はじまりの錬金術士のアトリエ ~ 神様の贈り物 ~ 作:遊佐
エリーが、アランヤ村に来てから一か月が過ぎる頃だった。
「ただいま~」
「あ、おかえりなさーい」
トトリの声にツェツィが応える。
そして――
「……おかえりなさい」
「エリーちゃん……また、お姉ちゃんに着せ替え人形にされたんだ」
「ううう……」
ゴスロリ衣装に身を包んで動けないエリーがそこにいた。
「おねーちゃん! エリーちゃんで遊ばないでって何度も言ってるでしょ!」
「遊んでないわよ! ただ可愛い服着せて、散歩して、ご飯食べて、寝ているだけだもの!」
「エリーちゃんは、お仕事もしているの! お姉ちゃんにだけ構っていられないんだから!」
「私だってお仕事してるもん!」
「ゲラルドさんから文句言われてるんだからね! 最近、来ない日が多かったり、来てもすぐ帰ったりしているって!」
「……ちゃんとゲラルドさんには話して、納得してもらってるもの」
「詰め寄ってまくし立てて一方的に出て来るのを、納得とは言いませーん!」
「ふえええーん! エリーちゃん、トトリちゃんがいじめるー!」
「あーもうー!」
いつも始まる姉妹喧嘩に、毎回巻き込まれるエリーは溜息を吐いた。
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「そろそろ1か月経つし、アーランドに向かおうか」
「大丈夫……?」
アトリエの中で着替えたエリーに、トトリが言う。
ちなみにツェツィは、バーへと仕事に行ったようである。
「うん。今から向かえばちょうど2か月ぐらいになるからね。歩きだと3週間ぐらいかかったし」
「かなりあるよね……」
「うん。だから今回は馬車を使うの」
「馬車?」
「そう。アーランドとアランヤ村を結ぶ馬車があってね。それに乗っていくんだよ」
「へえ……」
馬車なんてカスターニェに行った時以来だった。
そう考えると、あの頃は近場でいろんなものが採取できる場所だったなぁと、エリーはザールブルグを懐かしく思った。
「馬車を使えば、2週間ぐらいでつくからね」
「そっか……でもアランヤ村に来るときに使わなかったのは?」
「うん。前は採取しながらアーランドに来たってのもあるけど、馬車は1台しかないの」
「あ、じゃあちょうど来ていない時だったんだ」
「うーん……実はその御者の人がね。ちょっと面倒な人で……」
「え?」
―――― ★ 神さまの贈り物 ★ ――――
「よう、トトリ」
「こんにちは、ペーターさん」
トトリとエリーが、バーの傍にある馬車の荷台の所まで来ていた。
「そのちっこいのがエリーって子か」
「あ、知ってるんだ」
「まあな。というか、俺にもあいさつに来いよ。メルヴィアに散々からかわれたんだぞ」
「ああ、普通に忘れてました」
「おい……」
ちなみにトトリは煽っているのではなく、素である。
「ち、気分悪い。あーもう、気分を害したぞ! 馬車はしばらく値上げするからな」
「えー! ひどいよ! これからアーランドに馬車で行こうと思ったのに」
「うるさい。今行くなら10万コールだ」
「じゅ、10万!?」
「またあ!?」
エリーの驚きと、トトリの悲鳴。
ペーターはふん、と鼻を鳴らした。
「トトリ……」
「ね。こういう人なの」
「なるほど……でもどうするの?」
「大丈夫。とっておきが2人いるから」
「とっておき?」
エリーが目をぱちくりとする。
トトリは待っててね、とバーの中に入っていった。
しばらくして――
「ペーター!」
「ひい!?」
メルヴィアが飛び出してくる。
「な、なななななに!?」
「あんた、また勝手に値上げして! やめろって言ったでしょう―が!」
「こ、これは馬車のオーナーである俺の正当な権利だ! メルヴィアに文句を言われる筋合いはないぞ!?」
「あるに決まってんでしょうが! そんなんだからうちの馬車は2台にならずに、アンタ1人だけになってるんでしょうが!」
「こ、こんなさびれた村に来る奴が他にいるもんか!」
「いるわよ! じゃなきゃミミちゃんとか商売の人がこれないでしょうが!」
メルヴィアの剣幕に、ペーターが腰を引きながら反論している。
と、トトリがバーから出てきた。
「ミミちゃん?」
「ああ、ミミちゃんは冒険者なの。今はアーランドにいるよ。時々冒険を手伝ってもらうんだ」
「へえ……」
まだまだ知らない人がいそうだなあ、とエリーは思いふけた。
と――
「ペーターくん」
「つ、つつつつつつツェツィさん!?」
「おねがい、ペーターくん。エリーちゃんはまだ小さいし、馬車で移動しないと大変なの。だから、ね」
「は、ははははあはははははい! もちろんです!」
「本当に? よかったあ」
「じゃあ、お代は普通に……」
「ペータ~! あんた、これだけ迷惑かけたんだから、今回はただにしなさいよ」
「いっ!? そ、そんなわけにいくか! これは俺の仕事――」
「お願い、ペーターくん」
「よ、よろこんで!」
「うわぁあ……」
まるで質の悪い詐欺師のやり口のようだと、エリーは思った。
「しょうがねーな、ペーター兄ちゃんは」
「あ、ジーノくん。アーランドの街に行くんだけど、出れる?」
「おう。んじゃ、すぐに準備するわ。ちと待っててくれ」
「あ、トトリ。今回はあたしパスするから、向こうで冒険者雇ってね」
「えー? なんでー?」
「いやあ、さすがにお金がヤバいので、ちょっとは依頼やんないとまずいのよ」
「むーしょうがないなあ」
「まあ馬車なら護衛もいらないし、問題ないでしょ」
「うーん。まあエリーちゃんにミミちゃんを紹介したいし、いいかなぁ」
「んじゃ、よろしく」
そう言ってメルヴィアは、ツェツィと共にバーへと入っていった。
「はあ……しょうがない。タダは今回だけだぞ」
「うん。じゃあジーノくんが……」
「よ、待たせた」
「……来たみたいだし、いこっか」
そう言ってトトリたちは、馬車に乗り込むのだった。
3日間休みだったのに2話しかできなかった、何故……