「…………。」
「フィ…フィルよ…許しておくれ。」
「乱交パーティって…まあ各々男を連れて行く会合なんて碌な事起こらないと思っていたが…」
俺はあれから部屋に案内してもらい、ユーラを詰めている最中だ。
まあ只の会合じゃ済まないよね…とうっすら思っていたものの、案の定。
「た、頼む!何とかお願いできぬか!ここで逃げられたら儂の立場が更に悪くなる!」
「逃げるって…あんたが騙したんだろ。乱交パーティが本来の目的なら、色街の男娼から適当に一人買えばよかったのに。」
「その通りじゃ!だがお主を見た途端、いける!と思ってしまったのじゃぁぁぁ!頼むぅぅ!」
そう情け無い声を無駄に広い一室に響かせ、勢い良くするのは土下座。少なくとも王族には見えない。
「あのさ…会合って一ヶ月後なんだろ?」
「うむ…そうじゃが?」
「別に街まで馬車使えば半日で移動できる距離なんだから、もっかい街行って男買えばよくない?」
「………。お主…さては天才か?」
「ユーラ様がちょっとアレなだけだ。」
しばらく無言の時間が続き、ユーラが安心したかのようにとぼとぼと部屋から出ていく。
部屋に残るは静寂。今日はもう夕方だ。明日か明後日辺りに馬車を出してもらおう。
ユーラと一緒に予備の男を探しに行く的な理由なら出してくれるだろ。
しかし…屋敷より豪華な部屋だな。
屋敷は家具自体は最高級の物だったが、生活するのに最低限の家具しかなかったが、この部屋は様々な小物が点在している。
特にこの花瓶とかどうなってるんだ?
ガラスが所々に埋め込まれており、神秘的だ。
あっやべっ!装飾が落ちた!
あーーー。粉々だ。終わった。
義手の力加減と言うか魔力の込め具合がまだ甘いのだ。
触るんじゃなかった。
何かくっつかないかな…あー花瓶自体も粉々になってもうた。
炎魔法で俺はガラスを溶かし、適当に固めておく。
それをなんかそれっぽい布の上に置く。
うん!何処からどう見ても水晶玉だな!
…何か気を紛らわしたいな。最近寝てばっかだし、筋肉がだいぶ落ちてきた。筋トレと行きたいところだが、この部屋は小物が多すぎてできたものではない。
………シースへの手紙でも書くか。と言うか郵便局的なものはこの街にあるのだろうか?
ただでさえ他種族は足を踏み入れる事が出来ない街なのに。
「はぁー。アルティがいればなぁー。」
「それは私も同感よ。」
「うっひょい!」
急に耳元で話しかけてくるんじゃない!思わず変な声が出てしまったじゃないか。
にしても何故アルティがここに?
「これ、忘れ物よ。」
そう言うとアルティは幻肢痛用の痛み止めと俺の着替え等を鞄から出していく。
「お前、この街に入れるんだな。」
「別に座標を指定すれば守護結界とか幻影魔法関係なしに移動できるもの。正確な位置さえ分かれば後はこっちのものよ。」
「……何故正確な位置が?」
「フィルの義手と義足にちょこっと座標が分かる魔法を込めておいただけ。」
「…何だかいつもより機嫌が悪そうだな。何かあったのか?」
「この国にいい思い出がないのよ。」
「…そうか。」
「それより…乱交パーティって私でも参加できるのかしら?」
「絶対お前座標の魔法以外にも魔法込めてんだろ。」
「さて…何の話かしら?それと、別に逃げたければ今私と街に帰ってもいいのよ?」
やっぱり知ってるじゃねぇか。
「いや、もう一日だけいるよ。明日の夜よければ迎えに来てくれないか?」
「わかったわ。それじゃあおやすみ。フィル。」
「おう。おやすみ。」
そう言うとアルティは姿を消す。
………しかし…さっきからどうにもユーラが言っていたことが腑に落ちない。
一ヶ月後の会合…そもそも何の会合だ?
その後の乱交パーティに関してもよくわからん。やるならさっさとやればいいものを。
それに乱交パーティなんて国民にバレたら大問題なのに、城のメイドたるものがあっさり言ってしまうほどザルなものなのか?
それにロズとユーラの顔が殆ど瓜二つなのも気になる。
俺は痛み止めを飲みながらそんな事を考えつつ、着替えてベットに横になる。
流石に飯は断った。何入れられてるか分からんから。
そのまま俺の意識は段々と落ちていった。
朝。時刻はおよそ6時。
俺は軽く着替え、フードを被り外に出る。
城の食料は余り気が進まないので、街の方の食事を楽しもうと思う。地元の郷土料理を味わうのが旅行の醍醐味なのだ。
旅行殆ど行ったことねぇけど。
そうして街の方にでるが、やはり皆美形。
この様な街で生まれ育ったら、他種族を見下すのも理解できる。
俺の朝食は、余り目立たない所にある小さなレストランを選ぶ。こう言う所が美味いのだ。
「店員さん、この栄養満点サラダを一つ頼む。」
「かしこまり。」
「お待たせしました。」
はやっ!
秒で出てきたぞ!?
見た目は木のボールにナッツと葉っぱがもりもりに入っている。まずは一口…
………普通の葉っぱだ。シャキシャキ食感と、鼻から突き抜けるほんのりとした緑臭さ。
ナッツもナッツとしか言い表しようの無い味。
「ごちそうさま。お代は…」
食事を終え、会計も終えた俺は店を出る。
日も完全に出てきて、周りも俺の街に引けを取らないほど賑やかだ。
賑やかなのは街が生きている証拠。
しかし、外に出ると俺の目に映ったのは城が内蔵された大樹が凄まじい勢いで燃えている光景だった。
なーんだ!賑やかなんじゃなくて、大樹が燃えているだけか!………は?
俺は全力で逃げる人をかき分け、大樹へと向かう。
街の殆どが木でできているとはいえ、燃え広がり方が凄まじい。あっという間に街をのみ込んでいく。
その時だった。俺の方に燃えた木材の塊が振り注いできて…そのまま……
「んあ?」
いつの間にか俺は森のなかで横になっていた。
何だか体の疲労感が凄い。
「目が覚めたのねじゃな…。」
木に腰掛けていたのはユーラ。
…?ユーラは城にいた筈では?
「お主も儂も、酷く幻覚を見ておったのじゃ。」
「…はぁ?何だいきなり。」
「おかしいと思ったのじゃ。そもそも儂は王女なんかじゃない。」
「………は?」
「だって儂は、ロズだもの。」
「え」
その瞬間、俺の首をユーラに…いや、ロズに掴まれる。
畜生。義手義足を奪われている!
「便利じゃのおこの義手義足。儂はもう四肢が切断されて終わったと思っておったが…これならいけそうじゃ。」
「てめ…え…」
「答えあわせを特別にしてやろう。儂は本来、輸送車でここら一帯で最も大きい監獄に送られる最中、儂は作戦を決行しきったのじゃよ。」
「ぐ…!」
「儂自身も含めたこの街全員に深い深い幻覚魔法を見せたのじゃ。まあ設定は大分適当だったがの。…おかしいとは思わんかったのか?エルフが住む国なんかに半日で行けるわけなかろうに!」
「な…ぜ俺の幻覚を…とい…た?」
「そもそも幻覚魔法を維持できる魔力が残っていなかっただけじゃ。今も話しつつ儂の魔力を回復させとる。」
そう言うとロズは手を離す。
「げほっ!げほっ!」
「だが…やはりお主見て思う♡その鍛えられた体を更に虐めたいのぉ♡」
理解が追いつかないが、今は生きる事だけを考えろ。
逃げろ。逃げるんだ。
片脚片腕で這いながらも俺は全力で森を突き進む。
このま…ま……?俺の片方しか無い腕と脚に、深々と木の根が突き刺さっている。
「ぐあ、」
遅れてやってくる痛み。これじゃあ身動きも出来ない。
「儂はな…フィル。弱者が足掻く瞬間が大好きなのじゃ♡もっともっと足掻いてくれ♡」
「足掻くも何も…虫の標本みたいにされちゃ何もできねぇよ。」
「それもそうじゃな♡今楽にしてやる♡」