「...........」
時刻は昼間。本来であればというか、実際太陽はさんさんと輝き大地を照らしている。しかし、それは温かさを俺達にもたらしてはくれなかった。
「アレク.......なぁ、分かるよな、な?」
「いっ、嫌だ....というかナギサさんのせいでしょ、ねぇ。なんで人に押し付けようとするんですか。というかアレはナギサさん以外じゃ無理ですって。朝もそうでしたけど、ボクになにができると?」
「.............ナギサ殿」
冷気とともに発せられる刃の如き鋭い言葉。周囲の人々も
「あれ今日なんか寒くね?」「わかるわ。でも今日鉱山だったから助かったかも」なんて言っているのが聞こえる。残念なことに鉱山に行ったらこの寒さは感じられないぞ。
「あっじゃあボクはお先に。後はナギサさんたちでヨロシクどうぞ」
なんて薄情。俺が現実逃避がてら周囲に意識を向けている間にアレクはそそくさと去っていった。やめてくれよお前がいなくなると迷子になるんだから。
「ナギサ殿」
二度目の声掛け。背後にいるであろう彼女の声に震えが止まらない。寒いからか、怖いからか。思い出せばなんか日向からも結構な頻度でこういう空気を向けられていたりしたな....。
「ナギサ殿」
「..............はい」
ここまで目を背けていたが、もうそういうわけにはいかないようだ。ゆっくりと、冷気の出処に目を向ける。
そこにいたのは......。
「......なんでしょうか、ユキナ....さん」
「はい。ナギサ殿の''護衛''、ユキナですよ。ナギサ殿」
案の定、朝から激おこぷんぷん丸な白氷狼こと、ユキナであった。
◆
俺は路地に連れ込まれた。生きて帰ってこれないかもしれない。短い吸血鬼生でした、来世は人間が良いです。
「なにに怯えているかは分かりませんが.......私は''もう''怒ってはいませんよ.....朝ほどは、という枕言葉が付きますが。それに、敬語はいりません。いつも通りユキナとお呼びください、ナギサ殿?」
バリ怒ってますやん。どげんしたとね?全部俺が悪いに決まってんだろ。理由なんて明白すぎる。三分かからず推理は終わる。
「........ユキナ。その、今朝というか昨夜の件は......本当にごめん」
「なにがですか?なににナギサ殿は申し訳ないと思っているのですか?」
おぅ。なんか前世で聞いたことあんなおい。いや、あれは完全に俺が悪いわけじゃないのに謝ったから言われたんだっけな....と半ば現実逃避でそんなこと考える。
.....なに、か。ここで違うこと言うとアカンのよなぁ....。だが、さすがにこれしかないはずだ。頼む、これであってくれ。
「....俺が、部屋から勝手に出てリムルのところに向かったこと....です」
語尾が敬語になったのは俺を見るユキナの視線が「こいつなんもわかってねぇな」というモノに変わったからだ。
俺は死んだ。来世は人間。前世に帰りたいです。こっちの立場で言うのもアレだけど、何が駄目だったんでしょうか....。
ユキナは、ふぅ。と息を一つ吐き、こちらを静かに見据えた。
「あのですね」
「はい」
すいませんでした。
「......あのですね、ナギサ殿。私は今、怒ってはいません。ただ私は....私だって」
彼女はここで言葉を切った。視線を俺に合わせ、静かに、静かにゆっくりと口を動かす。
「......寂しいんですよ」
ゑ?
.........ゑ?
「昨夜だって私を置いてスライムのもとへ一人で、たった一人で行きました。
なぜそうなる。というかエルフつってもアレクだし、多分ユキナと話す時間のが長いぞ。
「...分かっていなさそうな顔ですね」
「.....えぇ?いや、言い訳をするつもりでは無いんだけど。ユキナはリムルと顔合わせるのは、まぁ....むずかしいじゃん。エルフ、まぁアレクは...アレだ。友達だし、喋るのは当然だ。というか別にユキナを輪から外すなんてことはしてない......よ」
あっちがどう思ってるかは知らんけど俺はそう思ってるから。違うって言われたら号泣する。
語尾を伸ばしたのは俺自身そう思っていてもユキナがそう想っているわけではないと分かっているから。ユキナがそう思っていたらこんなことにはなってない。
「......そういうことではありません」
どういうことなんだ....俺が悪いことは分かってるけど。なんか、こう....どういうことだ。
「.....護衛」
ぽつりとユキナがこぼす。
「護衛....なんですよ?」
正直だからなんなんだという感想しか湧いてこない。
護衛だからと言って好き勝手に連れ回して良いわけではないだろうに。いや、悪いとは思ってるけどね?
「....正直ユキナが言ってることの意味をあんまり理解できてない。だからと言ってこのままにはしたくない....だからユキナは俺にどうしてほしい?」
まぁ、これが俺にできる最大の答えだと思う。自分が思う最善よりもユキナのしてほしいことを俺が言われて実行するのが、一番良い。
俺はユキナじゃないし、ユキナも俺じゃないし。言ってくれたら改善はする...内容にもよるけど。
そんな俺の発言を聞いたユキナは、少し悩んだ様子だったがまたすぐに口を開いた。
「......置いていかないでください」
「分かった。.....でも、行きたくないところもあるだろ?そういうときは.....」
「それでもいいです。私は護衛、ですから。いつ何時もお側にあるのが護衛ですので」
「......そうか」
護衛ってなに?そう思う路地裏での出来事であった。
◆
「ナギサさんも飽きませんね。そういうのって楽しいんですか?」
「俺が好きであんなことにしてると思ってるの?」
「正直そういう趣味かと思ってました」
「....ナギサ殿。凍らせても?」
「やめとくれやす」
ざけんなやすっぞこら。
そういう言葉が喉から出かけるがグッと我慢する。言った瞬間ユキナがガチでヤリに行く気配を感じたからである。護衛というものの恐ろしさを俺は舐めていたのかもしれない。
「今命の危機を感じた気がします......チョットナギササンドウナッテルンデスカアッカシテマスヨ」
耳元でコショコショ喋るのやめて。結構くすぐったいから。
「まぁまぁ、というか俺達が今から行くのってどこよ。鍛冶屋とは聞いてるんだけど......ユキナ、なんか話言ってたっけ?」
俺よりも真面目に話を聞いているであろう確率が高いユキナに聞いてみる。先程の感情の高ぶりは落ち着いているようで何よりだ。
「いえ、私も詳しくは..」
なら話はされてないな、そうに決まってる。
「ボクは言ったんですけどね..。まぁ大したことではないんですけど」
大したこと無いなら大丈夫だ、そうに決まってる。
「というか行こう!ってなったのがナギサさんがドワーフの職人を探してるって言ったからなんですけどね」
アレクの愚痴のような一言は俺に微塵もダメージを与えなかった。
◆
「ここです。ここ」
アレクが案内してくれたのは、外見でわかるこじんまりとした''いかにも''な鍛冶屋だ。オデこういうの好き。
「ここはカイジンさんっていう腕利きの親父さんが営む鍛冶屋です。姉の職場の常連さんでもあるので、今回紹介しようと思いました。」
「ほーん?失礼だけど腕利きの割に店は小さいんだな。こういうのって腕が良い人ほど大きな店を構えるもんだと思ってたけど」
以外と異世界ではそうでは無いのかもしれない。雰囲気を大切にするということか、なんと素晴らしい文化。ロボは大きければ大きいほど良いが、小さく完成された機体もまた良き、そういうことか。
「いえ、単純にカイジンさんの経歴がちょっと特殊ってだけです」
「なんか世知辛いな....」
異世界も所詮異世界。雰囲気?そんなものより大切なものがあったみたいだ。若干悲しい。
「ナギサ殿、立ち話もアレなのでお店に入られては?本題のほうが長くなりそうですし」
「確かに」
ということでレッツ入店。すいませーん!うちの村で働いてくれませんかー!給料はなんとスライムが全部出してくれまーす!
「カチコミ申す....たのもー!!」
「なんですか?ソレ」
アレクからツッコミを受けつつ木製のドアをガチャっと一捻り。ドアノブがあるって文明レベル高くないか?俺は訝しんだ。中へと視線をやり、ぐるっと一回転。うーんファンタスティック。
「ほへーここが鍛冶屋かぁ―――ってゴブタ?」
「あれ?ナギサ様じゃないっすか!?どうしてこんなところにいるんすか?」
なんと店の中にはゴブタがいた。君、リムルと一緒に留置場にいなかった?それにそれはこっちのセリフなんだが。
「おー。なんだ客かと思ったけどお前さんあのスライムの知り合いかい?」
渋いドワーフのおっちゃんから話しかけられた。あなたは誰ですか?というかスライムってことはリムルも来てんのね....ここ。あれ、ってことは。
「ユキナ、ここリムルいるらしいけど大丈夫か?」
「大丈夫です。先も言いましたが、私はナギサ殿の護衛なので」
「えっあのスライムいるんですか!?帰りましょう、また狼になられて叫ばれても困ります」
なんでアレクが嫌がるんだよ。お前に聞いたわけじゃないYO!連れてきてくれたのお前だろ、変えられても困る...ということでアレクの首根っこを捕まえてお店の中に再入店。
「おお戻ってきた....って、アレクじゃねぇか!?なんで首根っこ掴まれてんだ!?」
アレクお前やっぱり顔広いな。なんかかっこいいやんけ。
「お久しぶりですカイジンさん。いつも店でお世話になっています。また来てくださいね」
お店の常連さんって話だったけど、こんな渋いおっちゃんもアソコ行くのか。異世界感なんて無いな。
「あぁ今の仕事が落ち着いたらいつでも...ってわけにはいかねぇがな、また今度だ。で、兄ちゃんは...冒険者か?悪いけどいま新しい仕事は抱えらんなくてな、悪いけど今日は店じまいだ」
「いやカイジンさん。別に仕事の依頼ってわけじゃなくて....すいませんけどこのゴブタと一緒にスライム来てませんか?なんか喋ってる変なスライムなんですけど」
我ながら説明しといてひどいなと気づいた。変なスライムってなんだ....まぁ変なスライムか。
「あぁ来てるぜ....なんなら俺の代わりに仕事してくれてるくらいだ」
「は?」
なにがなんでそうしていつどこでそうなった。俺がいない間に何があったってんだコンチクショー!
「...すまんゴブタ説明してもらってもいいか?」
「ハイっす!気づいたらこうなっていたっす!」
.......沈黙が部屋に落ちる。ユキナもアレクもカイジンさんも、先程まで気付かなかったが奥の方にいた三人のドワーフの人たちの間に。
「なぁカイジンさん」
「みなまで言うなよ。スライムの仲間なんだろ?きっちり説明してやるさ....なんか、大変なんだな」
俺達は心の何処かで通じ合っていたのだと思う。
俺だったらこんな護衛速攻クビにするけどね?あとオリキャラ出したの不味かったな。後々のためだけどいかんせんキャラが多い。
評価とお気に入り!感想?どしどしください!テスト終わったらしっかり返信するんで!ヤル気をください!(乞食)
全然書いてないけどイフリート戦終わったら、他の視点やる?
-
ヒナタのドロドロ感情劇場
-
リムルから見たナギサ
-
日向と凪沙の昔話
-
黙って続き書けや