ゴブリン攻め込んでくる!効率よく倒したいから誰か男は餌役やれ!
→俺やるわ。ってめっちゃ敵軍、規律取れてるやん!俺等がやるの本来はS級の二人が粉砕した軍勢の残党狩りやぞ!?
→敵将に捕まった…絶体絶命やね。
→汚い手使ったけどなんとか助かった…九死に一生を得たわ
さてさて。
アルティとシースが実質遭難状態にあった俺を助けに来てくれて、無事俺はアルティのテレポート魔法で街へと戻ってこれた。
いやー。便利すぎるわこの魔法。
どうやら冒険者達は結果的には1人も死んでいないらしい。
結果的には、だが。
アルティやシースの話によると、ゴブリンの軍団は1万どころではなく、5万程もいたらしい。
なので処理するのに時間がかかり、一つの小隊を逃してしまっていたらしい。
そして、その小隊が俺達とぶつかった奴等だったとのこと。
正面からの特攻部隊の前に、後衛の人々はすでに全滅。
後衛には魔術師がいたらしく、直ぐに皆を浮かせて避難させてくれたようだ。
その頃、軍団を全滅させたアルティ、シースは一度街に戻ったものの、直ぐに異様な気配を感じ取り戦場に向かっていったらしい。
そして、部隊のリーダーを失って作戦も糞もなく暴れ回っていたゴブリン共を一掃。
そこで、ゴブリンの自爆によって重度の火傷を負い、息も絶え絶えな近接部隊の冒険者を発見。
その後ゴブリンの奇襲を受け、これまたボロボロの、なんなら10人ぐらいは既に息絶えてる後衛部隊を発見。
アルティのテレポートでそこにいる冒険者全員を街にテレポートさせ、死者は蘇生魔法場にテレポートさせ、無事全員が目覚めたとのこと。
まぁつまり、S級の2人のおかげで助かったが、本来ならボロ負けもボロ負け。
というか俺が相対したゴブリンクイーンだと思っていた奴は、ただの小隊の隊長を任されていたただの腕っぷしが強いだけのゴブリンだったということだ。
もし、S級の彼女等がいなければこの街どころではなく、少なくとも大陸一つは壊滅させられていたことだろう。
まぁ、この世界はS級のような規格外がいなければ人族、獣人族辺りは当の昔に滅ぼされていただろうが。
このような事が起こる度に、俺はこんな人知を超えし者達を目指していたのか…と自分が馬鹿馬鹿しくなる。
「フィル、皆が助かったのは良いんだけど…」
「あぁ、やはり蘇生魔法を施されたものの半数は、冒険者を引退するそうだ。」
「そうかぁ。まぁあれは凄く苦しいし、半数でも残れば上等なものだと思うが…やはり人手がなぁぁ…」
そう。蘇生魔法はとてつもなく苦しく、いや苦しいなんてものじゃない。
人によっては、蘇生魔法と聞くだけでPTSDを発症してしまう者もいるほどだ。
この世界の冒険者は冒険というより街を守ったり、街に湧いた魔物を駆除。不審者、暴徒を捕縛するなどあまりキラキラしたものではない。
なので、ただでさえ退職者が多いのにこの様な出来事が起こる度にまとまった退職者が出ると大打撃なのだ。
しかも、その引退した5人のなかには男性が2人含まれていると言う。正直、これが一番大打撃だ。
男性というのは、戦闘面は女性より完全に劣っており、正直ギルドはあまり求めないように思える。
しかし、それは逆。男を餌にすると、女が寄ってくるのだ。
まるで地獄に吊るされた一本の蜘蛛の糸のように。
まぁ、最終的には吊るしていたが切られてしまうのもお約束だが。
まぁ、客寄せパンダ……なのか?普通に魔物に襲われて死ぬ客寄せパンダはあまり聞いたことがないけど。
仕方ない。本当に仕方ない。
少し可哀想だが、転生者狩りをしなければ。
翌日、俺とフィル、シースの3人は街の中心の広場、そこに配置されている一際大きな掲示板に1枚の大きな張り紙を貼る。
そこには ギルド、転生者大募集!転生者の貴方しかできません!ギルドの位置は〜〜〜…… と、転生者の募集とギルドの住所が書かれた張り紙。
この世界には、俺以外にも転生者がそこそこいる。
転生者、と言ってもほとんどはチートスキルやチート才能なんか持ってない。
しかし、きわめて稀にえげつないチート持ちもいるが。
だがほとんどの転生者は何の才能も貰えることなく転生してくることになる。
俺だってそうだ。恐らく転生者はこの世界に転生した際、文字や言葉が全く違うことに絶望したであろう。
俺のことだ。
まぁ前世の記憶を持っている時点で十分チートじゃねぇかと言われたら反論できんが。
そして、ここが一番の重要ポイント。転生者は皆、日本という国からやって来たと自称し、全員が男であるということだ。
つまりこの世界の女性からしたら転生者は多少雑でもグイグイいけば高確率で食える、まさに糞チョロボーイ。ヤリチン。
しかし、転生者は転移者ではない。
なのでこの世界の文化、きったねぇ所を嫌というほど見ているため、自らを転生者だとは言わないはず。
俺だってそうだ。
実際、志望者は来なかった。
まだ依頼は張り出してから数日もたっていないが、1人も来る気配はない。まぁ当然と言えば当然だが。
なーんてギルドの職員や冒険者の皆と一緒に憂いていたら、それを覆す朗報が入ってきた。
なんと、ほかの街からS級が1人、A級が1人も俺たちの冒険者ギルドに移動してきてくれるようだ。
助かることこの上ないのだが、疑問だ。他の街も俺達のようにいっぱいいっぱいのはず。
なのにどうして俺達のところにそんなギルドの最高戦力達をよこしてくれるのか。あまりに都合が良すぎる。
その事をギルドの職員に聞いてみた。
「あぁ。それはですね、その街でS級の実力を持った男冒険者が2人同時に現れたそうです。そこでギルドに余裕ができたタイミングで、そのS級とA級の2人がこの街への異動を強く申し出たとか。」
ほへー。
確かに、この街にはアルティがいるからいざその街ごピンチになったらテレポートで一瞬にして連れていけるもんな。
というわけで、ギルドには安堵の空気が漂っている。
とりあえず、最近は働きっぱなしだ。今日こそはゆっくり過ごすのもいいかもな…
「ねぇ、フィル」
名前を呼ばれた気がする。たぶんアルティだが、何か嫌な予感がするので急いでギルドからの立ち去ろうとする。
「ねぇってば!!」
何処かで見た流れ。しかし、その時とは違いアルティは何処か真面目な雰囲気を纏っている。
「どうかしたのか?」
俺は渋々返事をする。するとアルティは更に苦しそうな声になる。
「少し付き合ってくれない?いい店を見つけたのよ。」
この世界の普通なら絶対断れるような安いナンパ。
しかしアルティがこんな安いナンパをするとは思えない。
確かに一人でいるとどうしても嫌な事ばかり考えてしまうな。誘いに乗るのもたまには良いのかもしれない。
「分かった。その店とやらに行くとするか。」
するとアルティは耳を何時もよりピクッと動かし、驚いた様な顔をすると、今度は少し笑った。
何だコイツ。表情が何時もよりコロコロ変わるな。
「じゃあ、行こっか。そのお店の料理、美味しいって最近話題なんだから。美味しすぎて号泣するんじゃないわよ?」
「なーに言ってんだ。昔俺が作った料理を泣きながら美味しい美味しいって食べてたお前に言われたかないね。」
「はぁぁ?誰だって死にかけの時に拾ってくれて、温かい飯出されたら号泣するってのよ。」
まぁ、それは間違ってないな。
そうこう話していると、その話題とやらの店に着いた。
何というか、見た目はまんま前世の居酒屋。
「なぁ、随分風変わりな建物だが、もしかして…」
「その、もしかしてよ。ここの店主は転生者って噂。」
俺とアルティは店に入り、カウンター席に二人並んで座る。
しかしこの店、店主とみられる男以外、誰もいない。
「まっさかお前…」
「それも正解。貸し切りってやつよ。S級たる資金と地位の賜物ね。」
そう自慢げにアルティはふんす、と鼻を鳴らす。
しかし、空気が一変。先ほどのギルドで話したときのように、真面目な顔になる。
「貴方、疲れてるでしょ。しかも、何か悩んでるように見える。五年以上一緒に過ごしてるのよ。最近のあんたの顔見てると悩んでるんだってことぐらいわかるわ。」
「そうか…お前にはお見通しってわけね…」
しかし、今ここで俺の悩みを明かしたところで晴れる気もしない。これは俺の問題だ。勝手に努力して、勝手に自分に失望して。才能の塊であるアルティに言ったところでより気分は急降下して行く未来しか見えない。
と、いうか勝手にその事を想像して気分は今現在下がっていっている。
そしてその事にまた自己嫌悪し、そしてその事に……と、カスのループに入っている。
「はぁ。まぁ私に対して愚痴っても劣等感を募らすだけというのなら良いんだけどさ。あ、店長さん、この生ビールって奴を二杯お願いできるかしら。」
「あいよぉ!」
「おい…それ酒だぞ。俺酒は苦手なんだが。」
「へぇ。貴方、このお店の事全く知らないって言う口だったのに、生ビールがお酒ってことよく知ってるのね。」
はめられた〜〜。
「はぁぁ………やられた。結局、何が言いたいんだ?」
「貴方、転生者でしょ。」
か〜っ!やっぱりそのことか。
「な…なんでそんな事がわかるんだ!?当てつけだ当てつけ!!」
「あんた…やっぱプライベートの嘘つくの下手くそすぎない…?」
呆れられた目をアルティに向けられる。
「………そうだよ。俺は転生者だ。だけど、俺には剣も魔法も才能なんか無かったし、結局その事に対して一人で絶望してる、中年に差し掛かりの悲しい男だよ。」
やばい。ひと言だけ返すつもりが、全ての不満というか、自分に対する嫌悪感を吐き出してしまった。
「ふーん。でも、それでいいんじゃないの?」
「はぁ?何故?俺は勝手に嫉妬しているだけのクソ野郎だぞ?」
その事に、少し口調を強めて反論してしまう。
「あなた、一人で溜め込んでしまってるのよ。」
「はぁ?毎月聖書だって楽しみにし読んでるし、筋トレだって趣味としているぞ。それでストレスは解消されているはずだ。」
その時、生ビールが届く。
俺は生ビールを一口だけ飲む。
久しぶりに飲むな。苦い。
「確かに、それもストレス解消になるけど、もっと良いストレス解消法があるのよ。」
「?それは何なんだよ。」
「それはね………愚痴ることよ!今、この時だけこの世のありとあらゆる森羅万象天上天下全てに八つ当たりすればいいのよ!」
俺は、衝撃を受ける。
勿論何言ってんだこいつと言う意味で。
「はぁ…。お前、S級何だろ。何というか、もっと威厳というものはないのか?俺が思い浮かべてたS級の格というのはな……」
俺がS級の理想像について力説しようとすると、アルティはニヤッとした顔になる。
「貴方、さっそく私に対して愚痴ってんじゃん。」
ほんまや。ほんまやんけ。
「そうそう!その調子よ!!酒飲んで、今だけは愚痴って、家帰って気持ちよく寝ればいいのよ!」
俺は、何かが吹っ切れた。俺は手元にある生ビールを一気に口へ流し込む。
「そうだよ!S級というのは市民の希望でならないといけないのに、その実態は俺みたいなおっさんに発情する糞猫だ!」
「はぁぁ!?それは前許してくれたじゃないの!?」
「うるせぇやい!一応ほんの少しは根に持ってるんだ!俺だったらなぁ……………」
段々と酔ってきた俺はあることない事の愚痴をひたすらアルティにぶつける。
どれくらい、アルティに俺の醜い愚痴をぶつけただろうか?
意識が朦朧としていく。
俺の意識が戻ったのは、自宅の前で、アルティに転移魔法で送ってもらった時だった。
アルティもかなり酔っているのか、白い体毛の隙間の肌は紅く火照り、目もとろんとしている。
そして、俺とアルティは自宅へと入っていく。そこで少し意識が戻った俺は、再び闇のなかに沈んでいくのだった。
朝。
目が覚める。服はベットの横に脱ぎ捨てられ、パンツ一丁。
恐らくアルティに送られた後、そのまま寝てしまったのだろう。
ごそっ。
俺の腰辺りで何がが蠢く。
おいおいおいおいおいおいおいおいおい。
俺の頭の中に最悪の展開が想像される。
俺は恐る恐る布団を退ける。
そこには。
案の定というか、俺の想像通り裸のアルティがそれはもうスヤスヤと寝ていたのだった。
あれぇ?これ俺やられてもうた?
それともやってもうた?
混乱と困惑でオーバーヒートする俺と呑気に寝続けるアルティ。
俺はこっそりベットから抜け出すと、気持ちを落ち着ける為朝散歩に向かう。
段々と思考が落ち着いて来た。まったく、朝から情報量が多すぎるのだ。
まず、俺はそういう行為をした男冒険者の話を聞いたことがあるのだが、それはもう激しく一晩中続き、数日は全身筋肉痛で動けなかったとのこと。
しかし俺は全く身体が痛くない。つまり、やられてないってことだ!!良かった〜〜。
よく考えたら、アルティは何というか、変な所がヘタレだ。
酔った勢いとはいえ、まさかまさかそんな事…するわけない。しかもこんなおっさんに、だ。
あいつならもっといい男といくらでもできるはずだし。
思考を整理し終えた俺は、家に戻る。
するとすると、またしても既視感。
だって、不法侵入の謝罪の時みたいに、綺麗な土下座をしているもの。
え?
「あ…あの…フィル…その、昨晩はごめ「それ以上言うな。」」
「え?」
「少なくとも、俺はアルティと一緒に帰って、酒に酔っていたから一緒にグーーッスリと朝まで塾睡した。それだけの話じゃぁないか。」
「え…あ……うん…。」
「昨日奢ってくれたお返しだ。朝飯を食べていくといい。」
「あ…うん…ありがとう。」
まさか…まさかな。
こんなおっさんなんか抱くわけないし。そうだ。
そうに決まっている。
ほんとにそうだよな!?!?
関係ないですが、アルティは回復魔法つかえます。