「....なるほど。ベスター大臣から確実に達成できないような量の仕事をやるように手配されてしまい、ミルド、ドルド、ガルムのドワーフ三兄弟に鉱石の採集を頼むも怪我をしたと報告が。気が気でなかったがそのスライム...リムル回復薬のおかげで無事に復帰。カイジンさんの弟であるカイドウさんの紹介で鍛冶屋を探していたリムルがこの店に来店。話を伺った後、リムルがその仕事を行う代わりにしっかり仕事が終わったらカイジンさんドワーフ三兄弟の皆さんは村に来てもらう約束をした、と....なかなかな話ですね」
「要約助かる」
『否 ワタシでも行えたことです』
実際やってくれたのはアレクだろうがよ。
というかリムルは留置場から出られたんだな。良かった良かった。一生出てこれんってなったら襲撃かけてたかもしれないからな。
「で、兄ちゃんも来てくれたのはありがたいんだが、話の通り工房は3日間スライムに貸しちまってる。申し訳ないが仕事はできいぞ」
話聞いてて思ったけど3日間部屋の中見ないでって鶴の恩返しみたいだな。中で自身の羽で織物してるんだっけか?粘液でびちゃびちゃの剣ができるかもな。
「いやおっちゃ..カイジンさん。リムルのほうをやってくれていて助かってるんだ。そんなこと言わなくて良い。でもな...3日間か。どうしようか、ユキナ」
「そうですね...3日間はさすがに待てません。それにドワーフ王国の外に待機してる者も数名います。一度彼らに事情を話して、村に帰るのはいかがでしょうか?」
「うおっ喋った!?」
おっちゃんがびっくりしてる。俺も最初はびっくりしたから大丈夫だ、それが正しい反応だ。
「うーん、でもな、帰るのもなぁ....。ゴブタ、お前だけ外に出てあいつらに連絡を..って寝てるし」
なんで?オマエさっきまで起きてたじゃん。何があったのこの時間に。
「というか大丈夫なんですかカイジンさん。このスライムに仕事なんか任せちゃって。国からの大切なやつなんでしょう?失敗すればどうなるか分かりませんよ....まぁそもそもこの量をたった一人に任せるのもどうかと思いますが」
「.....まぁ、結局もう俺だけでできるような時間も無いからな。もともと出来ない仕事だったんだ、可能性がある方にかけてみたってだけよ」
アレクとおっちゃんが話している。俺もさすがに一週間足らずで剣20本.....いやおっちゃんが一本作ってたか。それでも19本あるからな、さすがに無理だと思う、が。リムルならまぁなんとかなるだろ。
実際材料の魔鋼もアイツが出してるからな。洞窟探索の功績だろうか。ま、ここはおっちゃんの心配を少しくらいは取り除いてみるか。いい人そうだし。
「あんま心配しなくてもいいと思うぞ?アイツ....リムルはチートもチートのヤバいスライムだ。3日も経たずに完成して、今頃どうやって出て行っていいかわからなくなってたりしてな」
「はは、兄ちゃん良いやつだな。仲間を信用してるのか、そういうのは大切にしろよ?まぁスライムを仲間ってのも変な話だが」
「それに関しては俺も吸血鬼だからなぁ」
「えっ兄ちゃん吸血鬼なのか!?魔人!?それも高位のやつじゃねぇか!?」
アンタもその反応するんか。というか吸血鬼ってマジでどんなのなんだよ....。なんて思っていた時だった。
「あ、ナギサじゃん」
「よっ」
リムルが出てきた。あっさり、ぱっさり、何の脈絡もなく。
「おい、どうしたのか?なんかあったか?」
「足りない材料でもあったのか?」
「.....それとも無理だったか?」
「重責に耐えられなくなりましたか?」
上から3ドワーフ1エルフ。
こっそり
(やっぱ出にくかったんだろ)
と1吸血鬼。というかアレクやっぱ口悪くね?まぁ並んでるときに突然叫んだやつがいたら俺もそうなるかもな。初対面で印象は八割だか決まるからな。あれ七割だっけ?知らんけど。
話を戻して。
「う、うむ。いや、実はな....」
ともったいぶって1スライム。
人が悪いなコイツ。ニヤニヤしてるのわかってんぞ。
そして結局、リムルはドワーフとエルフの緊張が高まった瞬間、その緊張を真正面から叩き潰した。
「.......な〜んてな!実は、もうできちゃった!」
「「「「..........................はぁぁぁぁぁぁ!?」」」」
リムルができたことを告げると見事に吸血鬼と沈黙していた狼以外の皆の声がハモったのだった。
ちなみに、ハモりの前に。
(ナギサ正解。なんで分かった?)
(俺の勘だ(・ิω・ิ))
(念話で絵文字が!?)
という会話があったとかなかったとか。
◆
「「「「「かんぱーーーーーーーーーーーーーい!!!!!」」」」
「あっアレク枝豆とって」
「.....モムモムモム.....グシャグシャドカバキ」
「狼さんはなんでそんな音が口から!?....はい枝豆ですね、どうぞ。あ、これお水です」
「助かる....フィルさんちょっと離れてくれます?暑いのに寒いんです」
「やーよ食べさせられないんだから。ほら、あーん♫」
「さっ寒い.....姉さん早くナギサさんから離れて...くだ、さい」
「アレクぅぅっぅぅぅぅ!?!?」
俺達は当然の如く店の端を確保し、なぜかいるフィルさんからの戯れを受けながらご飯を食べている。正面にアレク。右隣にユキナ。左隣にフィルさん。なお右隣を見ることは可能ではない。
一番寒いであろうフィルさんが....布面積的にね?一番元気にしているのに、男二人は軟弱。目が死んでいる。
そんな俺達と対になるようにワイワイガヤガヤワッショイワッショイソイヤッサしているのがリムルたちのいるテーブルだ。
......あの後、俺達は打ち上げってことでここ、夜の蝶へと来ていた。もともとカイジンさんらの行きつけであったらしいし、俺もユキナもアレクもドワーフ王国での拠点はここだ。当然っちゃ当然。
なんかリムルは
「えぇ?(テンション高め)俺は別に(超うっきうき)行かなくて良いんだよ?(なんかぴょんぴょんしてる)」
とか言っていた。なおユキナが「.....これだから」とか言っていた。寒くはならなかったけど、俺とアレクは心臓を掴まれるよな感覚がした。俺に言うときとは違う悪寒だった。
そんなリムルにドワーフたちは
「リムルの旦那がいなきゃ始まらない!」
「可愛い女の子だっていっぱいいるから!」
「そーそ!若い子から熟女まで!紳士御用達の店なんだよ!」
などと言っていた。なお、ユキナが(以下同文)。
リムルなんかは入った瞬間から
(うっひょー!!めっちゃ綺麗どころが並んでいるではないか!!!うぉーーーーーー耳が、耳が長い!!え、エロフ!いや、エルフだーーーーーー!!!ちょ!やっべーーーー!!!!服、薄ーーーーーーーい!!!あぁ......見えそうで見えない....。なんなの!?《魔力感知》を発動してるのに!!このお姉ちゃんたち、見えそうで見えないラインを死守しておるわ!!く......、挑戦か?俺に対する挑戦なのか!!!!?くそうくそう.........!)
この時点で俺の眼は死んでいた。寒さで右腕がやられ、フィルさんに良いようにされ、死んだアレクを眺めている。この枝豆しょっぺぇな...。
「美味しーい?」
「.....美味しいっす、ハイ」
「やったーーー♪」
「.....さい、ごに。か、あさん。に、あい、た、か」
「グシャグシャバキバキグルッグルッシュアジャシャ」
まさに阿鼻叫喚の様相。ユキナさんはそれアレでしょ?普通のお肉でしょ?グルッシュアジャシャってなに食べてるの?ねぇ。
一方リムルたちのテーブルでは。
「うわーーーーーー可愛い!!」
「ちょっとぉ!!ワタシが先に目ぇつけてたのにぃ!?!?」
(キ、キターーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!俺の体が、ぷよんぷよん!!俺の背中で、ボヨンボヨン!!!ここは楽園ですか?)
こ こ は 地 獄 で す か?
誰かどうにかしろよ!ユキナは俺がどうにかするけどフィルさんどうにかしてくれないと俺もどうにもできねぇんだよ!!!というかリムルちゃんとおじさんしてんな!!!!分かるけども念話は俺に対して繋いでくんなや!独りでやってろ!
アレクはもうパトラッシュ状態だし!!!というか死んでるなコイツ!!!!ときたまフィルさんに声をかける他のお客さんはこうだしよ!!!
「ちょっとぉフィルちゃん!!こっちにも来てよ、おじさんさみしいよ!!」
「は?私がいまなにしてるかわかんないの?この豚」
「はうっ、ご、ご馳走様でしたーーーーー!!!!」
こ こ は 地 獄 で す。
キャラ違いすぎだろ!?温度差で風邪引くわ!文字通り右腕は凍りついてるからな!!!左腕意識しないので精一杯なんだわ!!!!
.......ふぅ。一回、一回落ち着こう。深呼吸してすぅぅぅぅぅ。あっ寒い。なんでこんなに寒いんだ....。理由はわかってるけど。
「私の方見てよ〜」
見たらリムルと同類になりかねないのでできかねます。他のお客さんとこ行ってください。
状況は万事休す。誰もあのアフォをとめることも死んだアレクを復活させることも寒さの根源を止めに行くことも出来ない。
だが、この絶望できな状況で立ち上がったものがいる。
「.......えーと、嫌がってた割には、えらく楽しんでくれているみたいだな?」
ドワーフ鍛冶師のおっちゃんこと、カイジンさんである。さすが、ドワーフ、それも鍛冶師となるとこういうときに頼りになる。できればフィルさんも引き剥がしてくれると助かる。なんかこの人力強くて引き剥がせ無いんだよね。
「え.......?いや、それほどでも?」
そんなこと言ってごまかせるはずもなく。リムルは多数の者から、そんなわけねーだろ楽しんでたじゃん、という視線を向けられていた。俺もガッツリ向けた。
リムルは、
(しょうがないサークルだって今エルフの膝の上に抱っこされてるんだぜ?感動で胸が一杯だよ!!!ああ........亡くなった息子が今生きていれば...今頃感動でおおしゃぎしていただろうに.....)
とか言っていた。文字通り胸で頭がいっぱいになってるからそんなことになるんだろうな。それにおおしゃぎは駄目だろ。
(その失礼な考え聞こえてるからな?というかなんでナギサはソレに耐えられてんだよ?俺がお前くらいの年だったら相棒が臨戦状態になってたぞ?)
(人生経験上の都合で耐性がついた)
(どんな人生経験なんだよ?)
(絶望と嫌悪に塗れた厨二的な人生)
(よりわからなくなったんだけど)
別にわかってもらおうとして言ったわけじゃない!というかリムルお前落ち着いてきたんならフィルさん剥がしてくれよ!耐性にも限度はあるんだぞ!
とか思っていたときとだった。
変な男が声をかけてきた。
「おやおや、カイジン殿ではありませんか!いけませんな、この上品な店に下等な魔物などを連れ込んでは!!」
明らかにリムルを見ていっている。いや、その目的はカイジンさんか?どちらにしろ気分が悪くなる。誰だ?コイツは。
この男が入ってきたことで、周りも一気に静かになった。特にリムルのテーブルが顕著だ。エルフの人たちが嫌そうな顔をしている。それでもよく見ないと分からないレベルだが。
「あーんってして〜♪」
ただ、フィルさんはまるでブレない。俺にあろうことかこの状況であーんを要求してきた。なぜだ、なぜ今。他のエルフさんも、え?って顔してるし、今声をかけてきたほっそりしたドワーフも一瞬、え?って顔になった。
やっぱおかしいよね?俺の感性がおかしいわけじゃないよね?とりあえず一回黙ってもらうために、近くにあったサラダ的なのをつまんで口に入れる。お願いです、一回黙ってくれさい。
「こほん!....おい
俺もそう思う。
「い、いえ。魔物と言いましても、無害そうなスライムですし......」
「はぁ?魔物だろうが!違うのか?スライムは魔物ではないと抜かすのか?というかあの白い狼は大丈夫なのか!?隣の男の腕が凍り始めてるが?」
大丈夫じゃありません。でも、あんたがこの店に入ってきて若干温度は戻ったんです。凍り始めたんじゃなくて、溶け始めたんです。
「.....ナギサ殿、申し訳ありません」
「気にしなくていい。でもここお店だから、本当はもうちょっと早く温度戻してほしかったかも」
「気をつけます」
と、小声でユキナとコミュニケーションをとる。なんかマダムからも心配されてる目を向けられてたし。
一方、耳をすませてリムルたちの会話を聞く。あれはカイジンさんの知り合い...のはずだ。一方的にいちゃもんつけられたのかもしれないが..。
「まずいな.....大臣のベスターだ―――」
カイジンさんの発言を拾う。なるほどというか。明らかにリムルよりパット見強そうなユキナがいるこちらではなく、リムルのいるあちらに絡みに行ったのはそういうことか。カイジンさんが目的というのは正しいみたいだ。
その時だった。
「ふん!魔物にはこれがお似合いよ!!」
あの男――ベスターがリムルに水をかけやがった。
「あ?」
リムルは俺の友達である。その友達に喧嘩を売ったということはそれ即ち俺の喧嘩である。よろしいならば戦争だ。てめぇのその神経質でねちっこそうな顔グチャグチャにしてやるよ。
(落ち着けナギサ。なんでお前がそんなにキレてるんだよ)
(オデあいつ、コロス)
(さてはそんなに怒ってないな?)
さて、それはどうだか。
まぁ大臣みたいだし本気で殺しはしないさ。夜の蝶にはお世話になった、アレクもここに関係あるみたいだし、そんなことはしない。
ただ、またもや立ち上がったものがいた。
「おい.......、黙って聞いていれば、良い気になりやがって!」
音を立ててテーブルを蹴り飛ばし、おっちゃんは立ち上がった。怒髪天という言葉がよく似合う。
「おう、ベスター!!てめー、この俺の客に舐めただけでマネしてくれやがって、覚悟はできているんだろうな?」
(ナギサ、これ駄目だよな?相手大臣だよな?ベスター大臣も顔ひきつってるってことは相当やばいよなコレ?)
(ヤバいだろうけど、こんな状況でも飛び跳ねて感触楽しんでるリムルのがヤバい)
いつどんなときでも楽しもうという気概を感じる。お前のために怒ってくれてるカイジンさんの気持ち考えろよ。
「き、貴様。このワシに対して、そのような口を.........!!」
こりゃあ怒ですね。でもカイジンさんが怒っている方がもっと怖い。貫禄と言うか胴に入っている。年季の違いかね?
「お前そろそろ黙らんかい!!」
そう言って躊躇うことなく放たれた渾身の右ストレートがベスター大臣の顔面を撃ち抜いた。しっかり腰まで入れた美しい軌道。俺じゃなきゃ見逃しちゃうね。
「リムルの旦那。腕の良い職人を探していたよな?俺じゃ不足かい?」
おーまさかのカイジンさんがリムルを選んだ。ドワーフ王国はどうしたドワーフ王国は。まぁ、大臣殴って残れるような気はしないけど。
「.....ひえ、あのスライムなにしてんですか?」
「あ、起きた。おはよー」
「おはようじゃなくて!アレ、ベスター大臣ですよね!?ドワーフ王国有数の貴族ですよ!?どうなるか分からない、下手したら死罪だって」
「それは俺がどうにかするから大丈夫だ」
「どうにかって....」
隠密行動マジ便利。ヴェルドラとかの規格外、ユキナのような《直感》系のスキルを持っていないと分からないのだから。最悪投獄されたところを攫いに行くさ。
「その言葉、待っていたぞ!こちらこそ宜しく頼む、カイジン!!」
アレクと話していた間にリムルもリムルでカイジンさんと話をつけたようだ。というか話をつけたというより、言葉なんか必要ないよね?でゴリ押しした感じだ。
まぁカイジンさんが来てくれるというのならありがたい話だろう。話を聞く限りすごい人だし。
頷きあう二人をみながら俺はそう思った。
しかしまぁ、アレクの言う通りヤバいだろうな。こっからどうするんだ?
なんとなく嫌な予感がすぎる今日であった。
全然書いてないけどイフリート戦終わったら、他の視点やる?
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ヒナタのドロドロ感情劇場
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リムルから見たナギサ
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日向と凪沙の昔話
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黙って続き書けや