ジュラの大森林を流れるアメルド大河とかいうでっかい川。
これを辿ると山脈に出るらしい......ちなみにその山脈にこそ俺達の目的地であるドワーフ王国があったりする。
なんか大山脈のその先に「東の帝国」とかいう名前からしてロマンあふれる国家があるが、今回の目的地はそこではない。
カナート大山脈。その山脈の大洞窟を改造した美しい都。それこそがドワーフ王国こと、武装国家ドワルゴンの首都なのだ。
『告 その情報は私が提供したものです。我が物顔で披露するのはいかがなものかと』
おだまり支援者!異世界っぽい感じ出てきて結構テンション上がってるから!
『否 これまでも''異世界っぽさ'に関してはあったかと思います'』
........うっせぇ!
.....支援者の突っ込むはおいといて。
俺達が村から出発してだいたい三時間はたった。
先導してくれるゴブタというホブゴブリンを先頭にランガにライドオンしたリムル。
その他面々がそれに追随し、結構な距離を開けて俺とユキナ、という隊列である。
時速80kmで移動しているのに、アメルド大河は終わらない。どうなってんだ異世界!という感情を抱えつつ走ってきた。俺が走っているわけではないが。
景色も永遠と続く大河と近づいている気がしない山脈という面白みのないもの。
結構ひまである、ということで。
「.....なぁユキナ」
「はい、なんでしょう?」
「前、進化したって言ってたじゃん。白氷狼......だっけか?どんな風になったんだ?」
こういうときは雑談するに限る。
一応最初の方は『走ってるときに喋るのきつくね?』と思って自重してたんだが、ユキナの方から話しかけてきてくれたためその心配はない!
それにコレに関してはずっと前から聞きたかった。俺から分かるのは見た目がフッフワフワになって毛に磨きがかかったくらいだ。
毛しか見てないな。
「そうですね.....やはり基本的な能力は全て向上しています。今はこの速度を維持して近づかないようにしていますが...私とナギサ殿だけならあと一日あればドワーフ王国にはつきますよ」
「まじでか......」
内心ドン引き。魔物の進化怖。
俺達3日の旅を想定してんだぞ、それをあと一日って...。あと俺も含んでくれたけど多分俺それ吹き飛ぶから。風で。
『告そんなことにはなりません』
吹き飛ばなかったわ。風で。
「あと、いくつかスキルも獲得しております」
ほえーそんなことにもなんのか。というか俺いまどんなスキル持ってたっけ?隠密行動と吸血牙装しか覚えてないぞ?
『告 私もスキルですよ』
そう言えばそうだったな。完全に俺の中にいる人みたいなノリだから気にしてなかったわ。
「おぉ〜どんなのか聞いていいか?」
まぁ俺のは今どうでもいいや。ユキナがどうなったのか知りたい。
「はい....と言いたいところですけど。コレに関しては見てもらったほうがわかりやすいかもしれません」
ほう?よくわからんけど......まぁ大丈夫やろ多分。
「んじゃやってみてくれ」
「では手のひらを上に向けてくれませんか?」
言われた瞬間に馬鹿正直に手のひらを上に向ける。
そうしたらそこに魔素が集中し始めた。
次第にそれは形を持っていき、温度すら放つように成った。
その短な時間の合間にできたのは.....。
「....氷か!」
冷たくて、手のひらにあるのになぜか溶けない氷。
これがスキルッ....ってこと!?
「はい、エクストラスキル《氷霜》というものです。周囲の魔素を凝結させて氷にしたり霜にできたりします......あと多分動かせます」
そう言うと言葉の通り手にあった氷が意思を持ったかのように動き出した。ヒュンヒュンと俺の周りを飛び回っている。
ファンネルですか?
「めっちゃかっこいいんだけど」
羨ましいことこの上ないんだけど。俺も進化したい。
「ふふ、ありがとうございます。ですがおそらくですけど一度にたくさん操作すると消耗が激しいかと思います。これだけでもかなり精密な魔素の操作がいるので」
現実は非常みたいだ。ニュータイプになればなんか変わるか?
『告 あなたも使えますよ』
「え?なにが?」
「.....?どうしました?」
つい口に出てしまった。ごめんユキナじゃないんや。というか支援者さんそれどういうこと?
『解 そのとおりです。私以外もう一つのユニークスキル《紅血遺伝子》によって個体名:ユキナのエクストラスキル《氷霜》は《遺伝子》になっております』
.......ごめん。さっぱり分からんかった。ちゃんと説明してくんね?
『.....告今からちゃんと説明するので聞いていてください』
はい、理解力なくてすいません。
◆
絶望的に自己理解が足りない俺に対して支援者がしてくれた説明!それを要約するとこうだ!
『オレっちと仲がいいやつのスキルをいい感じに使えるようになるらしくね!?』
うーんなんてわかりやすいんだ。
さすが俺、噛み砕いて理解するのがうまい。
『否 それは違います』
違った。
『あなたと魂の回廊が開かれた者のスキルを《遺伝子》として保持できるということです。あくまでも使うのではなく保持、記録。使用するのは固有スキル《錬血》の効果です』
どういうことだっちゃ。魂の回廊ってなに?遺伝子ってワッツ?錬血.....?
『解魂の回廊は名付けをしたものと繋がる糸のようなものです。関係がつながっているものだと思ってください』
はい分かりました。
『遺伝子はスキルのデータを記したものです。例えば、個体名:ユキナ....この場合は子機ですね。子機からのスキルというデータが親機であるあなたに送られた形です』
.......実は俺は機械苦手なんだよね。なんかよくわからないけどユキナのスキルを俺も使えるってことで良いのか?
『.....告それでいいのではないかと思います』
なんか呆れられてる気がするけどもういいか。
俺じゃ無理だ。
ラノベ読み漁ってたのにこういう設定を羅列させると理解できなかったりした。
知能のレベルの問題である。
「...ナギサ殿、先程から黙ってどうなさいましたか?もしかして
体調でも優れませんか?」
「あぁ..ごめん。ちょっと俺の.....友達?から話聞いてたんだ」
ユキナ心配してくれるのはありがたいけど、そんな焦った感じじゃなくても良いんだぞ。
優しいのは素晴らしいと思うけど、なんか......罪悪感が。
「.....友達、ですか」
おっと露骨に雰囲気悪くなったぞ。若干寒くなった。
「リムルじゃないから大丈夫だ....」
言っといてなんだがリムルじゃないから大丈夫ってなんだ。だがまぁおそらくきっとリムルとの念話だと思われているだろう多分。
ユキナがぼそっと
「.....あのスライム」
とか言ってたし。
なんともまぁ......もどかしいものだ。まぁそんなときは話題を変えよう。ユキナだって不機嫌じゃいたくないだろうし。
「なんか俺のスキルは.....ユキナのスキルだったら使えるみたいだ?魂の回廊っていう糸?みたいなのがつながってるらしくて?」
「なんでナギサ殿も疑問形なんですか?」
よく分かってないからだよ!
若干霜が肩に降りてきて寒さを感じながら俺は内心叫んだ。
◆
そして二日目の夜!
不機嫌になったユキナに罪を償って一日目が終わり二日目は一日目と同じようにダラダラ喋って一日が終わった。就寝前にご飯を食べにみんなで集まっている形だ。
「ユキナ、美味しい?」
「ハグっ......おいひぃふぇひゅ」
「それはなにより」
俺とリムルは食べる必要がないのでみんなが食べてるのを見てる。
俺は味覚はあるけどリムルが食べてないのに『うまっ』とか言いながら食べるのはよくないと思い断食中だ。普通の食事からは栄養得られないみたいだし。
お腹も減らないので飯テロも喰らわない。
勝ったな。
(なににだよ)
(人のつぶやき拾ってくんなや。恥ずかしいやんけ)
リムルに聞かれてしまった。
というか俺とリムルの距離結構開いてるのに聞こえるもんなんだな。
(念話だし実際の距離は関係ないんだろ)
(納得の至り)
(堅苦しいな)
そういう気分だからしょうがないね。
そこでちゃんと念話を切ってユキナを眺めておく。
またリムルと喋ってるのがバレてもアレだし。
眼の前にユキナがいるときは辞めておこうかな。
「むぐむぐむぐ......」
それどうやって音出してるの?
普通に食っててもむぐむぐむぐなんて出てこないだろ。ユキナ狼だぞ。
なんでアニメ調なんだよ。
「もっきゅもっきゅ」
だからなんだそれは。
何を喰ってんだよ。生肉の塊だろそれ。
デザートじゃないともっきゅもっきゅは許されないだろ。
「......食べます?」
「.......いいかな」
「ハグっ.....そうふぇふか」
前から思ってたけど食べるのが好きなんだな。
そんなことを思いつつ眺めていたらリムルの声とゴブタらしき人物の声が聞こえた。
「ドワーフ王は英雄王と呼ばれる人物で....」
どうやらリムルの雑談相手に選ばれたらしい。若干声がどもっているのは緊張しているからか。
ユキナもまだむしゃむしゃしているのでゴブタの声に耳を傾けることにする。
◆
「なぁナギサ。じゃんけんしようぜ」
「リムル手ぇなくね?」
「ほれ」
「ニョキって伸びた!?」
あれからゴブタの話は長かった。
しかし結構面白いものであり異世界チックな内容でワクワクした。
現在の王たるガゼル・ドワルゴは英雄王と呼ばれるような立派な人物で三代目。おじいちゃん似の覇気をまとった賢王なのだそうだ。
そしてその後はなんでゴブタがそんなドワーフ王国に行ったのかだったり、あとどんくらいでつくのかだったり。
ドワーフ王国が無敗だったり人と魔物が結び合う土地であって俺達も入れさえすれば安全なのだということだったり。
なかなかのボリュームだった。
そして、あとはみんな寝ついてしまい不眠族の俺とリムルが残った次第である。
「えーそれ気持ち悪くないか」
「なんか変な感じはする」
「リムル視点の感じじゃなくて」
「見た目か......」
アホみたいだ。
方や吸血鬼になった高校生、方やスライムになった成人男性。 変なめぐり合わせをしたもんだ。
「なぁ、ナギサ」
「なんだよリムル。じゃんけんならしないぞ」
「そうじゃなくて」
違ったみたいだ
◆
「.....一日目に、ランガと話をした。ランガとユキナの親父についてだ」
.......。
「ランガは俺に忠誠を誓ってくれてる。お前にだって恩を感じているって言ってたし、信用しているとも言っていた。それにナギサ、妹がいるんだろ?それで仲良くなれそうだって」
「........リムル。もういいだろ。なんか本題、話さなきゃいけないことがあるんだろ?」
リムルにしてはやり方が回りくどいな、そう思わなくもない。 でも話しにくいことだとも、俺は予想がついている。
「....ま、分かるか。ナギサだもんな」
「あんまり過大評価すんなよ、こっちに来てからずっと一緒だったんだ。そこそこ分かるようにもなるだろ」
「確かにな........そうか、なら話すぞ。ってかまぁ、ユキナのことなんだが」
「だろうな」
この流れで別の話題は無いだろうと踏んでいたが.....俺は別の話題が良かったな。
「さっきも言ったがランガは忠誠を誓ってくれている。でも、ユキナはそうじゃない」
「....だから護衛っていう立場に」
「そうだな、ナギサの護衛。今のところランガもうまくユキナと話せてないし、ユキナにはナギサしかいないから、それは良いと思うんだ。でも、ナギサに忠誠を誓ったわけじゃないんだろ?」
.......そうだな。でも、あれは俺が勝手に居場所を作ると言ったからこうなったんだ。そういう言い方はあんまり気持ちが良くないな。
「今、俺が勝手にしたことだ、とか思っただろ」
......念話つなげてたか?
「そうじゃない、そうじゃないの分かってるだろ、ナギサ」
「.....なにをだ?」
「放っておくとユキナ、あいつはお前しか頼れなくなっちまう
ぞ」
.......そうか?
ユキナは俺達が思ってるよりずっと強いやつだろう。
今ここにいるのだって、居場所を村に置きたかったからで。
「そうはならないだろ。ユキナは自分の力で解決できるし、ランガ.....は無理って言ってたな。村に残ったあいつらだって....」
「....この数日見てたが、ユキナはお前がいないと話していない、動いていない。お前がいて初めて言葉を交わしているんだ。分かってるだろ、ユキナがお前に依存し始めてる事くらい」
「.....仮にそうだとしてどうすればいい。見捨てろって言うのか、ユキナを。名前までつけてしまって、居場所を用意すると約束したのに」
俺は、そんなことできない。
してしまったら、自分が保てなくなるから。
というかリムルは俺に何が言いたい。
どうして欲しいいんだ。
そもそもユキナは俺の管轄だと前に言って.....!
「そんな攻撃的になるなって。俺は喧嘩したいわけじゃないぞ」
「........悪い、少し血がのぼった」
「あぁ大丈夫だ。そもそもこんな状況なんだ。そうなるのも無理はない。.....で、だ。お前多分ユキナを支えることと全部を背負うことを一緒にしてないか?」
「......なんか違うのか?」
「そこからかぁ......」
なんで呆れるんだ、おい。
「.....あのな、いまどき恋人同士でもそこまではしてないぞ、俺はいたこと無いから分からないけど。支え合ってこその関係だ。友達でも、主従でも、恋人でもなんでも50;50だろ。お前からしてみれば護衛ってことで50;50だろうが、ぶっちゃけナギサのが強いし意味ないだろ」
「....そこまで言うのは良くないだろ...」
戦闘に関しては若干そう思ってたけど。 言い方ってもんが.....。
「だからな、ナギサ。お前はユキナを頼れるようになれよ」
「.....はぁ?」
「今は小さい村だけど、発展したら人だって魔物だって増えるだろ。そのときにお前は俺と並ぶリーダーだ。副官がいないのは寂しいだろ?.......ユキナをそういう風になるようにしろってことだよ」
「......教育的な?」
どういうことですか.....。
「んー言い方が悪かったな。ユキナに仕事を任して、協力できるような関係になれってのが近いかもしれない。ユキナが依存じゃなくて、信頼でお前の側にいてくれるようになるのはそういうことだと思う。で、だ。ぶっちゃけ依存になりかねないのはお前の優しさのせいだ」
「......俺?」
「さっきも言ったろ、お前はやり過ぎなんだよ。そりゃ俺からしてみれば頼もしいし、ランガたちもリグルドたちもお前を信頼してる。強いし、面倒見もいい。他に頼れるやつがいる俺達でさえこう思ってるんだ。頼れるやつがお前しかいないユキナがどうなるかなんて分かるだろ」
はは......それって。
「全部俺のせいかよ......」
俺は、本当に.....。
「だから違うっつってんだろ。なんで悲観的になるんだお前は」
しょうがないだろ。俺のせいでそうなりかねないっていうのは心に来るぞ。
自分が守ろうと決めたのに、自分のせいで傷つけたときは特に。
「はぁ...あのな。まずはユキナに任せてみろ。成長の機会を奪ってやるなよ、それはあいつのためにもなるし将来のお前のためにもなるから」
.......。
「はは.....なんていうかな。リムルってちゃんと大人だったんだな」
「な、失敬な。これでもゼネコンの社員だったんだぞ、それも部下から結婚するからって相談されるような」
「結婚してないリムルにそれ聞くのかよ.....」
「失礼だな?おい、なぁ、おい」
「彼女もいなかったのか?」
「顔は悪くなかったんだけどな?」
「その言い方だといなかった臭いな」
「ならナギサはいたのかよ!」
「いなかったけど」
「いねぇーじゃねぇか!」
「「ははっ!」」
.......あぁ、リムル。お前はすごいよ。
かっこいいし、良いやつだ、なんで彼女がいなかったのかわからないくらいには。
でも.....だからこそ。
お前と一緒にいて思うんだ。
お前だったらあんなことにはならなかったんじゃないかって。
もっと早くに救えたかもしれないって。
だから俺は.........。
「はははっ。まぁ、分かったわ。ユキナにまかせてみるよリムル。その変わりお前がリーダーやれよ?俺は副官で精一杯だ」
お前には、並べないんじゃないかって、思うんだ。
重いよ!誰だよタグにヤンデレつけたの!過去だけが重くなって全然進まないよ!受験生が書くようなものじゃないよ!
個人的にはリムルは大人であって欲しいです。少し子供っぽいところもあるけど根っこはしっかりした大人というか。こんなナギサみたいな奴に何かを示せる人であると思ってます。
感想&評価お願いします!
全然書いてないけどイフリート戦終わったら、他の視点やる?
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ヒナタのドロドロ感情劇場
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リムルから見たナギサ
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日向と凪沙の昔話
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黙って続き書けや