はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
話の流れ的にはほぼ問題はないんですが、ちょっと重要です(謎)
アトリエ――
「うう……はっ!」
ガバッと起きだす。
「おお、眼が覚めたようだな」
そこにいたのは眼鏡をかけた妙齢の女性だった。
「ここは……」
「うむ。アーランド王国王都の錬金術士のアトリエだ」
「アトリエ……」
男の子は茫然とした顔で周囲を見る。
「……あなたが助けってくださったのですね」
「うん? まあ……そうなる、かな?」
「それはそれは……誠にありがとうございます」
深々と礼をする。
「私の名前はクライス・キュール。実は私も錬金術士でして……ザールブルグの錬金術アカデミーの校長をしておりました」
「な、なに!?」
クライスの言葉に女性が驚く。
「その身でか……」
「? はい。正直言いまして、アーランドというのは寡聞に聞かないのですが、ここはシグサール王国やエル・バドールでもないようですね。どのあたりになるのでしょうか?」
「……残念ながら、私は知らない。それは彼女に聞くといいだろう」
「彼女……?」
その時、扉が開いて女性が二人は入ってくる。
「あ、師匠。その子の目が覚めたんですね」
「………………」
少女のような女性は目を輝かせるように応対する。
その横にいた幼女が――
「え……?」
「………………」
「君は……」
クライスの脳裏に懐かしい思い出がよみがえった。
「もしやマリー……マルローネの」
「………………」
「……お孫さんか何かですか?」
「はああああああああああああああああああ!?」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「あたしゃあ、天涯孤独だよ! アンタ、あたしが相手いなかったの知ってるだろうに!」
「え? なにが?」
「これだから! これだからクライスは!」
「…………………………は?」
目を点にする彼に、マリーは言った。
「あたしがマルローネなんだよ! この唐変木!」
「あ、か、ば、ま、まるろーね……マリー!?」
「あんたね! あたしがすぐわかったって言うのにアンタって奴は!」
「し、しかたないでしょう!? そんな姿になってたらわかるわけないでしょうが!」
「何言ってんだい! あんただって同じだろうが!」
「私が……なん、え?」
と、その時彼は初めて自分の姿を見た。
手が、足が、全身が。
自分の知る身と違っていることに。
「ち、ちいさくなっている……!?」
「アンタ……マジで今まで気づいていなかったんかい!」
マリーが、頭が痛いというように額を抑える。
クライスは混乱している。
「ええと……」
「ふむ。いろいろとあるようだ。ロロナ、ここは二人だけにしてやろう」
「あ、ハイ」
そうしてアストリッドとロロナは部屋を出ていった。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「……落ち着いた?」
「……ええ。なんとか。しかし、これは一体……?」
「アンタ、何も覚えてないの?」
「………………私は、死ぬ寸前の記憶があります。ただ、それしか……」
「アンタもか……あたしも死の間際で、気が付いたらこの国の広場にいたよ」
「なんと……」
クライスが頭を押さえる。
はあ、とマリーが溜息を吐いた。
「確証はないけど、この身に起きたことの推測はできる。ただ、なんであたしとアンタなのかはわからないけどね」
「私は……」
「あたしはわからないけど、アンタは『賢者の石』を核として生まれたホムンクルスみたいなもんだよ」
「ホム……ンクルス? あの人造生命体の?」
「そう。ザールブルグでは研究されても、ついにはできなかった存在だね。というか、意図的に封印されていたに近いけど」
「まさか……」
クライスは自身の手を見つめる。
「多分だけど、ここは『未来の世界』、もしくは『平行世界』だよ。あたしらのいた時代とはちがう、ね」
「なんと!?」
「じゃなきゃ、ホムンクルスが実用化されている説明がつかない。だってあたしらの頃は、本場のケントニスですら実用耐久年数に達することが出来ずに、まだ研究段階だったんだから」
「そんな……なぜ?」
「そんなのわかるもんかい。アンタはともかく、あたしは存在自体があり得ないって言うのに」
「マリー……」
はあっと溜息をつくマリー。
「恐らくはどっかの力ある存在、神か魔王か、それとも超常の存在が生み出したか。それとも単に偶然なのか……本当にわからないんだよ」
「……では、寿命も」
「わからない。1日で崩れ去るかもしれないし、寿命がないかもしれない。それこそ研究しないとね。ただ、あたしらの世界のホムンクルスと違って、この世界の文献では耐久年数が不明になっているね」
「そう……ですか」
「まったく。こんなことになるんだったら、ロロナに賢者の石を作らせはしなかったよ……なんでアンタがいるんだか」
「そ、それはこっちのセリフですよ! というかですね! 貴方、私の遺言はちゃんと果たしたんでしょうね!?」
「ゆ……ええと、なんだっけかなぁ」
「あ・れ・ほ・ど! 次の校長はあなただと念を押したでしょう!」
「し、知らないよ! あたしは頷いてない!」
「また! またですか! また忘れたふりして逃げたのですね!」
「し、知らないったら知らない! 大体、あたしゃ校長なんてガラじゃないんだから!」
「貴方が校長で、エリーが教頭にと念を押したでしょうに!」
「だから知らない! エリーも教職についてない!」
「あなたはー!」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「むう。なんというか……すごく言い合いしているな?」
「ものすごーく、くだらない言い合いっぽいですね」
「あれがあの二人のコミュニケーションなのだろうか……?」
「「 どうでもいいですが、ご近所迷惑ですね 」」
ホム達の言葉に全員が頷いた。
ちなみにですが、ロロナ一連の話は第1章になる予定です