私が恋をしたのは
彼女のアコギの音色は、私の聴覚を
私の期待は膨張し、留まることを知らず、彼女に
勢いのまま、喜色満面で彼女に伝えました。私と同じ人間になってくれたんだね。嬉しい。どうか、どうか交際してください。其の言葉で、彼女の見目麗しかった瞳は、文字通り混乱しました。ぐるぐると瞳孔が渦巻き、以降戻ることはありませんでした。
私は後悔の念を持つも、醜悪な思考へと退化していきました。
彼女は長考した。
己の眼が変貌したが、其のことではない。
「あー」
彼女の美声が
「声を出せるのか。そうか」
二本の足で砂を弄る。た、こ。2つのひらがなが砂浜に描かれた。
「声が出せる。歌を歌える」
先ほど浜辺に彫刻した字を足で消し去る。細い手指で足に付いた砂粒を払い取った。歌、歌、と歌のことを歌った。
「あぁ、そういえば告白されたのだった。すっかり忘れていた。」
彼女は告白された相手、
「それにしても、歌か」
さく、さく、と地面に人間の足裏模様を作りながら歩く。
「僕の心は どうなんだろう あなたのことは どうなんだろう」
雑に歌う。其れが楽しい。
「知らないや 僕は生きよう あなたのために」
生きていたら取り敢えず嬉しいのだろう、真理。
「ふっ」
忘れようとして忘れていなかった自分に笑う。
「あれ、私のアコギは?」
「ちょっ、やば」
彼女は早急にアコギを取りに行った。
数分後、アコギとともに打ちあがった女の姿があった。
コトバンクより
淡紅:薄い赤色。
美行:よい行い。善行。
神功:神の事業。また、神の功徳。
丹花:赤い花。紅色の花。(広辞苑では、美人の唇の赤く美しいたとえ)
怜悧:りこうなこと。
花瞼:花のように美しいまぶた。美人のまぶた。
不料簡:考え方や心構えがよくないこと。
凛冽:寒気のきびしいさま。
澄清:くもりもなく晴れわたっていること。
潮声:海の波の音。
鳥声:鳥の声。
長逝:死ぬこと。
括弧文は筆者の注釈