未来知識で2回目の人生を無双する予定が即崩壊した上にネットミームとなってしまった件について   作:かにしぐれ

6 / 8
世界線は移り変わる

「YACHIYO CUP」が発表された翌日、私はヤチヨに対してダンシングベイビーの件について問い詰めようと連絡を入れようとしたのだが、ふと連絡を入れる手が止まる。

 

私がヤチヨに文句を言いたいのは、「ダンシングベイビーはヤチヨがかぐやだった時には存在しなかったはずだ」という前提がある。そう、ヤチヨがかぐやであるということを知っていると同時に、ヤチヨがかぐやとして過ごした日々についても知っているということになってしまう。

 

実際に私には前世の映画で「超かぐや姫!」を観ているので、ヤチヨについて色々と知っているのは事実である。だが、その情報はまだヤチヨから開示されていないし、「かぐやとしての日常」の部分についてとなるともはやストーカー&盗聴盗撮を敢行していたとしか言えないレベルである。

 

つまり、この"世界線”に対してとんでもない影響を与えてしまう可能性のある行動をヤチヨがしでかしたと私が追及する事は不可能なのである。私に対して非開示であるはずの情報が多すぎるのだ。

 

では、ダンシングベイビーの正体が私であることを明かして本人からの意向として出場を取り下げてもらうというのはどうだろうか。

 

こちらならば話の筋が通っているし、アカウント管理者の許可を取ったとはいえ動画に映っている本人から出場するのは取りやめたいと連絡を受ければ、公式としてもダンシングベイビーの出場をキャンセルせざるを得ないだろう。

 

これを実行するデメリットは、ヤチヨに私=ダンシングベイビーということがバレてしまうことだ。ヤチヨに出会ってすぐの事だったのならヤチヨに即情報を明かした上で出場を取り下げてもらっただろう。だが、古のインターネットに残っているヤチヨの過去の所業を色々と知った今ではためらってしまう*1

 

 

 

 

なんだかんだでクソガキ(わがままかぐや)のままの部分があるので。

 

 

 

 

おっと失礼、言葉が汚くなってしまった。とにかく、ヤチヨにダンシングベイビーの正体を明かすというのも無しだ。となると、原作通りかぐやが「Black onyX」に勝つことを祈るしかない。

 

まぁ、案外大丈夫ではないだろうか。ネットミームの元ネタではあるが、ダンシングベイビーは今や日本ではインターネット老人会のネタと化している。今更登録者数が跳ねるということもないだろう。要は「YACHIYO CUP」の掴みとして添えられた一発ネタである。

 

まさかの過去の出現で大いに取り乱してしまったが、実際のところは私が危惧するほどの大事にはならないだろう。全ては杞憂に終わる。この時はそう思っていたのだが…

 

 

 

なんで登録者数が増えんねん。しかもなんで万単位で増えんねん。

 

 

 

なんJ語*2が思わず出てしまうくらいに私は困惑した。大した影響はないだろうと高を括っていた私だったが、現実は非情だった。

 

ダンシングベイビーのチャンネル登録者数は「YACHIYO CUP」の発表日から1週間で約1万人程度増加した。ついでに、各動画の再生数も投稿した当時くらいの伸びを見せた。

 

おかげで来月の収益はかなりのものを見込めるが、それを喜べるような状況ではない。原因はミリオンを達成したダンシングベイビーの登録者数の内、日本の割合がかなり低かったことにあるだろう。

 

つまり、今までチャンネル登録はしていなかった人たちが、今回の件で面白いことになりそうだからついでに登録しておくかと登録ボタンをポチッと押していったわけだ。悪ノリする人なんか大っ嫌いだ、ちくしょうめぇ。

 

だが、まだ焦るような状況ではないだろう。かぐやのチャンネルは1か月でミリオン登録者を達成するのだ。それに対してダンシングベイビーの伸び率は1週間で1万人。普通ならこれでも充分すぎるほどの増加量なのだが、かぐやといろPの方がはるかに上を行くのだ。

 

やはり、私が過剰反応のし過ぎなのかもしれない。ダンシングベイビーが番狂わせを起こすわけがない、所詮は初見のインパクトだけの一発屋で終わる運命なのだ。是非ともそのまま大人しくしていて欲しい。

 

「YACHIYO CUP」が始まって以来、ようやく精神の平穏を取り戻した私はKASSENのSENGOKUモードをプレイすることにした。中学3年となって受験を控えた身なので、友人たちと一緒にゲームできる状況ではない。そのため、私はいつも通り野良でランクに潜っていた。

 

その日はたまたま野良で組んだ人たちと上手いこと勝ち進み、久しぶりに最高ランクに上がることができた。お互い野良ながらいい感じに連携が取れたため、今日は誰かが落ちるまで一緒に組みますかという話になり、そのまま固定を組んでランク戦を続行した。

 

そうして勝ったり負けたりを繰り返しつつもランクを落とさずにKASSENを続けていた時に事件が起きる。マッチングした対戦相手のチーム名が「Black onyX」だったのだ。

 

有名チームに()()()()()名前を付けることは日常茶飯事なので、マッチングした当初はどうせ本物なわけないだろうとチームメンバーで笑っていたのだが

 

「…そういえば、ツクヨミって同名禁止だったよな?」

 

という一人の発言により全員が凍り付き、慌てて相手のチーム名を穴が開くほど確認する。同名禁止のルールがあるのでチーム名のどこか1文字が違ったり、あるいは大文字と小文字を入れ替えていたり等というパチモンである証拠を探したのだが、残念ながら私の能力をもってしても違う部分は発見できなかった。

 

これはまさか本物か…と戦慄しつつも最後の希望とばかりに「Black onyX」の配信を確認すると、そこでは丁度KASSENの生配信をやっているところで、対戦相手として丁度私たちの即席チームが表示されたところであった*3

 

顔を見合わせるチームメンバー。お互いの頭の中には「死」の一文字が浮かんではいたが、ここで意気消沈していてはゲーマーの名が廃る。デカい花火をぶち上げようぜと気合を入れて「Black onyX」戦に挑むのだった。

 

 

 

 


 

 

 

対「Black onyX」戦は結果から言うと、惨敗である。トップチームに対して即席のチームで勝てという方が無理があるだろう。3戦2本先取で辛うじて1本取っただけでも褒めて欲しい。

 

1戦目と3戦目はボロ負けだったが、1戦目と同じ戦法で来た2戦目だけはギリギリもギリギリで勝つことができた。その勝ち方も「Black onyX」側の想定外を引き起こして逆転した勝利だった。

 

その逆転した部分だけを抜き出すと、私のチームメンバー二人が乃衣と雷のペアに負け、帝とタイマンをしている私のところに「Black onyX」の全員が集合したところから始まる。

 

普通なら、2つある櫓の内片方取った後に相手の天守閣を落とせば良いので、片方の櫓を攻略した乃衣と雷が帝と戦っている私のところに来る必要は無い。だが、動画の配信映えのためか私たちのチームのフルクリア(全滅)からのコールド(櫓の全取得)を狙うことにしたようだ。1戦目を既に勝利しているし、堅実な勝ちよりも派手な勝ちを見せたかったのだろう。

 

だが、「Black onyX」の3人に攻め立てられる私は頑張った。それはもう滅茶苦茶頑張った。とにかく生き残ることを優先して3人の猛攻をこれでもかと捌き、味方がリスポーンするまで生き残った。

 

当然、私のチームメンバーが復活すれば乃衣と雷は迎撃のために離脱しようとするが、そこで私は()()()()()()()捨て身の行動に出て3人全員の足止めを敢行した。

 

奇策に出た所で格上のプレイヤー3人を足止めし続けることができるはずもなく、私はあっさりと処されてしまう。だが、私が作ったわずかな時間でチームメンバーの二人が乃衣と雷のコンビに取られた櫓を取り返し、「Black onyX」側の天守閣へ猛ダッシュ。「Black onyX」も私たちの天守閣へと急いだが、タッチの差で先に天守閣を落とした私たちの勝利となった。

 

「Black onyX」戦の後、何故か「Black onyX」と少しだけ話すことなった。なんでわざわざ時間を割いてくれたのかというと、私が彼らのライブに来ていた「例のラッキーボーイ」だと戦っている途中に帝が気が付いたからとのことだった。

 

しかし、私としてはそれどころではない。あろうことか、私は2戦目で3人を足止めするためにメスガキ式の挑発をしていたのである。帝と雷はプロレスとして乗ってくれたが、乃衣は若干本気で苛ついていたように見えた。

 

というか、帝と雷の二人も内心では苛ついてたかもしれない。余りにも申し訳が無さすぎて私は3人に対して開幕スライディング土下座をキメてしまったのだが、幸いにも3人とも笑って許してくれた。ただ、乃衣は私のメスガキ煽りをコピーして揶揄ってきたから微妙なところかもしれない…

 

私達即席チームは「Black onyX」戦ですっかり疲れてしまったので、その後すぐに解散となり、私は【ツクヨミ】からログアウトしてひと息ついていた。

 

今日は疲れたし早めに寝るかと考えていたところに、ヤチヨからのメッセージが届いた。中身を確認すると、先程の「Black onyX」戦をヤチヨも観ていたようで、「Black onyX」側の配信でバッチリ記録されてしまった私の醜態を弄ってくるものだった。

 

()()()()()()ヤチヨとは気安いやり取りをするようになったものだと苦笑しながら返信をポチポチ打って送信した所で、私はふと違和感を感じた。

 

私とヤチヨはプライベートなやり取りをするような関係だっただろうか。私とヤチヨは論文や研究資料の検索と共有を依頼した関係であり、それも1年ちょっとの付き合いとなったので少し打ち解けてきたぐらいではなかっただろうか?

 

私の中に浮かんだ違和感を頼りにヤチヨとの過去のやり取りを遡るが、()()()()()()ヤチヨとのやり取りはヤチヨに私が取り締まられた時から始まっている。その後から現在に至るまでのやり取りも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

だというのに、私の魂は()()()()()()()と叫び続けている。一体私は何に引っかかっているのだろうか。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そう結論を出しかけたところで、私はついに違和感の正体に気がつく。

 

なんで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!? ヤチヨとかぐやが同一人物だと彩葉が気が付くのは、劇中ではかぐやが月に帰ってからだったが、つまり彩葉ですら気が付かないほどヤチヨとかぐやの言動は違うのだ。

 

それだけ意図的にヤチヨがかぐやとは違う言動をしているという事だし、彩葉が気がつけたのはヤチヨが8000年ぶりに彩葉と会えたことでガードが緩くなっていた所があったからだろう。

 

そのガードが緩む瞬間が何故私に対しても起きている? 私とヤチヨの関係はそんなに深く無い。この現象には何か別の理由があるはずだ。何だ、何が原作と違う?

 

…まさか、ここでもダンシングベイビーなのか!? 原作には無かったアレが混入したせいで既に世界線の移動が起きているのか!?

 

確かに、かぐやとしてダンシングベイビーを見たら十中八九記憶に残りそうなものではあるが、それと私に一体何が関係あるのだ? 私がダンシングベイビー本人じゃないかという意見は封殺させてもらう。私はこの秘密を他人に明かすつもりは無い!

 

だが、さすがにこの異常はヤチヨがかぐやの時に私と知り合っていなければ説明がつかない。まさかのダンシングベイビーの身バレという可能性がこれから先の未来に付きまとうことになるとは…

 

だが私は諦めない。ダンシングベイビーの真実は墓の中にまで持っていくのだ。というか、普通にかぐやに認知されればヤチヨが私の事を知っていてもおかしくないだろう。そうすれば、ヤチヨはダンシングベイビーとは無関係な所で私を知ったと世界に認識させる事ができるはずだ。

 

よし、これでいこう。まずはかぐやの配信にコメントと投げ銭だ。古参リスナーとしてかぐやに認識されれば条件はクリアされる。何だ、簡単なことじゃないか。

 

まったく、私は一体何度ダンシングベイビーに翻弄されなければならないのだろうか。これが某想定科学ADVの世界観だったらアホらしい理由で滅茶苦茶な世界線移動をしてバッドエンドルートまであり得るやつなのが本当にやるせない。

 

今日という1日は本当に疲れた。もう寝よう…

 

*1
知らなければ良かったのだろうに、ヤチヨと接触してから今まで触れなかったヤチヨ(というかyachi8000)の所業を調べてしまったのだ。今では後悔しかない…

*2
いわゆる似非関西弁みたいなもの

*3
生配信で配信されている映像は実際よりも数分前のものが映る仕様の場合がある。




ファンブルさえ引かなければ負けはない勝負なのに、さっそく無軌道な動きとなってしまいました。

ヤチヨが劇中でかぐやっぽい言動をするのは彩葉に正体を明かした後なので思いっきり違和感のはずなんですが、ナギ(ヨミ)は異常を認識するのが遅れました。

早く世界線の観測方法を確率しないと、どんどん漂流してしまうかもしれません。それもこれも、全て身から出た錆(ダンシングベイビー)のせいなのですが。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。