はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
なお、トトリからは改題と章を作ります。
アーランド王国、10月初頭――
「今回の依頼は錬金術の集大成の納品してもらう。ただし、賢者の石は認めない」
「でしょうねぇ……」
ステルクの言葉に、ロロナは溜息を吐いた。
「さすがにまた人になられてはかなわんからな。その上で、一番良いと思うものを納品してくれ」
「物の指定は、賢者の石以外なら何でもいい、ということですね?」
「うむ。錬金術で作った物に限るがな」
「ちなみに、ステルクさんが持ってるあの盾でもいいんですか?」
「あれか……あれも確かに錬金術で作った物ではあるか。あれでも達成できてしまいそうだな……」
「ですねえ……というか、マリーちゃんが作った物なら何でも合格になりそうです」
「ううむ……そう考えると、この依頼、考え直した方がいいか?」
「あ! いいえ! お受けします!」
いまさら言われて再度検討されるなんて、時間的にも内容的にも困る。
「そうか。まあ、もう達成したようなもんだが、しっかりな」
「はい! ではまた!」
そう言って王城を去っていくロロナ。
「ふう……」
「お疲れ、ステルクくん」
息を吐くステルクに、エスティが声をかけてくる。
「お疲れ様です、先輩」
「最後の王国依頼ねぇ……確かにあの盾だけ出しても達成できちゃうわねえ」
「正直、失念していました。ただ、他にどうしろって話でもありますが」
「まあ、集大成なんて形のないものだしね。実際、あの盾の性能は凄いし。汎用性も含めて」
「どんな盾にも付け替えられるとか、装備の概念が変わりますよ。王国装備に採用してもいいぐらいです」
「パワーバランス変わっちゃうわね。そうなると今の極秘事項にも異議を唱える人が出てきちゃうか」
「はい……」
極秘事項――それはアーランドが『王国』でなくなることへの隠語であった。
「いまさら軍事的変化など求めていませんからね」
「ステルクくん的には、そっちの方がいいんじゃないの?」
「やめてください。私がなりたいのは、皆を守れる騎士です。領土を攻めるような騎士ではありません」
「あはは、冗談よ、冗談」
「まったく……」
エスティの言葉に、ステルクは再度溜息を吐いた。
「さて、何を出してくるのか……楽しみでもあり、そら恐ろしくもあるのだがな」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「集大成、ねえ。なんとも抽象的な依頼だね」
「そうだよねえ」
アトリエにてロロナは、マリーとお茶しながら話をしていた。
「ぶっちゃけね、あの盾でも達成できちゃうと思うの。実際にそう言ってたし」
「あー……まあねえ。でも、あの未完成品を集大成とか言われると、あたし的には納得できないなぁ」
「そういや、未完成なんだったね」
マリーの言葉に、ロロナが思い出したかのように言う。
「完成を目指す?」
「んー……正直今ある素材だとちょっと難しいなぁ。新しい素材を探さないと、欠点も克服できそうにないし」
「そっかー……」
「この周辺にないなら、別の土地で新しい素材を求めるしかないね」
「そうなると……どうしよう?」
「別のアイテムか……もしくは新アイテムを一から作るかだねぇ」
「ううう……時間が、時間が足りない」
ロロナが頭を抱える横で、マリーが苦笑する。
そういうふうに話を持って行ってるが、なにもそうすることはない。
ぶっちゃければエリキシル剤を提出するだけでもいいのだ。物はなんでもいいのだから。
そうと気づかずに頭を悩ませるロロナに、思わず頭を掻きたくなるマリーだった。
「………………」
「うう、どうしょ、どうしよ……」
「ロロナ」
「? なに?」
「ロロナは錬金術で、何をしたいの?」
「え?」
マリーの言葉に目を丸くする。
「ロロナが、錬金術で何をしたいかを考えてみたら?」
「私が、したいこと……」
「そう。ロロナがしたいことは、なに?」
「私は……」
マリーの言葉に、ロロナが考える。
そして答えはすぐに出た。
「幸せにしたい」
「幸せ?」
「うん。私は、みんなを錬金術で幸せにしたい」
それはマリーと出会う、ほんのちょっと前。
演劇をしていた時に、見出した自分自身の願いだった。
「そっか……じゃあ、それを今あるものでどう形に出来るかを考えようか」
「マリーちゃん……うん!」
思い描いていた理想、その想いを再認識したロロナ。
その顔にマリーは、先生の顔で笑った。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「やれやれ……とうとう師匠の座すらも取られてしまったか」
家の窓からそれを見ていたアストリッドが、苦笑と共に呟く。
「望んでいたこととはいえ、寂しいものだな……だが、これで私も覚悟が決まった」
そうして彼女は動き出す。
次にするべきことをするために。