餓鬼二人拾ったわ
→余りにも臭い。風呂に入れよ。
→二人、疲れて寝てもうたわ。晩御飯買いに行こ。
→暗殺者に、襲われた。
なんというか、何時もよりまとめると内容が薄いな…
俺は今、暗殺者と睨み合いの状況が続いている。
正に一触即発。
どちらが先に来るか、じゃんけんでもして決めたいところだ
睨み合いの時間、およそ15秒。
先に動いたのは、俺ことフィル。
全力で地面を蹴った俺は、そのまま突きの構えで相手の喉元を狙う。
が。
「甘いな。踏み込みも、読みも。」
暗殺者は俺の前から消え、勢い余って剣が暗殺者の奥の家の石垣に突き刺さる。
本来ならこの隙を突かれて首と胴がサヨウナラ。
だが、暗殺者って時点でこうなることは読めていた。
俺は流れるようにカバンの中からポーションを取り出し、辺り一面にばら撒く。
「ほう、濃硫酸。いや、この粘着質性、アシッドスライムの一部か。」
「御名答。あらあら、貴重な一張羅が台無しじゃねぇか。」
本当に面倒くさい相手だ。
今の完全に手応えありと感じた小細工で、服の端、一部しか溶かせなかった。俺だったら今ので顔面ドロドロだぞ。
フィジカル面では俺が圧倒的に下。
なら、このまま押し切る。
俺は体勢を少し崩した暗殺者の胸元に飛び込み、剣を四回ほど横に凪ぐ。
「このまま押し切るつもりだろうが、この程度で押しやられちゃ暗殺者やってられんよ。」
足に激痛。
俺は即座にバックステップを取り、足元を確認する。
マキビシのような物か。
「へぇ。正面戦闘以外もいけるタイプね。いいねぇ、面白くなってきたじゃねぇか。」
そう、啖呵を切ったはいいものの全く面白くないしさっさと帰って料理をしたい。
「っな!?いねぇ!?」
少し考えていると、暗殺者さんがさっきまでいた場所には人っ子一人いねぇ。
俺は瞬時に受けの姿勢に入る。
案の定、奴さんは俺の方に向かって来るものの、その構えが独特。虫のように地面を這いながらも、凄まじいスピードで俺の足元に這い寄ってくる。
「足切りとは、性格が悪いな!」
「文句は地獄で言ってくれ。」
急いで俺は全力でジャンプ………したが、右足を軽く斬られた。恐らく骨には到達してない。
俺と暗殺者は、そのまま流れる様に斬り合いにもつれ込む。
今度こそ純粋な剣技だけでの勝負。
「ほう、力は大したことないが、狙いとタイミングが秀逸。とても一朝一夕で身につくような技術ではない。」
「そいつはどぉも!でも、血飛沫あげてるの俺だけじゃねぇか!」
そう、俺は今のところ暗殺者さんに一方的とも言っていいほど押されている。このままだとジリ貧で負ける。
「足元、疎かになってんじゃねぇの?」
俺は暗殺者さんの足を全力で踏みつける……が。
「ふん、力が弱いな。その程度の力で足を砕くことなど夢のまた夢。」
「知ってるよ。」
ここまでは計算通り。俺はその足から、器用に炎魔法と風魔法を噴出する。
「ちっ。小癪な。一々面倒くさい男だな。」
「そいつはありがと……よっ!」
俺は全力で相手に向かって先程のポーションを投げつける。
しかし。お相手さんはそれを額から受け止めやがった。
本来なら暗殺者の別嬪なお顔はドロドロ。だが。
「やはりフェイク。今のはただのスライムだった様だな。」
「スライムの色が少々違うとはいえ、A級冒険者にも通用したんだけどなぁ?」
「化け物退治専門家と、対人特化の殺し屋さんを比べるのはどうかと思うが。」
うーん。正論!
しかし俺はポーションを全力で投げたせいで直ぐに相手の剣を受け止められる体勢ではない。
おまけに先程の魔法を使う程の魔力もない。魔法の同時使用は魔力を馬鹿使うから。
「もらった。地獄で反省会でもしておくのだな。」
暗殺者の剣が俺の腹に突き刺さる。普通ならこれで俺はおしまい。だが。
「着込んでよかった♪鎖帷子(くさりかたびら)!」
「ちっ!一々殺しきれんやつだな!」
完全に奴は体勢を崩している。
俺は、暗殺者さんの胸に向かって全力でホールドする。
「なっ!なにをする!!離せ!」
「やーだね!一緒に死のうぜ!」
俺は敢えて相手に聞こえる声量で自爆魔法を唱える。
「糞が、離せ!この!」
あれあれ?さっきまでの余裕っぷりは何処に行ったのかな?
「あほかお前、先程の魔法で魔力はもうすっからかんだわ。」
「なっ!?魔力切れなら、気絶するはずだろうが!?」
「そうだな。だから、回復ポーションの痛みで意識保ってんの。そう言う訳で、死ね。」
「っ!異常者め!」
暗殺者さんに異常者って言われてもうた。
俺は完全に狼狽えている暗殺者さんの喉元、腹、胸に深く剣を突き刺す。
「ぐっっっ。ごんな、ごんなどごろで、わだじは、わだじはなりあがるのに………」
喉が潰れてうまく話せていない。喋れば喋るほど痛いだけなのに。と言うかさっさと倒れろよ、面倒くさい。
「まだだぁ!!」
「マジか。そっか。お前、ガッツも結構あんだな。」
暗殺者さんは今にも死にかけな体でフラフラと立ち上がり、俺に向かって力無く突進してくる。
「こいつみたいなタイプは首切らない限り死なないからなぁ。可哀想だが、気絶しないのなら今やらせてもらうわ。」
「ば?なにをいっでいるのだ?」
俺は回復ポーションを取り出し、瞬時に暗殺者に向けてドボドボとかける。
「がっぁ!がっ!!おえっ!!がっギギギ…………………。」
すると、傷がみるみるうちに直っていくのと、暗殺者が苦痛に顔を歪め、のた打ち回る。
折角の糸目美人が台無しだ。まぁ、俺がやったんだけど。
そして、暗殺者さんはそのまま情け無い顔で気絶した。
本来ならそいつを無視して買い物に行くべきだろう。
だが、コイツは俺のスライムを2本も消費させ、……と言うか全力で殺しにかかってきたやつだ。
何か罰をあたえねば、俺の気が済まん。
何かいいものは…………?
俺は、廃材置き場の一本の大きな角材が目につく。
「いいこと思いついた。まぁ、少しかわいそうだけど。」
「帰ったぞー。」
買い物を終えた俺は、あれから特に何も起こることなく家に帰宅することができた。
「ん?いないのか?」
流石に家を出てから1時間は経ったが、まだ2人は寝ているのだろうか?
「ねぇ、ほんとにやめようよ…これじゃあ僕達、あの人達と変わらないじゃないですか…」
「もうちょっとだけ、もうちょっとだけでいいから!シロは見張ってて!」
「クロ…貴方の未来が心配です……。」
俺の寝室の方から2人の声が聞こえる。
「何だ、俺の寝室にいたのか。何か探し物……か……?」
そう言いながら俺の寝室へのドアを開けると、そこには。
俺の下着を無我夢中で嗅いでいるクロと、それをゴミでも見るような目で見つめるシロの姿だった。
何なんだ。こちとら命懸けでお前ら守ってるのに。
まぁ、俺の勝手なんだけど。
と言うか…アルティと言いシースと言い、俺の下着には女を引き寄せるフェロモンでもこびり付いてんのか?
想像したらキショいな。
「あっあっあっ。」
なんというか…バレた時の反応がアルティとシースと大して変わらない。
「こ…殺さないでぇ…」
クロはそう言いながら、全力で土下座。
土下座を何処で覚えてきたかは知らないが、やめなさいはしたない。
数拍の間を置き、シロがクロを庇う。なんという家族愛。
まるでクロが被害者みたいだ。
「ま、待ってください!クロを殺すならちょこっとだけにしてあげてください!」
違った。減刑要請だ。
「クロ…こっちに来なさい。殺しはしないから。多分。」
俺はクロを呼びつける。
するとクロは恐る恐る俺に近づいてくる。
「まず、何でこんな事をしたんだ。正直に言ったら許してやる。」
「えっと…その、ご主人様が買い物に行かれて…それで私は起きて…暇だったから家の中を探索していたらアレを見つけて、そしたら後は無我夢中で…」
「そうか。まず、俺の事はフィルと呼べ。シロもだ。」
「え?あ、はい。分かりました。」
「そしてクロ。この世界の女性は、性欲が皆化け物だ。」
「?は、はい…。そうですね…。」
「どんなに国や街から讃えられた英雄も、1つ道を間違えれば不法侵入者の下着泥棒になってしまう。だから、定期的な発散は大事だ。」
「その…通りです。」
「だから、今回は許す。だから、するならするにしても絶対にバレないと確信したところでやってくれ。」
「え!?許して…くれるのですか!?」
「あぁ。だが、次やってるのを見かけたら目茶苦茶にブチブチ殺すからな。」
「目茶苦茶にブチブチ殺す!?!?!?」
「大丈夫です。フィルさん。もし再犯していたら、僕が代わりにクロを目茶苦茶にブチブチ殺します。」
「おぉ、助かる。」
「そういえばフィルさん、質問いいでしょうか?」
「おう。なんだ?」
「買い物にしてはやたら時間がかかっておりましたが…何かトラブルでもあったのでしょうか?」
「うーん。実は買い物ルートの途中に角材に張り付けにされた全裸のガニ股女がいてな…」
「な、なんと酷いことを……。」
「あぁ。そのとおりだ。犯人はきっと極悪非道の悪魔のような奴に違いないな!はは。」
「なるほど。それで道が混んでて遅れた…というわけですか。」
「まぁ、そういうことだ。今からご飯作るから、二人で待っていてくれ。」
俺は二人を寝室に取り残し、料理を作りにキッチンへと向かう。
作るのは俺が最近ハマっている、ジャガイモスープと干し肉のステーキの予定だ。
干し肉を水に浸し、焼く。
味は目茶苦茶薄くなるが、肉食ってる感が上がるためお気に入りだ。
ジャガイモを程よい大きさに切り、煮込む。
そこにコンソメ的な物を加え、スープは完成。
この世界のコンソメは、入れるとコンソメスープ……というわけではなく何か少し味がするな〜〜程度のお湯になる。
だが、入れないよりはマシ。
後はそこに食用ワームを入れて、完成。
ワームは煮込みすぎると、かじった時に破裂して口内を火傷するため程々が一番。
鍋の長ネギだな。
後は適当に焼いて塩をかけた干し肉ステーキとともに、食卓に並べる。
「おー!とても美味しそうです…!」
「僕達、このようなものを食べてもいいのでしょうか…?」
「おいおい、じゃなきゃ3人分の料理作らねぇよ。ほら、席につけ。」
2人が先に席に着き、俺も席に着く。俺は、胃を温める為スープを飲む。
いきなりガッツリしたものを食べると腹を壊すのだ。
スープを飲み干した俺はステーキに手を………ってあれ??
「お前ら、もうステーキ全部食っちまったのか!?」
「はい…。お肉なんか食べるのがすごい久しぶりで…。」
「僕も、お肉はいつ食べたかすら覚えていなくて…つい食べ過ぎてしまいました…。」
「まぁ別にいいけどさ…次からは量増やすわ。」
恐るべし、食べ盛り。
夕食を食べ終えた俺たちは、二人を寝かしつけた後白湯を飲むため湯を沸かす。
「いや〜。本当にクソ長い1日だった…。」
朝からコアスライムに襲われながらも二人を助け、生かす選択をし、暗殺者に早速襲われる。
多分この世界で今日濃い1日だったランキングがあるなら、トップ0.1%にはいるぐらい。
まぁこの世界の人口知らないけど。
俺は沸かした湯を持ち、窓を開ける。
そのまま湯を下に流す。
「あづづづっっっ!!!!」
やっぱりいた。
「貴様……卑劣な真似をした挙句、不意打ちとは、卑怯な…!」
「それ、暗殺者の言うことか?」
「うるさいうるさい!殺す…!殺してやる!」
奴は顔を真っ赤にさせ…って、俺がお湯かけたから赤くなっとるだけか。
「そうかそうか。じゃあ、おやすみ。」
「はぁ?」
「俺がかけたお湯、ただのお湯じゃないぞ。しょっぺえだろ。」
俺は、そのまま電気魔法を放つ。
「あばばばばばばばばばば」
そんな汚い断末魔をあげ、奴は壁から手を離し、一階へと落ちていった。
俺は一階へと降り、回復ポーションを暗殺者さんにかける。
気絶しているので特に苦しむことなく体の傷がみるみるうちに治っていく。
外はもう暗い。人通りも殆ど無く、街は昼とは打って変わって静寂に包まれている。
そんな中、俺は気絶した暗殺者の服を脱がし、街の広場の真ん中にガニ股で気絶した暗殺者(笑)を張り付けにする。
まさかコイツも1日に2度人前で全裸のガニ股状態で晒し者になるとは思わなかっただろうな。
張り付けされたみっともない姿の暗殺者を背に、俺は家に帰る。あの時家にいた暗殺者は一人。
だが、追加投入される恐れもある。俺は小走りで家へと向かう。
しかし。
俺の家に近づくにつれ、人々のざわめきが強くなっていく。
そして、明かりも強くなっていく。
まさか…な。
俺は、全力で家に走り出す。だが。
俺の家の周りは野次馬で溢れかえっており、中々家の姿を拝むことができない。
俺は人の波をかき分け、ようやくその姿を確認する……が。
「やってくれたな…。」
そこには業火に包まれた俺の家があった。