はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
アーランドの街。
そのアトリエでトトリは、ロロナとクーデリアと共に、幼女であるエルフィール――エリーと話をしていた。
「つまり……あなたも老齢で死んだと思ったら、ここにその姿でいたってこと?」
「はい……」
「マリーちゃんやクライスさんと同じかあ」
エリーの言葉に、うーんと唸るロロナ。
「なんでなんだろうねえ……三人とも死の間際に何かしたってことなのかな?」
「いえ……私は、普通にベッドで旦那様に看取られましたから」
「あ、結婚してたんだ……」
「そりゃ老齢だって言うなら結婚してるでしょ」
「えー? だって錬金術士で結婚する人ってあんまりいないよ」
「そ、そうなんですか!?」
ロロナが発した衝撃の事実に、トトリが叫ぶ。
「うん。私の師匠もそうだし、マリーちゃんも相手いないと言っていたし、そういう話はほとんど聞かないなあ」
「え? え? じゃ、じゃあ私も……?」
「それは……どうかわかんないけど。本人がその気になればできると思うし」
ロロナは、目を逸らした。
自身もあんまり相手いないなあ、とか思いながら。
「えっと……」
「ああ、ごめんね。それで?」
「はい……マリーさんが亡くなる時も、普通に亡くなったのは私が確認しているんです。亡骸も埋葬しましたし」
「ええー……」
こっちも衝撃の事実だったらしく、驚くロロナ。
「つまり……二人、いえ三人とも、実際に向こうでは亡くなった上でこっちにきているってこと?」
「……どういうことよ、ロロナ」
「うーん……当てはまるかどうかわかんないけど、お話なんかである転生みたいなもんかなぁ」
「転生……」
ロロナの言葉に、クーデリアが考え込む。
「本当にそうかはわかんないけどね。ただ、それならなんとなく納得できそうってだけ」
「……そうか。マリーは何となくそうだと知っていたのね。だから焦ってなかったのか……」
「クライスさんの手前、理由をつけていろいろ話していたのもね」
「あいつめ……そうならそうと言いなさいよ。って、まてよ……アストリッドも知っていたの?」
「師匠かあ……多分そうじゃないかな」
「あ・い・つ・は~!」
また知らない人の名前だ……とトトリは口に出さずに思った。
ふう、とクールダウンしたクーデリアが息をつく。・
「まあ、大体わかったわ。で、もしかしなくてもあんたは……」
「はい。錬金術士です」
「やっぱりそうかあ。三人とも共通点は錬金術士ってことね。何か理由でもあるのかしら」
「可能性としては、何かのアイテムに記憶を移していたとか、コピーしていたとかだけど」
「……残念ながら、そういったことはありません。私もマリーさんもクライスさんも、共通してそういったアイテムを作ったことは、私が知る限りありませんし」
「「 うーん…… 」」
考え込む二人に、トトリはエリーに話しかけた。
「えっと……エリーちゃん」
「はい」
「エリーちゃんは、そのマリーちゃんのお弟子さんなの?」
「ええと……先輩と後輩みたいなもんですかね。私は、マリーさんに子供の頃に助けてもらって錬金術士になったようなものですし」
「あ、そうなんだ! じゃあ、わたしと一緒だね」
「一緒?」
「わたしもロロナ先生に教えてもらったんだ」
「……助けてもらったのは、私の方だけどね」
トトリの言葉に、ロロナは身を縮こませた。
「え? え?」
「そういや詳しく知らなかったけど、アンタらの馴れ初めって何よ」
「ええとぉ……」
「ロロナ先生は、うちの前で空腹で倒れていたんです。で、ご飯食べてもらって、お礼に何か作るって言ってた際に、爆発して家を建て直す羽目になりました」
「あんた……さすがにそれは、人としてどうなのよ」
「ち、ちが! ……わなくはないけど! 爆発させたくてしたわけじゃないよ!」
「当たり前でしょ! そんなことしたらただの爆弾魔よ!」
「わーん! くーちゃんがいじめるー!」
「あ、大丈夫ですよ。家の修理費用はもらいましたし、そのおかげでアトリエもできましたから」
「うう……あの時はなけなしのお金全部使って、しばらく仕事でアランヤ村に居候したんだっけ」
「しばらく帰ってこなかったのは、そのせいか」
トホホとしょげるロロナ。
「それにそのおかげで、うちの村にもギルドの出向所みたいなものが出来ましたし」
「ああ、アランヤ村に作ったギルドの下請け依頼所ね。そういや、あれもロロナの推薦があったからか」
「そうなんですか?」
「……私があそこでお仕事してお金を稼ぐのに、いちいちアーランドに戻るの大変だったから」
「申請して通るのに時間かかったから、結局間に合わなかったようだけどね」
「そうなんだよねえ……」
「そういえば、ロロナ先生がいた家、今はパメラさんがお店やってますね」
「あー……そっか。あれも私が勧めたんだった」
「急にパメラがいなくなったのはそのせいか」
三人とも話に花が咲いている。
だが、大元のエリーは置いてけぼりである。
そのエリーは、ちびちびとミルクを飲んでいた。
「あ、ごめんね、エリーちゃん。何の話だっけ」
「いえ……まあそういうわけで、マリーさんと再会してからは一緒にアトリエやって、マリーさんは教師になって……って流れですね」
「そうなんだ……じゃあエリーちゃんも先生だね」
「いえ、私は……」
「あ、そっかあ!」
ロロナが突然大声を上げる。
「ロロナ?」
「先生?」
「そうだよ! エリーちゃんはトトリちゃんの先生になればいいんだよ!」
「「 はい? 」」
ロロナの突然の発案に、トトリとエリーは同時に声を上げる。
「私もマリーちゃんが先生だったように、エリーちゃんもトトリちゃんの先生になれば万事解決だね!」
「「 えええ…… 」」
「あんた……さすがにそれはどうなのよ」
唖然とする二人と、呆れるクーデリア。
「だってだって! エリーちゃんもマリーちゃんと同じで、多分すっごい錬金術士だよ!? なら私よりもトトリちゃんの先生に向いてると思うんだ!」
「ええええ!? だって、でも、そんな……せんせえはわたしをみすてるんですかぁ」
「え? ち、ちが! 違うよぉ! 私も先生だけど、私教えるの下手だし……トトリちゃん以外にまともに教えられなかったし! だから私以外にも先生がいれば、トトリちゃんがもっと錬金術を好きになれるかなって!」
「あー……まあ、アンタ人にもの教えるのはとことんダメだものねえ」
「うっ……そうだけど」
クーデリアの言葉に、ガクッと肩を落とすロロナ。
そしてがばっと顔を上げて、エリーに詰め寄る。
「どお? ねえどお?」
「え? ええと……私は教師じゃなくて、普通に錬金術士としてしかやってないんですけど」
「えー?」
「まあ妖精さんに錬金術を教えたり、本は執筆したし、マリーさんを見て子供や弟子は取ってましたが……」
「なら、できるよ!」
「えええ……」
鼻息を荒くしたロロナに、たじたじのエリー。
「ええと……つまり?」
「エリーちゃんが、トトリちゃんの二人目の先生ってこと!」
「あ、もう確定なんですね……はあ」
「まーそう言う方が都合はいいか……ジオ様に話も通しやすいし」
クーデリアは立ち上がった。
「しゃあない。とりあえずロロナ。あんたは今から寝て、夕方にもう一度ジオ様の所に行くわよ」
「えー!? またあ!?」
「ま・た・よ! 私なんかこれから寝ないでジオ様に説明にいくんだから、せめて寝られるあんたが文句言うな!」
「明日でいいじゃない」
「あんたねえ……こういうのはさっさと報告しておかないと、あとで雪だるま式に仕事が増えるのよ! 少しは宮仕えの大変さを知りなさい!」
「で、でもお……」
ブチッ!
「あーそう……寝る気がないならちょうどいいわ。今から一緒にもう一度行きましょうか」
「え!? や、やだよ!」
「駄目よ! いいから来なさい! どうせ向こうも事後処理で起きてるから!」
「わああああああああ! もういやああ!」
「やかましい! じゃあ、あとよろしく!」
「助けてー! トトリちゃ……!」
バタン!
そうして嵐のように二人は去っていった。
「あはは……」
「………………」
残された二人が唖然としている。
「と、とりあえず、ですね」
「はい」
「……よろしくお願いします」
「……はい、こちらこそ」
どうにも締まらない様子で、二人は互いにお辞儀をするのであった。
天才の次は、大体秀才になるのがシリーズ物のお約束、かな?