未来知識で2回目の人生を無双する予定が即崩壊した上にネットミームとなってしまった件について   作:かにしぐれ

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未知との遭遇

昨晩私が辛うじて気が付いた"世界線"が変動した可能性というのは如何ともしがたい。だが、昨日の今日で何か解決策を思いつくはずもなかった。だが、おかげでわかったことがある。

 

まず私には"世界線"の変動を明確に知覚することができない、つまり"観測者"としての能力は現時点では無い。だが、原作知識との乖離から辛うじて"世界線"変動を()()()のは可能だということだ。

 

"観測者"としての能力が無いことは今後に不安を残す要素だが、無い物は仕方がない。己の知る限りの歴史から原作が大きく離れていかなければとりあえずヨシッ! としよう。

 

せめて世界線観測装置が完成していれば私が"観測者"になれたかもしれないのだが、某想定化学ADVでも偶然の産物だったものを狙って作るなど難易度が高すぎるのだ。我が家にはニキシー管で再現した時計と兼用の装置はあるが、"世界線"の変動があったと認識した今でも"世界線表示モード"の数値に記憶との差異は無い。

 

こんな状況で"世界線"に介入することなどできはしない。ならば今できない事について悩むよりも、今できる事から片づける方が建設的というものだろう。

 

とは言ったものの、直近の目標であるかぐやとの接触について、どうすれば良いのかもまったく思いつかないのが現状だ。ヤチヨとのこれまでのやり取りを今一度確認したところ、やはり彼女にとって私は()()()()()()では無いみたいなのだが…

 

だが、いつ何処でかぐやと会うのかをヤチヨに聞くわけにもいかない。答えがそこにあるのがわかっているのに手を出せないとは何とも歯がゆい状況である。

 

結局、こっちも『その時』が来るまで運命の流れに身を任せどうにかするしかないのか。世の中、自分ではどうすることもできない事ばかりである。どんなに規格外な能力を得ても、結局私は()()()()()でしかないことを痛感するのだった。

 

 

 


 

 

 

あれからさらに数日が経ったが、私の周りは平穏そのものだった。かぐやはどうやら彩葉から楽曲を提供して貰えたようで、さっそく歌ってみた動画を上げており、また【ツクヨミ】内でも路上ライブを何度か決行したようで徐々に話題になってきていた。

 

とはいえ、「YACHIYO CUP」のランキングにおいてはまだまだ圏外である。トップは下馬評通り「Black onyX」となっている。そして、私としては認めたくない現実であるが、ダンシングベイビーがTOP10に入っている状況だ。

 

当初はネタ枠だったダンシングベイビーだが、その動画の投稿が14年前を最後に更新されていないことや、そもそもライバーではないだろうということで「YACHIYO CUP」の出場者に含まれている件については問い合わせや批判が運営に寄せられていた。

 

それに対し運営、というかヤチヨが自身の配信にてチャンネル登録者数という意味では無視できない存在だったので参加者に選んだことや、動画投稿者には事前に企画の趣旨を説明した上で許可を取っていることを説明し、その結果日本国内で人気が再燃してしまった。

 

14年前の動画だから赤ちゃんはもう成長してしまっているという問題点が、仮に優勝となったら当時赤ちゃんだった本人が登場するのではないか、赤ちゃんの時点でキレッキレのダンスが踊れるのならば現在の()()()()()によるダンスもまた見応えのあるものではないかという期待に変わってしまい、無事にトップ争いに割り込むこととなった。

 

 

やめてくれ、本当にやめてくれ…

 

 

原作通りならば、かぐやが優勝するのだから何も心配はいらないのだが、色々と変わってきてしまっている現状では楽観はできない。かぐやには頑張ってもらわねばと祈りを捧げつつ、今日も私は【ツクヨミ】にログインをする。

 

本日はフローズンドリンクとツクヨミパフェ(夏)の販売の出店をやる予定だ。今回販売するものは新作なので、実際に現実で作ってみた動画も一緒に公開している。さて、今回の作品はどれだけ売れるだろうか。

 

屋台をからからと引きフリーマーケットのエリアの一角を確保して販売を開始すると、お客さんが並び始めた。販売を始めた当初は1日で一個も売れないということも日常茶飯事だったが、今では動画も含めてそれなりの知名度を得たためか常連さんもついている。ありがたい事だ。

 

そうしてしばらくお客さんを捌き客足もひと段落したところで、遠くの方に見覚えのある集団が歩いているのが見えた。彩葉と芦花と真実の女子高生3人プラスかぐやの4人組である。

 

彩葉が狐の着ぐるみ姿でないため、今日はかぐやの配信ではなく4人で【ツクヨミ】に遊びに来ているようだ。原作でもそういう日常があったのだろうと思いつつ目線を外したのだが、しばらくすると彼女たちの話し声(8割かぐやの声だったが)がこちらに近づいてきた。どうやら、かぐやが私の店に興味を持ったようだ。

 

かぐやが彩葉にねだり、彩葉がかぐやのおねだりに負けて私の店でかぐやと自分の二人分を購入し、芦花と真実も彩葉に続いて買ってくれた。お買い上げ誠にありがとうございます。

 

4人が買ってくれたフローズンドリンクは、グラスに結露のテクスチャーを付加したり等いかにもガッツリ冷えているように見えるようにこだわっており、錯覚で冷たく感じると評判の代物だ。

 

かぐやが「冷たい? 冷たくない? 冷たいよーな、冷たくないよーな?」とグラスを持ちながら首を傾げて唸っているので、どうやら錯覚は不思議ボディな月人にも起きる現象らしい。

 

ただ、実際に飲んでみれば「やっぱり味しなーい」とがっかりしたような顔をしたので、実際に現実で作ってみた動画もあるので良かったらと動画の宣伝もしておいた。かぐやの料理の腕前なら再現は余裕だろう。

 

まぁ、今回のフローズンドリンクを再現しようとするとアイススラッシュマシンが必要になってしまうのだが、もしかぐやがやる気になってしまったのなら彩葉へご愁傷様とお祈りを捧げることしか私にはできない。場所を取るのだよ、あれは。

 

かぐやが次はどんなことをやらかすのだろうかと益体も無く考えていると、真実から声をかけられた。どうやら私のチャンネルを知っていたようで、料理をしていたのが学生だったことに興味を持って話しかけてきたようだ。

 

動画の料理を実際に販売する気は無いのかと言われたが、残念ながら私はまだ中学生である。調理師と食品衛生責任者の資格を取得ができるのは高校生になってからなので、それまでは最低でも待って欲しいと伝えた。

 

法律がダメだと言っているので料理の販売はできないのである。こればかりは諦めてもらうしかない。そういう意味も込めてのカミングアウトだったが、私が中学生だったという事がかぐや以外の3人には衝撃だったようだ。私は中身はともかく、見た目は映画館や美術館等のチケット売り場で受付の人から疑われることは無いくらいには年相応のはずなのだが。

 

そんなに意外だったのだろうかと首を傾げていると、かぐやが料理配信をしたいと彩葉にねだり始めた。基本的にかぐやに対してなんだかんだで甘い彩葉だが、さすがにボロアパートのキッチンを映すような配信はNGだったのだろう。首を頑として縦には振らなかった。

 

それでもなおかぐやは諦めず、駄々をこね続ける。それはいいのだが、時折私をちらっと見てくるのは何故だろう? 何かを期待しているのは確かなのだが。まさか、私に彩葉を説得しろとでも?

 

いやいや、家庭の事情(物理)で彩葉は嫌がっているのだから今回は大人しく引き下がるべきだと思うのだが。だからこっちをちらちら見るのはやめなさい。彩葉にも気が付かれて「うちのかぐやがすみません」とか謝ってきちゃっただろう。

 

彩葉が私に頭を下げた段階で、これは無理筋のお願いだったかと悟ったかぐやはしょんぼりしていた。それを見て、私はさすがにこのまま見捨てるのもかわいそうだと思い、つい「キッチンスタジオを借りれば、設備は整っているし家バレの心配も無いから丁度良いと思う」と助言してしまった。

 

私の発言を聞いて再び目を輝かせたかぐやは再び彩葉におねだり攻撃を再開すると思っていたのだが、

 

「じゃあ、料理配信をしない? 一緒に!」

 

などと言い出した。そうか、芦花も真美も配信者だし、彩葉は顔出しNGだとしても残りの美少女3人でワイワイ料理をする配信はさぞ映えるだろうと心の中で頷いていたが、どうも様子がおかしい。

 

何故、かぐやは私の方を見ているのだろうか? もしや私に言っているのかと聞いてみると、

 

「そう言ってんじゃん! で、どうかな?」

 

と宣った。えぇ…なんでそうなるのと困惑していたが、突拍子もない事を言い出したかぐやとそれを諫める彩葉のやり取りから背景は見えてきた。

 

要は、かぐやは配信で料理をしている事は話しているがリスナーからはその腕前を疑われているとのこと。そして、そんなリスナーを見返すために料理をしている所を見せたいらしい。

 

そういえば、そんな先日見ていたかぐやの配信中にコメントしたリスナーとのバトルがあったなと思い出したが、何故そこで私が必要となるのだろうか。

 

思わず、かぐやと彩葉のやり取りの最中に私は口を挟んでしまったのだが、かぐや曰く

 

「そっちの方が、かぐやの料理の腕前を見せつけることができるでしょ?」

 

とのこと。私の料理の腕をある程度は認めているようだが、自分の方が上だとかぐやは思っているようだ。ナチュラルに煽りを入れてきよる。

 

これは話が変わったな。別に煽られたから乗るわけではないが、こういう(クソガキ)は元大人として()()()()()()()()ならない。本気の料理の腕で、あなた(かぐや)を驚かせたい。

 

それから後は言うまでもないだろう。撮影する日程を決めてその場でキッチンスタジオの予約を取り、さらには材料云々で言い訳を許したくないので当日の食材はこちらで用意するから欲しい物は後でリストで寄越すようにとかぐやに伝えた。

 

なにやらかぐやの後ろで事の顛末を伺っていた彩葉他3名がハラハラしているような気配がしていたが、私は別に怒っていませんよ? なので、帰り際に私は笑顔を作り

 

「では、当日はよろしくお願いしますね?(逃げるなよ小娘が)

 

と言ったのだが、彼女ら3人の不安を拭うことができなかったようだ。解せぬ…*1

 

こうしてかぐやからの挑戦状を受け取ってしまい、そのままのテンションで撮影当日を迎えてしまうの。

 

私が()()()()()()()()()()()()()()()がどのようなものになってしまうのか、それはもはや自明である。だが、この時の私はかぐやをギャフンと言わせる事にしか考えが及んでいないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
当たり前である




公式から提供される情報により、かぐやが割と悪童(クソガキ)ムーブをしているようなんですよね。

映画でかぐやが可愛いのは、彩葉の前だかららしいです。あれでもまだ聞き分けよくしているみたいです。

配信中の声より、配信切り忘れで流出したいろPとの会話中の声の方が高いかぐや…
実家で声が高いタイプ…
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