「一体なんの話だ?それに先生って?」
七神リンの言葉に俺は混乱している。
「ああ、推測系でお話したのは、私も先生がここに来た経緯を詳しく知らないからです」
「はあ?なんだそれは。勝手に人を呼び出しておいて、事情もろくに説明できないとは随分と都合のいい話じゃな」
リヒトーフェンが小さく鼻で笑った。
「混乱されていますよね、分かります。こんな状況になってしまったこと、遺憾に思います。でも今は取り敢えず、私についてきてください。どうしても、先生にやっていただかなくてばいけないことがあります」
「それはどういうことだ?」
正木武雄が静かに尋ねた。
「学園都市の命運をかけた大事なこと、と言うことにしておきましょう」
「俺たちもその命運をかけてる途中…って、おい!」
リンはすでに部屋の出口に向かって歩き出していた。
ここにいても埒が明かない。俺たちは顔を見合わせ、仕方なく立ち上がって彼女の後ろについていった。
「?どうしたニコライ、早く行くぞ」
「…ああ悪い、少し考え事をしててな」
ニコライの表情はどこか暗かったが、彼もすぐに動き出した。
リンは移動しながら説明をしてくれた。ここキヴォトスと呼ばれる世界は数千の学園が集まる巨大な学園都市。
ここでは生徒たちが「ヘイロー」と呼ばれる光輪を持ち、銃を日常的に扱う世界。
キヴォトスの全生徒を代表する人物…連邦生徒会長が忽然と姿を消し、サンクトゥムタワーの行政権が失われた今、街は混乱の渦に飲み込まれつつある。そして俺たち四人は、連邦生徒会長が「外から招いた顧問」として選んだ存在らしい。
超法規的機関「連邦捜査部シャーレ」の先生として、キヴォトスの秩序を守る役割を担うことになった。
「シャーレの部室には、連邦生徒会長が残した重要なオーパーツがあります。それを起動させれば、サンクトゥムタワーの制御権を回復できるはず……ですが」
リンは眼鏡を押し上げ、わずかに声を低めた。
「その周辺は現在、連邦橋正局を脱獄した凶悪囚人・狐坂ワカモと不良生徒たちに占拠されています。D.U.外郭地区で破壊活動が激化しており、放置すればさらに事態が悪化します。……先生方。すぐに奪還作戦を立てていただけますか?」
俺たちは顔を見合わせた。また面倒ごとに巻き込まれちまったが腹をくくるしかない。
「ああ良いぜ。こういうトラブルには慣れっこだ」
「つまり子供の喧嘩の仲裁か? まあ、どうにかなるだろう」
「ならば迅速に行動せねば」
「しょうがねえ、拒否権は無さそうだしよ。いっちょやってやるか!」
リンと共にエレベーターに乗って下に降りていく。そして、エレベーターのガラスの向こうには綺麗な川と高層ビルが立ち並ぶ大都市の風景が広がっていた。
「改めて“キヴォトス”にようこそ、先生」
ガラス越しに見てる風景に俺たちは驚いていた。高層ビル、見たことのない建物、透き通るような青い空、空に浮かぶ謎の輪っか、その数々圧倒されていると、リンは手を外に向けながら話し始める。
「キヴォトスは数千の学園が集まってできている巨大な学園都市です。これから先生が働くところでもあります。きっと先生がいらっしゃったところとは色々なことが違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれません。でも、先生なら心配しなくてもいいでしょう。あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね」
リンはそう言うと、エレベーターが指定した階に到着する。エレベーターのドアが開くと何人かの生徒が忙しなく走り回ったり、問い詰める生徒に対応していた。 よく見れば全員銃器を装備している。リンの服から見えたハンドガンホルスターといい本当に銃を持ち歩くのが当たり前らしい。
「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ!連邦生徒会長を呼んできて!…うん?隣の方は?」
すると青髪ツインテールの女がこちらに近付いてくる。リンと違い耳は尖って無い様だ。
「首席行政官。お待ちしておりました」
そして後ろからもう2人女がやってきて話しかけてくる。黒の長髪に大柄な体型と…何より背中から生えてる大きな黒い翼に思わず驚愕した。もう一人は銀色の長髪に頭部に羽が生えていた。
「連邦生徒会長に会いに来ました。風紀委員長が、今の状況について納得のいく回答を要求されています」
さらにその後ろから別の生徒が話しかけてくる。ブロンドの髪と眼鏡でリンと同じく耳が尖っている女だ。
「ああ、面倒な人たちに捕まってしまいましたね。こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由は、よく分かっています。しかしこれはちょうどいいタイミングですね」
隠し切れない苛立ちを言葉にだすリン。そう言って面倒くさそうに4人に対応し始めるが何かを思いついたようだ
3人に連邦生徒会長の失踪および現在対処しないといけないことを説明した。
「...そしてこの先生方こそが、フィクサーになってくれるはずです」
「この方が?」
生徒たちは三者三様の反応を見せる。俺たちは取り敢えず挨拶して、それぞれ自己紹介をする。
「俺はアメリカ海兵隊所属タンク・デンプシー伍長だ」
「俺は元ロシア軍所属ニコライ・ベリンスキー軍曹だ。よろしくな」
「我は大日本帝国軍所属、正樹武雄大尉である」
「ワシはドイツ軍第935部隊所属エドワード・リヒトーフェンだ。主に兵器や医学の研究をしている」
「こ、こんにちは、先生。私はミレニアムサイエンススクールの…い、いや、挨拶なんて今はどうでもよくて…!」
「そのうるさい方は気にしなくていいです」
「誰がうるさいって!?わ、私は早瀬ユウカ!覚えておいてください、先生!」
「トリニティ総合学園、正義実現委員会副委員長の羽川ハスミです」
「同じく、トリニティ総合学園の自警団所属の守月スズミです。よろしくお願いします」
「私はゲヘナ学園の風紀委員会所属の火宮チナツです。先生、よろしくお願いします」
順番に青髪ツインテールの早瀬ユウカ、黒い翼の羽川ハスミ、銀色の長髪の守月スズミ、ブロンドの髪と眼鏡の火宮チナツが挨拶をした。
その後リンから俺たちが連邦生徒会長から連邦捜査部シャーレの顧問として召集されたことを説明した。
「シャーレの部室はここから約30㎞離れた外郭地区にあります。今は何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下にとあるものをお持ち込んでいます。先生方をそこにお連れしなければなりません。各学園の皆さんには護衛をお願いしたいのです。」
リンは見たことない端末を取り出し、ボタンを押すと人の姿が投影される。
「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なんだけど」
『シャーレの部室?……ああ、外郭地区の?そこ、今大騒ぎだけど?』
ホログラム越しのモモカの話によると、矯正局から脱走した停学中の生徒と不良の生徒達がそのシャーレの部室があるビル周辺で想定以上に暴れている事。それだけでなく周辺を焼け野原にして巡航戦車まで手に入れて使用してるとモモカはリン達に伝えた。
『まあでも、とっくにめちゃくちゃな場所なんだからヘリで行こうものなら撃墜されるのが落ち、あっ!先輩、お昼ごはんのデリバリーが来たから、また連絡するねー!』
ブツンッと投影された姿が消えて通信が終わる。
「………、…………ッ!」
「大丈夫か?」
手にした通信端末?を握り締めるリン。
「だ、大丈夫です。少々問題が発生しましたが、大したことではありません」
そう言ってリンは深呼吸すると、口を開いた。
「仕方ありません。皆さん車両を使ってシャーレの部室へ向かってください。私は後方から支援します」
リンはすぐに簡易装備と通信端末を支給し、俺たちは即座にD.U.外郭地区へと向かった。
シャーレオフィスビル周辺に到着した瞬間、激しい銃声が響き渡っていた。不良生徒の群れが道中を包囲し、叫びながら無差別に発砲している。
コンクリートの破片が飛び散り、煙と火薬の匂いが鼻を強く突いた。
俺たちは即座に車両から降り、近くの瓦礫や車体を遮蔽物にしながら前進をするとユウカ達に止められた。
「待ってください!先生たちは一発でも銃弾に当たれば致命傷になってしまいます!」
「先生は外から来たので知らないと思いますが、私たちはヘイローの力で通常の兵器なら怪我を負わない程頑丈です。ここは私たちに任せてください」
ハスミが説明してくれたが…
「なるほどな。ならお前たちが言ってることを確かめてみるとするか」
俺はハンドガンを素早く構え、物陰に隠れていない不良生徒に2発を撃ち込んだ。弾丸は命中し相手はのけぞるがまだ立ち上がれる余力があったためもう数発撃ち込みやっと動かなくなった。
「確かにしぶといな!」
キヴォトスの生徒たちは本当に頑丈だった。普通なら即死レベルの被弾でも、ヘイローが衝撃を吸収し、致命傷になりにくいらしい。
何発か食らっても立ち上がり、再び銃を向けてくる。まさに倒しても倒しても起き上がってくるようなタフさだ。
「大丈夫だって安心しな。俺たちこういう戦いには慣れてんだ。まあちゃんとした人間とやりあうのは久しぶりだけどな」
「え?」
最後の一言に疑問を浮かべるチナツ。そのままニコライはショットガンを構え、敵に至近距離で一発ぶち込んだ。
「食らえ!」
ショットガンの轟音とともに不良生徒の一人が吹き飛んだが、それでも地面を転がりながら這い上がろうとする。
ニコライは舌打ちしながら追加で一発叩き込んだ。
正木武雄はマークスマンライフルで遠距離の敵を正確に狙い撃つ
「……頑丈だな」
後方にいるリヒトーフェンはアサルトライフルを構え、冷静に敵の脚や肩を狙いながら指示を飛ばした。
「左前方から三名接近! デンプシー抑えろ! 武雄、右をカバーしろ!」
俺は軽機関銃に持ち替え、フルオート掃射を浴びせた。
弾丸が不良生徒たちの体に何発も命中し気絶していく。
一人が至近距離まで迫ってきたが、ハスミの援護射撃で助かった。
「ハスミ助かったぜ!」
不良生徒たちは数で押してくるだけでなく、連携も悪くなかった。
俺たちは長年の戦闘経験を活かし、遮蔽物から遮蔽物へ素早く移動しながら一人ずつ確実に無力化していったが、完全に押し切るには時間がかかった。
ニコライがショットガンを連射しながら叫んだ。
「突破するぞ! 武雄、右を頼む!」
正木武雄が刀を振りかざし、みねうちの要領で敵を気絶させていく。
スズミが閃光手りゅう弾を投げ、目くらましで敵の陣形を大きく乱した。
ユウカがサブマシンガンを構え、煙の中を突っ走りながら掃射を続けた。弾丸がコンクリートを削り、敵の悲鳴と怒号が飛び交う。
何度も被弾しながらも立ち上がってくるキヴォトスの生徒たちの頑丈さに、俺たちは改めてこの世界の異常さを実感した。
激しい銃撃戦の末、ようやく不良生徒の群れを突破した。
建物外の警戒をユウカ達に任せ俺たちはシャーレの建物内に入った。地下へと続く階段を慎重に降りていく。そして、地下室の奥にたどり着くとそこにはリンが話していたワカモが何か物色していた。
「うーん……これが一体なんなのか、まったくわかりませんね。これでは壊そうにも……」
「いっそのこと全て破壊しますか。うふふ…」
「何がおかしいお嬢ちゃん」
「こっちを向け」
「ゆっくりとな」
俺とニコライ、武雄で銃をワカモに向けながら言う。
「…わたくしが誰かわかってて言っているのですか?」
「ああ知ってるぜ…だからこそ俺達の言う通りにするんだな」
「強大な悪が到来し絶え間ない災厄が引き起こされようと…いや、した後か?」
「未来が失われてしまう貴様が起こす厄災によって…」
「……あら?」
「……ん?」
ワカモが武雄を見ながら声を出す、明らかに間抜けな声だった。
「あら、あららら……」
「し、し……失礼いたしましたー!!」
「あっ!おい!待ちやがれ!」
悲鳴?の様な声を上げながら板状の何かを放り投げて、俺たちを飛び越え一目散に部屋から逃げ出していった。
「何だったんだ?今のは…」
「ワシには武雄を見た途端に様子がおかしくなったように見えたが…?」
「我は何もしておらんぞ」
「皆さんお待たせしました」
しばらくして入れ替わるようにリンが部屋に入ってくる。
「……? 何かありましたか?」
「いいや、何でもねぇさ」
「そうですか。ここに連邦生徒会長が残したものが保管されています。…幸い、傷一つなく無事ですね」
そう言って先ほどワカモが捨てた板状の端末を拾い上げる。
「受け取ってください。これが連邦生徒会長が残したもの。シッテムの箱です」
どうやらこの端末は俺たちの物らしくこれがあればタワーの制御権を回復できるらしい。
「…………では、私はここまでです。ここから先は、全て先生にかかっています。邪魔にならないよう、部屋の外で待ってます」
そういってリンは離れていった。
俺たちはシッテムの箱を囲むように立った、そもそもどう電源をつけるんだと色々触ってみるとあっさり電源がつき、パスワードの入力画面が映る。
「パスワード?そんなの知るわけ…」
ふと脳裏にある言葉が浮かび上がる。なんとなくその言葉を入力する。
……我々は望む、七つの嘆きを。
……我々は覚えている、ジェリコの古則を。
『接続パスワード承認。現在の接続者情報はデンプシー、並びにほか同行者リヒトーフェン、ニコライ、武雄、確認できました。』
『「シッテムの箱」へようこそ、デンプシー先生、リヒトーフェン先生、ニコライ先生、武雄先生』
『生体認証及び認証書作成のため、メインオペレートシステムのA.R.O.N.Aに変換します』
突然、端末から眩い白い光があふれた。視界が真っ白になり、俺たちは思わず目を覆った。
次の瞬間……気づけば、そこは見知らぬ崩壊した教室だった。
天井が大きく崩れ落ち、青空が直接差し込んでいる。
机や椅子は山積みになっており、床は水浸しになって壁も一部崩壊していた。
俺たちは呆然と立ち尽くし、周囲を見回した。
「……ここは一体どこだ?」
「……奇妙な場所だ」
その時、教室の机で、少女がうつ伏せに寝ているのが目に入った。
『むにゃ、カステラにはぁ……いちごミルクより……バナナミルクのほうが……』
「こんなところにガキ一人?妙だな」
「とりあえず起こすしかないだろ」
ニコライが近づき、少女の肩を軽く揺さぶった。
「おーい!起きろーい!」
少女はむにゃむにゃと顔を上げ、目をこすりながら体を起こした。
『えへっ……まだたくさんありますよぉ……』
突然、少女の目が大きく見開かれた。
『むにゃ……んもう……ありゃ?ありゃ、ありゃりゃ……!?え?あれ?あれれ?』
彼女は慌てて机から飛び降り、俺たち四人を指差した。
『先生方!?』
『この空間に入ってきたっていうことは、ま、ま、まさか、デンプシー先生……!?それにニコライ先生、リヒトーフェン先生、武雄先生!?』
「いきなり起こして悪いがお前は誰だ?」
少女はぴょんと跳ねるように姿勢を正し、元気いっぱいに答えた。
『私はアロナ! このシッテムの箱に常駐しているシステム管理者であり、メインOS、そしてこれから次元先生をアシストする秘書です!』
リヒトーフェンが目を細めた。
「メインOS…つまりAIということじゃな?」
つまりこいつはラシュモアや
その後アロナと名乗った少女は生体認証の為指紋を取らせてほしいとアロナに頼まれた俺たちはアロナが突き出した指に自分の人差し指を重ねる。
四人全員の指紋を登録し終え、サンクトゥムタワーの制御権の復旧をしてもらったが次のアロナの言葉に驚いてしまう。
『先生。サンクトゥムタワーの制御権を無事に回収できました。今サンクトゥムタワーは、私アロナの統制下にあります。今のキヴォトスは、先生の支配下にあるも同然です!』
「!?」
その言葉に、教室全体が一瞬静まり返った。
「……おいおい、待て待て。今、なんて言った?」
「支配下だと? ふざけたことを言うな。キヴォトス全体をたった四人のワシらが支配できるなど……馬鹿げている」
リヒトーフェンが珍しく声を上ずらせた。正木武雄は無言のまま、わずかに眉を寄せた。
「…支配、か。俺たちがそんな立場になるとはな…」
アロナはきょとんと首を傾げた。
『え? 間違ってますか? 先生方は連邦生徒会長が直接選んだ特別な先生です!だからサンクトゥムタワーの全権限は先生方に委譲されています。予算も、人事権も、法律の適用除外も…全部先生の思い通りですよ?』
俺は思わず頭を抱えた。
「ちょっと待て……俺たちはさっきまでただの軍人だったんだぞ?いきなり学園都市全体の支配権とか、そんな大それたものを渡されても……」
リヒトーフェンがため息を吐いた。
「まったく……連邦生徒会長は一体何を考えているんじゃ」
俺たちはすぐに決断した。
「アロナ。サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会へ移管することは可能か?」
『はい! 先生が承認してくれれば問題ありません!』
「じゃあ、頼むぜ」
『分かりました。これよりサンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会に移管します!』
その言葉と同時に、視界がゆっくりとフェードアウトしていった。
気が付くと、俺たちは元のシャーレの地下室に戻っていた。
明かりの付いた地下室。さっきまでいた崩壊した教室の光景はもうどこにもなかった。電話をかけ終えたリンが、こちらに歩いてくる。
「サンクトゥムタワーの制御権の確保が確認できました。これからは連邦生徒会長がいた頃と同じように、行政管理を進められますね」
彼女は少し安堵した表情で微笑んだ。
「先生方、本当にありがとうございます。これで連邦捜査部S.C.H.A.L.Eは正式に活動を開始できます。」
俺たちはまだ少し呆然としながらも、互いに顔を見合わせた。キヴォトス全体の支配権を一瞬手に入れ、すぐに手放した。それが正しい選択だったかどうかは、まだわからない。
その時、俺の視線が地下室の奥の壁際に止まった。
中央の装置だけではなかった。金属製の派手なデザインの大型マシンが、壁際にずらりと並んでいる。
中央に置かれた派手な回転式の機械……間違いない、あれはパック・ア・パンチマシンだ。
その隣には、色とりどりのドリンクが並んだ自動販売機のような装置が四台。
ラベルにははっきりと「Juggernog」「Quick Revive」「Speed Cola」「Double Tap Root Beer」と書かれている。さらにその横には、はてなマークが描かれた長方形の木箱のミステリーボックス。
そしてカラフルなガムがずらりと並んだゴブルガム機まで。
「……おいおい、何だこれ?」
俺は思わず声を上げた。
旅の中で何度も見た、あの機械たちがまるで何事もなかったかのようにここに置かれている。
リヒトーフェンがゆっくりと近づいていった。彼の目が好奇心と驚きで輝いている。
「これは……パック・ア・パンチ? そしてパークドリンク…4つ揃っているとはな」
正木武雄は無言のまま、それらをじっと見つめていた。その横顔に、わずかな動揺が浮かんでいる。
「まさかここでも見るとは……」
ニコライの声は低く、どこか遠い目をしている。
「リン、こいつは一体どこで?」
リンは少し驚いた様子で俺たちの視線を追い、すぐに説明を始めた。
「これらは……数年前からキヴォトス各地で突如として現れた謎の機械です。連邦生徒会が危険物として回収し、ここに保管していました。どうしてここに保管してたか私も詳しくは知りませんが……連邦生徒会長が『先生方が来たら役に立つかもしれない』と言っていたそうです」
彼女は少し困ったように眼鏡を直した。
「正直、私たちも扱い方がよくわかっていないんです。」
「実に興味深い。後でじっくり調べさせてもらうとしよう」
俺はパック・ア・パンチマシンの横に立ち、冷たい金属に手を置いた。
確かにあの時の感覚と同じだ。
「……なんだか、ますます訳がわからなくなってきたな」
ニコライが静かに頷いた。
「……ああ。俺たちも、ただの先生をするだけじゃ済まなさそうだ」
「先生方……これからも、よろしくお願いします。まずはこの施設の案内を続けますね」
リンは簡潔にシャーレ施設の概要を説明してくれた。
案内が一通り終わると、リンは時計を見て小さく頭を下げた。
「では、私はこれで失礼します。後ほど正式な書類をお持ちします。先生方、本日は本当にありがとうございました」
リンが去った後、俺たちはシャーレの外に出た。
そこには、さっきまで待機していた四人の生徒たちがまだ残っていた。ユウカがまず口を開いた。
「ええ。サンクトゥムタワーの制御権を連邦生徒会が取り戻したことを確認したわ。
おかげでキヴォトス全体の混乱も、少しは収まるはずよ」
ハスミが穏やかに微笑んだ。
「ワカモは自治区に逃げてしまったのですけど……すぐ捕まるでしょう。私たちはここまで。あとは担当者に任せます」
続けてユウカが声をかけた
「お疲れさまでした、先生。先生の活躍はキヴォトス全域に広がるでしょう。すぐにSNSで話題になってしまうかもしれませんね?」
最後の挨拶としてハスミが頭を下げた。
「これでお別れですが、近いうちにぜひ、トリニティ総合学園に立ち寄ってください、先生」
続けてスズミも無言で頭を下げた。次にチナツが頷きを添える。
「私も、風紀委員長に今日のことを報告しに戻ります。ゲヘナ学園にいらっしゃった時は、ぜひ訪ねてください」
ユウカが最後ににこりと笑った。
「ミレニアムサイエンススクールに来てくだされば、またお会いできるかも?先生、ではまた!」
四人はそれぞれ軽く会釈をし、去っていった。俺たちはその背中を見送りながら、静かに息をついた。
「……なんだか、急に忙しくなりそうだな」
キヴォトスに足を踏み入れたばかりの俺たちに、これからどんな日々が待っているのか、まだ何もわからなかった。ただ、確かなことは一つ。俺たちはもうただの戦士ではない。
この学園都市で先生として生きていくのだと。
主な用語解説
パック・ア・パンチマシン
武器の強化装置。普通の武器を「パック・ア・パンチ」状態に改造し、威力・連射速度・特殊効果を大幅に向上させる。通称「PaP」。
パークドリンク
自動販売機のような装置から買える特殊飲料。飲むことでダウンするまで強力な能力(パーク)が得られる。
Juggernog(ジャガーノグ):耐久力が大幅に上昇する。
Quick Revive(クイックリバイブ):蘇生速度が大幅にアップ。ソロプレイでは自分で蘇生可能になる。
Speed Cola(スピードコーラ):リロード速度が倍近くになる。
Double Tap Root Beer(ダブルタップルートビア):射撃速度(連射速度)が倍になる。作品によっては射撃ダメージも2倍になる。
ミステリーボックス
ランダムで武器が出てくるガチャ箱。強力な武器が出ることもあればクソ武器が出ることも。
ゴブルガム
特殊効果を持つガム。一定時間だけ強力な能力を発動させる(例:無限弾薬、透明化、ポイント2倍など)。Black Ops 3以降に登場した新要素。
ラシュモア
Black Ops 4「Alpha Omega」マップで初登場した人工知能。Broken Arrowが開発した施設管理AI。ストーリーを進行させる重要な役割を持つ
S.O.P.H.I.A.(ソフィア)
Black Ops 3「Gorod Krovi」で初登場した高性能人工知能。元はDr. マキシスの助手だったソフィアがAI化された姿。プレイヤーに淡々と指示を与え、ストーリーを進行させる重要な役割を持つ。