岬の洞窟からナジミの塔に登り盗賊の鍵を老人から受け取る勇者。
かつては初めて洞窟で緊張し迷子になりかけた洞窟内も自分に取っては2度目であり何ら恐れるモノではない。
数多くの戦闘や洞窟探索をしてきた経験からすれば岬の洞窟もナジミの塔も取るに足らない。
ただ一点だけ不都合があるとすればレベルが1からのスタートであり本来苦戦する筈のないスライムや大ガラスにも手こずる有様であった。
しかし若い体はすぐに順応してくれた。
敵の弱点は知り尽くしている。
だからレベルが多少上がっただけで随分と楽になり、動きたい動きも出来るようになってきた。
現在はレベル4。
大アリクイやフロッガーも楽に倒せるようになる。
だが仲間達はそうはいかない。
何せ始まりの冒険であり洞窟であり塔なのだ。
何よりモンスターとの戦闘はぎこちなく連携も大して取れない。
初めてだから仕方がない。
しかしかつてのメンバーは最初から良く動いてくれていた気もする。
いや、それは自分もまた未熟だったからこそそう思えたからかも知れない。
パーティー構成は盗賊、商人、遊び人。
ルイーダの酒場で驚いたのは盗賊という職が登録されていて仲間に出来た事。
かつてはそんな職の人間を仲間にする事は出来なかった。
だからハッキリとこの世界はかつていた世界とは違うと認識できた。
そして遊び人、皆から見れば冗談みたいな職だ。
なぜルイーダの酒場で遊び人が登録されているのか?。
昔、アリアハンを旅立った頃の自分も不思議に思っていたし、遊び人なんて仲間にする人間がいるのかと苦笑もした。
しかしそれは世の中を知らない若者の浅さだった。
旅をし色々な国々を巡り賢者という存在を知った。
本来なら賢者は職をある程度極め悟りの書と呼ばれる貴重なアイテムを使ってようやくなる事ができる。
しかし遊び人には悟りの書が不要で賢者になる事ができる。
それはある程度の経験と知識を積んだ者にしか知り得ない情報だ。
ルイーダさんは若い頃の父と共に冒険をした事もあるという。
だからルイーダさんは知っていたのだ。
経験を積んだ遊び人が悟りの書無しで賢者になれる事を。
酒場で遊び人を仲間にした時に周りは笑っていたがルイーダさんだけは「分かっているじゃない、ボク」みたいな顔をしていたのだろう。
不思議なものでルイーダさんの年齢は超えているだろうけれど、母と同様に年上に感じる。
そして商人…。
かつての世界で一時的に旅をした商人は酒場にいた。
そう一時的な仲間だった彼女。
名前はピプル。
色々あって牢屋に入れられて…そのまま会う事もなく終わった。
その後悔があってピプルを仲間にした。
ピプル自体はかつての世界の記憶は無い様子だ。
今度はあの革命が起こらないようにしないとならないという使命みたいなモノを感じる。
いや違う、そもそもあの地に商人を残してきた事が間違いだったのだ。
今度は途中で離脱させない。
絶対に。
「……」
残念ながらあの当時の最初から一緒に旅したメンバーは見つける事は出来なかった。
酒場に名簿登録すらされていなかったからだ。
戦士、僧侶、魔法使い。
なぜ彼等はいないのか?。
どこに行ったのか?。
この世界にはいないのか?。
分からない事だらけだ。
しかし魔王討伐の旅には出なければならない。
だから新しいメンバーで旅立つ
以前の仲間達がもしかしたらどこかにいるかも知れないという期待を込めて。