はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~   作:遊佐

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次は日曜から連続で投稿します。
なお、トトリからは改題と章を作ります。


15

アーランド王国、10月初頭――

 

「今回の依頼は錬金術の集大成の納品してもらう。ただし、賢者の石は認めない」

「でしょうねぇ……」

 

ステルクの言葉に、ロロナは溜息を吐いた。

 

「さすがにまた人になられてはかなわんからな。その上で、一番良いと思うものを納品してくれ」

「物の指定は、賢者の石以外なら何でもいい、ということですね?」

「うむ。錬金術で作った物に限るがな」

「ちなみに、ステルクさんが持ってるあの盾でもいいんですか?」

「あれか……あれも確かに錬金術で作った物ではあるか。あれでも達成できてしまいそうだな……」

「ですねえ……というか、マリーちゃんが作った物なら何でも合格になりそうです」

「ううむ……そう考えると、この依頼、考え直した方がいいか?」

「あ! いいえ! お受けします!」

 

いまさら言われて再度検討されるなんて、時間的にも内容的にも困る。

 

「そうか。まあ、もう達成したようなもんだが、しっかりな」

「はい! ではまた!」

 

そう言って王城を去っていくロロナ。

 

「ふう……」

「お疲れ、ステルクくん」

 

息を吐くステルクに、エスティが声をかけてくる。

 

「お疲れ様です、先輩」

「最後の王国依頼ねぇ……確かにあの盾だけ出しても達成できちゃうわねえ」

「正直、失念していました。ただ、他にどうしろって話でもありますが」

「まあ、集大成なんて形のないものだしね。実際、あの盾の性能は凄いし。汎用性も含めて」

「どんな盾にも付け替えられるとか、装備の概念が変わりますよ。王国装備に採用してもいいぐらいです」

「パワーバランス変わっちゃうわね。そうなると今の極秘事項にも異議を唱える人が出てきちゃうか」

「はい……」

 

極秘事項――それはアーランドが『王国』でなくなることへの隠語であった。

 

「いまさら軍事的変化など求めていませんからね」

「ステルクくん的には、そっちの方がいいんじゃないの?」

「やめてください。私がなりたいのは、皆を守れる騎士です。領土を攻めるような騎士ではありません」

「あはは、冗談よ、冗談」

「まったく……」

 

エスティの言葉に、ステルクは再度溜息を吐いた。

 

「さて、何を出してくるのか……楽しみでもあり、そら恐ろしくもあるのだがな」

 

 

 

   ―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――

 

 

 

「集大成、ねえ。なんとも抽象的な依頼だね」

「そうだよねえ」

 

アトリエにてロロナは、マリーとお茶しながら話をしていた。

 

「ぶっちゃけね、あの盾でも達成できちゃうと思うの。実際にそう言ってたし」

「あー……まあねえ。でも、あの未完成品を集大成とか言われると、あたし的には納得できないなぁ」

「そういや、未完成なんだったね」

 

マリーの言葉に、ロロナが思い出したかのように言う。

 

「完成を目指す?」

「んー……正直今ある素材だとちょっと難しいなぁ。新しい素材を探さないと、欠点も克服できそうにないし」

「そっかー……」

「この周辺にないなら、別の土地で新しい素材を求めるしかないね」

「そうなると……どうしよう?」

「別のアイテムか……もしくは新アイテムを一から作るかだねぇ」

「ううう……時間が、時間が足りない」

 

ロロナが頭を抱える横で、マリーが苦笑する。

そういうふうに話を持って行ってるが、なにもそうすることはない。

ぶっちゃければエリキシル剤を提出するだけでもいいのだ。物はなんでもいいのだから。

そうと気づかずに頭を悩ませるロロナに、思わず頭を掻きたくなるマリーだった。

 

「………………」

「うう、どうしょ、どうしよ……」

「ロロナ」

「? なに?」

「ロロナは錬金術で、何をしたいの?」

「え?」

 

マリーの言葉に目を丸くする。

 

「ロロナが、錬金術で何をしたいかを考えてみたら?」

「私が、したいこと……」

「そう。ロロナがしたいことは、なに?」

「私は……」

 

マリーの言葉に、ロロナが考える。

そして答えはすぐに出た。

 

「幸せにしたい」

「幸せ?」

「うん。私は、みんなを錬金術で幸せにしたい」

 

それはマリーと出会う、ほんのちょっと前。

演劇をしていた時に、見出した自分自身の願いだった。

 

「そっか……じゃあ、それを今あるものでどう形に出来るかを考えようか」

「マリーちゃん……うん!」

 

思い描いていた理想、その想いを再認識したロロナ。

その顔にマリーは、先生の顔で笑った。

 

 

 

   ―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――

 

 

 

「やれやれ……とうとう師匠の座すらも取られてしまったか」

 

家の窓からそれを見ていたアストリッドが、苦笑と共に呟く。

 

「望んでいたこととはいえ、寂しいものだな……だが、これで私も覚悟が決まった」

 

そうして彼女は動き出す。

次にするべきことをするために。

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