日向ヒロインもの増えろ(願望)
坂口日向のなんでもない日常
「ダイヤモンドとネザライトって現実だとどっちが硬いの?」
なんてことはない、いつもどおり凪咲の部屋での会話だ。私が本を読んでいるのにも関わらず、関係ないことを聞いてくる、その無駄な行動力だけは本当に大したものだと思う。
「なんで私がそれを知っていると思ったのか疑問だわ」
「確実に俺よりものを知っているから」
「....ネザライトの方は現実には存在しないわ。空想上の鉱石よ」
実際は知らなかったのだが、答えられないのも癪なのでスマホでしっかりと調べる。ゲームの中に出てくるものの名前らしい。
「知ってんじゃん」
どこかすねたような声色で訴えかけてくる私の幼馴染。いつ見ても子供っぽい一面があるのが謎だ。もう高校生だというのに。
「今スマホ取り出したの見えてないわけ?」
「俺がベッドに顔埋めて無かったら見えてたかもな」
「....ホンっと馬鹿らしい」
ついさっきまで画面とにらめっこしていた幼馴染....ナギはコントローラーを投げ出して、背もたれにしていたベッドに顔を埋めてしまった。
そんな彼を同じベッドに座って見下ろすのは私....坂口日向。つい昨日もこんな光景を見た....よく飽きないものだ。何がそんなに楽しいのか。
ゲーム、マンガ、動画。それらに勤しむナギを眺めるのだって、毎日続ければ飽きてくる..おそらくもう半年は経っているから、あと半年くらいが限界かもしれない。
でも半年後も同じことを言っているような気も少しはする。
「また馬鹿とか言いやがって。馬鹿とか言うやつが馬鹿なんだぞ、このバーカ」
「それだとナギが馬鹿になるわよ...あぁ馬鹿だったものね」
「教えてくれる日向の腕が悪いんじゃ......」
なにか言った?
「すいませんでした」
それでいい。私だって好きで見ているわけではないのだ。
ただ幼馴染が落ちぶれていくのを見ているだけなのは性に合わないし....なにより大人になったときちゃんと自立していてもらわないと将来に不安が残る。
支えられる自信がないわけじゃないが、一人で稼いでくれるようにならないと後々困るだろう。
「というかナギ。宿題終わったの?」
「俺、日向がいないとき勉強してないぞ?」
「なら全然終わってないじゃない......!」
一体何をしていると言うのだ。テストが近いというのに....勉強をあまりせずとも点数は高いとは言え、宿題は多い。
この前叔母さんに怒られたのを忘れたのか。
「早くバッグ取ってきなさい。急いでするわよ」
「へ....?今から.....?いやちょっとダr」
「明菜ちゃんに言うわよ....ナギがこの前クラスの娘から告白されたこと」
「え、いやなんで知って「叔母さんにも」いやーなんか勉強したくなってきたなぁ!?バッグ取ってくるわ!!」
...ほんとチョロい。あ、そうだ。
「久々にナギの作ったパスタが食べたいわね」
「.....腕によりをかけちゃおうかなぁ!?」
....ふん。この前あれだけ私を校門で待たせたんだからそのくらいはしてもらわないとね。まあ、告白は断ったからこのくらいで済ませてやるわ。
それに明菜ちゃんのほうが食いつきそうだし...そうなったら私にも飛び火しそうだから、ね。
◆
「ふぅ...我ながら会心の出来だった」
今日の晩御飯はシンプルなナポリタン。ナギはこういう麺料理が好きなのか時折作っている...私をラーメンに連れて行くくらいだし。
そんなナギのレパートリーの中でもかなり美味しかった。
「ごちそうさまでした....次はカルボナーラとかどうかしら?あれも美味しかったからまた食べたいわ」
「へいへいお粗末さん......え?俺また作るの?六人分作ってもう飽きたんだけど」
「....告白されたこt」
「把握した」
「チョロ...」
「口に出てんぞ」
「出してんのよ」
そう返した瞬間ナギはぐってりと椅子に沈み込んだ。今日は二人だけだが明菜ちゃんがいたらしっかり是正されている姿勢だ。
....まぁ、二人きりだし、今日くらいは良いだろう。明菜ちゃんには甘やかしすぎだと言われそうだが。
「くそぅ.....妹には馬鹿にされるし幼馴染には若干見下されてる...あ、これ叔母さんのやつ。全体的に柔らかめに作ってるから大丈夫だと思うぞ」
そう言って手渡されるタッパー。半透明の容器の中には、先程食べたナポリタンよりも若干薄い色のものが入っている。
「....ありがと。きっと喜ぶわ」
「いや気にすんなよ。あの人の腕にはまだまだ届かないから....」
そう言ったナギの目は少し遠くなっていた。過去を懐かしむような、悲しむような。かくいう私もそう思うことは少なくないのだが。
....おかあさんの料理を最後に食べたのはいつだろう、最近はずっと自炊かナギのご飯だったから..。まだおかあさんに包丁を持たせられないとは言え...淋しいものだ。
そんな感傷的な気分に浸っていたときだった。
「ん、どうする?泊まってくなら俺の部屋に布団敷いてくるけど」
「....いや、今日はいいわ。帰って洗濯しないといけないから、それにこの前もお世話になっちゃったし、叔母さんにも叔父さんにも申し訳ないわ」
「あの人達は気にしないと思うけど....ま、分かったわ。そろそろ帰るだろ?」
そう言って立ち上がるナギ。書き置きを残し私のバッグを持って声をかけてきた。
「送ってくぜ?」
ニコッと笑いかけてくるナギ。その普段見せない表情に少し....ほんの少しグラっときたが平静を保ち、言葉を投げる。
「ちょっとカッコつけたのが丸分かりよ」
顔立ちは幼馴染の贔屓目で見ても整っているとはいえ、あからさまなドヤ顔はむかつく。しかもニヤニヤが隠せていないのだから尚更だ。やるなら最後まで格好良くしてほしいものだ....まぁ、うん。
そんなところもナギの良いところであるとは思うのだけれど。
「辛辣ぅ〜。.....んじゃ、行こうぜ」
「..ふふ、そうね」
「あ、笑ったな?俺のこと笑ったな?」
「えぇ。あまりにも滑稽で」
「辛辣!」
◆
「だからもう学校行きたくない....辛い。もう俺お布団と結婚する」
「は?」
「行きます!学校行きます!..でもダルいぞ」
「否定はしないけど....せっかく受かったんだから行きなさいよ。明日も迎え行くから」
「俺って良く考えればとんでもないカス野郎....?」
夜の帰り道。街灯のみに照らされた住宅街の暗闇。前はこの瞬間が嫌いだった、隣に誰もいないならなおさら。
でも、こういう帰り道は結構好きだ。世界に二人だけがいるようで何ものにも代えがたい満足感がある。
「そうね、端から見たら私を侍らせているんだものね」
「げっへっへ。もっと近うよれ」
「あら、そう?」
そう言って、ナギが拳一個分だけ空けていた隙間を埋める。その時のナギの顔はなんとも言えなかった。
「ゑ?」
「近くに来てほしかったんでしょ?」
「げっへっへ。もっと離れんかい」
「気持ち悪いわよ」
「なにが違うんだよ」
本当に困惑しているナギ。少しの意趣返しであり、少しの意思表示でもある。淋しいのは本当なのだから。
「....いやちょっと暑いから離れt」
「告白のこと叔父さんにも言うわよ」
「お前ソレでゴリ押せると思ったら大正解だからな?..待たせたとは言え根に持ちすぎじゃない?..俺も日向が告られた時盛大にいじってやるからな。覚えとけよ」
「ならその心配は無いわね。私、男とあまり関わりがないもの」
正直クラスの男子とはまともに喋ったことはない。ナギ一人でどうにかなるし、なにより他の男と話しているのなんて見られたくない。
「俺は女性だった.....?」
「ナギは例外よ」
「やったぜ」
はぁ?ナギが女?..そんなわけないでしょうに。うん、でもナギが女でも男でも関係なかったのは事実なのだけれど。
……まあ、将来のことまで考えるなら、男女でよかったと思う部分もある。まだ日本では同性では認められてないしね。
「...よっし、着いたわ。ほれ、荷物」
「あら、ご苦労さま。ありがとうね....うち、寄ってく?」
「もう10時なんだけど」
「関係ないわよ?」
「あるんだなこれが。....んじゃ、また明日な」
今日も一緒に登校して、一緒に授業受けて、一緒にお昼ご飯を食べて、一緒に下校して、一緒に勉強して、一緒に晩御飯を食べて。
改めて考えると一緒に、ばかりだ。
だけれど、こんなに一緒にいるのに淋しいなんて我ながらどうしようもない。でも.....。
「えぇ。私が来たときには起きてなさいよ?」
「若干の棘あるよね?」
明日が、ある。きっと明後日も明々後日もその次も。
「ふふっ....うん。ありがと、ナギ」
「....なんか変なもの食べた?」
「生憎、アナタの作ったものしか今日は食べてないわよ」
こんな感じで.....少し、残念に思うこともある。けれど、それすらも私は大切なものだと思っている。
「ごめんて....んじゃ、おやすみ〜」
そう言って背中を向けて歩き出すナギを、背中が見えなくなるまで見送る。これが私のルーティンだ。
「えぇ。おやすみ。....また明日ね」
きっと聞こえていないだろう。
それでも、言う。
また明日も、ナギに会うために。
時期で言えば転生するちょっと前。
ヤンヤンデレデレ…何がとは言わんけど誰がいい?(シュナ、ユキナ、ヒナタは確定)作者が票と書きやすさで選びます
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早書いてからアンケートとれや!続きくれ