はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~   作:遊佐

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アーランド王城――

 

「物がないではないか!」

「ですから! 物は王も私も確認した上で返却したのです!」

「提出されていない時点で無効だ!」

「確認が取れているので有効です!」

 

王の前で叫ぶのは、大臣であるメリオダス・オルコックと、騎士ステルクである。

彼らは件のアトリエの製作物の件でもめていた。

 

「物納されねば意味はない!」

「物納は条件に入っていなかったでしょう!」

「ならば物を持ってこいと言っておる!」

「物は返却しました! それをどう使うかは作った者の自由です!」

 

賢者の石の作成、それが追加の王国依頼であり、それを大臣自身が確認していないということでもめているのである。

なにせ、物自体はもうないのだから。

 

「もうよい!」

 

謁見の前でジオが叫ぶ。

 

「賢者の石の作成については、私自身が確認した。それを疑うのか?」

「そ、それは……」

「そもそも、今回の依頼はお前の横槍のせいで予定外のものであったのだろう?」

「くっ……」

「アトリエの主人はそれを成し遂げて、確認した。それを物納するかを条件に入っていない時点で話は終わりだ。今回の依頼は達成とする」

「おまちを! あれは追加依頼でして、本来の依頼は……」

「そちらも問題なく果たされている。しかもそちらは物納もされている。問題はあるまい」

「くっ……」

「以上だ。さがるがよい」

 

ジオの言葉に、大臣は悔しそうに謁見の間から退いた。

 

「ふっー……」

「お疲れさまでした、ジオ様」

「まったく……少々強引ではあったが、何とかなってよかった」

「はい……物がモノでしたし」

「しかも目の前でああなった以上はどうしようもないからな……」

 

賢者の石が人間になる。

その場面を目撃したジオは、額に手を当て溜息をついた。

 

「こうなると、迂闊に賢者の石の提出は求められんな」

「はい……新たに人を生み出されては困ります」

「しかし、アストリッドにも確認したが、賢者の石が人になる事例など聞いたことがないそうだ」

「イレギュラー……ということでしょうか?」

「正直わからん、としか言えん。今回は何とかなったが、な」

「はい……そうなると、王国依頼も変更を余儀なくされますね」

「うむ……しかたあるまい」

 

ステルクの言葉に、ジオは椅子にもたれて再度溜息を吐いた。

 

 

 

   ―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――

 

 

 

「……で、こいつを俺の店で面倒見ろって?」

「うん……」

 

イクセルの食堂で、ロロナが頭を下げている。

そして付き従うのは、マリーとクライスだった。

 

「なんで私が食堂に……」

「しょうがないでしょう!? アトリエには、アンタが泊まれるような部屋はないんだから!」

 

クライスの言葉に、マリーがその頭を押さえつける。

ただし二人とも幼児だ。

 

「まあ女性ばかりの家に男がいるのも肩身が狭いだろうしなぁ……しょうがねえな。ただ、食堂の手伝いはしてもらうぜ?」

「手伝い……ですか?」

 

イクセルの言葉にクライスが答える。

 

「さすがにその年で料理を作れとは言わねえよ。まあ給仕の手伝いと掃除くらいかな」

「……仕方ありませんね。どこまでできるかはわかりませんが……」

「こいつは根っからの頭でっかちだから、下手に肉体労働やらせるより頭脳労働の方がいいよ」

「……悔しいですが言い返せませんね」

 

マリーの言葉に、クライスは意気消沈しながら応える。

 

「んー……じゃあ出納帳の管理や代金徴収か?」

「あとは、こいつは資材管理とかも得意だったから、仕入れを任せてもいいかもね。ただ、物は確認しないとダメだろうけど」

「まあ素材の見極めは得意ですが」

「料理の場合は、新しい食材の見極めもあるからその辺の分担がいるか……」

 

腐っても錬金術士、しかもクライスはアカデミーの校長まで務める腕である。

マイスタークラスとしても、トップレベルの実力は伊達ではなかった。

 

「いいぜ。家賃代わりとしておくよ。よろしくな」

「クライス・キュールです。お世話になります」

 

こうしてクライスは、イクセル食堂の従業員となったのである。

 

 

 

   ―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――

 

 

 

「はーよかった! せいせいした!」

「マリーちゃん、ひどい……」

 

帰り道――

意気揚々としたマリーに、苦笑するロロナ。

 

「ひどくないよ! 実際、あのアトリエは女性だけなんだし、間違いがあっても問題でしょ」

「そんな年齢じゃないと思うんだけど……」

「生殖能力がどうなってるかなんてわからないからね。研究しないとだけど、あの性格じゃそう簡単にはさせてくれないだろうし」

 

ちなみにホムについては、アストリッドが全部調査して問題ないとしている。

 

「お風呂や生活空間を、あのアトリエで分けるなんてできないからちょうどよかったね!」

「ううん……言ってることはまともだし、正しいんだけど、なんか腑に落ちないというか」

 

ロロナが頭をひねるが当然である。

マリーが、クライスと生活を一緒にしたくないだけである。

どうせ生活にギャーギャー文句言ってくるに違いないからだ。

 

「そもそも爆弾の研究ですら、アカデミーでさんざんにやりあったからねえ……いちいちつっかかかってこられたら、たまんないよ」

「爆弾については、私も思う所があるんだけどなー……」

「でもロロナも爆弾作るの、嫌いじゃないんでしょ?」

「うっ……」

 

地味に爆弾魔の素養があるロロナだった。




月曜からすこしやすみがとれるので、トトリまで一気に書こうかと
その後、たぶんGWは連続投稿します
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