「お主、儂の側室になれ。」
「はぁ?」
まさか…いきなり馬車の中に連れてこれられて一言目がそれか?流石に意味がわからん。第3王女のユーラか何か知らないが、抵抗はさせてもらうぞ。
「断ります。」
「じゃあ打首じゃ。」
「側室になりたいです!」
咄嗟に側室になることを希望してしまった。
何とか否定しなければ。何か言い訳はあるか…?
そうだ。
「しかし…俺はこの通り腕と脚を片方ずつ失っています。そのような男などユーラ様に相応しくありません。」
これは勝った。
ただでさえ自分より下だと思った者を見下しがちな種族。
その種族の王族だとなると、そのような者を側室に迎えるだけで肯定的な意見は出ないことは明らか。
「はぁ?????????お前…欠損してるから良いんだろうがっっっ!!!!」
?
何か凄い怒られた。
「お"っ♡ うーむ♡素晴らしい筋肉の張り♡」
いつの間にか俺の胸元に潜り込み、頬をスリスリさせてくる。くすぐったい。
「おいおい。話を聞いていれば随分好き勝手やってくれるじゃねぇか。」
馬車から殺意マシマシで現れるはシース。
その顔は歪んでおり、一目で怒っているとわかる。
「ほう…貴様、勝手に我が馬車の中に入り込むとは…万事に値する。」
「潰す。」
「シース!よしておけ。ほんとに死んじゃうから。」
「お前は良いのか!?堂々と胸に頬を擦り付けられ、更には側室になれだと!?初対面なのにそれは相当ヤバい奴だぞ!」
「シース。その通りだ。潰してしまえ。」
「なんじゃこの男は!?意見コロコロ変え過ぎじゃろ!」
「と言う訳で今からお前は苺ジャムになってもらう。」
「…やれるものならやって見ろ!兵どもよ、儂を守れい!」
「嫌です。」
「断ります。」
「ボーナスくれるなら検討します。」
「はぁぁ!?おぬしら気でも狂ったか!?」
「だってユーラ様、前に貴方の性癖否定したら減給してきたじゃないですか。」
「第一S級冒険者に我々エルフの近衛兵ごときじゃ一息で殺されますよ。」
「ボーナスをくれるなら検討します。」
相当人望が無いようだ。
まあ第3王女なら、後2人は最低限いるもんな。
「お前…流石に同情するわ。まあ同情するだけで容赦はしないけど。」
「ま…まて!お主がS級冒険者とは知らなんだ!せめて次の会合の時まではお主の男を貸してくれんか!?」
「お、お主の男ってそんな…やだなぁ、えへへ…」
「おいシース…おべっかに決まってるだろ。…しかし、次の会合に何かあるのか?」
「一ヶ月後の会合で女王は儂を含めた王女4人に男を連れてこいと命令が下ったのじゃ。」
「でも、ユーラ様男ができたこと無いんで、こうして街までやってきて攫う対象見極めてたんすよw」
「お主、更に減給じゃ。」
「はぁぁ!?」(咄嗟に口から出てしまったが、言い訳出来ない程のボロだったので不満そうな返ししか出来ない)
「つまり、一時的にエルフの会合に貴方の付き添いとして参加しろと?」
「そう言う訳じゃ!お願いできるかの?」
「俺は…まあ別に良いが…」
まあ基本他の国に行ったこともないし、旅行感覚で行くのはありかもな。
まあ復帰の一環としていい良いじゃないのか?
「え?フィル…お前本当に着いてくのか!?一ヶ月も!?」
「まあ折角の機会だしな。少し長い旅行とでも思ってくれ。」
「話は決まったな!それじゃあ目的も果たせた!王国に帰国するぞ!」
ロズについてお偉いさんと話に来たんじゃないんかい。
と言うかまだ準備も何もしてない訳だが?
「安心せい。服や生活品は儂の王国のを使うがよい。」
「まあそれなら…」
「な、なあフィル。3日にいっぺんは手紙を寄越せよ!?」
「おう。土産にも期待しておけよ。」
「それなら出発じゃ!」
シースがとぼとぼと出ていくと同時、街の外へ馬車が進み始める。
俺はふかふかの席に腰掛け、無駄にキラキラしたガラス窓に顔を覗かせる。
「そなた、フィルと言うのだな。その筋肉…冒険者でもやっておるのか?」
「ああ。一応生計を立てられる位には。」
「ふむ。エロいな。」
「……………。お前本当に王女?」
「勿論じゃ。エルフ王家にしか使えない禁断の魔法を使えるのじゃからな!」
「初めて聞いたけど…部外者に言っていい奴なのか?」
「お前は何も聞いてないし儂は口を一回も開いていないぞ!」
本当に大丈夫なのだろうか。
ロズの件でエルフに対して余りいい印象はない。
と言うかロズとかなり容姿が似ているのだ。ロングの金髪だし、童顔だし、何より背が低い。
「なあ、その禁断の魔法って、洗脳だったりするのか?」
「はぁ!?何故そんな事決めつけるのじゃ!?そ、そそそ、そんな訳なかろう!」
………。もうこの話はよそう。
そうやって話している内に、街を出て、街道沿いに馬車は進んでいく。
馬車の中は全く揺れが無く、日光の温かさも相まって眠い。
このままゆっくりとエルフの国までくつろぐとしよう。
「ユーラ様、大変です!賊が我々の馬車目掛けて突撃しています!」
「なんじゃと!?」
言った途端これだよ。
俺は嫌々馬車から飛び降り、賊共と対峙する。
数は5人。
しかし、近くには木々や岩があり、その倍は隠れていると考えて良い。
「おいお前ら!大人しく降参するなら命だけはっ」
賊が言い終わる前に先程減給を言い渡された近衛兵が何かを飛ばし、賊の一人の脳天が弾け飛ぶ。
「消えろ。さもなくば全員こいつとお揃いになるぞ。」
「んだとぉ…!お前ら、やっちまえ!」
如何にもなセリフを言った盗賊B。
その言葉を皮切りにやはりこちらの死角から一斉に投擲物が飛んでくる。
しかし、投擲物が突然粉々になる。
横目には長剣を構えた近衛兵。こいつら、一人一人がB級以上の実力がある様に見える。
まあ王女の護衛だから当然っちゃ当然だが。
俺は応戦する近衛兵を横目に、俺に襲ってきた賊3人の喉を流れる様に潰す。
やっぱり脆い癖に隙丸出しだ。
単純な力だと負けるだろうが、流石に殺し合いで負けることは無い。冒険者の仕事に賊退治等の対人戦闘も時々組まれることがあるからな。
ゴブリン等の人型の魔物も多いし。
「やはりお主強いな…。」
後ろから王女の声が聞こえる。あの阿呆、まだ戦闘終わってないのに馬車から出てきたのか!?
案の定、王女に向かって矢が集中して放たれる。
俺は咄嗟に王女を庇うが、腕に一本毒矢をくら……義手じゃんこれ!ラッキー!
本来なら即座に対処しなければ危ない毒が塗ってあるであろう毒矢だが、俺の義手は確かオリハルコン製。
ちょっとやそっとじゃ壊れない。
ホントにデザイン以外は完璧である。
「す…すまない。儂はやっぱり…」
「ナイーブになるのは勝手だが、今は俺の中に隠れてろ。」
俺は戦いが終わるまで王女を庇う。
………音が止んだ。
「大丈夫ですかユーラ様!」
「王女様は無事だ。ほら、俺の体の中に………あ。」
「ユ、ユーラ様ぁぁぁ!」
俺は咄嗟に王女を抱きしめるような形で庇っていた。
先程までは側室はどうのこうの言っていたくせに、これは刺激が強すぎたようだ。 よくわからん。
王女様は鼻血を大量に出し、一見死んでいるように見える。
それも安らかな死に顔で。
「はっ!賊は退けたのか!?」
「はい。なのでボーナスください。」
「よかろう!ボーナスをやる!ボーナスは儂からのお褒めの言葉じゃ!よくやったぞ近衛兵!」
「………。」
「なんじゃその不満そうな顔!」
「なあ、それより早くエルフの国に行かないか?」
「それもそうじゃな。さっさと馬車に戻るとしよう。」
再び俺とユーラ、あとボーナス求心近衛兵は馬車に乗り込み、エルフ国へ馬車が進んでいく。
しかし…いつ着くのだ?俺は余りこの世界の地理に詳しくないが…確かここからエルフ国は割と近かった…はず。
「ちと疲れたな。儂は少し寝る。着いたら起こせ。」
「なら俺も寝るとするか。近衛兵さん、俺も頼む。」
「承知致しました。」
俺はふかふか座席とぽかぽか日光のダブルコンボで段々と意識が闇へ落ちていく。
正に最高の昼寝環境。この世界に転生できて良かった。
「……起きてください。」
「…あ、そろそろですか?」
「はい。見立てではあと30分でエルフ国に到着いたします。」
「……んぅ…」
「ユーラ様も、お起きください。」
「……ぐぅ。」
ユーラは中々起きない。
「アホのユーラ王女。ばーかばーか。」
「減給じゃ。おはよう。」
「ようやくお目覚めになりましたか。今のは目覚ましのジョークです。」
そんなやり取りを聞きつつ、俺は風景に目をやる。
何せ一面森なのだ。しかもこの辺りでは見ないような神秘的な木々が広がっている。
「お主の街周辺では見慣れん植物じゃろ。何せここ一帯はエルフかその関連者以外は魔法で入れんようになっとるからの。」
「へー。」
「へー。」
近衛兵は知っておくべきだろ。
そこから更に20分。森が開けて、大きな木の根が見えてきた。これが城壁代わりなのだろうか。
木の根に取り付けられた巨大な門をくぐると、そこには古代ローマ風の街が広がっており、それに巻き付く神聖な木々も相まってとても美しい。
「木々が所々油の混ざった汚水みたいな色がして美しいじゃろ!」
「虹色でいいだろ。」
そう言われたらそうにしか見えなくなって来た。
なんてことをしてくれたんだ。
大通りを進み、街の中でも一際存在感を放っていた大木に馬車が近づいていく。恐らくアレが城か。
「ユーラ様、フィル様。王城に到着しました。」
そう近衛兵は言いながら馬車の扉を開ける。
「ご苦労だったな。さてフィルよ。早速だがこのフードを被ってくれぬか?」
そう言って渡されたのはシルクで出来たフード。
しかし薄くは無く、しっかりとした生地だ。
「俺が人族だからか?」
「そうじゃ。連れてきておいてなんじゃが、人族は見下されがちなのじゃ。儂や近衛兵達は全くそんな事思っとらんが、そんな考え方も一般的なのじゃよ。」
「……そうか。」
俺はフードを深く被る。
確かにユーラと一緒にいる時は王女の男だと手は出されないが、いない時何が起こるかは分からない。
何せ一ヶ月ここに滞在するのだ。この街のことをよく知るユーラの言う事は聞いておいた方がいい。
俺達はそのまま、大木の中へと足を進めていく。
中は思ったより城だ。大理石の床と、高そうな壁。
とても木の中にあるとは思えない。
「ユーラ王女様。今お戻りになられたのですね。」
ユーラに一人のメイドとみられるエルフが寄ってくる。
「うむ。儂の隣にいるのが、一ヶ月後の会合に連れて行く男じゃ。」
「……この様な男がですか?顔も普通ですし、先程馬車から降りる際耳が見えましたがこの男、人族でしょう。」
「ふふふ…それはこの男の身体を見てからにしたほうがよいぞ…」
そう言うとユーラは俺の服を器用にひっぺがす。
俺の上半身がはだけて腹があらわになる。
「なっっっっ♡」
「みろ♡この腹筋♡それにこの義手!義足!エロすぎるわ♡」
「な、なぁ…感動されてるとこ悪いんだが、俺の何処がいいんだ?」
「何を言うか!!欠損ムキムキムチムチ中年差し掛かり男って…このエロい要素の組み合わせ…正しく三つ星レストランじゃろ!!!!」
エロい要素の三つ星レストランって何?
「こ…これはいけますよ!最高です!!」
「じゃろじゃろ!これは儂の天下間違いなしじゃ!」
「はい!!こ…これは楽しみですね!一ヶ月後の会合の後にある乱交パーティ!」
「あ。」
は?会合の後の乱交パーティ????