602年、まただとため息をついた。
「……何故なのかしら」
突きつけられた銃口と冷たい眼差し、許さないという強い感情を隠すこともしない。ソドムとゴモラを燃やしたことに絶句した百人隊長の
「陛下の治世はあまりにも過剰です」
まさしく、クーデターというわけだ。軍人皇帝の真似事をしようとしている。
「愚かね、兵は兵であるべきなの。たかが、集落を二つ滅ぼしただけで余の治世を天秤で量ろうとすることが間違いだわ」
「……いいえ、あの時の陛下は喜んでいました。何かに安堵するように、滅ぼした集落を見るのは異常です。ですから……私、いやオレが使徒になる。陛下にこの学園は任せられない」
そう、やはり愚かね。なら、やってみるが良いわ。そう言い残して、余は早期卒業を果たした。
606年、パテル分校が
608年、余はユスティナ聖徒会へミステリオン様式の聖堂を寄進する嫌がらせを行った。 この記念にフィリウス分校に余の記念柱を建てている時の顔を想像すれば愉快極まりない。
同年、待ちに待った貴族によるミステリオンの使徒簒奪者への反乱が生じた。万臣殿の支持を受けた桐藤家が先導し、軍勢を整え始めた。
610年、ミステリオン外壁内の貴族街に桐藤家率いる軍勢が進軍。城門を守る近衛ですら、抵抗もせずに開門したことにより、余は早期卒業させられ、
613年、
614年、
617年、
618年、本校舎での生徒への穀物支給の廃止。ベーシックインカムをする余裕はもう無いとの判断だ。
620年、ミステリオンの公用語にトリニティの
622年、余は遂に決心して
626年、
同年、トリニティ方面、ゲヘナ方面の近衛隊が一斉に逆包囲を開始。本校舎からも先鋒を送って敵の包囲を破り、逆包囲し敵を殲滅した。
その間はトリニティ方面はパテル第二分校、ゲヘナ方面は羽沼族に防衛を任せた。
627年、ニネヴェ川で近衛隊が大金星、
628年、余が率いる近衛隊が
629年、ミステリオン本校舎ヘ凱旋した余が勢い相まって「諸学の王」を名乗る。これを余の称号欄に載せるのはやめてほしい。黒歴史なんだぞ。
630年、余がミレニアムの分校舎に入城。
633年、
636年、ヤルムーク川の戦いで、余の率いる近衛隊がアビドスに惨敗。ミステリオンは
638年、余が「太古の教義書」を発布。ミステリオンの根幹となる太古の教義を建学の精神に付け加えた。今まで神学専攻から何度も要請されていたもので、簡単に言えば神学の優越を定めたものだ。
640年、
641年、ミレニアムの端で近衛隊と
同年、余が卒業、後継の候補だった
642年、ニハーヴァンド川で
648年、余が「太古の教義の手引き」を発布。更なる神学優遇を推し進めることで、余の地位の磐石化と貴族のご機嫌取りを同時平行で行う。
「重迫撃砲なるものをアビドスが用いているようです」
壊滅した部隊から逃げてきた近衛への聞き取り調査が行なわれ、その報告書を重臣が苦虫を噛みしめるように告げてくる。
「重迫撃砲ですか……」
紅茶を持ち上げる手が僅かに震える。さすがはナギサ様のご実家、どこにも紅茶があると感心したいところだが……最悪の知らせとあっては紅茶の味はもはやしない。
「はい、
最悪だ。ミステリオンですら、オーパーツを利用して長射程の固定砲台を開発したばかりだと言うのにそれに勝る兵器がポンポンと出てこられてはたまったものではない。ティーカップを皿の上に戻して、眉間に皺が寄るのを抑える。ご実家は礼儀に非常に厳しいので、染み付いた自制心が自然と口を開かせる。
「ならば、お呼びでないお客様にはおかえり願わなければなりませんね。ええ、丁寧にお見送りしましょう」
重臣が頷き、もう一つの報告書を取り出す。題は『
「固定砲台の砲弾として導入しましょう。相手が動く砲台であるなら、その進路に明かりを灯す程度では主はお怒りになられないでしょう。ふふ、もちろん敬意をお忘れなく。ミステリオンは野蛮ではありませんから、礼砲は無しで直接砲撃にしましょう」
「はい、ユリ様。砲手にはそのように伝えておきます。近衛隊の淑女たちも新しいお化粧に飢えていることでしょう。負け戦の泥よりは固定砲台の埃の方がお似合いでしょうから」
「まぁ、素晴らしい。もちろん、相手のお作法を学ぶのも大事ですのよ? そのように、万臣殿には伝えておきなさい。下手したら、相手から学ぶのを嫌がりかねないですから」
御意に。そう言い残すと綺麗にカーテシーをしてから、重臣は退室して執務室でようやく一人になれた。
「アビドスかぁ、その全盛期と戦わないといけないのってもはや余は呪われていないか? いい加減にして欲しいんだが……まだ、連合の方が可愛げあったけどゲームに出てこない学校ばっかりだったし。だけど、アビドスかぁ……勘弁してよ」
天を仰ぐように頭を抱える。ネームド学園はネームドたる所以があり、ゲーム内で散々昔はキヴォトス最大だの、その遺跡から普通に迫撃砲が見つかるだの、超文明みたいなものとは思ってたけどまさかこっちくるとは思わないじゃんね。しかも、重迫撃砲を自転車で引っ張るって何? もしかして、今のアビドスってシロコみたいな子ばっかりって事なの?
「ああ、頭が痛い。いや、頭痛が痛いわ。こっちの研究ツリーガン無視で世代跨ぐのやめてくれ……SRTのような軍事学校だぞ、ミステリオンは。なのに平然と超えてくるのはバグだよ、バグ。早く修正パッチ来てくれって願っても、ここゲームじゃないんだよなぁ……」
お淑やかなお嬢様からは出てくるはずがない口語を今の実家が聞いてしまったら、使徒関係なくガチギレされるのは目に見えてるので一人になった時くらいしか、本音を漏らせない。
「なぁ、アトス。あれは海軍の発砲だと思うか」
『ミステリオンに海軍は御座いません。水上の部隊は全て近衛隊が管轄しております』
「そういうことじゃないんだがな……はぁ、嵐の雷鳴はどうやらミステリオンに降りかかるらしい」
諦めて書類仕事に戻る。予算の振り分け、昇進と降格の人事、調子に乗らないように貴族に睨みを利かせるための貴族の徴兵からエトセトラ、エトセトラ。アビドスも恐ろしいが、これで皇帝府の重臣が減らしてこの量の書類に目を通さないといけないこともまた恐ろしい。微かな不安を抱きながら、羽根ペンをインクを浸した。
『先生の着任まで残り1350年』
皆さんに面白いと思って頂けたのなら、感想(全て返信しております)や評価、ここすきなどをして頂けると幸いです。次話を書く活力にさせて頂きます!(感想乞食)
遂にアビドスが登場!作者本人も扱いに困るキヴォトス最大の学園!果たしてユリちゃんの胃は耐えられるのか!?
次回、ユリの胃死す。お楽しみに!