はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
プロローグ
ザールブルグの小さな家で、一人の女性がその生涯を終えようとしていた。
彼女の名はマルローネ。
世界最強の錬金術士として数々の冒険と騒動を起こした本人である。
「……はあ。あたしもここまでかぁ……」
「マリーさん……」
そばにいる初老の女性がマリーを気遣う。
「なんて顔してんのよ、エリー……わかってたことだし、ここまで生きたんだから十分だって」
「でも、不老不死の薬を使ってれば……」
「あんただって使ってないでしょうに……いまさら何言ってんのよ」
「それは……」
「わかってる。旦那と一緒に逝きたいからでしょ? あたしもそうだよ」
にかっと力なく笑うマリー。
「マリー……」
「マリーばあちゃ」
「先生……」
「かぁちゃん……」
その場にいた多くの男女がマリーの手を握る。
「あたしに子供はいなかったけど、多くの弟子、多くの養子、そして仲間に恵まれた。こんなに充実した人生もなかったよ」
「マリーさん……」
「先に逝ったイングリド先生やシアが待ってると思えば、悲しくもないさね。むしろ酒盛りする気満々だよ」
「もう……」
ふっ……と笑って天井を見る。
「おや……あんたがきたかい。そろそろだね……ああ、わかってる。待たせたりしないよ。向こうじゃ喧嘩はしないように気を付け、から……」
「マリーさん……?」
「ああ……それじゃ……ばい、ば……」
「「「「 マリー! 」」」」
そうして彼女は逝った。
……はずだった。
「おや?」
ふと気づくと空が見えた。
青い空。
周りには草が生い茂け、気から木漏れ日が見える。
「はて?」
顔を上げると、街並みが見える。
人が行き来している。
家々が立ち、大きな城や塔が見える。
どうやら街の中の木陰のような場所らしい。
「なんだ、ゆめか……」
そう言って倒れ込む……あれ?
息が……しやすい。
そして手を見る。
ぷっくりとした、若い手。
「おんやぁ?」
がばっと起き上がり自身を見る。
足が――体が小さい。
手足が短く、これじゃあまるで……
「あたし! ちっこくなってる!?」
マリーはきょろきょろと周りを見回し、少し遠くにある噴水まで走った。
あ、足が遅い!
よちよちとした足取りでたどり着く。
「ば、バランスが……」
足の大きさが変わっているのでバランスがとりにくいったらない。
やっとのことで噴水に辿り着いて、水を覗く。
そこには……
「……5歳ぐらいのあたしだ」
昔、川原で見た自身の子供の姿を思い出して呆然とする。
そこに写っていたのはまさしくい子供の頃の自分だった。
「どうなってんの!? ここはどこ! あたしはマルローネ! それは知ってる!」
混乱した頭を抱える。
周囲の人はなんだなんだとこちらを覗きこんでいる。
「あたしゃあ……生き返ったってこと?」
呆然とした顔で周囲を見る。だが全く知らない街並みが見えた。
「ザールブルグでもない、ケントリスでもない……ほんとにどこよ、ここは」
周囲に人は大勢いる。出店もある。なんとなく、これはお祭りのようにも見えた。
それにしてもザールブルグよりも栄えているようにも見える。
「あはは……いろいろ冒険したけど、さすがにこんなのは初めてだぁ」
ペタンと噴水の傍でうなだれていると――
「ね。君、大丈夫?」
ふと声をかけられて、顔を上げる。
そこにいたのは――女の子だった。
「どっか痛いの? お薬あるよ?」
「あ、いや、その」
「大丈夫! これでもお姉さんは錬金術士なの! 痛い所なんかすぐ治っちゃうよ!」
「れんきん……じゅつし?」
目の前で胸を張る女の子は、赤い帽子に薄い胸を反らせた――15歳くらいの女の子だった。
「ちょっと! なにやってるのよ、ロロナ! この子がどうしたの?」
「あ、くーちゃん。この子、座り込んでたから怪我したのかな、って」
「そうなの? 怪我なさそうだけど」
「あ、あれ?」
「なにやってんだーロロナ。おろ? ちっこいけど見ない子だな」
「食堂やってるイクセくんでも知らないの?」
「全部知ってるわけじゃねえけど、この辺で遊んでいる子なら大体知ってるよ。けどこの子は知らんなぁ」
後ろから来た友人らしき男女と3人でマリーを囲む。
マリーは呆然とした顔で、3人に言った。
「ここ、どこ?」
「ここ? アーランド王国の噴水広場だよ」
「あーらんど?」
知らない名前だ……
「ロロナ……この子もしかして迷子なんじゃない?」
「え? ほんと!? どうしよう!」
「しょーがねーなーあ。騎士のあんちゃんよんでくるか。おい、お前、名前は?」
「え?」
「イクセくん! 女の子にそういう聞き方はよくないと思う!」
「そーよ、そーよ!」
「だぁああ、うっせ! 名前聞かなきゃ親を探すことできねえだろうが!」
女の子二人が男の子を非難する。
その様子にマリーは少しだけ懐かしいものを感じた。
「マリー」
「え?」
「あたしの名前は……マルローネ。マリーって呼ばれてるよ」
――これは、きまぐれな神様からの贈り物。そんな物語。
こんな感じでちらちらと書いていきます。
書く動機としては、いつもの私の癖ですがあまり人気がない作品をピックアップしています。
そしてもう一つ、私が大好きで没投入できる作品を選んでいます。
今回はたまたまサウンドトラック聞いていて書こうかなと思って調べたらドンピシャなカバーストーリーがあったので筆が乗りました。
前回みたいに毎日というわけにはいかないかもしれません。とりあえず今回は3話投稿して後はおいおい書いていきます。