一応、調べながら書いたのですが、至らぬところがあればご指摘ください。
『歓迎いたします。我らが
頭痛がする。脳天を幾つもの針で突き刺されているような、ジンジンとした痛みだ。何か、聞こえた気がするが耳を音が通り抜ける度により頭を抱えたくなる。
『学園運営システムA.T.H.O.S.です。陛下の学園経営を補佐する神秘です。早速ですが、学園の方向性を策定してください』
目を見開くと布で覆われている。黒い布で、後頭部で蝶々結びになるように縛られている。この布以外にも何かが、目にめり込んでいるが不思議と痛みは感じない。
「……ってぇ、うるせぇんだよ」
喉から出た音はかつて自分の知っているソレではなかった。小鳥のさえずりのように何度も聞きたくなる甲高い声。まるで、女児が話しているような……
「あー、あー、あー」
やっぱり、自分の声だ。試しに髪の毛を触るとやわらくて、何より長い。今、椅子に座っているみたいだが、腰辺りまでありそうだ。
「……悪い冗談か?」
思わず、親指と人差し指で頬をつねってみるが痛みがある。
「ってぇ……マジみたいだな。女になっちまってる」
『学園の方向性を策定してください』
再び、脳内に声が響き渡る。このアトスとやらは逃がす気がないらしい。何かの強制力が働いているのか、自然と思考が声を気にするように注意をなら、まずこちらから聞くまでだ。
「俺は今どうなってる」
『陛下は現在、今の本名は
『後、スリーサイズの情報ですが』の所で、「うるさい」と黙らせた。そもそも知らない場所に、知らない体。これ以上、かつて男であったことを思い返すと惨めになる。
だって、今は要はロリっ子ってわけだ。目は見えないが……わりに何があるかはアトス経由で見ることが出来る。
さながら、歴史の資料集に載ってそうな見事なドーム状の建造物。この玉座を見る限りは教会というよりは宮殿みたいだが、所々に聖画が飾ってあるところを見るに宗教色が強い。
「……んで、ここは何処だ」
『お答えします。ミステリオン公立学園、名もなき神々の時代が終わり生徒の時代へと移り変わった際に設立された多くの学校の一つです。陛下の知識を拝借すれば、ここは将来的にはゲヘナ及びトリニティ、そしてミレニアムに三校に挟まれる地点に位置しております。』
唾が喉に引っ掛かって、咳き込む。咄嗟に右手で口元を抑え、半ば溺れかけそうな声で問いかける。
「ここはキヴォトスなのか?」
『肯定します。ここは学園都市キヴォトス、幾千もの学園が存在する。陛下にとってはゲームの世界でしたね』
開いた口が閉じることはない。何か声が聞こえたと思ったら、ここに居た。それも、陛下という名称からわかるようにどう考えても上流階級だ。
『しかし、ここは
ようやくここで、アトスの声がまるで機械のように平坦で機械的であることに改めて気がつく。変に逆らっても、こうして拉致られている以上はどうしようもない。後は野となれ山となれだ。
「……で、策定とやらは何をすれば良いんだ?」
『学園の統治体制、学校形態です。生徒会に限っては
本来ならば全日制とか、定時制とかなんだろうが……統治のことを考えると、いやキヴォトスの治安を考慮すれば、この方が良いな。
「統治体制は会長独裁、全学公会はあくまでも諮問機関としておく。学校形態は全日制にしたいが……ここは定時制にしよう。朝 • 昼 • 夜の三部で分けて、卒業年次を四年にして遅らせる。……部活動は学校の公的な部活動以外はすべて違法だ、違法。管理下に置くことで、暴走しないように留めておく。嗚呼、それと全寮制にする。」
周りが三大校なら、美食研究会みたいなのがうちから出て報復や弁償に追われる可能性を限りなく、ゼロにしたい。非公認の部活動がやらかせば、そいつらは我が校でも犯罪者ですという顔が出来るッッ。
『承知しました。ミステリオン公立学園の設立に関して、周囲住民及び有力者から得ている全学公会からの全権委任状に基づき、提示された策定案を採用します。おめでとうございます、これにより使徒継承が有効になりました』
やや冷たい玉座に腰をすえて、深くため息をつく間もなく、引っ掛かる。使徒継承ってなんだ。
『使徒継承とは、生徒会長から生徒会長へと意識を引き継ぐ太古の教義……神性とも言えますね。嗚呼、これはミステリオンが継承する秘跡ですので、世襲でなく、襲名であっても学校が健在な間は成立します。卒業時に引き継がれ、前陛下だった生徒はミステリオンで過ごして卒業したという記憶以外残りません。つまり、陛下はミステリオンの廃校と同時に事実上、死と定義される状態になります』
そんな身勝手な!気がつけば、そう立ち上がって。思わず、よろめく。勝手にこの体に入れられて、第四の壁の外側から適当に眺めていたに過ぎない。それが、今や聞いたこともない学園のトップ。先生にとってモブ学園ですらない、この学園が廃校になれば自分が死ぬなど受け入れがたい。湧き上がる怒りをこの小さな体が受け止めきれないのか、震えが止まらない。
悪い大人、それこそゲマトリアなどに目を付けられれば設立したてのこの学園はアリウスと同じ目に遭う可能性だって否定しきれない。三大校にパイ分けのように分割されても、カイザーに乗っ取られても。いずれにしても、死ぬ。アトスや使徒継承の時点で厄ネタだ。
「……ちくしょう」
拳が白く染まるまで強く握りしめて、やがて脱力する。もうどうしようもないという諦めが全身を這うように広がっていき、体を投げ飛ばすように再び玉座に座った。ちょっと痛い。
『陛下、そろそろこの謁見の間に臣下の方々が来られます。男口調は特徴的な話し方ではありますが、統治者に適切であるとは言えません。ですので、口調を改めた方が宜しいかと具申します』
「うるさいな」
アトスの言う通り、大きな門を隔てて規則正しい複数の足音が木霊する。規則正しく、三度ノックされて「入れ」と言うとモシンナガンで装備した集団と一人の貴族らしい服装に身を包んだ生徒が入ってくる。一人一人身長が高いからこそ、萎縮しそうになるが背もたれに背を預けることでなんとか誤魔化す。すると、貴族服の生徒が何かを恐れるように声を上げた。
「陛下、お休みのところ大変失礼します。しかし、緊急の事案が生じたためこうしてご報告に参った次第です。」
「許す。要件を話せ」
そう言うとははぁと深く平伏して、語りだす。周囲の武装した生徒は向かい合うように列になって、入口を警備している。
「陛下の勅令は無事、全学公会にて承認されました。助言出来る立場を与えてくださったこと感謝致します。また、入口で控えている
びっくりした。最初からクーデターとかだったら詰んでた。というかこのあたかもギリシャ人ですっていう風貌のこの貴族を見ると、今更だがもしかしてこの学園のモデルってビザンツ帝国では……
「……しかし、恐れ多くも申しますと陛下の全寮制に反対する全学公会の議員が一部、特に不動産に関わっている者が多くを占めております」
『陛下、ここで『粛清』することを選択することが出来ます。そうして、その不動産が有する土地を接収して寮を作ることで生徒数の向上を促すことができます』
物騒なことを提案してくるアトスだが、一理ある。独裁体制であることが既に承認されている以上、先生に事情を話して助けてもらうまでキヴォトスを生き残るぞ作戦に不備があってはならない。
「……なら、解任する。建設的な異議ならまだしも、己の利権を守るための異議などこの学園にとって毒に他ならない。その不動産を接収し、該当議員は学区から追放とする。接収した不動産は寮とするように」
「……」
「聞こえなかったのか?」
「ひぃ!いいえ、確かに。陛下の言う通りでございます!直ちに、捕縛の指示を全学公会へ伝えてきます!」
途中で何度か転けそうになりながら慌てふためいて去っていく、議員を布越しに眺めて。ため息をつく。近衛隊は再び門を閉じて、その隙間が完全になくなったのを見て、呟く。
「……まるで、俺が悪者みたいじゃないか」
まぁ、最終的に先生に手紙を送ればなんとかなる話だ。そうだ、今こそ書くべきじゃないか。シャーレの先生へ、設立したての学校なので支援してくださいませんか?とかでも書いて、対面で話さえ出来ればこの状況は改善される。三大校の間に存在するモブ学園の後ろ盾にシャーレがなってくれれば、自分の生存を確立出来る。
「アトス、シャーレに手紙を出す。紙とペンの用意を頼む」
『僭越ながら陛下、現在は羊皮紙と羽根ペンしか用意出来ません。記憶を拝借して、見させていただきましたがその先生へ手紙を送るのは現在では不可能です。』
なんだ、通信状況が悪いのか。それともエデン条約で撃たれた直後なのか。それとも、別の理由があるのか。
『はい、現在は先生の来訪まで2001年前です。いわば、先生紀元前2001年といったところです。』
今、なんて。面倒ごとを先生に押し付けて、のんびり生徒会長出来る訳じゃないのか。
『つまり、手紙を送ることができるまで後2000年以上この学園を存続させなければなりません。』
「…………は?何故、最初に言わなかった?」
『言いましたよ。名もなき神々の時代が終わり生徒の時代へと移り変わった際に設立された多くの学校の一つです、と。今は生徒の時代が始まった
あまりにもショックで、思わず体から力が抜けていく。どうやら、この体はストレスには弱いらしい。胃薬がほしいなぁ。そう願って意識が黒に染まった。
『陛下の昏睡を確認しました。記憶の参照を行い、次の政策の案を検討します。パテル分校の動向に注視しなければなりません。』
『学園運営システムA.T.H.O.S.は如何なる可能性を演算し、計測し、推測します。全てはミステリオンの存立の為に』
こういう形式の作品、ブルアカだとあまり見ないなと思わず書いてみました。皆さんに面白いと思って頂けたのなら、感想や評価、ここすきなどをして頂けると幸いです。次話を書く活力にさせて頂きます。