星輝の女帝(スターライト・エンプレス)   作:アキ 3150

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 最近になって「魔法少女リリカルなのは」にハマったため執筆開始。
 今年から新シリーズも始まるということで、便乗して投稿します。

 他作品の技や能力などが多数出てくるので苦手な方はブラウザバックしてください。


第1章 原作前
第1話 出会い


海鳴市の公園

 

現在時刻 15:00

 

 

 

 ベンチで1人の少女が座っている。

 少女の名前は"高町なのは"つい最近6歳の誕生日を迎えたばかりの、本来ならばまだまだ親に甘えたい盛りの幼い少女だ。

 

 しかし、少女は孤独だった。

 誰もいない公園のベンチに一人ぼっちで座っている、彼女が甘えるはずの親や家族たちの姿は陰も形もない。

 

 少女の家族は仲のいい家族だった。

 だがそれは、父親が仕事で瀕死の重症を負い、意識不明の重体となった時を境に崩れ始めた。

 母親はオープンしたての喫茶店の経営で手一杯。

 兄は母親について喫茶店の手伝いとより厳しい修行に打ち込み。

 姉は父親の看病と母親に代わって家事全般を担う。

 

 父親の入院によって少女の家族は、少女に構う時間も精神的な余裕も擦り切れてしまい、少女は1人で過ごすことが多くなった。

 幼いながらにそのことを察していた少女は──構って欲しい、甘えたい──という気持ちを必死に抑え込み、みんなに迷惑をかけないよう手の掛からない"良い子"を演じていた。

 

 しかし、それも長続きはしなかった。

 決定打になったのは、3日前が少女の誕生日であったのにも関わらず何も無かったことだろう。

 誕生日会も、美味しいケーキも、素敵なプレゼントも、何よりも家族からの「誕生日おめでとう」の一言すら少女は貰えなかったのだ。

 

 これは決して少女の家族が少女を嫌っているのでは断じてない。

 母親も兄も姉も末っ子である少女のことをとても可愛がっていたし、愛していた──ただ目も回るほどの忙しさが彼女たちから少女のことを考えるだけの余力を全て奪い去ってしまっただけなのだ。

 

 だが、そんなこと少女にはわからない。

 年齢の割に聡明とはいえ"高町なのは"はまだ6歳の子供なのだ、1年に一度しかない誕生日すらも忘れられたという事実は彼女の心に深い絶望を刻み込んだ。

 

 

その日以降少女が笑ったことは

 

 

一度もなかった

 

 

 

 

 

「………………」

 

 

 

 少女はベンチにもたれかかっている、薄く開かれた目に光は無く、顔はなんの感情も読み取れない無表情、全身から力が抜けきっていて、側から見たら壊れた人形の様にしか見えない。

 

 

 

「………………」

 

 

 

 少女がベンチに座ってから既に1時間は経過しているが、少女は未だに人形ように動かない、ほんの僅かな身動きも、瞬きすらもしない。

 このまま少女は二度と動くことなく死んでしまうかに思われたその時──

 

 

ビキッ!ベキッ!バキン‼︎

 

 

 何かが壊れる様な音が響き少女のすぐ前の空中に小さな亀裂が走り、大人の拳ほどの大きさの『次元の穴』が少女の顔の真ん前に現れたのだ。

 穴の先にはどこまで続いているかわからないほどに大きな漆黒の空間が広がっており、とても不気味だった。

 

 しかし、それでも少女は何の反応も見せない。

 明らかにおかしなことが目の前で起きているにも関わらず、少女は動かなかった。公園に来た当初と何も変わらず、人形のような無機質な瞳で目の前にある漆黒の空間を視界に捉え続けている。

 

ーーー

ーー

 

 どれだけの時間が経っただろうか、数秒か、数分か、はたまた数十分なのか、無限にも思える停滞の中でようやく変化が起きた。

 

 突然現れた『次元の穴』が今度はゆっくりと塞がり始めたのだ、空間に穴が開くという超常現象は特に何か事件を起こすこともなく終わるかに思われたが、穴が閉じる寸前に水色の小さな宝玉のついたネックレスが落ちてきて少女の太ももの上に落ちた。

 たった一つネックレスだけを残して『次元の穴』は塞がり、いつも通りの光景が戻ってきた。

 

 目の前で超常現象が起き、未知の装飾品をぶつけられた少女は、相変わらず動かない──かに思われたが、ここで少女は今までと違う反応を見せる。

 ゆっくりと首を起こして自身の太ももを見つめている、いや正確には太ももに乗っている謎のネックレスを見ていた。

 何故かはわからないが少女は『次元の穴』から現れたこのネックレスに興味を持ったようだ。

 

 

ジーーー

 

 

 人形のような無機質な両目が謎のネックレスを見つめている。

 いったい何が少女の興味を引いたのだろうか──実のところその理由は少女自身にもわからなかった。

 ただ、何となく気になる──それだけだった。

 少女はゆっくりと左手を動かしてネックレスの宝玉部分へと近づけていき、親指と人差し指で摘んで持ち上げた、すると──

 

 

 

「助けて」

 

 

 

 微かな声が聞こえた。

 今にも消えてしまいそうなほどに小さな声だったが少女には確かに聞こえた、助けを求めている誰かの声が聞こえたのだ。

 しかし、どこにいるのかがわからない。

 

 

 

「助けて」

 

 

 

 また聞こえた。

 少女は壊れた人形のように動かなかった身体を勢いよく立ち上がらせて周囲を見渡す。

 

 

 

「どこ!?どこにいるの!?」

 

 

 

 大きな声で呼びかけながら周囲を見渡す少女、ついさっきまで壊れた人形のようになっていたとは思えない姿だ。

 

 

 

「………君の…手の中に……いる……」

 

「手の中?」クビカシゲ

 

 

 

 少女が自身の左手を開くと『次元の穴』から落ちてきた謎のネックレスが握られていた。しかも、握っていたネックレスについている水色の宝玉が微かにだが光っていた。

 少女は混乱しながら恐る恐る宝玉に話しかける。

 

 

 

「私を呼んだのは君?」

 

「…うん……お願い…助けて」

 

 

 

 どうやら本当にこの宝玉が声の主だったようだ。

 しかし、少女にはどうすればいいのかわからない、見たことのない材質の宝玉でしかも喋る謎の物体、どうすれば助けられるのか、少女には皆目見当もつかなかった。

 

 

 

「…ごめん……なさい……どうすれば……いいのか……わからないの」ポロポロ

 

 

 

 こんな何の価値もない小娘を頼ってくれたのに、何も出来ないことが少女にはたまらなく悲しかった。

 やっぱり自分は何も出来ない役立たずなんだと少女が落ち込んでいると、謎の宝玉からの消え入りそうな声が聞こえてくる。

 

 

 

「君の…魔力を……俺に…くれ…」

「魔力を……込めて…俺の名……呼んでくれ……」

 

 

 

 魔力をくれと、謎の宝玉は言うが──そもそも魔力なんて創作物や都市伝説の中にしか存在しないもの、それをくれと言われても"何言ってんだコイツ?"みたいな反応が大半になるのではないだろうか。

 しかし、少女は──"高町なのは"は謎の宝玉の言葉を疑っていなかった、幼い故の純粋さなのか、それともその身に宿す強大な魔力を自身でも感じ取っているのか──

 

 

 

「わかった、君の名前を教えて」

 

「……リムル」

 

 

 

 リムル──謎の宝玉の名前はリムルというらしい。

 彼の名前を聞いた少女は、宝玉を両手で包み胸元に持っていき目を瞑り、自分の内側に意識を集中させる。

 少しすると、少女の両手の中から桜色の光が溢れ始める、これこそがリムルの求める魔力だった。

 あろうことか少女は、現代日本においては存在すら確認されていない魔力を本人の感覚だけで操ってみせた、凄まじいセンスだ。

 

 少女の両手から溢れる魔力の光がどんどん強くなっていき公園全体を照らすほどに高まったとき少女は言った。

 

 

 

「お願い生きて!リムル!!」

 

 

 

 少女が名前を呼んだ瞬間、周囲を照らしていた魔力がすごい速さで宝玉の中へと吸収し、それだけでは終わらず少女からさらに多くの魔力を吸い出し始めた。

 少女の顔が苦痛で歪む、魂ごと抜き取られるような気の遠くなるような痛みに襲われていながら、それでも少女は、宝玉を、リムルを、決して手放さない。

 少女は自身が死にかけていることをなんとなく理解していた、これ以上吸い取られたら死んでしまうと彼女の生存本能が警報を鳴らし続けていた。

 それでも尚、少女はリムルを手放さない。

 たとえ、死ぬことになっても、こんな無価値な自分を必要としてくれた存在を助けたい、と生存本能を押し殺してリムルの魔力吸収を受け入れ続け、そのまま意識を手放した。

 

ーーーー

ーーー

ーー

 

現在時刻 19:15

 

 少し前には『次元の穴』が開いたり、眩い桜色の光が溢れたりといった超常現象が起きていた海鳴市の公園だが、今は夜の闇に覆われており僅かな街灯によって一部が照らされているだけの寂しい場所。

 

 そんな公園内のベンチには1人の少女が仰向けで眠っていた。

 この公園で起きた超常現象の当事者になった少女"高町なのは"だ。

 

 

 

「ん…ア、レ?……ここは?」ボー

 

「気がついたか?」ヒョコ

 

「えっ?…ええええ!??!?」ビックリ

 

 

 

 少女が目を覚ましてゆっくりと周囲を見渡すと少女の胸元に乗っていた拳ほどの大きさで水色のスライムが少女に話しかけた。

 少女としてもいつの間にか乗っていた、見たこともない水色のが喋る物体がいて混乱している。

 慌てて飛び起きようとする少女だが、何故か身体にうまく力が入らず、ゆっくりと身体を起こすので精一杯だった。

 なんとか、身体を起こして背もたれに寄りかかるようにして座る少女は目の前のスライムに話しかける。

 

 

 

「えーと、君は誰?なんで私に乗ってたの?」

 

「俺はスライムのリムル」

「悪いスライムじゃないよ!」

 

 

 

 目の前のスライムはリムルと名乗った。

 少女にとってその名前は自分に助けを求めた、必要としてくれた大切な者の名前だ。少女は気を失う前のことを鮮明に覚えており、彼女が助けようとしたリムルがどうなったのか気にしていたため、安堵のため息をついた。

 

 

 

「君がリムル君だったんだ、助かって良かったよ〜」ヘニャ~

 

「うん、おかげで命拾いしたよ」

「改めて、俺の名前は"リムル"こことは違う異世界で生まれたスライムなんだ」

「君の持つ強大な魔力が無かったら俺は死んでいた、本当にありがとう」ペコリ

 

「ううん、こちらこそありがとうリムルくん」

(あの時…君が必要としてくれなかったら……私はあのまま死んでいた……救われたのは私の方だよ)

 

 

 

 異世界で死にかけ、魂すらも離散しかけてしまうほどに消耗していたリムルと家庭環境の崩壊によって心を壊し、消極的な自殺を行なってしまった高町なのは、この両者が出会ったのはきっと偶然では無く必然なのだろう。

 

 

 本来なら交わることの無かったはずの2人。

 異世界から逃げ延びたスライムの元魔王:リムル

 数年後星輝の女帝(スターライト・エンプレス)と呼ばれることになる伝説の魔導士:高町なのは

 

 2人の物語はここから始まった。




必然=作者の都合

本当は旅立ちまで書きたかったけど、切りが良いので一端ここまで。

【補足情報】
・高町なのは
 誕生日を忘れられたことで自分はいらない子なんだと思い込んで消極的な自殺を実行してしまった少女、誕生日から3日経っているのはもしかしたら思い出してくれるかもしれないと微かに残っていた願望がギリギリのところで引き止めていたのだが、それも3日が限界であり、消極的な自殺を実行に移してしまった。

 何故、カッターなどで首を切るのではなく、消極的な自殺を選んだのかというと、高町なのはは生きる意味を失っただけで、死にたいわけでは無く、死に対する恐怖は無くとも痛みに対する恐れは僅かにあったため、能動的な自殺は選びづらかったのだ。
 それでも自分の存在価値が見出せないため生きる気力は無く、最後の賭けとして人目につく公園で誰か自分を必要としてくれる人はいないかな…と待っていた。
 これで誰も来なければこのまま死んじゃえばいいの…という気持ちで座ってました。

 だから、リムルの声が聞こえたとき即座に動くことができた、誰かが自分を必要としてくれてる、その事実が嬉しかった少女。

 僅か6歳でありながら必要なら命すらもかけられる精神性を得てしまった少女。───ヤバくね?



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