真昼の砂漠の中に二人はいた。
「はぁはぁ…俺はもうダメだ…けどディックお前だけは…」
ディック「あにきー!!」
「いいから俺の話を聞け! はぁはぁ…」
ディック「…」
「ここから北に3日も歩けばこの砂漠を抜けられる筈だ
水はもう1日分しかねえが、お前一人で飲めば持つかもしれねぇ…」
ディック「そんなっ! それじゃあにきは…」
「いいかディック、2人なら水は一日しかもたねぇ
それじゃ町に辿り着けねぇ、何も二人で死ぬ事はねえしオマケに俺はもう動けないときてる」
ディック「けどあにきー!」
「さぁ!、この水筒を持ってとっとと行きやがれっ!うぐっ!…」
ディック「あにきー!」
どうやら気を失っているようだ。
ディック「ああ…! オイラはどうすればいいんだ!?」
私は側に寄って話しかけた。
ディック「な、なんだお前は? オイラ達の話を聞いていたのか?
そうか…このさいお前がだれでもいいや
なぁ、教えてくれよ!
オイラはどうしたらいいんだ?
アニキの言うようにこの水筒を持ってオイラだけ町に向かったほうがいいのか?」
私「さて?、貴女はどうする?」
ユユナ「えーとぉー、いいえかなー?」
ディック「じゃあ、アニキを背負ってもとにかく二人で町に向かって歩き出すべきかい?、水は二人で飲めば一日分
生きて町まで着けないかも知らねえがそうすべきかい?」
ユユナ「えーと…多分それがいいかなー?」
ディック「そうか…そうだよな…
けどオイラにはやっぱり分からねえや…」
私は話を終えた。
ユユナ「結局はどっちが正しかったのかなー?」
私「さて?、どちらも正しいしどちらも間違いではないかと思えます」
ユユナ「ソクラスさんって面白い話をするんだねー」
私の名前はソクラス。
巷では賢者と呼ばれている。
しかし私自身はそうは思えない。
世の中には賢い者はいくらでもいる。
そういった賢者達を置いて自分が賢者などと言われるのはどうにも気持ちが落ち着かないものだ。
ユユナ「賢者って全ての魔法を使える人の事だって聞いたよー」
ソクラス「確かに東方のダーマではそれを賢者と呼ぶようだけれど、このイシスでは知者を表す言葉だよ」
ユユナ「知者?」
ソクラス「あらゆる事を知っている者の事だね」
ユユナ「ソクラスさんはあらゆる事を知ってるのー?」
ソクラス「いや、私は知らない事を知っているだけの人間さ」
ユユナ「知らない事を知ってるー?、変なのー、それって知らないって事だよねー?、あれ?、違うかなー?」
ソクラス「その通りだよ、知らないんだ」
ユユナ「んじゃ賢者じゃないんだー」
ソクラス「そう、賢者じゃない、けれど人はなぜか私を賢者と呼ぶんだ」
ユユナ「んー、変なのー、でも確かに賢者っぽいってゆーと賢者っぽいかなー?」
ここ数日、家にやってきては色々と聞きにくる遊び人の女の子。
私は夜になるのを待っている…という言葉に興味を持ってここに来るようになった。
アリアハンから来た勇者一行の一人だそうでピラミッドにあるという魔法の鍵を入手するために留まっている。
そのピラミッドには呪いの王が墓を守っていると噂されていて、入るにも出るにも王家の血を引く者の許可が必要であるという。
つまりは女王様の許可だ。
その許可が下りるまで時間がかかっているようで、その間家に来ている。
ソクラス「その本が気に入ったようだね」
ユユナが本棚から借りて宿屋で読んでいるらしい頭の冴える本。
この本を読むと切れ者になるとされているが適正がないとその内容は難しくて読めないとされている。
それを読めるという事は適正があるという証拠だ。
ソクラス「それを読めるのは凄い事だよ」
ユユナ「そうなんだー、えへへへー」