人の人生とは実に不思議なモノだ。
旅に出て王様になる人間もいれば自分のように小さな村でただ生きる為に仕事をし平々凡々と暮らしている人間もいる。
外にいるモンスターは強いとはいえ自分でも何とか倒せるようにはなってきた。
最近はレベルも上がった。
しかし相変わらず魔法を使うモンスターは無理だ。
どうあっても太刀打ちできない。
だからこそ思うのだ、人の違いの不思議さを。
「うんせ!、こらせ!、どっこいせ!」
村の外れにある岩を動かそうと努力をしてみてもビクともしない。
レベルが上がった筈なのに未だに動かせない。
どれだけ自分は非力なのかと思わせられる。
以前ここに来て軽々と岩を動かした若者がいた。
自分より少し下の若者。
魔王討伐の旅に出た勇者であり、勇者オルテガの子だ。
その力の差を目の当たりにしてへこんだりもしたが自分と勇者は違うのだと言い聞かせながらも自分でも努力すれば勇者には敵わないながらもそれに迫れるのではないかと思い毎日岩を押し続ける。
あの時は同じここの場所に立っていた。
だが一方は王になり一方の自分は未だにここで岩を押し続けている。
しかし岩はガンとして動かない。
その違いに悔しささえ感じる。
王になった勇者は王位を返してまた魔王討伐の旅を再開させたという。
それもまた自分には出来ない事だ。
自分ならばそのまま王になり続けるだろう。
とても自分から王位を返すなんて出来ない。
人にはそれぞれの器があって自分は実に器の小さい人間なのだと感じる。
そして勇者は一体どれ程の器の持ち主なのかと。
結局はこの岩と同じだ。
小さい人間はこの岩を押し続けて動かそうとする事に人生を費やす。
しかし大きな人間は岩を簡単に動かしてその先に進んでしまう。
その違い。
小さい人間は努力をしても報われないだろう事。
しかしそれでも続ければ何かは変わるかもしれないという希望。
その希望を抱いて今日もまた岩を押し続けている。
「おお アナタ 売り方上手 私参ってしまいます」
今日は諦めて武器屋の前を通ると異国の男が武器屋の店主と何やらやり取りをしている。
異国の男はアッサラームとかいう街の商人だ。
例のいざないの洞窟を通ってこのアリアハンに来たという。
勇者の情報もまたいざないの洞窟を通ってこのレーベにも届いている。
勇者が王になった話も村中にあっという間に広がった。
「おお これ以上出すと私すっからかんになります!」
数日前から村の道具屋にしつこく交渉を持ち掛けているこの商人。
何かというと勇者が装備していた武器や防具を売ってくれという交渉らしい。
棍棒や布の服、旅人の服といったどこでも売っているような武具だがアリアハンから旅に出た勇者の装備品は買い取った道具屋も記念に持っていたいとかでいくら金を積まれても売る気はないようだ。
それにアッサラーム商人が売ってくれと必死に食い下がっているトコロである。
「おお、あなた 酷い人! 私に首吊れといいますか!」
実に大袈裟に言う商人。
これには道具屋の主人も困り果てているようで。
世の中には変なモノを必死に手に入れたがる変な人間もいるものだ。
世の中は広いのだと。