かつてアリアハンは世界を統べていた。
しかし大いなる戦いによってアリアハンは世界の盟主の地位から転落し国を閉じて外界から孤絶した。
ロマリアと繋がっていた旅の扉は封印され壁によって閉ざされた。
それは魔法の玉を用いて破壊するしかない。
オルテガがアリアハンからロマリアに行く際には一度壁は破壊されたが再び壁は張られ今に至る。
「坊やが魔法の玉を手に入れたみたいね」
酒場の主人であるマダム・ルイーダが呑んでいる老魔法使いに言う。
老魔法使い「魔法の玉か、懐かしいな」
ルイーダ「オルテガの時以来だものね」
老魔法使い「そうだな、それにしてもレーベの職人爺さんは長生きなものだ」
ルイーダ「あの当時から結構なお年だったけど、いま何歳かしらね?」
老魔法使い「知らんが、ワシも長生きしたいな」
ルイーダ「してるじゃない」
老魔法使い「いやもっとだ」
ルイーダ「もっとねぇ…」
人の命は分からない。
長生きしている者もいればオルテガのように早々と亡くなる人間もいる。
寿命ではなくモンスターと相打ちになったとはいえ人の生き死には本当に分からないものだ。
ルイーダ「旅の扉ねぇ」
老魔法使い「何だ?、旅の扉がどうした?」
ルイーダ「いざないの洞窟のあの扉は今でも使えるのかしら?」
老魔法使い「そりゃ分からんが枯れていない限りは使えるだろうな」
ルイーダ「そもそもあれって誰が生み出したの?」
老魔法使い「昔のど偉い魔法使いさん達だろうな」
ある場所からある場所に瞬間移動させる設置魔法。
移動魔法ならルーラやリレミトはあるが、ある特定の場所に固定され入った者を誰彼問わず移動させる設置魔法の技法は現代には伝わっていない。
つまり失われた過去の魔法技術である。
誰が生み出したのか?、なぜそこに設置したのか?、詳しい事はもはや誰にも分からなくなっている。
ただルイーダが知るのは一つ。
それは旅の扉はいざないの扉だけではない事。
アリアハンで比較的知られているのはいざないの旅の扉だ。
ただ実はそれ以外にも国内で旅の扉が存在している。
これは殆ど誰も知らない。
ポルトガの灯台に行ける旅の扉がレーベの村近くの森林の中に隠されていたりする。
これは若かりし頃、まだ10代の頃にオルテガや仲間達と共にアリアハン国内を散策している時に偶然見つけたモノだ。
ただその旅の扉の先は岬であり、そこから先は船がないとどうにもならない場所でもある。
だから知っていても使えない扉だ。
それこそ誰が何の目的でそこに設置したのか全く分からない。
老魔法使い「それにしてもオルテガの子の仲間選びには笑ったぞ」
ルイーダ「ああ…遊び人の事?」
老魔法使い「旅に遊び人を連れて行っても役に立たんからな、ましてや魔王討伐の旅に連れて行く職じゃない」
ルイーダ「そう…ねぇ」
ルイーダはそう言って苦笑いを浮かべた。