銀河系スターマイナー
何故こんな名前が付いたか?
テルム共和国物理学者が謎の電磁波を音声変換したところによる空耳で住まう銀河の名前を決定した。
当初は学者同士の呼び名だったのだが、いつの間にか政府が銀河名をスターマイナーと命名宣言し
銀河の平穏と秩序を全宇宙に広めようと拡大し始める。
ところがザタテナイトと呼ばれる群集生物と接触しテルム共和国は苛烈な戦いを広げている。
銀河暦210年
ザタテナイトとの戦争が始まって40年が経過していて、テルム共和国は未だに押し込んでいるものの占領惑星からザタテナイトの残党が湧き出てきたりと占領地の安定化に頭を悩ませられていた。
そんなある日…20年前のフリュージア中域進出作戦に参加し作戦貢献度上位に上り詰めた俺達、ブルーザアウトロー旅団は国家功労勲章を旅団全員に配られ20年間の休暇を与えられていた。
そして20年振りの正式な仕事が治安維持活動である。
俺は馴染み深い酒場の扉を押し開けて入る。
中には既に各指揮官皆が集まっており気が付いた一人はイリュージョナー・スタークス。俺の戦友だ。
「待っていたぜ、皆仕事の内容を聞きたくくたばっていたところだ」
他の指揮官達と腕相撲して全員倒してきたらしく、皆がお前のせいだと笑いながら言った。
昔から変わっていないこの様子に俺はいつも笑ってしまう、それはそうと旅団長としてテルム共和国からの仕事の内容を話さなければならない
仕事を始める上でのブリーフィングだ。
「今回の任された仕事は治安維持と言っていた。しかし実態は芳しくなくこの星に居るザタテナイトを殲滅する活動に取り組む事となった」
「なんだ。20年前と変わりやしないじゃねえか?」
「イリュージョナー、今回は民間人が居る可能性もある。派手にやらかなさいよう共和国駐屯軍の目もあるのだ…俺達にはやれる事は無いかもな」
俺がそう言うと他の指揮官達は電子端末説明書を再確認して一人が発言する。
「兄貴、駐屯軍隊は第45特殊作戦群のようですが?噂に聞く表立って出られない部隊ではない?」
「ん?第45群がこの星に駐屯軍として置かれているのか…となると」
元ブルーザアウトロー旅団の団員が免除や負傷等で脱団した先で更生教育を専門として行う裏方部隊、第45特殊作戦群とやらは昔聞いたことがある。
だが確実に脱団させた者は一人いる…確かカルダリ・デ・シュトローネ。罪件数戦績評価で免除された者だったのだが…しつこく俺に付いてきた野郎だった。
その後の話しは団員等との雑談で絞めて無闇な乱射を避けた精確な制圧射撃を促した。
全員戦闘用エグゾスーツを装着し11ミリ自動小銃を担いで現場に向かう、彼等の一辺は砂漠であり殆どの生物は住んでいないのだが…そんな環境だろうが住み着けるのはザタテナイトだ。
「お…おい!空から何か聞こえるぞ」
団員の一人が発した。他の者も見上げると…ザタテナイトの飛行種ことムスタルシュが大群で空を移動していた。
「巣を見つけなければ、本格的にこの星は堕ちる…空への警戒怠るな!」
「「御押忍」」
他の指揮官がそう叫びながら地上にある巣を見つける為かと偵察班も編制されて直ぐ行動を開始した。
飛んでいく方向からして街がある場所であるものの、いつも通り爆発音がここのところ毎日のように聞こえる。
遠くの指揮官との話しは無線を使ってやりとりする事は当然だが…歩いて四時間で奴等の住処を発見する。
「こちらブルーザ班…巣を発見
かなりの規模だ。皆の合流を待つ」
≪トロコフ班了解、座標位置確認上一番近い俺達が行こう≫
俺はイリュージョナーにも合図を送って隊を一旦後退させて合流を待つことにした。
しかし合流を待つ前に巣の方からザタテートの大群が接近してきて数百メートル手前で立ち止まった。
「……」
イリュージョナーや付近の班指揮官にもハンドサインを送って交互後退射撃しながら距離をとる。
ザタテートは思わぬ場所にテルムトルーパーを発見し攻撃行動に出るようだ。
ザタテートは基本的に四足歩行で移動し噛み付いて攻撃してくる。
囲んで殴ろうと思えばザタテートは長い尻尾を使って薙ぎ払いを行うのでテルム軍事教訓では相互後退援護射撃で撃退する事となっているそうだが…目の前のザタテートの大群は20年前のそれよりも多く見える。
前よりも犠牲者が出る予感しかしなかった。
「ああ!脚がっ!うわぁぁぁっ!」
右側のテルムトルーパーが脚に尻尾の薙ぎ払いを受けて骨折し、そのまま転倒後素早く噛み付かれた。
更に他のザタテートがその一人に集まってグシャグシャと肉を噛み千切る音が聞こえ、骨を砕く音までもが銃撃戦の最中でも聞こえた。
一人ではない…複数のテルムトルーパーが噛み砕かれている。
「イリュージョナー!他の班はどうなっている!」
自動小銃の引き金を引きながら片手間に隣り合わせになったイリュージョナーへ無線通信応答を行わせた。
「駄目だ。トロコフ班は全滅している!付近に居るのはクラーコフ班とミユキ班だけだ」
想定より大規模に発展していたようだと俺は悟る。
この調子だとムルステートも居るではないかと思う程に酷い戦況だ。
クラーコフ班はテルムトルーパーの中でも対ザタテナイト用エグゾスーツを使用したヘルフレイムと言う特科兵であり、まず苦戦する事は無かった20年前とはいえ今回は犠牲者が出るのだろう…
ミユキ班はテルムトルーパーのメデックエグゾスーツを使用した衛生兵だけで構成された非戦闘部隊、しかしアーマーはトルーパーアーマー系の中でも特注品とされる素材と組み合わせにより戦車並の防御力と信頼性を持つ
それに加えてナノマシン活性化治癒小銃とバリスティックシールドを装備しており盾で辛うじて攻撃は出来る。
しかしあの大群だ…長くは保たないだろう
直前のザタテートを200体撃退したが、まだまだ勢いは衰えておらず屍を積み上げながらも突進してくる。
時間をかければいずれ勝てる…
そう思っていた矢先にイリュージョナーが報告してきた。
「ミユキ班は半壊し付近の市街地で立て直し、同じくクラーコフ班も半壊しミユキ班と合流!しかし目前こムルステート10体とムスタルシュ30体相手に押されているようです!」
非常に不味い事になった。
ラーコフ班は対ザタテナイト特化だが…飛行系ザタテナイト相手に火炎放射では無力。
市街地は特殊作戦群の戦闘部隊が居るかも知れないが、その戦力数はたかが知れている。
何よりもムルステートは体内の酸液を尻の針から圧縮されて射出される。
その酸は鋼鉄さえも融かす程、凶悪な酸で一滴たりとも浴びてはならない
生きた爆撃機そのものだ。
「ブルーザ旅団長殿!通信です!特殊作戦群本部が援軍を出すそうです!」
意外な援軍が来るとなればあとどれくらい持ち堪えればよいか聞いた。
「3分もあれば到着…えっ!?作戦群司令船自ら!?」
「フンッ…航宙巡洋戦艦の援護は有り難い!おい一度だけ大きく後退するぞ!」
後退命令の信号銃を放つと、一斉に後退して一部は走りながら拳銃で牽制している。
しかし状況は全力後退している今の方が酷くなっていた。
「まずい…交互援護射撃だ。予想以上に多すぎる!」
「うわぁぁぁっ!さっ…酸だぁぁっ!」
俺は空を見上げるとムルステートが20体程酸液による空爆を行っている。
もはや交互援護射撃後退も不可能な人数規模に、反撃でムルステートを12体撃ち落とすと後退していき…その間にザタテートが急速接近しながら道中の直近の部下や兵達の胴体を引き千切り、腸を美味しそうに喰らいついていた。
その中にも女性団員も居てどうなったか群れの波に飲み込まれて分からなくなってしまった。
「イリュージョナー、最後までありがとうな」
「へっお前から先に絶たれては困るのはお前の妹だろ?殿は俺が引き受ける。無事な者達を連れて後退するんだ!?」
母星には妹が一人いる…もはやそんな事さえも忘れていた。
俺の足はもう彼の前に出ており最後の悪足掻きに暴れ散らかしていく
左脚は噛み千切られ、利き腕は折られて宙に舞う
突然の大爆発と共に俺は意識を失った。
……。
光が見える。
声が聞こえる。
何だ?使命を果たせ?
……だがその後見知らぬ室内で目を覚ました。
足音も聞こえており現実に戻されたのだろう…そう思っていると見覚えのある人物がそこに居る。
「やっとお目覚めかブルーザ、…早速で悪いが動けるか?」
「ああ、ん?」
目の前に居るのはカルダリ・デ・シュトローネその人だが、声がやたらと高く聞こえる。
その上…一歩前に進む度にバランスを崩しそうになる程に身体の前方二つの重りのような何かを感じる。
ふと視点を下の方に向けると…とても衝撃的なものを目の当たりにした
「お気付きかいブルーザ。君の身体は損傷が激しく寄生虫も酷く治療は断念した…その代わりと言って何だが、僕の所属する第45特殊作戦群の構成員エグゾスーツに置き換わる…特戦義体に無事だった脳を移植したんだよ」
「5年前の噂に聞く特戦群の潜入部隊か?まさかこれが」
「上層部に提案したのは僕だよ、提案通り通ったのは驚いたけれど僕の特戦潜入部隊は各方面軍で活躍しているし開発者も満足してるさ」
良いのか悪いのかよく分からない複雑な心境であるが…彼の知り合いの技術者となれば、サレザー・コンスタンティーション。
一介の技術者だが中々の変人で有名だ。
それは兎に角将来的な問題は山積みだ。
まず籍と名がある程度変更されていて、性別も変更されている。
記憶を持ったまま別人として振る舞う事だが、更に問題があるようで彼から聞かされる。
「あーそうだ。サレザーから伝言だ…その義体は緊急で用意した物だから調整がされてないので調整の為にサレザーに会ってほしい、艦内に居る」
上体を起こしてこの部屋から出ようとしたその瞬間に危うく転倒しかけていた。
未調整と言っていたそうだが、身体の違和感を物凄く感じる程に酷く動かし辛い
「その義体はテスト段階のバイオロイド系のをベースにしている。適度に運動するんだぞ…って暫くまともに立っていられないかぁ…部下に食事でも届けさせておこう」
かれこれ数日間この部屋からさえも出るのも厳しく、ひたすらこの身体を慣らしていく事となった。