紀元前から始める学園経営   作:イワシコ農相

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『紀元501年~紀元550年』


第十二話「私たちは誰も、何でも出来るわけじゃない」

 518年、養子を迎え入れたことで権力を維持していた氷室朝は後継者を用意できず、機能不全に陥っている万臣殿からも候補が推挙されなかった。そのため、余は近衛隊から陸八魔が推薦されるように仕向け、全学公会にて指名。陸八魔(ユスティナアヌス)朝が成立。西で高まっているユスティナ聖徒会の人気に対抗して、ゲヘナ寛容論を強調した人選であった。ただ、ユスティナ聖徒会に対し対話の門は開かれていると書簡を送るなど、対抗しつつも現実的な路線へと舵を切ることで保険をかけた。でなければ、朝起きたらトリニティが誕生しているとかになりかねない。ユスティナ聖徒会にはミステリオンを意識させなければならない。

 

 525年、余はミステリオン内の秤家による要請を受けてアリウス分校を援助した。アリウス分校は「宗主権からの独立を謀っている」として西ミステリオンのゲヘナ領域にゲヘナ人のための学園を標榜し、成立していたゲヘナ分校へ侵攻。同分校を滅ぼすまで進撃を続け、憎悪に満ちた弾丸が降伏を表明していた生徒会長を撃つまで止まることはなかった。この事件以降、分校間闘争の激しさがより苛烈なものになっていった。余が聞いた話によれば詩人の間で「戦いと憎悪を私は詠う」という詩が広まるほどであったという。無論、ゲヘナ分校の難民はミステリオンにて受け入れることとした。これもまたマッチポンプなのだろう。

 

 また、同年ミステリオンのミレニアム地域にて大洪水の被害が発生。西の地域からミレニアムと改名させ、再建させた。再建の途中で発見された廃墟にてオーパーツの「完全な古代文明のメダル」が発見される。以降、余の命令により、廃墟へのオーパーツ採掘をも目的とした専門の探検隊や学習する研究所が設けられる。ただ、オーパーツが原則として軍事利用の為に用いられ、ミステリオンの保有する兵力の向上が目的とされた。ミレニアムと名付けたのは名前の起源を千年問題から奪うためだ。少なくとも、歴史書はミステリオンが名付けたと記すであろうから。

 

 翌年、ミレニアムで大地震が発生。廃墟の探索が原因として疑われるも、余はオーパーツの回収を継続するように命じ、再度ミステリオンのミレニアム地方の復興へ予算を当てる。

 

 527年、余の卒業を受けて新たに即位した陸八魔ユリ(ユスティニアヌス1世)の命令でミレニアム地方の寮が増設され、同地の本土化が推し進められた。

 

 529年、成績不良者や留年者の為にあった補習室を閉鎖し、そこに居た哲学専攻者を追放する。追放された哲学専攻者たちはユスティナ聖徒会へ亡命し、同組織の庇護を受けたようだ。彼女らがユスティナ聖徒会によってフィリウス分校にて設立された教会に匿われたことは風の噂であるが、本土にも流れてきた。補習課題すらやらないなら、そもそも補習室の意味がないと思っての判断だったが裏目に出てしまった。

 

 同年、527年からミレニアム地方以西の西の諸学園連合(サーサーン朝)の継続的な侵入がより激しさを増していく。

 

 530年、ミステリオンの法の集大成である『ミステリオン法大全』が命じられ、533年に完成する。

 

 532年、ミステリオンにてヘウレーカ(ニカ)の乱が発生。哲学専攻生徒と神学専攻生徒が議論を交わす大議場。哲学専攻を意味する緑のバッジを着けていた者と神学専攻を意味する青のバッジを着けていた者の両者は度々、街中でも激論を交わしたり、銃撃沙汰ヘ発展していたりした。

 

 その日の議題は「金細工職人が金の量を減らして同じ重さの銀を加えた場合、如何なる方法でそれを見破ることが出来るか」であった。余も参加することがあったため、生徒と陛下が直接意見を交わすことが出来る大事な機会でもあった。ただ、余は立場上、青のチーム(神学専攻)へ積極的に助言を行ったりと肩入れしていた。これに対して怒った緑のチームが「エウレカ!」と叫び、使徒の援助を貰っている(神学専攻)は情けないと発見をしたぞと声高らかに侮辱。大議場は大いに荒れ、余は責任転嫁をしようと探し、大議場を監督する万臣殿の元メンバーを解任すると宣言。これは行政の失敗であると印象付ける為であったが、これも裏目に出て他の貴族の煽りを受けてさらに暴徒化。宮殿や全学公会議場などが被害を受け、退位逃亡寸前まで追いこまれるが、実家の助言もあり、武力鎮圧を決定。近衛隊が投入され大量の生徒が検挙、罪の軽いものは奉仕労働に当てられ、罪の重い者は罰金刑に処され、罰金刑を払わぬ者は学区から追放された。騒動が終わった翌日にこの議題の問いを見つけた哲学専攻の生徒はエウレカと叫びながら、銃も持たずに街中を叫びまわったと言う。

 

 この後、本校舎の再建が進められ、巨大な地下貯水池(バシリカ・シスタン)もこの時期に造られる。籠城戦に陥った場合に水不足により、降伏に追い込まれないことが狙いだ。

 

 ミステリオンと西の諸学園連合(サーサーン朝)との間に「永久平和条約」が結ばれ、ミステリオン=西の諸学園連合との学区間が固定化される。

 

 533年、ミステリオンがトリニティ地域にあるネストリウス分校を征服。大きな分校であったことから、征服した際に大きな圧力を他の分校に与えることが出来た。現地に存在したユスティナ聖徒会の施設はすべて接収し、ミステリオン式の施設へと変えられた。

 

 537年、ヘウレーカの乱で損傷した宮殿(ハギア・ソフィア大聖堂)が再建される。

 

 541年、ミステリオン成立以来使われていた十二法典を廃止する。代わりに『ミステリオン法大全』をすべての地域で採用するように命じた。近代化は治世を行う者の義務であるからな。

 

 550年、ミステリオンのミレニアム地方にある廃墟を一般生徒が入れないように余の命により閉鎖させた。あくまでも、探検隊と研究者にのみ進入を許可するという認可制へ移行。一般生徒の無断侵入による負傷などが相次ぎ、廃墟近くに設けられていた診療所がさながら野戦病院のようになったとの報告を受けてのことだ。

 

「それで……少なとも巨大文明の存在は立証されたのね」

 

 献上された古代文明のメダル、考えられる限りは名もなき神々の時代の代物。他にも兵器転用出来るオーパーツが発見できれば、産業革命だって夢じゃない。ゲームの画面で見たあの電池、古代の電池で電気を生み出すことが出来れば動力機関だって夢ではない。なんで、銃がこんな時代に銃があるの?まさに世界の神秘じゃないですかね。と答える必要性もなくなる。フリントロックを簡単に超えて、ボルトアクションから機関銃まである世界の説明に相応しい工場による生産!と出来るのだ。今は神秘を扱う職人たちが剣を造るかのように銃を生産しているが、より効率的に出来る可能性があるんだ。それはミステリオンが滅びないための武力を確実に確保出来る黄金のチケットだ。

 

 廃墟の懸念点とすれば自販機か、アリスと接触する可能性。アリスはロックで守られているはずだから、問題ないが自販機が悟りを得てしまっている場合はミステリオンの太古の教義と相反し、討伐隊を組むしかなくなる。尤も、向こうから先に襲ってきそうなので一旦ヨシとしよう。

 

「……でも、だからってこんなに集まるとは思わないでしょ!!」

 

 白目を浮かべながら、見てしまう。探検隊が危険を承知で集めてきたオーパーツの数々、ゲームで見たものそのままが山となって宮殿の倉庫に収められている。特に古代のロケット君、技術力を増していけばエデン条約を荒らした巡航ミサイルの再現だって夢じゃない。

 

「……ふふ、これは勝ちよ!直ちに伝えなさい。ミステリオン本土に世界記録室(アネクドタ)を新たな学園機関として発足させるわ!」

 

 付き従う陸八魔家の親戚達はまただよと微笑ましい笑みを浮かべているが、この世界記録室はオーパーツだけでなく、まとまった研究を出来るようにするために設けられたもの。決して、その場の勢いで決めたものではない。世界のあらゆる事象を記録し、解明して、それを纏めてミステリオンに益になるように使う。常に頭を使うのがミステリオン生徒の(さが)だ。きっと役に立つに違いない。

 

「これで、公認されている組織は……」

 

 ミステリオン公立学園としての組織は皇帝府(バシレイア)、正直なところ(バシレウス)とその重臣たち、いわゆる生徒会。近衛隊(タグマ)は国内治安と征服事業を担当してる軍と警察を兼ね備えた皇帝府直属の治安維持組織にして暴力装置、ゲヘナの風紀委員会と同じ。あっちも他校を攻めいってたし。全学公会(シノドス)は国家で言うところの国会、立法を担う意志決定機関であるのでもう一つの生徒会と言っても過言ではない。次の万臣殿(パンテオン)は内閣、行政府としてめんどくさい業務をやってくれるはずが四家の規定で現状人数が足りなさすぎて、皇帝府が一部肩代わりしている状態。

 

「で……」

 

 立法も皇帝府の勅令に基づくので、全学公会は立法府でありながら皇帝立法は否定できない。なのでミステリオン法大全の範囲内で3・4年生の中で平民と貴族を問わずに50名の推薦人を得た者を被選挙者とし、学内選挙を行い議員を募り、485名の議員が揃って必要と思われるものを議論して出来た草案に送り、皇帝府の認可を得てようやく公布出来る。また、下部組織として室を有し、室の創設と管理を担う。つい先程、宣言された世界記録室は皇帝の命令であるので、特別に創設された室ではあるが全学公会の下部組織となる。これは連邦生徒会をパクった……じゃなく、意識したためだ。

 

 だが、全学公会から内閣が選出されることはない。なぜなら、過去の会議によって誕生したティーパーティーもどきであるのが万臣殿だからである。分派がない代わりに大貴族家である秤家、百合園家、聖園家、桐藤家が務めている。尚、現状では人員不足に悩まされている。それは構成人員を4つの大貴族に限るとしているからじゃないかと思っても、貴族の意地というものは散々見てきたし、切り捨てるわけにもいかないので現状放置。

 

 しかし、これもやはり皇帝府の承認を得て代表者を立てて運用される。大体秤家の者が代表者を世襲して、残りのポストが均等に三家に割り振られ、人事案が作られ皇帝府に送り、承認を得て就任する。万臣殿が代表者の案を出す→皇帝府に承認される→代表者が人事案を作る→皇帝府に承認される→内閣として活動が出来るというのがわかりやすい流れだろう。基本的には部活動の承認や管理を任せている。

 

 近衛隊は皇帝府直属の軍かつ治安維持組織であり、西ミステリオン時代には万臣殿の現地の部隊が指揮下に置かれたことがあったが、今では皇帝府のみに忠誠を誓っている。 現行犯や正当防衛以外は皇帝府の命令か、全学公会の調査室(クァエストル)からの捜査や逮捕依頼を受けて、動くことが多いが後者に関しては直接命令権は無いため拒否することも出来る。また、独自で調査を行う場合は一度皇帝府に認可を貰う必要がある。特に軍事行動がそうであり、軍人皇帝時代のトラウマが癒えてない証左だ。余だけじゃなく、ミステリオンにとっても暗黒時代に等しい。

 

「……」

 

 万臣殿が生徒に関することの生徒会、全学公会が学園統治に関することの生徒会、近衛隊が治安維持に関することの軍警と業務を分類出来る。ただ、そのいずれも……ミステリオン公立学園の生徒会である皇帝府が無ければ仕事が回らない。ということは室を増やせば、その勅令に関する仕事が増えることに他ならない。一つの学園に実質生徒会が三つある歪な政治構造が、改めて考えてようやく明らかになった。それを、皇帝府に勤める親戚が優しく諭した。

 

「陛下、増えた領地運営含めてお仕事が増えますね」

 

「な、なんですってぇぇぇ!!!」

 

 陸八魔アルの真似をするのを余は止められなかった。許してほしい。未来のアル、この世界では余が最初に言ったぞ。

 

 

 

 

 

 

 




『先生の着任まで残り1450年』
皆さんに面白いと思って頂けたのなら、感想(全て返信しております)や評価、ここすきなどをして頂けると幸いです。次話を書く活力にさせて頂きます!(感想乞食)
以下、作者の与太話なので読み飛ばしちゃっても大丈夫です!
ちなみに組織図作ってみたら、クソでした。クソ国家かなと思わず口から溢れてしまうくらいに出来上がったミステリオンの権力図は専制君主でありながら、同時に分権もしているのでイランの大統領みたいな悲惨な状況が出来上がってる。
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