「まん丸ボタンは不思議なボタン、まん丸ボタンで扉が開く〜
東の西から西の東へ、西の西から東の東〜」
子供達が何か変な歌を歌っている。
「……」
「俺は女王様のためなら死ねる!、ああ、女王様…」
衛兵がそう呟いている。
「女王様をお護りするのが私の役目、ああ、私は何て幸せな男だ」
もう一人の衛兵がそう呟いている。
「……」
誰か来た。
冒険者達だ。
勇者達に違いない。
「砂漠を旅してきたの?、鼻の頭の皮が剥けかかっていますわよ」
そう女性に言われる勇者達。
「……」
「恐らくあなた方もピラミッドへ向かうむこうみずな旅人…けれど気をつけなさい!、ピラミッドには呪文の効かぬ場所があるそうな」
「……」
ピラミッドには呪文の効かぬ場所があるのか。
「古い書物によるとピラミッドには色んな仕掛けがあるらしい、気をつけるこったな」
勇者達に男はそう言った。
恐るべきはピラミッド、そのピラミッドに行こうと言うのか勇者。
「……」
チャンスか?。
いやまだだ。
今はまだその時ではない。
恐らくチャンスはあるだろう。
その時を待つしかない。
「……」
夜になった。
騒がしかった日中の城内は静まりかえっている。
暑かったが夜間はヒンヤリとした空気が漂う。
「……」
チャンスは来るのか?
夜中には誰も訪れないだろう。
もちろん勇者達も…。
「うわ〜化け猫だぁ〜助けてくれ〜ぐうぐう…」
兵士がベッドの上でうなされている。
「ああ、女王様…ぐうぐう」
衛兵が立ちながら居眠りをしている。
「……」
城の中をうろつく。
「……」
チャンスは…ないのか?。
夜中にチャンスなどある訳もない。
なぜなら誰も起きていないし、誰も来ないのだから。
そう思った時にチャンスは訪れた。
夜間に訪ねて来た者達がいた。
それは勇者一行だ。
そして勇者一行は近寄ってきた。
勇者一行が目の前に来た時に満を持して俺は口を開いた。
「けけけ、俺は使い魔さ
勇者よ、魔王様に楯突くのを止めてアリアハンに大人しく帰った方が身のためだぞ、さもなくばお前らは無惨な最後を遂げるだろうよ!」
そう言って体を借りていた猫から離脱した。
あとは一目散の全力疾走だ。
何せアッサラームで勇者を倒そうとした同族のベビーサタンは倒されたのだ。
ハッキリ言って自分一体で勇者達に敵う訳はない。
ちなみに勇者を狙っていたナイルの悪魔やマザーズアイ、砂漠のモンスター数百匹は全滅させられたらしい。
誰に?、この勇者たちに?。
だとしたら尚更勝ち目はない。
何にせよ勇者達に言ってやった。
捨て台詞だろうが何だろうがとにかく言ってやった。
これで一杯一杯だ。
これ以上は無理だ。
これ以上はあれだ、最強の四天王達に任せるしかない。
そう、ただのベビーサタンである自分が出来る事はもうない。
今はただひたすら逃げるのみだ。