はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
「そっかあ……師匠いなくなっちゃったんだ」
「驚いてないですね、マスター」
「うん。まあなんとなく、ね。マリーちゃんもそうだけど、師匠も旅に出そうだなとは思ってたんだ」
アトリエに帰ってきたロロナとマリーは、ことの顛末をホムから聞いていた。
「そぉかあ……アイツめ。さては押し付けていなくなるつもりだったな」
マリーは暗い笑みを浮かべている。
どうやらこちらは気づいていなかったらしい。
「しょうがない……あたしが旅しながらアイツを探してやるよ」
「あ、いいよ、マリーちゃん。どうせなら師匠とは逆の方向に行こう」
「お、おろ?」
ロロナが首を振ると、マリーが驚く。
「いいのかい?」
「うん。師匠のことだから言われて止まるような人じゃないし、逆にこれ幸いと追いかけっこを楽しんで別の大陸まで行こうとするから」
「それは……ありえそうだねぇ」
マリーが苦笑する。
「というか、逆の方向って……ロロナ?」
「え? ああうん。私も旅に出ようかと思ってる」
「そっかぁ……ついてくるの?」
「途中まではね。マリーちゃんは、もっといろいろ自分で行きたいところあるでしょ?」
「あはは……よくわかってらっしゃる」
マリーが笑い、ロロナが笑う。
「ホムちゃんはどうする?」
「ホムはマスターについて行けと、グランドマスターから言われています」
「うーん……じゃあ、もしマリーちゃんと別れることになったら、マリーちゃんについてあげて」
「え?」
「了解しました」
「いいの?」
「うん。私はともかく、マリーちゃんの年齢だと他の土地じゃ迷子と間違われそうだし」
「あー……」
自身でも忘れていたが、マリーの身は5~6歳児程度である。
1人でうろついていたらどうなるかは、想像に難くない。
「しゃあないか……んじゃ、その時はよろしくね、ホム」
「了解しました。仮マスターを護衛します」
「その仮は、いつかとれるのかねぇ……」
「あはは」
「んじゃ、行く準備はするとして……アトリエはどうする?」
「くーちゃんに鍵は渡しておくよ。私と別れてアトリエが必要になったら、くーちゃんに開けてもらおう」
「そっかー……うーん」
「どうしたの?」
マリーが悩むと、ロロナが首を傾げた。
「あたしは、クライスに住んでもらう方がいいかなと思うんだけど」
「ああ、彼?」
「うん。アイツはああ見えてアカデミーの校長してたから優秀でね。アトリエが存続することになった以上は仕事も舞い込んでくると思うし、王様のメンツを考えると一人はいた方がいいと思うんだ」
「ああ、そっか……」
「なにより、あたしらが泊まる時は食堂にいさせりゃいいし」
「ほんとうにひどいね」
ジト目のロロナに、アハハと明後日の方を向いて笑うマリー。
「じゃあとりあえず、食堂に行こうか」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「おいおい! 聞いたか! この国、王国じゃなくなるんだってよ!」
「いきなりなんなのー!?」
食堂に入ると、突然イクセルがガブリ寄ってきた。
「だから、この国が王国制をやめて共和国になるんだと!」
「きょうわこく……?」
「王制をやめて議会政治になるってことかな? 簡単に言えば、ジオさんが王様やめるってこと」
「ええー!?」
「あ、王様は一応国家元首として残るってさ」
「ああ、首長になんのか。まあ民主共和制ってやつだね」
踏む踏むと頷くマリー。
「ま、マリーちゃん凄いね」
「それぐらいしてもらわないと、アカデミーの教師はできませんよ」
「うっさい、クライス!」
皿を拭いていたクライスに、マリーが怒鳴る。
「と、いう話を今みんなでしてたんだ。な」
イクセルが後ろを見ると、クーデリアやリオネラ、タントリスまでいた。
「ロロナ、お疲れ様。あのパレードは凄かったわよ」
「ありがとう、くーちゃん!」
「あの光の演舞は凄かったです! 私も参加したかったですよ!」
「あはは……そっか、りおちゃんも誘えばよかったね。ごめんね」
「いえいえ!」
わたわたと手を振るリオネラ。その後ろでホロホロとアラーニャがやれやれと首を振っている。
「お疲れさま、ロロナちゃん」
「タントさん」
「親父のショーもない策謀も終わったことだし、僕はそろそろお暇しようと思ってね、最後のあいさつを兼ねてここに来たんだ」
「え! タントさんも旅に出るんですか!?」
「ああ。元々、僕は旅をするカラスみたいなもんだったしね。だから……」
「それはできないそうだぞ、トリスタンくん」
と、入り口からステルクが入ってくる。
「げ……」
「大臣が……いや、元大臣がお呼びだ。君に自分の後継者になるようにとのことだ」
「な、なんで……」
「アトリエの妨害が出来なかった責任を取れとのことだ。それを私に言わせる神経はどうかしていると思うがな」
「い、いやだ! 僕は気ままに……」
「山ほどの借金は君の名義になっているから、いやだと言ったら全部返してから行けとのことだぞ」
「ぐああああ! ま、まだあれ残ってたのかぁ!」
この世の終わりのような顔で、がくッと崩れるタントリス。
「借金って……」
「以前、家を飛び出した時に家にあった大量の現金を持ち逃げしたそうだ。中にはかなり高い芸術品もあったらしくてその分も入れると、割とシャレにならん額らしい」
「そんな馬鹿な! あんなの二束三文だったんだぞ!」
「騙されたんじゃないの?」
クーデリアの辛辣な言葉に、ガクッと再度崩れるタントリス。
「ステルクさんはどうするんです? 王国じゃなくなるってことは、騎士もなくなるんですか?」
「ああ。我々は共和国に仕える自警団や、城や施設の従業員として再就職になることになっている。私は、王……元王の護衛だし、エスティ先輩は城の秘書官だな」
「ああ、よかった。無職になるわけじゃないんですね!」
「なにげに、ひどいな。君は……」
「ロロナは天然だからね……」
ステルクのため息とマリーのため息が重なる。
「そっかあ。じゃあタントさんが行かないなら、旅に出るのは私とマリーちゃんだけだね」
「ええ!? ロロナ、どっか行くの!?」
「うん、そのことでね。くーちゃんにアトリエのカギを渡しに来たんだけど……」
「それと、クライス!」
「? なんですか?」
話に加われずに皿を拭いていたクライスに、マリーがカギを投げつける。
「あたしとロロナが旅に出ている間、アンタとクーデリアさんに鍵を渡しとく。あんたがアトリエの主人になって、あそこに住みな」
「は!?」
「つまりはあんたが、これからはアーランドのアトリエの主人ってこった」
「な、なんでそうなるんですか!」
「あたしやロロナは、新しい場所で錬金術の素材や参考書を集めてくる。んで、アンタはそれを基にあたしらの体の謎や帰還の術を探るってことだよ!」
「あ……」
「あんた、フィールドワーク得意じゃないだろう? 少しの間の探索ならともかく、放浪していくだけの体力がない」
「ぐ……」
「で、参考書や手掛かりからその術を探るのはあんたの役目ってわけ。おわかり?」
「う……そ、そういうことなら、しょうがありませんね」
「しめしめ……」
「マリーちゃん……」
クライスに見えないように笑うマリーに、ロロナが苦笑する。
「ついでにアトリエとして仕事もしな。そこから得られる情報もあるでしょ」
「そうですね……わかりましたよ。イクセルさん……」
「ああ。んじゃしょうがねえな」
「あ、あたしらが戻ってきた時は、食堂に寝泊まりしてもらうから、そのつもりで」
「なっ!」
「はっはっは! 当然でしょ!」
「本当にひどいわね……」
「さすがにドン引きです……」
クーデリアやリオネラも、素で引いている。
「はあ……しょうがないわね。そういうことなら鍵預かっといてあげるわ」
「お願いね、くーちゃん。私、まだまだいろんな人を錬金術で幸せにしてあげたいから!」
「はいはい。とりあえず、どこに行くの?」
「うーん。師匠は南に行ったってホムちゃんが言ってたから、私たちは北かな」
「そう。まあアイツと同じ所に行かないなら安心ね。がんばんなさい」
「うん!」
クーデリアの声に、ロロナが元気よく頷いた。
「さて、じゃあ準備していこうか、マリーちゃん」
「ロロナ」
「なーにー?」
振り向くロロナに、マリーは苦笑しながら言った。
「これからもよろしくね」
「うん!」
第1章 Fin
ロロナのアトリエのEDを全部見た中で一番トトリのアトリエにつなげやすいのがノーマルエンドでした。
というか、トトリのアトリエはノーマルエンドを基に作っている節があります。
なのでこの作品ではノーマルエンドを基にしたエンディングにしました。
表題するのなら「新・ノーマルエンド」というところでしょうか(トゥルーとは言いたくない)
次回はトトリのアトリエ~続きます。