はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
アーランド王国、4月初頭――
新しい王国依頼の受注を受けたロロナは、アトリエで発表した。
「今度、夜の領域という所に行きます!」
「新しい採取地?」
「うん。今日聞いてきたんだけど、常に夜の状態の場所があるんだって。そこでレアな素材が眠ってるみたい」
「常に夜か……マナの状態が狂ってる場所かな? となると、神秘素材の可能性が高いね」
「うん。人の手もあんまり入ってない場所みたいだから、高品質のものも多くありそう」
新しい採取地にうきうきしているロロナ。
それを見て苦笑するマリー。
「まあ、そういう場所があるって言うのもある意味危険なんだけど……機械のあるこの国で言うだけ無駄か」
「なに? 何か言った?」
「いんや、なんでも。さて、準備しなきゃだねー」
「うん!」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
夜の領域――
空とぶじゅうたんのおかげで1日とはいえ、本来ならば1週間以上かかる距離の場所である。
「………………」
「そ、そんなに怒らないでくださいよ、ステルクさん」
「怒っているつもりはないのだが……いや、多少は腹に来るものはある」
「あはは……」
ステルクが仏頂面なのは、理由がある。
アーランドの街の正門で、ジオと護衛の待ち合わせをしていた時に、急遽城からの呼び出しでジオが捕獲されていったのだ。
その際に、捕らえに来ていたステルクに「ならお前が付いていけ!」と、無理矢理同行を押し付けられたのである。
「あの人もあの歳と立場で本当に自由な人だね……いや、あたしが言えることじゃないけどさ」
マリーは、自身を顧みて頭を掻いた。
「はあ……まあこの場所を教えたのは私だし、案内もできる。気を取り直していくか」
「はい……マリーちゃん、どお?」
「植生は……やっぱり高品質なのが多いね。全体的に闇属性な素材が期待できると思う」
「そっか。じゃあ、どんどん採っていこう!」
そうして採取をしながら奥へと進んでいく。
そして――
夜の領域、黒竜の住処。
ゴアアアアアアアアアアッ!
「おお! 竜だ、竜だよ!」
「なんで喜んでるの、マリーちゃん!」
「ふっ、相手にとって不足なし! 騎士ステルケンブルク・クラナッハ、参る!」
黒いドラゴンとの戦闘である。
「全員、これ舐めて!」
「錬金キャンディ? いつの間に」
「助かる!」
直後にブレス。だが、ぎりぎりで間に合った。
「あちち! この外套、属性に弱いからきっついわ」
「マリーちゃん、タルト食べて!」
「まだ大丈夫! それよりも……こいつでどうだぁ!」
と、パチンコで瓶を投げつける。
グォ!?
黒いドラゴンが目に見えて動きが鈍る。
「今の何!?」
「暗黒水。デバフ山盛りになるやつだよ! スーくん、今!」
「スーくん言うな! ええい! エーテルストライク!」
グォォッ!」
「ロロナ、追撃だよ!」
「いくよ! 大砲! 十尺弾!」
ドゴッ!
「まだまだ! おまけでメテオール!」
ドガゴッ!
グアアアッ!
「ちい、しぶとい!」
マリーが叫ぶと同時に、ドラゴンの傷が目に見えて治っていく。
「こいつ! 再生持ちか!」
ステルクが叫ぶと同時に、再度ブレスが襲ってくる。
「きゃあああああ!」
「まずい!」
「くっ……なら! とっておき!」
そうして取り出したマリーが、味方の周囲に何かを撒く。
と、全員が回復した。
「こ、これは……」
「すごい! なに!?」
「全範囲に拡大したエリキシル! もうないからね! 畳みかけるよ!」
「よし!」
体制を立て直した全員が、気を練り上げる。
「私から行くぞ! 見せてやろう! 私の究極秘奥義を! はああああっ、くらえ! ブレイブサンダー!」
ステルクの必殺技が炸裂する!
「私も行きます! ええとぉ……これをこうして、これも入れちゃえ! 不思議なレシピ!」
ロロナも必殺技を繰り出す。ドラゴンはたたらを踏んだ。
「ここだぁ!」
マリーが叫んで、空とぶじゅうたんに乗り、空へと飛ぶ!
「錬金術士を……」
バラっと山ほどの爆弾を投下する。
「舐めるなよぉ!」
数々の爆弾が爆発する中、最後にテラフラムをパチンコで放った!
ドゴオオオオオオオオオッ!
グギャアアアアアアアアアアアアアッ!
「BAY!」
大爆発と同時に着地して決め台詞を言う。
マリーの必殺技、フラム無双であった。
そしてドラゴンは……その身を横たえたのである。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「ふう……よかったぁ」
ロロナが息を吐きだして、ぺたんと座り込む。
「ふむ、なかなかの手ごたえであった」
ステルクが剣をしまいながらも満足げに呟いた。
「よしよし! テラフラムの効果はまずまずだね。もっと改良してさらなる威力の向上をしよう!」
……マリーはちょっとおかしい。
「あはは……じゃあ採取して奥に行こうか」
「うむ。まだ先があるしな」
「そうだねぇ……もっと強力な敵がいそうだし」
「ええ? そうなの?」
「うん……今のは中ボスクラスかな。だから最奥にはもっと強いボスがいると思う」
「ふえええ……」
「まあ、アイテム使っちゃったし、ここで採取して再度来ようか。つのやウロコも手に入ったし」
「……うん。しょうがないね」
そう言って付近を捜索する三人。
と――
「あれえ? マリーちゃん、これ、なにかなぁ?」
「ん?」
ロロナが出してきたのはひかる円盤だった。
「……なんだろう。素材としては凄いけど分類が難しい素材だね」
「割と使えそう?」
「レシピが難しいね。今ある参考書じゃ有効な使い道がわかんない」
「そっかー……」
「………………」
「マリーちゃん?」
「ロロナ。こいつをできるだけ集めて」
「え?」
驚くロロナに、マリーは不敵な笑みを浮かべた。
「これ……もしかしたらいい装飾品になるかもしんない」
「ま、マリーちゃんが凄い顔してる……」
ふふふ、と笑うマリーに怯えるロロナであった。
マリーが暗黒面に染まっていく……夜の領域だけに
いや、いつもどおりだったか