う…と思うが…いや、ロズは売ってるからキレていいな。

 

「あの…ですね。お二人さん。冒険者証がなければこの街に入るには大量の通行料を取られます。1人20金貨!払えるのですか…?」

 

「持ってないな!すまん!払ってくれ!」

 

「儂も持っとらん。おぬしが払え。」

 

ですよねー。

金があったらあんな洞窟で野宿しませんよねー。

ちなみに20金貨は大体高級ホテル2泊分。

 

「まあ…フィルさんのお仲間と言う事であれば特別に通ってもいいですよ。」

 

「なぬ!本当か!やはり儂の名声はこんな糞辺鄙な魔道具しか取り柄のない街にまで広まっておったのか!」

 

「やはりアタシの実績を鑑みるに妥当か…」

 

この2人は話を聞いていたのだろうか?

何というか言葉は喋れるのに会話はできない低級の魔物と会話してる気分だ。

 

まあその点で言えばアルティとシースも変わらんか。

 

俺達は、ギルドに薬草を預けた後、街の大通りを歩きながら会話を続ける。

 

「それで……どうしてこの街のギルドまで異動になったのですか?」

 

「知らん!アタシは上に命令されてやって来た!」

 

「儂は大体上の目的はわかっておるつもりじゃが…その話をするにはこの街のS級冒険者2人と話をしたい。今どこにいるか分かるかの?」

 

「恐らく今はクエスト中ですね。クエストから戻るのは大体夕方6時を回ってからなので、2人が暮らす御屋敷に案内しますよ。」

 

「そういえば先ほど、検問所の人族のメスがお前の名をフィルと言っておったな」

 

「あぁ。俺の名前はフィルだ。B級冒険者としてそれなりの実力とそれなりの実績でやらせてもらってるよ。」

 

「へぇ!お前がS級2人の金魚の糞として有名なフィルか!」

 

「えぇ…ほかの街ではそう呼ばれてるのか…?」

 

「あぁ。だが姿を見て分かった!お前は金魚の糞ではない!」

 

「そうじゃな。黄金の金魚の糞といったところじゃな。」

 

「…それ褒めてんのか?」

 

「ロズさんが人族に…それに男に対して褒めるなんて滅多にないことだぞ!たぶん!」

 

信用ならねぇなぁ…。

そんな事を話していると、2人の屋敷に付く。

 

「ここがS級2人の屋敷か…門からして相当デカい屋敷だな!」

 

「デカい割に中の人の気配が少ないのう。4人程しか確認できんわ。」

 

クロとシロと使用人か。

俺は門の認証装置に自分の手をかざす。 

すると門は大きな音を立て開く。

 

これはつい最近アルティが開発した魔道具をはめ込んだ門。

最近は前より魔道具開発に熱が入っているようで、暇さえあれば研究室に閉じこもっている。

 

二人を屋敷に案内する。

 

「おー!中も豪華じゃねえか!しかも目茶苦茶広いし!」

 

「むぅ。儂の前の住処より豪華じゃな。それに道具一つ一つに高度な魔法が込められておる。」

 

「アタシ探検してくる!」

 

「はぁ!?ここ人の屋敷ですよ!駄目に決まってます!」

 

「ほう!儂も面白そうじゃから共に行こう!」

 

行ってしまったか…。

何か…二人共元気すぎやしないか?クロとシロの方がよっぽど聞き分け良いし大人しいぞ。

 

この屋敷には貴重な素材がわんさかとある。

仕方ないが形だけでもいいから止めに行こう。

 

俺は二人をやる気の無い足取りで追うのだった。

 

この屋敷は俺の知らない罠や隠し部屋が山ほどある。

正にトラップハウス。

俺はアルティが作った認証機能の魔道具で起動しないようになっているが、あの二人は別。

 

「のわーーっっっ!」

 

「ひーっ!」

 

ほら見ろ。

お二人さんの情け無い断末魔が聞こえてきた。

 

幾ら上位冒険者と言えどアルティの罠を掻い潜るのは不可能に近いからな。

 

俺は声が聞こえた2階の廊下方面へと向かう。

 

 

「ほら見ろ。俺は止めたのに…」

 

そこには全身粘着剤のようなもので身動きが取れなくなった二人。

 

「悪かったからこのネバネバ取ってくれ!」

 

「こんのゴミが…早く儂を助けろ!」

 

……と言われてもなぁ。

俺も何もできないのだ。発動してしまってはどうしょうもない。

俺は応急処置の為、鞄からスライムを分解する薬を取り出す。

この粘着剤にスライムの成分が含まれているなら、分解してくれるはずだ。

 

「おお!少しヌメヌメするが、ネチョネチョよりはよっぽどマシだ!」

 

「全く。ようやく解放されたわ。」

 

よかった。分解されたようだ。

アルティに見つかったら面倒くさい事になりそうだ。

手早く粘着剤の残片を片付けるとしよう。

 

 

 

「貴方達、フィルと一緒に屋敷内で何やってるのかしら?」

 

噂をすれば…か。

 

 

「お?この白猫の獣人…貴様がアルティか!」

 

「ほう。この屋敷の主のお出ましか。儂の名は…」

 

「S級冒険者のロズでしょ。で、そっちの狼の獣人はA級冒険者のウォルス。そのぐらい知ってるわ。」

 

「たまたま二人と出会ってな。この街のS級冒険者2人と話をしたいと言うから屋敷に案内したんだ。そして罠を2人が発動させてしまい…この通りさ。」

 

「そう。シースは…私が聞いてるから別に大丈夫ね。じゃあそこの二人、用を単刀直入に答えなさい。」

 

すると、ロズとウォルスの纏う空気が一変。

真剣な表情になる。

 

「数日後、この街から西の少し離れた平原がゾンビの行進の一部となる。その討伐を願いにわざわざ街から遠征してきたのじゃ。」

 

「既に進行上にあった十数の村や街が滅亡、または壊滅状況にある。これ以上の被害を出す前にこの街の冒険者一同で討伐願いたい。」

 

それを聞いたアルティはこう即答する。

 

「私とシース、それとロズだけでいいわ。あまり大人数だと、ゾンビ側の大将に勘付かれるもの。」

 

「…何故大将がいるとわかるのじゃ?」

 

「勘よ。それに、私もシースも人が多いと全力を出しにくいわ。討伐するならなるべく少数。それに冒険者総出で討伐しに行くと、市民の混乱を煽りかねないもの。」

 

「…それもそうだな。少なくとも協力してくれるのだな。」

 

「当たり前じゃない。私が助けられる範囲にいる奴は全員助けてやるのが私のモットーだもの。」

 

「…感謝する!」

 

「お主、中々高尚な精神の持ち主の様だな。」

 

…なんだかアルティがヒーローみたいなこと言ってる気がする。こいつもシースも非常時はとてつもなくかっこいいのだ。

 

 

 

 

ゾンビの進行が突如方向を変え、俺達の街が業火と血に包まれることになるまで、あと2日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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