「退屈だな」
「そうですね、バコタの旦那」
アリアハンの城の地下の牢屋。
相変わらず牢の中の二人組、バコタと囚人。
バコタ「何か面白い話はねーのか?」
囚人「ありませんねぇ」
バコタ「お前の推しの勇者はどうなったんだ?」
囚人「全然情報がありませんねぇ」
バコタ「何でもいいから話をしろ」
囚人「そうですねぇ、向こうの大陸の中央部、そのやや北方に岩に囲まれた祠があって、そこには竜の女王が住んでいるって話です」
バコタ「何だそれ?」
囚人「ただの伝説ですよ」
バコタ「竜の女王ってーのが実際にいるんならソイツは魔王にも勝てそうじゃねーか?」
囚人「あー、かもしれないですね」
バコタ「竜の女王ねぇ、イシスの女王なら知ってるがな」
囚人「え?、会った事があるんですか?旦那」
バコタ「バカ、あくまで存在を知ってるだけだ」
囚人「なーんだ」
バコタ「自慢じゃないがアリアハン大陸から出た事がないからな俺は」
囚人「私もですけどね」
バコタ「まてよ、勇者達はどうやってアリアハン大陸から出るつもりなんだ?」
囚人「え?、それは船で移動でしょ」
バコタ「アリアハンから来る船は無いし出る船もねーんだぜ?」
囚人「そう言えば確かに」
バコタ「いやまて、確かロマリアに移動できる旅の扉があった筈だ」
囚人「そんなのがあるんですかい?」
バコタ「ああ、勇者オルテガが旅立つ時もそこを通って行ったって話だ」
囚人「なら心配ないですね」
バコタ「トコロがだ、入り口は厚い壁に遮られて入れないようにされている」
囚人「なんです?、それ」
バコタ「さあな、確かロマリアから来る兵だかモンスターだかの流入を封じる為みたいな理由で王の命令で封鎖されたんだと」
囚人「兵はともかくロマリアから来るモンスターって強いんですか?」
バコタ「ああ、強いって話だ」
囚人「え?、どのぐらい強いんですか?」
バコタ「いや、知らねーよ、自慢じゃないがアリアハンから出た事はないからな」
囚人「知らないのに何で強いって分かるんです?」
バコタ「盗賊には独自のネットワークみたいなもんがあってな、それで聞いた話だ」
囚人「もしロマリアのモンスターが強いなら勇者ちゃん達は負けちゃうかもしれませんね」
バコタ「ちゃん付けはやめろ」
囚人「か弱い女の子ですから」
バコタ「魔王討伐しようっていう勇者がか弱い訳ねーだろ、あと娘じゃねーから」
囚人「娘ちゃんですよ」
バコタ「息子だって言ってんだろ」
囚人「娘ちゃんですよ、私には分かります」
バコタ「何でだよ」
?「きゃははは」
バコタ「あ?、何だ?」
牢に響き渡る若い女の声。
その時牢の前の通路を四人の若者達が通り過ぎた。
その内の一人が甲高い声で笑っていて非常にやかましい。
見た感じ遊び人だ。
バコタ「うっせーぞ、ガキ」
遊び人「あ、囚人さん達こんにちはー」
バコタ「とっとと失せろ」
遊び人「きゃー怖い、はーいとっとと立ち去りまーす、きゃはは」
バコタ「ちょっと待て、お前が持って指で回してるそれは…」
遊び人「あ、これー?、盗賊の鍵ってゆーんだってー」
バコタ「どこで手に入れた?」
遊び人「塔のてっぺんに住んでたお爺さんがくれたのー」
バコタ「くそ、あの老人」
遊び人「え?、これ欲しいのー?」
バコタ「それは元々俺んだ」
遊び人「そーなんだー、でも悪い人には返さなーい」
バコタ「ちっ、まぁいい、大事に使えよ」
遊び人「はーい、ありがとー、さいならー」
賑やかな遊び人と三人は階段を登って行った。
囚人「あれ?、そう言えば何でこんなトコロに一般人がいるんです?」
バコタ「ああ、アリアハンの南西にある岬の洞窟から地下道が走っていてナジミの塔やこの城の地下に繋がっているんだ」
囚人「そうなんですか?」
バコタ「ああ、奴らはその地下通路から登ってきたんだろう」
囚人「何でそんな事を知っているんですか?、旦那」
バコタ「ナジミの塔は昔は俺のアジトだったからな」
囚人「そうなんですねぇ、それにしても盗賊の鍵を持っていかれちまいましたが良かったんですかい?」
バコタ「まぁ、アイツらなら有効に使うだろうさ」
囚人「あれ?、知り合いですか?」
バコタ「気づかなかったか?、アレがお前の推しの勇者一行だろ、多分な」
囚人「え!、しまった、見てなかった、勇者ちゃんは可愛い女の子でした?」
バコタ「いや、遊び人に気を取られ過ぎていて勇者は後ろ姿ぐらいしか見てなかった」