貞操逆転世界の中堅冒険者   作:だいたいおおそよだいたい

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前回のあらすじ

何か気が楽になったわ。自分のできることをやっていこ。

→なんや!?下水道の奥から異音が!?

→コアスライムに二人の餓鬼が襲われとる!?

→救出成功。最後っ屁食らったけど、無事生還できました。

→この2人、目茶苦茶闇が深いな…。関わると死ぬだけだが…どうしよ、これ。


くっさぁ♡え?いや?は?くっさ。え、マジで言ってる?

さてさてさてさて。

二人を連れ、無事帰宅した俺だがここにて新たな問題に直面している。

 

ーーーーーそれは。

 

「くっっっせ!?はぁ?なに?これ?えっ。くっさ。え、マジでくさいんだけど。え?は?」

 

部屋の中がドブみたいな匂いで充満している。

今までは逃げたり回復したりで必死すぎて気づかなかったが、まぁ劣悪な環境で暮らしてたっぽいし多少臭いのはわかる。

 

だが、なんというか、閉鎖空間でスライムの餌にする腐った肉と糞尿を混ぜた物を日常的に嗅いでいる俺でさえ悶絶する臭さ。

常人なら吐くぞこれ。

というか路地裏移動しているとき、周りのホームレスが気分悪そう…と言うか本当に臭いものを嗅いだとき特有の、しわくちゃ顔になっていたのは、このせいだったのか。

 

浄化の魔道具を恐る恐る近づけてみる。

なんてこった!!浄化の魔道具が、悪臭と言うか、もはや公害の二人に近づけた瞬間、木っ端微塵に。

これ、そこそこ値が張る品物なのに…。

どう見てもキャパオーバーだ。

 

んなもん言わなくてもわかるが。

 

 

 

「ん……………。」

 

天使の方の少年が目を覚ましたようだ。

 

「ここは、天国なのでしょうか?それと…も…?」

 

どうもこの状況に混乱しているようだ。

まあ、それもそうだ。恐らく年齢は両方共に十数歳。

 

少年は辺りを見回した後、倒れているもう1人の少女を発見すると、一瞬で取り乱しその少女の方へ這いずり寄っていく。

 

二人は魔力切れ起こしているようで間違いないようだ。

魔力切れは、慣れていない場合は意識を取り戻した後でも、体の一部が麻痺して動けなくなる。

 

天使の子は足が麻痺しているのだろう。全身を使い、気絶しているもう片割れに必死に這いずる。

 

「クロ?クロ!?大丈夫ですか?意識…それとも…死んで?あぁ。また…また僕のせいで…僕のせいで…大事な人…が…」

 

取り乱した少年に俺は声をかける。

 

「そのクロ?って少女も無事だ。今は魔力切れ起こしている様で気絶しているが、あと1時間以内には目が覚めるだろうし、後遺症が残るようなことも無い。」

 

少年は俺に気付くとそのクロと呼んでいた少女に覆いかぶさる。

 

捕食者を威嚇する被食者のような、牙が目前に迫った被食者特有の、絶望と怯え。それと覚悟が混ざったような目。

その、キッとした目線で俺を睨みつける。

 

「お願いします…奉仕しますので、どうか。どうかクロを加工しないでください…。お願いします…。」

 

どうやら俺も牧場の職員だと思われているらしい。

俺も牧場の職員と会話をしたことがあるが、そいつは控えめに言って地獄に落ちるべき人間で真っ先に指名される様な人間だった。

 

もし少年が頻繁にこの様なお願いをしていたとしたら、俺が職員では無いと言うことも、いくら言葉として伝えても信じてもらえないだろう。

 

だって職員は性格が終わっているもの。

「もう大丈夫だよ。お姉さんが救ってあげるからね。」からの実は嘘でした。大人しく犯されろクソガキ。

という流れぐらいなら体験しているはず。

 

今は何を言っても信用されない。なら、俺は職員と言うことにしておこう。……と言うか何助ける流れになってるんだ!?

 

俺は、ゴミを見るような目で少年を睨み返す。

俺の圧に少年は一瞬、目が恐怖一色に染まるが直ぐに覚悟が目に宿り、僕は決して屈していませんよ。と言う意図がその目だけでも痛いほど伝わる。

 

クロが唯一の信頼できる人なのだろう。その人を絶対守って見せるという、覚悟。とても少年がしていいような目ではない。

 

……………。

 

仕方ない…。本当に俺は甘い。

これは完全な私情であり、本来なら今すぐにでも2人の首を胴と生き別れにさせるのがこの世界で平和に暮らすのには、最適解。

 

だけど、だけど。前世の倫理観とか関係なしに。

命懸けで逃げ出してきた、自分よりもずっと若く、そして弱い者達を救わずして、何が冒険者だ。

 

俺が目指してきたのは、最後の一人にも手を差し伸べる英雄と呼ぶに相応しい人物ではなかったのか?

過去の自分をまた裏切るのか?

 

だが。それはこの街のタブーに触れるということ。

今はまだ情は湧ききっていない。殺すなら今。今しかない。

 

2つの選択肢が頭のなかで行ったり来たりする。

俺は決断力が無い。

次第に思考は有耶無耶になっていき、思考の放棄というただの現実逃避になってしまう。

 

ゴブリンの時だって、後衛に回って再起を図るという、中途半端な選択肢を取っていたため、死にかけた。

 

大人しく隣の森や沢に逃げ込んで、S級を待っているのが正解だった。俺は、何やかんやでうまくいっている。

だが、次も上手くいく…とは限らない。と言うか、このままの思考だと、近いうち本当に死ぬだろう。

 

はぁ…。いけない。思考の波にのみ込まれていっている。

こんな事を考えるのはベットに入って、寝るまでの時間だけでいいのに。

 

だが!!俺は二人を助ける!少なくとも数日は!

変に断言しているあたり、間違いなく先程の自分なら思考の放棄と捉えるだろう。

 

だけど!

誰だって、どんなに考え込んだって、人は死ぬときゃ死ぬ。

 

なら、俺にできることをして、自己満足でもいいから楽しんで死んでいくべきなのではないか?

折角の二度目の人生だ。若いころの思考が正しい!

 

そう、覚悟を決めた俺は少年に命令する。

 

「おい、奉仕をするも糞も、そんな匂いで興奮できるか。そのクロ、てガキが起きたら体を洗うぞ。」

 

すると、少年は少し意外といった表情で、少し怯えながらも尋ねてくる。

 

「で…でも、貴方がたは…この匂いが興奮するんだよぉ…ぐひょひょと言っていたじゃないですか。」

 

え、きも。

んなこと首元にナイフ突き付けられても言わんわ。

 

「い…何時もみたいに、う〜〜〜んこの香り、特にこの後頭部の香ばしい香り、最高だなぁ……♡これだけで股が大洪水エロエロの舞だぜ……とか言わないのですか?」

 

「はぁ!?んなこと言わねぇよ気持ち悪いなぁ!?」

 

どうやら前いた牧場は相当な地獄だったらしい。

俺だったらとっとと首かっきって死んでるな。

 

と言うか一々職員の言葉選びがキモい。そいつは相当な才能があるようだ。

是非、そのまま誰も知らない辺境の荒野で、ハゲワシにつつかれながら野垂れ死んでほしい。

 

そう少年に大いに同情していると、クロと呼んでいた少女も目を覚ました。

 

「う、うぅ…ここ、は?」

 

「あぁ、クロ、目を覚ましたのですね!良かった…本当に…良かった……。」

 

少年は今にも泣き出しそうだ。

 

「素晴らしい絆を見せるのも良いが、まずは汚れを落とさせてもらう。」

 

すると、クロという少女が口を開く。

 

「お願いします。私の事はどうでもいいです。どうか、どうかシロの事を穢すのだけは、穢すのだけは………。」

 

どうやら、互いに互いの事を思いやる、素晴らしい絆をお持ちのようだ。……なんか悪役が言いそうだな、今の思考。

 

「穢さない。と言うか臭くてそんな気も起きない。兎に角汚れを落とすぞ。」

 

「え…?私も風呂に入っていいのでしょうか…?」

 

あー。その、シロって少年だけ、優遇されていたタイプか。

 

もちろんだ。俺はきれい好きでな、目の前にゴミがあると不快だろう。」

俺は敢えて強い言葉を使う。今、甘い言葉を使っても信用は絶対にされない。少しずつ、少しづつ警戒を解いていけばいい。

 

というか俺の事はぶっちゃけどう思ってくれたって構わない。

 

俺はこの子達に自立するだけの能力を与えてやりたいだけ。

 

「わかりました。浴室に案内していただけますでしょうか…すぐに、シロも私も体の汚れを落としてきます…。」

 

「あぁ。大丈夫だぞ。俺も一緒に洗うから。」

 

二人は臭いが、それを長い間抱え上げていた俺も臭い。

いかんせん早く体を洗いたい。

 

「「え?」」

 

困惑する二人の手を引き、俺は翌日に案内する。

案内と言っても、この部屋からドアを数枚くぐれば浴室なんだけど。

俺は脱衣所に今着ている服を全て放り込み、二人の服も流れるように脱がす。

 

「へ?はい?お…おっぱい…で、でっか……」

 

クロは顔を紅くし、目線を逸らす……ように見せかけて目茶苦茶ガッツリ見られている。本人はこっそりと見ているつもりなのだろうが、それはもうガッツリと見られている。

 

「な、なんて破廉恥な…やはり、このまま3人で行為に移るのですね……」

 

シロは、何かブツブツ言っている。しかし、俺の股間のブツを見て、声を荒げる。

 

「あ、あなた!男だったのですか!?!?」

 

「は?」

 

は?何言っちゃってんのこいつ。え?逆に今まで女だと思われていたのか?

 

「お、おい…さすがに顎がジョリジョリな女はいないぞ…」

 

「す、すいません…。僕、余り他人の違いが分からなくて。」

 

そうか。

だからコイツは俺に対して奉仕すると言っていたのか。

 

「まぁ、何だ。他種族の、特に人間族の雌雄の違いが見分けられないという種族はそこそこいるから、余り気にすることはないと思うぞ。」

 

「え、あ、はい…ありがとう…ございます?」

 

シロは少し困惑しながらも礼を言う。

とりあえず、汚れを落とすところからだ。

 

俺はシャワーの形をした魔道具に魔力を流し込む。

すると、お湯が程よい勢いで流れる。

これは、最近流行りの魔道具で、魔力を流すだけで簡単に温水が出る仕組みとなっている。

 

まぁ、どうしても風呂場を再現したい転生者が作ったのだろう。

俺はその魔道具をありがたーく使わせてもらっている。

 

「ほれ。頭を下に向けとけ。」

 

「へ?は、はい…わかりました。」

 

「お、おっぱい……。」

 

クロはなんだか意識が朦朧としている様だが、俺はそんな者お構いなしにシャンプーを頭にかける。

 

そして泡立て……泡立たない!?え?俺がかけたの水じゃないよな?

シャンプーをかけ、洗い流す。そしてまたシャンプーをかけ、洗い流す……………。

 

何回繰り返しただろうか。いい加減腕が疲れてきた。

 

「あの……僕が自分で洗いますよ。」

 

「あ、あの…私も自分で出来ます。そ、その…洗うとき胸が………。」

 

確かに。

なんだ、俺がただの過保護な親のようではないか。

 

しばらく洗い、ようやく匂いが消えてきた。

 

「ほれ、乾かしてやるよ。」

 

「え……?だからそのぐらい……って、ひゃっ!」

 

「私も流石にそのくらいは出来ます……って、わっ!」

 

俺は、いきなり少し勢い強めで熱風魔法を出す。

ちょっかいと言うか、いたずらってやつだ。

 

「うぅ…やはり、僕は貴方の思考が読めません…。」

 

「私も。一体、これからどんな激しい事をされるのかな…」

 

シロもクロも、やはりまだまだ警戒しているようだ。

と言うかそういえば終われば奉仕、的な流れのままだったな。

俺は流石に餓鬼に発情するほど飢えてはいない。

 

「奉仕はしないぞ。そんな事より、飯を食うぞ。」

 

「「え?」」

 

「じ、じゃあ、何故僕達の事を救って下さったのですか?」

 

「うん。どうして、大っきなスライムから私達なんかを…」

 

あれ?俺は職員か、その類だと思われている…と、思っていたのだが、コアスライムに襲われて俺に救われた事は分かっているらしい。

 

「特に理由はねぇよ。強いて言うなら…いや、思いつかねぇ。何というか、勢いで救ったと言うか。」

 

「???僕はよくわかりませんが、兎に角貴方は今のところ、奉仕をしなくてもいい、ということなのでしょうか?」

 

「あぁ。そうだな。」

 

「じゃあ、クロにも手を出さないのですか?」

 

「出さねぇよ。」

 

「じゃあ、もう苦しまなくてもいいの…ですか?」

 

「勿論だ。まぁ…前の生活と比べたら楽園の様な暮らしになるだろうよ。」

 

「シ、シロ…私、この人が言ってることもどうせ嘘だよ。そうやって私達が喜んでいる時に、拳を振り下ろしてくるのが大人なの…大人で信用していいのは、パパかママだけ…。」

 

「おい。クロ、だったか?」

 

「は、はい。何か用…でしょうか?」

 

「昼飯、なにか食いたいもんあるか?作ってやるよ。」

 

「え……?へ……?」

 

すると、クロはしばら理解できない、と言った表情になると、恐る恐る俺に料理のリクエストをしてきた。

 

「では、干し肉のステーキが、食べたいです…。」

 

「そうか。夕方まで時間があるから、おれの家の中なら何処に行ってもいいから、時間を潰してこい。少しスパイスを買ってくる。」

 

すると、シロも俺に質問を投げかける。

 

「もう、クロとは離れ離れにならないのですか…?」

 

「それも、勿論だ。これからは二人仲良く過ごすこと。それが俺の命令だ。」

 

「シ…シロ……私、もう貴方を穢さなくてもいいのね…!」

 

「クロ…僕らはもう、互いに傷つけ合わなくてもいいのですね…!」

 

二人はそう言うと顔を見合わせた後に、正しくわんわんと泣き出した。ダムが決壊したのだろう。

 

と言うか急いで防音魔法張らなかったら、通報されてたぞ。

二人はそれはもう泣き、泣き、泣きわめき、遂には疲れ果てそのまま二人共眠ってしまった。

時折、クロやシロの両親だと思う名前を呟きながら。

 

二人に毛布をかけた俺は、外着に着替え、買い出しに向かう。夕食は勿論干し肉ステーキ。後はジャガイモスープでも作ろうか。

 

そんなふうに献立を考えながら鼻歌交じりに市場に向かう。

すると、俺の首元に一本のナイフが突き立てられる。

 

「餓鬼を拾って、随分気分がいいじゃねぇか。」

 

どうやらこのまま3人で夕食……とはいかないらしい。

まぁ、遅かれ早かれこのような展開になることは拾った時から覚悟していたが。

 

ここは人通りが少ない路地だ。このままこの場所でドンパチやってもいいが、それでも時折通行人が通る為やりにくい。

 

しかし、それはこの推定暗殺者もそうだ。

 

「お前、お貴族様に雇われたのか?」

 

「そんな事言わなくても分かるだろう。」

 

「じゃあ、俺も細やかな抵抗がしたい。だか」

 

俺は会話の途中でほぼノーモーションで暗殺者の脇腹に向けて暗器(六角のような串)を突き刺す……が、空を切る。

 

「ほう、非常に読みにくいタイミング。その狡猾さ、やはり貴様がフィルで間違いないようだ。」

 

うーん。あの体勢から完全に避けるか。しかも俺のことがフィルだとバレてしまった。

しかも俺を殺す為に雇われた暗殺者。つまり俺のことをB級冒険者だと知っていて、かつ確実に殺せる暗殺者を雇ったということ。

 

正直な話、真正面から馬鹿正直にやり合って勝てる未来は見えない。

かと言って、コアスライムやゴブリンの様に明確な弱点もない。色仕掛けも絶対に通用しないだろう。

 

やりたくねぇ……

 

「残念だが、貴様はターゲットだ。大人しく首を差し出すなら、一撃で葬ってやる。」

 

「だーれが大人しく死ぬか。俺は二人にこれから飯作らなきゃならんのだわ。」

 

「そうか。では死ね。」

 

さてさて。本当にどうやって乗り切ろう。

 

 

 

 

 

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