単刀直入に言おう。
アルティとシースが俺のベットのシーツや下着で勤しんでいる。
何を勤しんでいるかって?ナニだよナニ。
少しばかり早く帰って来たらこれだ。
今まで誠実だと思っていた彼女らは変態だったのだ。
まずい。めっちゃ目が合っている。
無言の時間が続く。気不味いなんてものじゃぁない。一分1秒。一回の瞬きにかかる時間ですらゆっくりと感じる。
そんな俺とは反対に、彼女らはみるみるうちに顔を青くしていく。今にもアブクを吐いてひっくり返りそうな勢いだ。
アルティの方は体毛でよくわからないが、目が死んでいっているのでシースと同じだ。
彼女らはS級冒険者。S級になるには強さ、人格共に優れていなければならない。
要は実力半分、あとは世間の評判が重要になってくる。
そんな中、俺が訴えたら世間の評価は一変。
冒険者ギルドの同僚の家に忍び込み、二人仲良く俺をオカズに勤しんでいたと知られた暁には、良くて追放悪くてお縄だ。
これが最近流行りの追放モノか。はは。
彼女らは幾重に渡って街を、国を救い、人々の希望になっている、そしてこれからもなって行く大切な存在だ。そして彼女らは正義感が強い。
これも何かしらの事故なのだろう。
何のだよ。
まぁ、彼女らは昔からの知り合いだし、何度も命を救われている。仕方ない。ここは一つ演技をしよう。
俺は全力で魔法を使って血流を早くする。
すると、顔の毛細血管に血が流れ顔がみるみるうちに紅潮していく。
そして、完全に石像になった二人を無視し、俺はベットにダイブする。
その名も、泥酔して帰ってきたから昨日の夜の記憶がスッポ抜けているんだ作戦。
俺はわざとらしくヒック、としゃっくりをする。
どうだ!俺の完璧な作戦は。
だからさっさと家から出ていってくれ。
寝転んだまま半目で二人を眺める。
二人は見事、俺が酔っ払っているのだと思い込み、二人で話し合っていた。
「もしかして酔っ払っているのかしら。だとしたら今なら誤魔化しがきくんじゃ…」
アルティが九死に一生を得た様な顔で語る。
「あぁ。今のうちにとんずらこくぞ!」
アルティがシースに賛同するように2回首を縦に振り、二人は窓から出ていった。
いや、恐らく侵入したときはドアから入ったんだからドアで帰れよ。
正直、賭けだった。
もし「寝てるんやし、ちょっとぐらい食べてもばれんやろ」
となっていたら終わっていた。
まぁもしそうなっていたら最終奥義顔面ぶっかけ寝ゲロを使っていたが。
しかし、それでも引かなかった時は真面目に腹上死モノである。
この世界の女性は性欲が化け物だ。
ギルドの同僚の男が腹上死したという報告を受けたときは驚いた。
その男は蘇生魔法保険に入っていたらしく、心停止してから直ぐに処置が施された為、後遺症が残るようなことはなかったが。
ちなみに他の同僚は確かに驚いた様子ではあったものの、何処かまたか、という様な顔をしている者もいたので割とこの世界ではメジャーな死因なのだと思う。
まぁメジャーな死に方じゃない限り直ぐに処置はされないよな。
嫌だなぁ。
メジャーな死因が病死、(魔物に襲われたのも含む)戦死、
そして腹上死だとは。
この世界の死因御三家は外れなようだ。
ムクリとベットから立ち上がった俺は、少し湿ったベットのシーツと俺の下着……ってあれ?
あっ!!
あいつら俺のパンツだけちゃっかり盗んでいってる!!
今までも時々下着の数が合わないなぁという時があったが、その理由がわかった。
…やっぱ追放&お縄ルートが正解だったかもな。
何か凄い今日は疲れたな……。
ホントならシーツだけでも洗って寝ようと思ったが、明日でいいや。今日はもう寝ようぜ。
俺はシーツを部屋の隅に退かしたあと、ベットの上に寝さぶり目を閉じる。
明日は前から楽しみにしていた、買いたい物の発売日。そんな事を考えているうちに、段々と意識は暗闇の中に落ちていった。
今日も今日とて鐘の音で起こされる。
時間は朝5時。外はまだ暗く、かと言って真夜中程暗いという訳でもない、正に早朝。
肩を伸ばし、ベットから降りる。そして昨日の例のシーツを持ち、リビングへと移動する。
パンとサラダ、干し肉をさっと食べた俺は、シーツや服を洗う為に少し準備をする。
まず、たらいに小便をする。前世なら何を急にトチ狂ったかと心配されるが、浄化の魔道具が世間一般に浸透しているこの世界なら話は別。
そこに浄化の魔道具を俺の魔力を通した状態で小便に近付ける。すると黄色かった水は透明に、匂いも完全になくなった。
え?不純物やアンモニア、塩分は何処に行ったかって?
知るか。
その浄化した水に水魔法で更に水を加え、そこに灰をぶち込めば洗濯の準備完了。
洗濯板に衣服を擦り付け、汚れを落とす。
一通り家事を終えた俺は、とある物を買いに教会に出かける。教会付近に着くと、そこはすでに人がごった返しており、朝6時とは思えないほど賑わっている。
ここが市場なら違和感はないだろうが、ここは住宅街から少し離れた教会。
教会と言っても外装は美しく、なんかこう、キラキラしている。城みたいだ。寂れてなんかはいない。
普段ならほとんどの人が素通りしそうな場所に百数十は下らない人が集まっている。
まぁ、目的はその人々と一緒なのだけどね。
俺は行列の最後尾に並ぶ。ちなみに俺はこの世界の男にしてはガタイが良い。
なので、フード深くかぶれば男だとはバレない。
外出する時はよくこの格好だ。
ふっ。俺の変装スキルをみくびるなよ。(ギルドメンバーや知り合いには目茶苦茶バレてます。)
さてさて、教会では大体2時間に一度、鐘の音が鳴らされる。
まぁさすがに夜8時から朝5時までは鐘は鳴らないが。
そして今、7時の鐘の重厚感ある金属音が街中に響く。
今日、俺が買いに来たのは聖書だ。
聖書と言っても、堅苦しいことや規律等を並べているものではなく、一つの物語、或は神話などが載っており様々な作者の神話の解釈が見れる。
中には神話のIFストーリーなんかも載っており、この世界ではジャ◯プやコロ◯ロ的なノリで発売されている。
因みにその人気は凄まじいものであり、教会は街の中にコインランドリー的な頻度で建っているのにも関わらず、この人だかりである。
因みに現金な話だが、教会に多額の寄付をしている場合一月早く聖書の続きが知れたり送られたりしてくるらしい。
と言うかそれがこの世界の教会の稼ぎ頭である。
お。
販売が開始されたようだ。行列が少しずつ短くなっていき、販売所が俺からも見えるようになってきた。
因みに、男像付きの聖書もあり、そちらは完全受注生産。
男像とは、まぁ前世の美少女フィギュア的な枠だ。
毎月1パーツ付いており、全部集めて教会に送ると最後に股間部分が付いてくるとかいうゴミみてぇなシステムだ。
数年前、アルティが自慢げに俺に見せびらかして来た事があるが、本人によると黒歴史らしい。
順番が回ってきた。小説を受け取り、銀貨数枚を渡す。
毎月発売日はクエストを取らず、家の中でじっくりと読むのが日課なのだ。
俺は気分上々に家へと帰り、リビングへと向かう。
しかしリビングには、アルティとシースがいた。
ほへ?
ふ、不法侵入2回目!?俺、このまま襲われて死んぬか。
なんて一緒頭に浮かんだが、2人の顔を見る限り違うらしい。
俺と2人の目が合う。
すると2人はそのまま流れるようにダイナミック土下座。
この世界にも土下座文化はあるのか。
「昨日は済まなかったっ!!」
「その、ごめんなさい!!」
2人は俺に謝罪をする。
「頼む!これには深い深い理由があるのだ!罰する前にどうか聞いてくれないか!」
そう言うとシースが真面目な顔で俺の目を見る。
「そ、そうなの!どうかその理由だけでも聞いて、私達を罰してください!!」
アルティもモフモフした白い体毛を小刻みに震わせながら理由とやらを語り出す。
「実は、私達はあの日、魔物を倒した事をフィルに自慢しに行こうと思って、酒場に向かっていたの。」
「そして向かう途中、フィルの家の横を通ったんだ。」
「でも、フィルの家のなかに一人女の気配がして、よく見たら窓が空いていたの。」
「家の明かりもついてなかったし、私達は怪しんで解錠魔法を使って、フィルの家に入ったんだ。」
「そしたら下着泥棒がいて、捕まえて、拘束したあと、私お得意の転移魔法で牢屋までテレポートさせたの。」
「そして、私達は直ぐにフィルの家から出ていこうと思ったのだが、そこにフィルの下着やシーツがあって…」
そう言うと、2人はまた頭を地面に擦り付けた。
「すまなかった!!どうしても魔が差してしまった!!人として最低なことをしてしまった!!」
「ごめんなさい!!私達はもはやS級でも何でもない、ただの変態共よ………」
そうか。
そうだったのか。
俺は数十秒黙り込む。家の空気は1秒経つにつれてどんどん重くなっていく。
そして俺は意を決して口を開く。
「そうか。ちゃんと理由があったんだな。信じるに値しないと言えばそれで終わりかもしれないが、オレはお前らの根は真面目なことを知っている。」
そして、俺は二人にこう宣言する。
「今回だけは許す。ただし、次やったら二度と口を利かん。」
すると2人はあっけらかんといった表情となり、直ぐに焦ったような口調でこう述べる。
「いいのか!?私達は犯罪者なのだぞ!せめて何か私刑をするべきではないのか!?」
「そうよフィル!本当は私たち、数カ月鞭打ち生活なのよ!?」
「じやあ、俺は今まで何度も2人に命を救われてきたんだ。これでチャラってことだな。」
チャラなわけ無いと思うが。正直イケメンが体を差し出しても余るレベルの恩だぞ。
「そう……か………。すまなかった。本当に…」
「ごめんなさい…ごめんなさい………」
あれぇ?なんかめちゃ曇ってね?
お前ら実行犯ぞ?不法侵入者ぞ?まぁいいか。
「というかさ」
「「?」」
「じゃあ何で俺のパンツなくなっていたんだ?お前らが後から取っていったんじゃないのか?」
「あ…」
「ピ…」
気不味い空気…
俺は2人の頭に勢い良く聖書の角を叩き込んだ。
これでほんとにチャラだな!!
「因みに俺が酔ってその事を覚えてないとは思わなかったのか?」
「あの時はテンパっていただけで、あのぐらい思い返せば直ぐに演技だと分かるさ。」
「というか、私はその時から演技じゃないかとは思っていたわよ。あんた演技や嘘あまり上手じゃないもの。皆に嘘とか演技全部バレてると思ったほうがいいわ。」
俺は、そのアルティの一言が不法侵入&下着泥棒されたことより深く深くショックを受けた。